桧和田山(902.8m)・小畑山(957m)  神河町  25000図=「生野」


上越知から桧和田山を経て小畑山へ
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上越知から小畑山(中央)を見上げる

 小畑山は、上越知の集落を抱いている。
 上越知川に沿った道に入ると、正面に麓屑面のゆるやかなスロープが広がり、その上に高く小畑山がそびえていた。

 上越知の集落を抜け、登山口と決めた地点に向かう。道路から沢に入った。沢の左側に、踏み跡がある。かつて、村の人が下刈りで使った道がかすかに残っていた。
 沢には、大きな岩が重なり、岩の間を水が音を立てて流れている。踏み跡が消えたので、沢を渡ってみると反対側に道が上ってきていた。

 沢とわかれ、右手の斜面に取り付いた。ヒノキの植林地。林床のササを分けて登っていく。

 沢を遡る  ヒノキ林と林床のササ

 標高580mで、広い作業道に出た。スギやヒノキの切り出し用につくられた道で、この山の斜面をつづらに折れながら、ずっと上へと続いている。
 法面で地層が見られるので、しばらくこの作業道を進むことにした。

 法面は、高いところで3mほど。山の地面の下がどのようになっているのかよくわかった。
 地表から10~30cmが、黒い土壌。その下には、岩石が風化してできた褐色の土(砂礫)が積もっている。その中に、風化に強い部分がコアストーンとして残っていた。地下3mまでに、岩盤は現れていなかった。

風化した砂礫の中に残るコアストーン

 何度か折れながらこの道を進んだが、作業車の通るゆるい傾斜なので高度がかせげない。道が大きくカーブしたところで、道から尾根に上がった。
 ヒノキ林の下を登っていく。


 作業道から尾根に上がる

 植林の切れたところにススキが広がっていた。背たけを越えるススキの中にもぐりこむ。
 サルトリイバラがススキの中に枝を伸ばしていて、そのトゲがじゃまをした。ススキの中には倒木も隠れていて、その倒木を越えるのにも苦労した。

 ススキに埋もれる

 ススキを抜けると、再びヒノキ林となった。ヒノキの木から落ちた葉と樹皮が地面に積もり、フワフワと気持ちがよい。踏んだ小枝がパリパリと、小気味好い音を立てた。

 先ほど歩いた作業道から続く道を何度か横切って尾根を登っていく。やがて傾斜がゆるくなって、桧和田山の山頂に達した。
 東西両側から植林が迫っているが、ここだけミズナラやクリ・カマツカなどの自然林。クリの実がたくさん落ちていた。
 

 桧和田山山頂

 桧和田山を北に下った。下りでも、何度か作業道にぶつかった。そのたびに2、3mの法面の崖を下りなければならないが、下が見えないので上りのときより難しかった。

 最初のコルに下りると、北西に白岩山がよく見えた。コルの向こうは、西側に伐採地が広がっていた。
 伐採地の際を登って傾斜がゆるくなると、尾根にアセビが群れていた。アセビを分けて進み、ひと登りすると886mピーク。
 ここからも、尾根に切り開きが現れたり消えたりした。主尾根をはずさないように、ときどき現在地を確認した。
 クリやミズナラの葉の色が、かすかに変わり始めていた。

 白岩山(左)を望む クリとミズナラの尾根

 最後は、けっこう長い急登。地表の落ち葉がはがされて黒土が見えているところには、シカやイノシシの足跡が滑っていた。ピューとアオゲラの声がした。

 小畑山の山頂(957m)には、数本のアカマツが斜めに枝を伸ばしていた。枝は、どれも南東に伸びている。アカマツの樹形は、冬のこの山頂の厳しい風雪を想わせた。
 山頂は展望が開けていた。南東に飯森山が近く、その左に千ヶ峰、右に笠形山が大きく見える。笠形山の手前には、越知川の流れる沖積低地が細く連なっていた。
 遠くの山並みはかすんでいた。南西に折り重なる山並みの中に、明神山が青く浮かんでいた。

 小畑山山頂 笠形山と越知川の流れる低地

 小畑山から稜線を北東に進んだ。植林と雑木林の間を進む。コルから登り返すと936.6mピークに達した。木々の間から、千ヶ峰がさらに近くに見えた。

 936.6mピークから望むまたに山(左)と千ヶ峰(右)

 936.6mピークから、南へ延びる尾根を下った。ヒノキの植林帯で、林床は透いている。急な斜面を真っすぐ下り、谷に降りた。
 もう午後4時。深い谷の底は、少し暗くなっていた。朝、ふもとで出会って話をした人たちが、心配しているかもしれない。地質を調べることはここで終了し、下山を急ぐことにした。
 谷には、沢に沿って小道がついていた。ガレ石がごろごろ転がった荒れた道だが、落ちたスギの葉がクッションになってくれた。
 堰堤から舗装路となり上越知の集落に戻った。
 集落の道を下っていると、すれ違った車の中から「ごくろうさん」と声をかけてもらった。
山行日:2022年10月2日

スタート~桧和田山(902m)~886mピーク~小畑山(957m)~936.6mピーク~ゴール map
 道路の広いところに車を止めてスタート。桧和田山へは、一部作業道を利用した。
 桧和田山から小畑山を経て936.6mピークまでの尾根は、おおむね切り開きがある。936.6mピークから南の谷へは、ヒノキ林の急斜面を下った。谷には沢に沿って道がある。その道は、上越知の集落内にそのまま延びていた。

山頂の岩石 桧和田山 古第三紀暁新世 花崗閃緑岩
        小畑山   白亜紀後期 笠形山層 溶結火山礫凝灰岩
        936.6mピーク 白亜紀後期 生野層 流紋岩
桧和田山山頂付近の花崗閃緑岩
(横10mm)
 桧和田山山頂には、花崗閃緑岩が分布している(写真左)。石英・斜長石・カリ長石・黒雲母・普通角閃石からなっている。溶結凝灰岩との接触部では、細粒の周縁相となり、溶結凝灰岩に熱変成を与えている。また、長石や石英が他の鉱物より大きく、斑状を呈する部分も多い。
 小畑山山頂には、溶結火山礫凝灰岩が分布している。多結晶で、石英・長石・黒雲母・角閃石の結晶片をふくんでいる。
 936.6mピークには、流紋岩が分布している。このピークの南の斜面では、流理による節理が発達した大岩が見られた。

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