長峰山(687.8m)・新穂高(648m)・摩耶山(702m)  神戸市 25000図=「神戸首都」


六甲の新緑、長峰山から新穂高へ

登路より望む新穂高

 六甲駅で阪急電車を降りると、ビルの上に長峰山が見えた。橋を渡ったところで大きな通りを右に折れ、階段状に流れる六甲川の水を見ながら歩く。
 六甲川を離れて市街地の急な坂を登ると、山すその登山口にたどり着いた。

 登山口の草むらに小さな花を付けているはトキワハゼ。オオイタドリの茎をかむと、酸っぱくてなつかしい味がした。

長峰山を六甲川篠原本町橋より望む

 山は新緑にあふれていた。アベマキやコナラの幼い葉がみずみずしい。モチツツジはまだ、ピンクの花を残している。近くでツツドリが鳴いていた。
 砂防堤を越えると、それまで谷沿いだった道は斜面をトラバースして尾根に上った。急な坂に、クスノキの芳香が漂った。マテバシイの大きな木が多くなり、林床にササが現れた。コマユミが黄緑色の小さな花を付けていた。
 
 標高600mあたりまで登ると、尾根が広がり高原状となった。登山道の岩の間に、シハイスミレが咲いていた。
 
シハイスミレ

 傾斜のゆるんだ尾根を西へ進んだ。登山道には、アカマツやソヨゴの葉を透かして光が降り注いでいた。
 小さなピークを2つ越えると、長峰山の山頂「天狗塚」に達した。

長峰山へ

 山頂には、広さ6畳ほどの岩盤がゆるく傾いて広がっていた。花崗岩の冷却節理が岩を縦にいくつにも割って、溝をつくっている。溝の広くなったところに、三角点が埋められていた。

 好天の日の六甲の山頂は、どこも明るく感じる。
 摩耶山のドライブウェイを、バスがゆっくりと走っている。六甲主稜線の記念碑台や凌雲台には、緑の中にホテルや観光施設が点在していた。
 南には、神戸の市街地が細長く広がり、大阪湾には数隻の船が浮かんでいた。西の谷から風が吹き上げて、山頂のウラジロノキの葉を揺らせた。

長峰山山頂

 山頂から緑のトンネルを急角度で下った。山頂西のコルは、ヤブツバキの純林。落ちたツバキの花が、登山道を赤く染めていた。次のピークを越え、分岐を左に進んだ。上り下りを何度か繰り返しながら進むと、杣谷峠に達した。
 峠の脇を通るドライブウェイを横断し、穂高湖へ下った。穂高湖を前景に新穂高を撮ろうと湖を一周してみたが、よい展望地がなかった。
 それでも湖畔の道は吹く風も心地よく、ムラサキケマンやムラサキサギゴケ、カキドオシやタチツボスミレなど、春咲く花が目を楽しませてくれた。

穂高湖

 ドライブウェイに戻る手前から徳川道に入った。道が谷を下り始める手前に、新穂高の登山口を示す小さな標識が掛かっていた。
 クマザサの下にかすかな踏み跡があった。リョウブやコナラの新緑をくぐり、クマザサを分けて進んだ。

新穂高への径

 木々の間にようやく見えた新穂高は、新緑に柔らかく包まれていた。
 新穂高を見上げた岩の下には、シロバナウンゼンツツジとガマズミの白い花が風に揺れていた。

新穂高 シロバナウンゼンツツジ

 標高590mのコルから、クマザサに胸まで埋まって踏み跡を登ると新穂高の山頂に達した。雑木に囲まれたこの狭い山頂に、かまぼこ板の山名プレートが一つ掛けられていた。
 山頂に立っていると、思いがけなく話し声が近づいてきた。始めに女性が現れ、「やあ、人がいた!」と明るい声を出した。男女3人のパーティだった。

 山頂から岩場の続く急な坂を下り、コルから登り返すと大きな岩の積み重なった609mピークに出た。岩の上に立つと、遠く菊水山の右に明石海峡大橋が見えた。

609mピーク

 609mピークから、送電線鉄塔を目印に急なザレ場を下った。ニガイチゴが咲いていた。徳川道に下りて南に進んだところが桜谷出合。
 ここから、桜谷道を進んだ。沢沿いのガレ石の転がる長い上り道。ここを娘の手を引いて歩いたのは、もう10年以上も前のこと。布引の滝を見て生田川をさかのぼり、親子とも疲れた足でここを歩いた。その娘も今は大学生になって家を離れた。なつかしい思い出・・・。
 摩耶自然観察園を抜けると、ようやくドライブウェイに出た。ここから摩耶山山頂はすぐそこ。

 摩耶山山頂の三角点(698.6m)は、天狗岩大神の裏のうっそうとした木々の下に埋まっていた。
 山頂を下って掬星台へ。午後4時が近かった。GWの一日を楽しんだ家族連れやカップルにまぎれて、ロープウェイとケーブルカーを乗り継いで街へと下った。

まやロープウェイ
山行日:2012年5月5日

阪急六甲駅〜長峰山登山口〜長峰山山頂「天狗塚」(687.8m)〜杣谷峠〜穂高湖〜徳川道新穂高登山口〜新穂高山頂(648m)〜609mピーク〜桜谷出合=(桜谷道)=摩耶山山頂(702m)〜ロープウェイ駅
 六甲駅から長峰山までは、一般的な登山道。GWでも静かな登山を楽しむことができた。
 穂高湖の周りには、遊歩道が整備されている。
 徳川道の新穂高登山口は分かりにくい。標高590m地点に小さな木の標識が掛かっている。
 新穂高山頂から、西の609mピークに寄って、南西に下る。桜谷出合から桜谷道を上って摩耶山にたどり着いた。

山頂の岩石 後期白亜紀 六甲花崗岩 黒雲母花崗岩
六甲花崗岩(長峰山山頂付近)
 六甲山地の大部分は花崗岩でできている。六甲山地の花崗岩は、「六甲花崗岩」と「布引花崗閃緑岩」に分けられるが、長峰山・新穂高・摩耶山に分布しているのは、「六甲花崗岩」である。
 今回コースで観察できた花崗岩は、中粒〜粗粒で、主に石英(灰色透明)、斜長石(白)、カリ長石(ピンク)、黒雲母(黒)から成っている。また、少量の普通角閃石を認めることができるものもあった。
 六甲花崗岩がピンクっぽく見えるのは、ピンク色のカリ長石を含んでいるためである。

 また、長峰山までの登山道でひん岩の岩脈が見られた。暗灰色、珪質で、一部に流理構造が観察された。

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