七 種 槍 (577.3m) 福崎町・市川町 25000図=「前之庄」「寺前」
岩の稜線歩きを楽しむ
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達した尾根より望む七種山(左)と七種槍(右) |
それぞれが特徴ある姿で乱立する七種の山々。そのなかで、七種槍は小さいながらもピラミッド型で空に向かってそびえている。七種槍……この名は、多田繁次が、「続・兵庫の山やま(1973)」でそう呼んだことに由来する。兵庫の山々に限りない愛情を注ぎながらも、アルプスの高峰に憧れを抱いていた多田繁次の心の内がこの名によく表われている。この山の名については、地元には「コウジャガ峰」という名が残っていたり、あるいは「五蛇ケ峰(ごじゃがみね)」と表すと聞いたこともある。今は、ふもとの青少年野外センターを起点として、七種山との間に周回コースが整備され、ここを訪れるハイカーも少しずつふえてきた。
今回は、同じ職場の仲間4人で青少年野外センターから七種槍をめざした。秋の校外学習の下見というのがその目的である。
登山口は、奥池の北を東へ少し回り込んだ地点にある。ここから、尾根に向かって、いきなりの急登が始まる。陽射しこそ真夏の勢いはないが、彼岸も近いというのに蒸し暑い日だった。すぐに汗が吹き出してきた。送電線鉄塔の下で一休みして振り返ると、木々のすきまから奥池が山の緑と空の水色を映して光っていた。さらに続く急な斜面を上り、やっとの思いで尾根上のCa.340mピークに達した。ここで、七種槍がその姿を現した。左には、七種山が並び立っている。七種槍も七種山も、過剰な水蒸気に白く霞み、はるか遠くに感じられた。
尾根の雑木のなかの小道を進む。緩く下り、上り返すと突然左に大きく開けた岩盤に出た。青少年野外センターから仰ぎ見た絶壁の上である。しばらくここに座って、高度感と西に広がる風景を楽しんだ。正面には、そうびろ山の山体が大きく、その右には薬師峯が端正な姿で立っている。岩は、硬いが割れ目に沿ってもろく、岩盤の上には小さく砕けた岩がのっている。
「ずるっと滑ったら、落ちてしまうなぁ。」
落ち着きのない生徒の顔が何人か浮かんだ。
「ここには、一人付かなあかんなぁ。」
その先の小さなピーク(Ca.357m)は、全体が岩でできていた。設置されたクサリを握りしめながら登る。
「ここにも、一人いるなぁ。」
小さな起伏が連続する。393.4mの三角点で位置を確認して、さらに上ったところが天下台と呼ばれているピークである。この先もやせ尾根が連続し、岩場が続く。七種山が左手に形を変えながら少しずつ大きくなってくる。このあたりから見る七種山は鋭く尖り、山頂から急峻で美しい流線を下ろしている。ふもとの町からは見られない厳しい姿であった。
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尾根への急坂 |
クサリ場と357mピーク |
雑木林が続き、このあたりの山を広くおおう植林がここには現れない。ナツハゼ、ミツバツツジ、モチツツジ、ネジキ、ヒサカキ、サカキ、シキミなどの灌木が多く、コナラやリョウブも細くて小さい。山をつくる流紋岩質の凝灰岩は、やせた土壌しかつくれず、木が大きく育たないのである。やせ地によく見るネズミサシも生えている。
山頂手前のピークに立つと、七種槍の山頂が目の前に高くそびえて迫ってきた。山頂の下も急な崖が大きく露出している。その上のやせ尾根を渡り抜け、最後の急坂を上り詰めると七種槍の山頂に達した。
山頂は、三角点を中心に雑木が小さく丸く伐られている。山頂プレートと、いくつかの小さな登頂札が掛かる静かな山頂であった。展望はここまでの尾根歩きで十分に楽しめる。近隣の山の頂が展望のために伐り開かれ、あるいは標識や案内板などでにぎやかになってきているなかで、ここはいつまでもこんなひっそりとした山頂であって欲しいと願う。
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七種槍山頂へ |
山頂からは、七種山への縦走尾根をそのまま北西へ進んだ。急坂を、木々につかまりながら下りていくと傾斜はしだいに緩やかになった。ときどき落ち葉の中から、見慣れないキノコが顔を出し、私たちの足を止めた。純白で、丸い傘の上に尖ったイボイボを多数つけたシロオニタケが異彩を放っていた。
430mピークを越えて下っていくと、この日初めてスギ・ヒノキの植林の中に入った。七種山との縦走コースの最低コルを少し過ぎたところに、小滝林道に下りる分岐があった。林道への道は、この前の台風で何ヶ所か崩れていた。砂防堤に下りる所で、花崗閃緑斑岩を見つけたものだから、それを調べたりサンプリングをしたりしていると、3人との間が開いてしまった。林道で、先に行った3人へのおみやげにと黄鉄鉱を採って、青少年野外センターに帰った。
「なかなか、きつい山やったなぁ。おもしろかったけど。」
「ここへ生徒連れてくるのは、ライオンが子を谷に落とすようなもんやなぁ。」
「また、這い上がってきたらええけど……」
「途中で動けなくなる生徒もでてきそうや」
……ということでみんなの意見が一致し、秋の校外学習は別の山を考えようということになったのです。安全が何よりも大切なことですが、そればかりを優先してしまう私たちには勇気がなくなっているのかもしれません。
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きのこ1 |
シロオニタケ(若い菌) |
シロオニタケ(老菌) |
山行日:2004年9月20日