棚原山(406m)・南条山(439.8m)  姫路市   25000図=「前之庄」


元日登山、棚原山から南条山へ

棚原山山頂からの初日の出

 空を見上げると、うす雲の向こうに細い月と金星がぼんやりと浮かんでいた。登山口に向かっていると、棚原山山頂で赤く燃える焚き火の炎があやしく見えた。

 最初で、おそらく最後の元日登山。午前5時50分に歩き始めた。カンテラを持った息子が前を歩き、ヘッドライトをつけた私が後ろを歩く。足元は暗いが、よく整備された歩きやすい山道であった。
  ゆるくなったり、きつくなったりする坂を登ると、道は平坦になった。途中のピークを巻いているようであるが、暗くて地形は分からない。
 道が再び上り出すところに、「御香之場」の案内板が立っていた。ランタンで照らして案内板を読んだ。
 「昔、この場所から北西の方向に棚原山出湧寺(しゅつゆうじ)という寺が望められ、山仕事の行き帰りに村人がここから寺を拝み、山仕事の安全や、家族の幸を祈って香を焚き、手を合わせたといわれています。」と記されていた。
 左に落ちた急な斜面を斜めに登ると八葉寺からの道(地形図に記入されていない)と合流した。山頂付近から聞こえてくる人々の声がしだいに大きくなってきた。空が少しずつ白みだした。
 小さなピークを一つ越えて、最後の丸太階段を登り切ると棚原山の山頂に達した。

 山頂は人であふれていた。地元の人が多く、酒を飲みながらの世間話に花が咲いている。初日の出を待つ間、町長の挨拶があったり、みんなで万歳三唱をしたり……。平和な新年のスタートである。
 雲が多く、初日の出が拝めるか心配されたが、7時17分、雲の上からオレンジ色の太陽が昇った。思わず拍手がわき起こった。またまた、みんなで万歳三唱をして解散。山から下りていった。

 さて、我々はここから町界尾根を南西に進んだ。南条山(439.8m)を越えて、置塩城跡に抜けるか、暮坂峠に抜ける計画だった。
 町界に沿って伐り開きがあり、また小さな赤い杭も所々に打たれていた。切り開きは判然としなかったり、倒木があったりして歩きにくかったが、386mピークを越え1つ目のCa.420mピークぐらいまでは、尾根が狭く迷うことはなかった。右手には、木々の間から置塩城跡がときどき垣間見えた。
 2つ目の420mピークは尾根が広がっていた。ここで一度、右に道を間違った。町界尾根に戻って南にいったん下り、次の急斜面を登った。
 山の斜面に、切り立った岩盤が露出していた。岩盤を登ったあたりの高みが南条山の山頂のはずである。ヤブの中、三角点の標石を探したがどこにも見つからない。私も息子も木の棘にだいぶんやられてきた。おまけに背中に入り込んだ枯れ葉や木の枝が痛がゆい。

木々を分けて進む(迷っている)

 三角点を探すことをあきらめ、次に置塩城跡をめざして木々を分けて進んだが、どうも南に寄りすぎたようだ。眺望はまったく開けず、位置も分からなくなってきた。ヒノキの植林帯に入り込むなどさんざん迷走して、もとの岩盤に辿り着いた。
 置塩城跡をあきらめ、今度は暮坂峠をめざしたが、南への踏み跡は完全に消えて深いヤブに閉ざされた。こうなったら、もう撤退するしかない。

 棚原山への帰りは、行きよりも随分長く感じた。棚原山山頂は、朝のにぎわいが嘘のようにひっそりとしていた。新年早々、迷走の山歩きだった。また少し大きくなったかなと思える息子の背中を見ながら山を下った。

※ 2009年3月棚原山に登ったのを機会に、9年前の記録を改稿した。その時のフィールド・ノートを見直してみると、歩いた時間は5時間40分。その内、迷走したのは、おにぎりを食べた時間を含めて1時間25分だった。帰ってきた棚原山の山頂では、なぜかドラ焼きを食べている。(2009.4.4記)


山行日:2000年1月1日

恒屋登山口〜八葉寺分岐〜棚原山〜386mピーク〜南条山(439.8m)  (行きと同じコースで下山)
 恒屋の登山口には、墓の手前に道標がある。ここから地形図の破線路を棚原山へ。道はよく整備されていた。
 棚原山山頂から、町界尾根を南西へたどった。
南条山(439.8m)の山頂付近から先に進めなくなり、棚原山へ戻って恒屋へ下山した。

山頂の岩石  棚原山 → 後期白亜紀 夢前層 凝灰質中粒砂岩
         南条山 → 後期白亜紀 夢前層 流紋岩質溶結凝灰岩

 棚原山の山頂に露頭はないが、山頂下の丸太階段の脇に凝灰質の中粒砂岩が分布している。

 棚原山から南条山への尾根上には、流紋岩質凝灰岩が分布している。全体的に風化が進んでいた。
 南条山の山頂の手前に岩盤がある。ここも風化が進んでいるが、観察しやすかった。石英の結晶片を多く含む流紋岩質凝灰岩であり、長石の結晶は白色あるいは褐色に変質している。また、黒色の鉱物も少量見られる。基質は灰色〜緑色を呈する。

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