能勢妙見山(660.1m)   川西市      25000図=「妙見山」


秋に染まる上杉尾根コースで妙見さんへ


秋の雑木林を歩く

 秋の行楽日和。久しぶりに夫婦で山に出かけた。
 選んだ山は、能勢妙見山。紅葉の中を歩けて、お寺にも参れる。下りもリフトとケーブルカーで楽ちんだ。
 それでも妻は、「妙見山 2番目に楽なコース」と打ち込んで検索していた。その結果、「ケーブルカーとリフトで上る以外、楽なコースはないそーや。」
 それで観念して、「前半はきつい上りが続きますが尾根伝いに展望が開け気持ちのいいコース 上杉尾根コース」を登ることにした。

 JR、阪急と乗り継いで、初めての能勢電鉄。えんじ色の車体がピカピカだ。電車は快調に台地の中を流れる川に沿って走った。降りついた妙見口駅は、たくさんのハイカーや参詣客でにぎわっていた。

能勢電鉄 妙見口行き 妙見口の駅前

 里山ののどかな風景の中を登山口へ向かった。江戸時代から「能勢妙見さん」の参詣者が歩いてきた花折街道。ジョウビタキが電線に止まって鳴いていた。
 花折街道が国道と交わったところが、上杉尾根コースの登山口。民家の前から山道に入った。

 空には雲一つない青空が広がっていた。アラカシなど常緑樹の多い林に、ホオノキの白い樹肌が映える。ダンコウバイが、黄色く染まり始めていた。
 

ダンコウバイ

 尾根の登山道は、深く掘りこまれて溝になっていた。道が二段になっているところがあった。
 「雨が降ったら上の方を歩くから、こうなったんやね。」と妻。ときどきするどい。

尾根の登山道

 けっこう急な坂を、20人ほどの大きなパーティと前後しながら登っていった。落葉樹がしだいに多くなり、木々の葉の色がグラデーションをつくっていた。
 ときどき、茶色になったクヌギの葉が落ちてきて、乾いた音をたてた。どこかで、キツツキのドラミングが聞こえた。
 ケヤキのまだらに染まった葉が陽を透かし、その下でクロモジの葉も黄色になっている。クロモジの小枝を折って、二人でにおいをかいでみた。
 道の勾配がゆるくなってきた。道端に石塔が立っていた。古くからの参道を、今歩いている。
 開けたところに、「八丁茶屋跡」の標識。ここで、ひと休み。谷の向こうに、妙見の森の施設の赤い屋根が見えた。

 なだらかな道が続いた。道に立ち止まって写真を撮っている男性がいた。明らかに目の前の赤い実を撮っているのに、「鳥ですか?」と妻。
 でも・・・そこから、その人と話ができた。野山に出かけ、植物の写真を撮ってブログにのせているという。
 その赤い実がガマズミの実で、白い粉をふくようになると甘くなって鳥が食べにくることなどを教えてもらった。実をつまんで口に入れてみると、はじめ少し甘くて、そのあとしばらく苦みが残った。
 年は80歳。とてもそんな風には見えなかった。
 「あんな風に年をとれたらええなぁ。」 あとで、二人で話した。

ガマズミ

 ムラサキシキブが実をつけていた。シロダモは、花と実が同時。
 南に開けたところがあって、そこにベンチが並んでいた。ここでもひと休み。
 小さくぽっこり飛び出た甲山の右に、六甲の山影が青くなってかすんでいた。双眼鏡の視野に、大阪湾の水面がかすかに光って見えた。

ムラサキシキブ 六甲山の山影

 すり鉢状になった支谷の源を左に見ながら、ゆるくカーブするように道を進んだ。
 リョウブとコナラの林を抜ける。コナラの下のカマツカは、オレンジ色に染まっていた。

カマツカ

 黄緑に染まりはじめたヤマコウバシの実が黒く熟していた。イロハモミジの紅葉は、燃えるように赤い。シジュウカラが、ギチギチギチと早口で鳴いた。
 道が少しずつ上りはじめた。コシアブラはまだ緑の葉が多く、陽を透かして清々しい。

ヤマコウバシ コシアブラ

 雑木林からスギ・ヒノキ林に変わり、その中を登っていくと急に開けて山上の駐車場に出た。登山口から2時間余りだった。
 駐車場の周りで、何組かの家族が弁当を食べていた。ここからは、もう行楽モード。私たちも、コンクリートブロックに座って弁当を食べた。

 大きな石の鳥居をくぐって少し行くと、三角点へ上る道が分枝していた。

妙見山の鳥居 妙見山三角点

 三角点は、上の広場の彰忠碑のうしろに埋まっていた。
 三角点より少し高いところに、数本のブナが立っていた。ブナは、葉をすでにほとんど落としていた。枝をくねらせ天に向かってたたずむ姿に、ブナの木の歴史と風格を感じた。

 妙見山では、山頂から南西斜面にかけてブナ林を形成している。ブナは通常、寒い気候で育つので、近畿では標高1000m級の高い山でしか見られない。
 しかし、妙見山の標高は660mと低い。地球が寒冷な気候のときから、妙見山のブナの木はここで生き延びてきた。
 このブナを守るために、ブナ林の中へは立ち入りが制限されていた。

山頂のブナ

 三角点から元の道に戻って山門へ。山門が、ちょうど大阪府と兵庫県の境界。山門をくぐって、兵庫県へ入った。
 鐘楼で鐘をつき、そこから下ると、境内には所狭しとたくさんのお堂が立ち並んでいた。祈りや願いの空間に、観光客やハイカーが混じってにぎやかだ。
 浄水堂、祖師堂、本殿、経堂、絵馬堂・・・。お堂を巡り、ぐるりと回るように鳥居に戻った。
 途中、コハウチハカエデが鮮やかに黄葉していて、その下を歩くと私たちの体も黄色に染まった。

コハウチワカエデの下

 あとは帰るだけ。
 リフトは、ゆっくりゆっくりと動いた。下に生えるアジサイに足が届いた。
 青い車体のケーブルカーは、満員の客をのせてまっすぐに下っていった。

妙見の森リフト 妙見の森ケーブル

山行日:2016年11月13日

能勢電鉄妙見口駅〜上杉尾根コース登山口〜能勢妙見山山頂〜妙見山本殿〜妙見の森リフト〜妙見の森ケーブル〜能勢電鉄妙見口駅
 妙見口駅側からは、5つの定番コースがある。
 その中で、今回は「上杉尾根コース」を歩いた。約4.3km、尾根伝いのコースである。

山頂の岩石 三畳紀〜ジュラ紀  超丹波帯 長尾山層上部層  砂岩
 能勢妙見山に分布しているのは、超丹波帯の長尾山層である。超丹波帯の地層は、海洋プレートが沈み込む際に付加してできた堆積岩コンプレックスと、前弧海盆などで堆積した整然層から成っているが、長尾山層は後者とされている(「広根地域の地層」 地質調査所 1995)。
 今回のコースには好露頭が少ないが、登山路に顔を出した岩石や転石を観察することができた。
 コース前半は、ほとんどが暗灰色の頁岩。剥離性は強くない。ところどころに、灰色の砂岩がはさまれていた。
 コース後半は、主に砂岩が分布していた。山上駐車場の下は灰白色の中粒砂岩。山頂付近には、風化の進んだ黄土色の砂岩が分布していた。

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