またに山(927.9m)  神河町・多可町  25000図=「生野」「丹波和田」「大名草」


シャクナゲ咲く尾根の岩場
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シャクナゲの花

 大歳神社の前から歩き始めた。今回は、市原峠まで林道水谷線を歩く。
 河床の岩の上や護岸のコンクリートにヒメレンゲが咲き、水のまわりを彩っている。岩の間にはムラサキサギゴケが咲いていた。
 左の急斜面に広がるロックフォールを見ながら道を進む。橋の下に、二羽のカルガモがいた。

 ヒメレンゲ  カルガモ

 道ばたの少し日当たりの良いところに咲いているのは、ヤマブキソウとミヤマキマケン。
 水谷西ルート分岐や市原坂分岐を通り過ごして、ひたすら舗装された林道を登った。

ミヤマキケマン

 ニガイチゴの白い花が咲いていた。
 谷を流れる沢を右岸へと渡った。沢には大きな岩が積み重なっている。水は岩の間を小さな滝をつくって勢いよく流れ落ちていた。

 水谷の景観

 道は幾度か大きく曲がり、小さな谷を渡って、またもとの水谷に沿って上っていた。道の先に、千ヶ峰の山頂が大きく見えるところがあった。
 道が曲がったところに東屋が建っていた。東屋のうしろの大師堂には、赤い帽子とレースのついた前掛けの石のお大師さんが祀られている。線刻に近い素朴なお顔のお大師さんには、この日新しい花が供えられていた。
 

 大師堂

 そこから少し進むと市原峠に達した。広い駐車場の上の休憩所でお昼にした。
 露頭が現れるたびに、地質を調べて記録してきた。しかし、一つひとつ明らかになっていくのとはほど遠い。岩石は、少しずつ複雑に変化してくるし、風化や変質によってもとの性質が分かりにくくなっている。もとの鉱物が残されていない。色は、赤褐色から暗灰色、青灰色とさまざま。
 頭の中は混乱するばかり。しかたがないので、こまめに標本を採って、あとから比較するしかない。リュックの中がどんどん重くなる・・・。
 休憩所の中にコナラが枝を伸ばしていた。枝先の若葉はやわらかい毛におおわれて銀色に光っている。遠くでツツドリが鳴いていた。

 市原峠から、林道千ヶ峰三国岳線を進み、林道が尾根を渡っているところで尾根の山道に入った。
 尾根には明瞭な道がついていた。やっぱり山道がいい。
 道は、6月に行われる「TAMBA100 アドベンチャートレイル2023」のコースになっていて、ピンクのテープや看板がずっと連続していた。
 道は、ときどきアセビの木によってふさがれていた。「ヤブ漕ぎ区間」というアドベンチャートレイルの看板で身構えたが、たったの3mぐらいアセビを分けるとすぐに道が開けたりした。
 落ち葉の道に、クリのイガ、アカマツのマツかさ、コバノミツバツツジの赤紫の花が落ちていた。
 


 アセビの色とりどりの葉 木々の向こうに見えるまたに山 

 何度かアップダウンをくり返し、少しまた登ると道が平らになった。そこに、またに山の山頂があった。
 三角点の周りが少しだけ開けていた。大きくなった青空から日差しが降り注ぐ。地面にはヒカゲノカズラが広がり、ウリハダカエデが黄緑色の花序を垂らしていた。

またに山山頂 ウリハダカエデの雄花序 

 またに山山頂を越えて、尾根をそのまま北に進んだ。
 地質では、まだまだ苦戦が続いた。流紋岩?デイサイト?それとも溶結凝灰岩?・・・溶岩?岩脈?・・・。変質が著しくて、なかなかその場で決めることができない。ここまで時間をずいぶん使ってしまったので、じっくりと観察もできない。いきなり礫岩が出てきて驚いた。
 772mピークは岩場だった。その上がぽっとピンクに染まっている。近づいてみるとシャクナゲの花がそこに咲いていた。枝先にかたまって咲くおおぶりの花は、つややかに陽の光をはね返していた。
 


 シャクナゲの花

 その岩場を下ると、送電線の鉄塔の下へ。今日初めての眺望が広がった。前方に、西雄岳がたくましい姿でそびえている。

 鉄塔から西雄岳を望む

 北西に、朝来市との境界尾根が波打っている。東には、鳴尾山と竜ヶ岳が連なっていた。
 送電線巡視路を期待したが、見つけることができなかった。送電線に沿うように急斜面を下り谷へ下りる。谷底は険しくて歩けそうにないので、谷に沿って植林地を下った。斜面が急になると、谷を渡って反対側を下った。

 朝来市との境界尾根(左が但陽山)  鳴尾山(左)と竜ヶ岳(右)

 もう地質を見る余裕はなかった。ようやく緩くなったところに細い橋が架かっていた。橋を渡って道を進むと、朝自転車をデポしたところに達した。

山行日:2023年5月2日

スタート(大歳神社前)=林道水谷線=市原峠~またに山~送電線鉄塔~ゴール map
 ゴール地点に自転車を置いて、大歳神社前へ移動。そこから歩き始める。林道水谷線を歩いて市原峠へ。市原峠から林道千ヶ峰三国岳線を少し進んで、尾根に入りまたに山へ。
 またに山から尾根を北へ進み、送電線鉄塔から谷を下った。一部に踏み跡があったがすぐに消えた。

山頂の岩石 白亜紀後期 生野層 デイサイト質火砕岩
 またに山山頂付近の尾根には露頭がない。山頂北の作業道で、岩石を観察することができた。
 変質によって青灰色となったデイサイト質火砕岩である。粘土鉱物に変質した長石の斑晶がふくまれている。
 その少し北で見られた岩石は、同じく青灰色であるが石英の結晶をふくんでいた。

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