宮 山(173.6m)    相生市       25000図=「相生」


流紋岩の山で水晶探し

宮山の水晶(左上の大きな水晶の長さ 8.2mm)

 机の引き出しを整理していると、色の褪せた古い更紙が出てきた。それは、授業であまった理科のプリントで、その裏にメモや地図を書いたものだった。
 もう10年ほども前、一人の男性がいくつかの石を持って私を訪ねてきた。それは、相生市と赤穂市の間の高取峠あたりの石で、その中に四角く割れる砂岩が入っていたのを覚えている。
 そのメモはそのときのもので、相生の山をよく歩かれているその人に教えてもらった山の情報だった。

 その中に、箇条書きで、
   ・宮山
   ・八幡神社駐車、境内左へ
   ・頂上の下に水晶
   ・流紋岩
 と書き取ったところがあった。

 水晶の採れる山、相生市の宮山。行こう、行こうと思っていたが、いつの間にか忘れてしまっていた。

那波ポンプ場あたりから見る宮山

 那波八幡神社の境内に車を止め、メモにあったように左手の石段を登った。石段の上には大きな忠魂碑が建っていて、そこから宮山への道が続いていた。
 竹やぶの上の墓を抜けると、尾根の山道となった。あたりは、常緑樹と落葉樹が交じった林。
 ネズミモチが黒紫に熟した実をつけている。カナメモチの実は、赤いサンゴや線香花火を連想させた。アベマキは、もうすっかり葉を落として、その下の岩の間にたっぷりと落葉を積んでいた。
 やがて、背の低いウバメガシとアカマツの林となり、体に陽射しを浴びるようになった。

 標高100mの手前で、大きな岩盤の下に出た。尾根を広くおおう一枚岩で、ゆるい角度で上へと続いている。
 室津や天下台山から続く流紋岩で、酸化鉄が浮き出して表面が赤茶色になっている。流理が斜めに大きく傾むいていて、表面からその方向に割れやすいため波打っているように見える。
 球顆が飛び出したり抜け落ちたりして、凹凸に富んだ岩の上は歩きやすかった。

流紋岩の岩盤 流理にそって割れ目が発達
(ハンマーを置いている面が流理面)

 標高差で50mほど、ずっとこの岩盤が続いた。この岩盤のいちばん上近くに、下から見上げると2つの高まりがあった。子供たちが「ボイン山」と呼んでいたところがあったそうだが、これだと思った。

岩盤の上部(ボイン山?)

 岩の上に出ると、そこから道は平らになった。ウバメガシとソヨゴの林を抜けると、再び流紋岩の岩盤が表れた。もう山頂が近い。やや急な岩の斜面を登っていった。
 尾根の西側に木々の途切れたところがあって、そこから山陽自動車道が見下ろせた。尾根の下が浅い谷になっていて、岩盤が露出している。これが、「水晶谷」かもしれない。
 その谷に下って、水晶を探すことにした。 

水晶の谷

 尾根から15mぐらい下がったところで、岩溝にたまった土砂をよけると、その下に幅20cmほどの白い粘土脈が表れた。
 この粘土をハンマーでかき出して光を当てると、中でキラキラと光るものがある。小さな水晶の結晶だった。
 大きな水晶は見つけることができなかったが、粘土脈のかけらをいくつか持って帰ることにした。

白い粘土脈 採集した粘土脈

 尾根に戻り、岩を登るとすくに宮山の山頂に達した。
 ウバメガシに囲まれた山頂には、三等三角点の金属標が埋められていた。日の丸が掲げられていたというポールは、土台のコンクリートから折れて倒れていた。

 山頂から南東側は岩盤におおわれていて、その上に立つと東から南がよく見渡せた。
 正面に、山頂の丸い天下台山。その右奥に、野瀬奥山、雄鷹台山、五六見山と続く山稜が相生湾の入り口で海に没している。
 そこから手前に向かって細長く伸びる相生湾は、空の色を映して青くしずんでいた。相生湾の外側には、西島が白くかすんだ島影となって浮かんでいた。

宮山山頂(中央に天下台山) 宮山山頂から見る相生湾

 山頂から、北に続く尾根を下った。150mピークを越して下っていくと、標高110m地点に分岐があった。ここで、大きく右に曲がって南に向かった。
 下ってきた尾根の下をトラバースするこの道をたどると、東の標高120mピークに向かう分岐があった。
「相生駅展望所」と示された標識に従って、そのピークに立ち寄った。
 広いピークの一ヵ所に岩場があって、そこから眼下に相生駅が見下ろせた。12月も半ばを過ぎたというのに、風もなくよく晴れ渡ったのどかな一日で、下を走る電車や車も、走り抜ける新幹線さえも、のんびりと見えた。

相生駅展望所からの風景

 もとの分岐に戻り、那波小学校への谷道を下った。この道は、もう消えかかっていた。

 翌日、持って帰った粘土を皿に移して水を加え、押し洗いをした。すると、その中から小さな水晶がたくさん出てきた。
 いちばん大きいもので、長さ11.4mm。大きな結晶は短柱状だが、長さ5mmほどの長柱状の結晶が多かった。
 錐面が片方だけの結晶が多く、結晶面の一部が欠けているものもあったが、どれも無色ですっきりと透き通った水晶だった。

粘土脈から取り出した水晶
 
山行日:2016年12月18日


那波八幡神社〜水晶谷〜宮山(173.6m)〜相生駅展望所(110m)〜那波八幡神社
 那波八幡神社の境内に車を止めさせてもらった。そこから、宮山山頂までの道はよく整備されている。尾根の大きな岩盤も凹凸があって歩きやすい。
 宮山を北に下り、相生駅展望所に立ち寄ったあと、那波小学校に向かって谷を下ったが、この道は荒れていた。

山頂の岩石 後期白亜紀  天下台山流紋岩  流紋岩
 宮山には、後期白亜紀の天下台山流紋岩が分布している。

流紋岩の露頭(標高60m地点)
(流理に沿って割れ目が発達している)
 この流紋岩は、登山道のいたるところに露頭があるが、南尾根の大きな岩盤で観察しやすかった。
 流理構造による縞模様が明瞭で、流理に沿って割れ目が発達している。
 また、数cm〜20cm程度の球顆を多く含んでいる。
 岩石は、赤色と白色がまだらになっていて、石英と長石(斜長石・カリ長石)の斑晶を含んでいた。

 天下台流紋岩の西に広く分布する赤穂層は、後期白亜紀の大規模な火砕流の噴出でできたカルデラを埋めて堆積した。
 天下台流紋岩は、その分布や地質構造などからこのカルデラ陥没の環状割れ目に沿って貫入したものと考えられる。
 

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