三尾山(586m)・黒頭峰(620.6m)・夏栗山(600m)
篠山市・丹波市    25000図=「宮田」


佐仲ダムから二つの峠を通って三つの峰へ

黄砂にかすむ三尾山

 秋に黄砂が観測されるのは5年ぶりだという。丹波の山々も、一日中この黄砂にかすんでいた。

1.三尾山へ

 佐仲ダムの左岸に、「分水界 雲海の径 鏡峠入口」の標識が立っていた。ダム湖を背にして、ここから鏡峠をめざした。
 空は薄雲と黄砂にかすみ、日の光りは弱い。露頭のチャートをハンマーでたたくと、暗い林内に火花が散った。
 地形図破線路に沿って、かすかな道がついていた。沢の右岸のスギ林の中を歩き、その沢から分かれた支沢に沿って北に進んだ。
 あたりが雑木林に変り、足元にはマツカゼソウが揺れていた。やがて沢の水は枯れ、谷に積もった落ち葉を踏んで歩くと鏡峠に達した。

佐仲ダム湖畔の鏡峠入口

 鏡峠から尾根を西へ進んだ。木々の葉が、いろいろな色に染まっている。クロモジの黄色が鮮やかだった。コシアブラは、もうすかっり葉を落としていた。
 巻き道と尾根道の分岐があった。尾根に上がる方に、「分水界の道」の標識が立っていた。その尾根道は、落ち葉に埋まっていた。ウリハダカエデの落ち葉が辺り一面を赤く染めている。タカノツメは地面を黄色く染めていた。

ウリハダカエデの落ち葉 ウリハダカエデの紅葉

  尾根が東西になると、岩場が連続し始めた。尾根の北側は急角度で切れ落ち、その下を舞鶴自動車道が山脚に沿って弧を描いていた。
 三つのピークを連ねた三尾山が、その独特の山容を現した。城跡の平らな本峰、少し傾いた西峰、そして岩のよろいをまとってたくましい東峰。
 切り立つ岩の間には、赤や黄、あるいは緑に彩られた木々が張りついている。しかし、今日はその圧倒的な景観が黄砂に白く煙っていた。
 白いチャートにもたれて、そんな景色をしばらく見ていた。ふと目を下に落とすと、岩の間にヒカゲノツツジが葉を広げていた。

稜線より望む三尾山東峰 夏栗山(右)と黒頭峰(左)

 岩尾根をさらに進んだ。覗岩と名のついた岩に立つと、三尾山がさらに近くなった。
 佐仲峠分岐のあるコブを乗り越え、さらにナツハゼやアセビを手でつかんだり、岩に手を掛けたりしながら急登すると、三尾山本峰に達した。
 周囲を曲輪でぐるりと囲まれただ円形の平地。真ん中に、「三尾城址」の標石が立っている。
 360°の展望。しかし、この日はどこもかすんで色を失っていた。黒頭峰と夏栗山の間に見える白髪岳はほとんど消えかかっている。鋸山の険しい稜線の向こうには、西ヶ嶽や三嶽の山影が薄く浮かんでいた。

 本峰から北へ、曲輪が階段状につくられていた。曲輪の数を数えながら下り、登り返すと西峰に出た。落ち葉の間に、ネズミサシの紫色の実が落ちていた。ここから見る東峰は、鋭角にとがっていた。

 西峰を北へ下り、東峰に向かった。登山路は、割れ落ちたチャートの岩片におおわれていた。どれも風化によって白っぽくなってたが、赤やオレンジや白などなかなかカラフルだった。
 思ったより緩い傾斜のまま東峰に達した。眼下には、竹田川の開いた平地が東西に長く広がっている。向かいの山々はかすんで、墨絵のようにしか見えない。舞鶴自動車道を走る車の音が絶えず聞こえていた。

三尾山本峰山頂 三尾山西峰から東峰を望む

2.黒頭峰へ

 東峰で引き返し、本峰を越えて佐仲峠分岐まで戻った。ここから南へ急坂を下り、佐仲峠に向かった。佐仲峠は明るく開け、お地蔵さんが祀られていた。

佐仲峠のお地蔵さん

 ここから南へ、分水嶺の道が続いた。広葉樹の落ち葉にアカマツの葉とマツボックリの混じったふかふかの道だった。ホオノキの大きな葉を踏むとバリバリと音をたてた。
 平坦だった道は、夏栗山分岐を過ぎるとようやく上り始めた。落ち葉の積もった細い道が続いた。
 標高560mあたりに、分水嶺が鋭角に曲がっていることを示す標識があった。地形図を見ても、そこがどこにあたるのか分からなかった。黒頭峰の山頂付近は、分水嶺が複雑なのかもしれない。
 最後の標高差50m、胸突きの急坂を登り詰めると黒頭峰の山頂に達した。三角点の標石と山頂を示す標識だけの静かな山頂は、コナラの葉で埋まっていた。

黒峰頭山頂

3.夏栗山へ

 黒頭峰を後にして、夏栗山へ向かった。ヒノキの植林帯に入ると道が消えた。地形図とときどき現れる標識を頼りに下った。
 自然林に入ると、再び道が現れた。道には、赤茶色のチャートがずっと落ちていた。新鮮で形のよいサンプルを採りたかったが、思うように割れなかった。
 夏栗山の山頂が近づくと、ヒノキ林に変った。イノシシに掘り起されてフワフワになった道を登り詰めると、夏栗山の山頂に達した。
 山頂の展望台は、南に開けていた。黄砂はさらに濃くなり、陽はぼんやりと白い空に浮かんでいた。

 「夏栗山観音菩薩」を拝み、そこから東に続く踏跡を下った。イロハカエデが、鮮やかに紅葉していた。道は、しだいにか細くなってきたが、それでも南東尾根から北へトラバースして、北東尾根へ乗ることができた。シカが目の前を横切って消えたあと、森の中でビョーと鳴いた。
 真っ赤に色づいたドウダンツツジで方向を変えたが、踏跡はもう途絶えた。最後はヤブをこいで、佐仲ダムの右岸に下りた。

夏栗山山頂から見る黄砂の空 ドウダンツツジの紅葉

山行日:2010年11月13日

佐仲ダム左岸〜鏡峠〜三尾山本峰〜西峰〜東峰(引き返して)〜三尾山本峰〜佐仲峠分岐〜佐仲峠〜黒頭峰〜夏栗山〜佐仲ダム右岸
 佐仲ダムの左岸に、鏡峠を越えて中山に抜ける古い峠道の入口がある。鏡峠まで道は、植林帯の中に少し分かりにくいところがある。鏡峠から三尾山、黒頭峰、夏栗山を巡るコースには登山路がある。夏栗山から佐仲ダムに下りるには、最後にヤブコギが必要であった。

山頂の岩石 三尾山 丹波帯U型地層群 三尾コンプレックス 成層チャート
        黒頭峰・夏栗山 丹波帯U型地層群 佐仲コンプレックス 成層チャート
 三尾山に分布しているのは、丹波帯三尾コンプレックスのチャートである。このチャート層は、三嶽を主峰とする多紀アルプスから東西に長く続いている。チャートは硬く風化に強いため山頂部を構成することがあるが、ここではチャートの分布と山脈の主稜線が見事に一致している。三尾山本峰で見られるのは、白色や淡灰色がまだらに混ざった赤色の成層チャートである。

 黒頭峰・夏栗山に分布しているのは、佐仲コンプレックスのチャートである。佐仲コンプレックスは、三尾コンプレックスに先立って付加した地質体である(構造上は上位)。夏栗山では、赤褐色の成層チャートが見られる。

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