京見山(216.1m) 姫路市・太子町 25000図=「網干」「姫路南」
眼下にかすむ姫路の市街地
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トンガリ山山頂より京見山を望む |
京見山は、夢前川と大津茂川に東西を限られた地域で播磨平野に飛び出している。ふもとの各集落からは何本もの登山路が通じ、市街地の山として親しまれている。
勝原の春日神社の左脇から、一本の道が山を上っていた。コシダやササは昨日の雨にまだぬれている。雑木林の中は、濃厚な草いきれに満ちていた。
尾根に達したところに、「山手4号古墳 日本最古級」の標識。そちらに行ってみると、3段割石の石塁壁が夏草におおわれながらも方形の石室を保っていた。
コンクリート製の丸太階段を一登りすると、最初のピーク93m峰に。まだわずかしか上っていないのに、ここはもう山の上。眼下に、姫路の市街地が大きく広がった。ネズミサシが砂糖をぬった豆菓子のような実をつけ、足元のコマツナギはピンクの小さな花を咲かせていた。
尾根を進むと、竪穴式や横穴式の古墳跡が次々に現れた。シロオニタケの純白が、暗い山道に異彩を放っていた。張り出したヤマウルシの枝葉を避けながら、緩くアップダウンする尾根道を進んだ。
120mの小さなピークでは、ヒメウラナミジャノメがピョンピョンと飛び跳ねるように飛んだ。
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京見山の自然 |
ウバメガシが多くなってきた。ときどき、思わず足を止めてしまうほどの大きなカクレミノやヤマザクラが立っていた。
128m峰を超えたコルあたりはしばらく平坦な道が続き、ふもとの集落につながる道が左右にいくつも分かれている。そこから道はしだいに急になって、尾根には火山岩塊や火山礫がぼこぼこと表面に飛び出した大きな岩盤が露出していた。
標識の乱立した192m峰を過ぎ、暗くて湿った林の中の道を行くと京見山の山頂に達した。
山頂は、三角点の白い標石を中心にとして岩が庭園風に配され、ベンチ、パノラマ写真、登山記録ノートと賑やかな憩いの場となっていた。
眺望は海側に大きく開けているが、この日は空一面を低い雲がおおっていた。その雲の底から雲粒がそのまま垂れ下がり、姫路の市街地を白くかすませていた。
緩くS字を描いて流れる夢前川は、水面をにぶく光らせて飾磨港に向かっている。その先の播磨灘はもう真っ白で、島影も何も見えず、空との区別もつかなかった。
ベンチで休んでいると、キアゲハやツマグロヒョウモンが木々の上をもつれるように舞った。その中を、モンキアゲハが悠々と飛んだ。
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京見山山頂 |
京見山山頂から見る姫路市街地 |
山頂を東へ下り、小さなピークを越えると泣き坂峠。( )
一登りして台地状の186mピークを越えると、石碑がひとつ立っていた。表面が風化してはがれ落ち、何が刻んであったのかはもう分からない。
その下に、「四つ塚古墳」の標識。登山路から離れてササを分けると、地表にぽっかりと穴を開けた1号墳。石室は深く、側壁の石塁はオーバーハングして積まれていた。2号墳は、これとは対照的に天井が低くて横に長い石室。
登山路に戻り、小さなコルを越えてノギランの咲く坂道を上ると、見晴台(185mピーク)。ここから振り返る京見山は大きくてどっしりしていた。南東には、平野部から険しく飛び出したトンガリ山の姿がよく見えた。
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ノギラン |
見晴台よりトンガリ山を望む |
見晴台から北西に進路を変え、唐突に現れたヒノキの植林帯を抜けると大きなアンテナ塔の立つ白毛山に達した。
白毛山から南に進み、大きな丸い岩の乗る174mピークを超えると、山頂部が小高いドーム型のトンガリ山に達した。
トンガリ山の山頂は岩を乗せ、姫路の市街地を見下ろしていた。あたりは依然としてかすんでいたが、それでも少しは明るくなってきた。
夢前川にいくつもの橋が架かっているのが見える。その中のひとつを、長い貨車が水面にその姿を映しながらゆっくりと走り抜けていった。
海からの風が海岸部の工業地帯を越え、市街地やふもとの田んぼの上を抜け、緑の山の斜面をここまで駆け上がってきた。
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トンガリ山より見下ろす光景 |
山行日:2007年7月22日