七  種  山     (683m)   福崎町  25000図=「前之庄」・「寺前」
寺跡、滝群、奇岩、他を圧する七種の滝……

 昨夜からの雨が、今朝上がった。七種の滝を見るには、絶好の条件だ。林さんと太田さんと私の三人で出かけた。この三人、これまでは一緒に海で竿を持っていたのだが、今回は訳あって山に向かった。
 金剛城寺の跡をとどめる山門や石垣、雌滝・夫婦滝など次々と現れる滝、「弁慶ののこぎり岩」と名のついた奇岩……見どころいっぱいのコースである。ツグミの鳴き声、フユイチゴの赤く甘酸っぱい実。太田さんに鳥の声や植物の名を教えてもらいながら、道草いっぱいの山を楽しみながら登る。
 八龍滝を越えて、急斜面を登り、ふと見上げると木立の向こうにはじめて七種の滝がその雄姿を現した。落差72m、三段に懸かるこの滝は他を圧倒する迫力である。昨夜の雨にもかかわらず、水の量は意外に少ない。空に浮かぶ狭い落ち口から流れ下る水は、途中の段で幅を広げ、水が幾筋にも分かれて流れ落ちている。この滝は、観音滝とも呼ばれているが、七種神社に貼ってある写真を見て納得した。水量がもっと豊かなときには、狭い滝口から落ちた水の流れが黒い岩盤をバックに白く盛り上がり、その姿が巨大な観音に見えるのだ。
 神社の裏からほとんどまっすぐに急な坂を上り、頂上に達した。頂上は、木々に囲まれて眺望は開けないが、頂上の手前に東に大きく開けた岩盤上の地点がある。昨年の夏の午後、渇きながら歩いた七種槍への岩尾根が懐かしく見える。下を眺めると、ヒノキの濃い緑、スギの褐色がかった緑、枝を斜めに上げたモミ、それらの中に葉を落とした広葉樹の幹や枝……山の冬景色である。頂上のすぐ北東下に「つなぎ岩」がある。高さ17mの巨岩が50cmほどのすきまでたてにすっぽりと割れ、今にも離れて崩れ落ちそうである。三人がこわごわと順番に、北側の岩に移動する。
 帰りは、山の北東斜面を林道のある小滝沢めざして下る。急できつい丸太階段がどこまでもまっすぐに続いている。40代も半ばになれば、膝が痛いや、腰が痛いや、上りの方がまだましだったやら、そんなことを口々にして山を降りていった。
 
山行日:2000年1月10日
七種の滝を見上げる
虹 滝
フユイチゴ
山 歩 き の 記 録
ルート 行き:小滝林道分岐〜旧金剛城寺山門〜「雌滝」〜「夫婦滝」〜「弁慶ののこぎり岩」〜石鳥居〜太鼓橋〜「虹滝」〜「八龍滝」〜「七種の滝」〜七種神社〜山頂・「つなぎ岩」
帰り:山頂・「つなぎ岩」〜「笠岩」〜620m+ピーク〜小滝林道に降りる〜小滝林道を通って最初の分岐へ
 小滝林道との分岐に車を止め、ここから歩き出す。旧金剛城寺山門までは舗装路が続く。七種川に沿ってさらに歩くと、「雌滝」(道からは見えない。道標にしたがって踏み跡をたどると滝の下に出る。)、さらに二筋に分かれて水が流れ落ちる「夫婦滝」が現れる。やがて、本堂跡と思われる二段の石垣が左手に現れ、道の右には苔むした「弁慶ののこぎり岩」が座っている。まるで岩をのこぎりでひいたように、幅5cmほどのすき間が直線的に入っている。どのような伝説が残っているのだろうか。

太鼓橋と虹滝
 さらに進むと、石鳥居と太鼓橋、その向こうに「虹滝」の見える地点に出る。ちょっとした広場になっていてベンチに座り、ひと休みする。ここから左手に、滝見台、隠れ滝を通り七種の滝の上に出る遊歩道が通じている。
 太鼓橋の上を渡ると、俄然急な坂道となる。「虹滝」の下の岩盤は、水に濡れていて滑りやすい。幾筋にも分かれて流れ落ちる「八龍滝」の横を通り、前を見上げると巨大な「七種の滝」が姿を現す。滝壺には、木々をなぎ倒して大きな岩石が崩れ落ちていた。最近崩れたようで、滝の黒く光る岩盤の上の方、崩れ落ちたと思われる部分が緑がかった灰色に見える。
 右手の七種神社からは、すぐ目の前に滝のほぼ全貌が見える。滝に懸かる沢が小さいので、雨の後でも水量は少ない。一度、大雨を受けての轟音を聞きながら、観音の姿を見たいと思う。ここで昼食。

何の実でしょう?
 七種神社の裏から、頂上をめざす。岩の多く露出した急な道をひたすら登る。東に眺望の開けた岩盤の上を過ぎると、ようやく頂上にたどり着いた。七種神社からは45分であった。
 つなぎ岩を見たあと、東南東に続く尾根を大小の岩を乗り越え、あるいは横を巻きながら620m+のピークまで歩く。途中に「笠岩」がある。少し戻ると、山の北東斜面を小滝沢まで降りる丸太階段の上に出る。ここには、「青少年野外活動センターまで3.5km」の標柱が立っている。ここから丸太階段の急な坂をほぼまっすぐに下っていく。標高にして250m、きつい下りである。谷に降りると、最初は小径であるがすぐ車の通れる小滝林道(地形図 破線路)に出る。ここまでの山歩きを思い出しながら、緩くなった坂を下っていくと、始めの分岐に戻る。
■山頂の岩石■ 流紋岩質溶結凝灰岩 (白亜紀 生野層群下部累層)

 白亜紀から古第三紀にかけて西日本一帯には激しい火山活動があったが、その時の地層が兵庫県の中央部に広く分布している。これらの地層は、兵庫県の南東部では広嶺層群および有馬層群、南西部では相生層群と呼ばれているが、七種山を含む兵庫県の中央部では生野層群と呼ばれている。
 これらの地層は、いずれも大規模な火砕流によって形成された流紋岩質の溶結凝灰岩を主体とし、その間に凝灰角礫岩などの火山砕屑岩や淡水域で形成された堆積岩をはさんでいる。また、火山から噴き出した溶岩が固まった流紋岩や安山岩も所々にはさまれている。
つなぎ岩
 七種山は生野層群の中でも下部累層に属する流紋岩質の溶結凝灰岩からなっている。(案内板に流紋岩でできているとあるが、それはまちがいである。露頭や沢の転石を調べてみたが、ほとんどが凝灰岩であった。)尾根上には多くの岩石が露出しているが、全体的に風化が進んでいて新鮮なものは少ない。
 この凝灰岩には、白く変質した長石と少量の石英が結晶片として含まれている。また、レンズ状に伸ばされた軽石も数カ所で観察された。基質は褐色であることが多い。また、大小の岩片も多く含まれている。岩片の種類は、同質の赤や黒のガラス質の流紋岩であることが多いようである。そのほか、黒色の頁岩も含まれる。
 帰りに下った七種山の北東斜面には、白っぽいアプライト状の岩石が分布している。(今回、あまり観察できなかった。「兵庫県地質図(1996)」には、播磨花こう岩(黒雲母花こう岩)とされている。)これは、周囲の凝灰岩中に貫入した岩体とされている。凝灰岩の熱変成は、今回分からなかったが、小滝林道で黄鉄鉱(最大4mm)を多く含む部分があった。3人が我を忘れてハンマーを振り、この黄鉄鉱を採集した。

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