沼島の三波川結晶片岩

江の尾の緑色片岩(左に浮かぶのは「千ゾウバエ」)
2,江の尾の緑色片岩・泥質片岩・紅れん石片岩
 沼島港から、赤い鳥居の明神神社を越えて「江の尾」の海岸に降りた。距離は短いが、急な坂なので一汗かく。ここは、「YMCA沼島キャンプ場」の敷地になっていて、多くの子供達でにぎわっていた。
 沼島の結晶片岩は、北部が主に緑色片岩、中部から南部が泥質片岩である。この「江の尾」は、ちょうど緑色片岩と泥質片岩の境界となっていて、両者が入り組んだ露頭が観察できた。
 また、美しい紅紫色の紅れん石片岩の層が泥質片岩中にはさまれていた。

緑色片岩と泥質片岩
  写真の緑色の部分は緑色片岩、黒色の部分は泥質片岩である。緑色片岩中に、厚さ20cm程度の泥質片岩がはさまれている。両者とも片理が明瞭であり、その片理に平行に泥質片岩がはさまれている。泥質片岩は、片理に伴う割れ目(劈開)が、顕著である。
 この辺りの露頭では、砂質片岩や石英片岩も見られた。写真のハンマーの下の白い部分は石英質の脈であり、片理に斜交して入っている。
 
緑色片岩にはさまれる泥質片岩・石英片岩
点紋緑色片岩
  ここの緑色片岩は、表面に白い斑点が目立つことが特徴である。これは、変成作用でできた曹長石(斜長石の一種)の結晶である。大きいものは、3〜4mmに達する。このような結晶を斑状変晶という。岩石名に付けられた「点紋」は、この斑状変晶の斑点をさしている。
 曹長石の斑状変晶の間を埋めている部分は濃い緑色である。これは、緑れん石あるいは緑泥石が含まれているためである。その他、角閃石、白雲母、石英などが含まれている。
 緑色片岩は、玄武岩など苦鉄質の火山岩や凝灰岩が変成を受けてできたものである。
点紋緑色片岩(スケールの長さは8cm)
紅れん石片岩
 紫紅色をした美しい岩石である。これは、紅れん石という鉱物を含むためである。構成鉱物としては、石英がもっとも多い。片理がよく発達し、片理面には銀色に光る白雲母の細かい結晶がぎっしりと並んでいる。
 紅れん石片岩は、三波川結晶片岩中に特徴的に出てくる岩石であり、外国にはあまりない。紅色で自然の美しさをもった人気の高い岩石なのである。
採取した紅れん石片岩の標本
紅れん石片岩の褶曲構造
 紅れん石片岩中に、褶曲構造が見られた。写真の露頭では、完全に180度折り返した褶曲が重なっている。
紅れん石片岩に見られる褶曲
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