暁 晴 山 A(1077.2m)    神河町          25000図=「長谷」

黒岩の滝から峰山高原へ

峰山高原の風景

 峰山高原に広がる岩塊流の分布を調べているが、水流だけでも複雑で地図に落とすのが難しい。車で高原まで上ると作業も進むのだが、それではおもしろくないので、ついついいろいろなコースで上ってみたくなる。今回は、「黒岩の滝」を見て高原へ上ることにした。

 朝から厚い雲が空をおおっていた。登山口で出発の準備をしていると、雨がポツリポツリと降り出した。
 杉林をゆるく上り、鉄板で作られた橋を渡った。橋の下の流れは、勢いよく音を立てている。流れの傍らには、ドクダミが白い花をつけていた。
 大田池方面との分岐を過ぎて、黒岩谷に沿う道を上る。砂防堤の横を過ぎると、ロックフォール(岩屑斜面)が広がっていた。標高は、560m。最大で2mに及ぶ岩が幾重にも重なって連なっている。岩の表面は、コケで厚くおおわれていた。
 道は、谷の東の急斜面を、斜めに上っていた。すぐに、谷底の流れはずっと下になった。杉の木の間には岩が点在し、急斜面にとどまっている。
 標高600mを過ぎたあたりから、大きさ30cm〜50cmほどの岩に埋めつくされたロックフォールとなった。ここには植林できなかったのか、自然林が広がっていた。
 再び、杉林になった。フタリシズカが、緑色の実をつけていた。斜面をどんどん上り、高度をかせいでいく。高さ10mもある大きな岩が平面で切れ落ちて、屏風のように立っていた。

ロックフォール(標高560m地点) ロックフォール

 道の傾斜が小さくなって、左下の流れが徐々に近づいてきた。ロックフォールが再び現れた。根元から枝分かれした大きなケヤキが立っていた。林内は薄暗く、倒木はコケにおおわれていた。
 標高690mあたりで、道は流れと同じ高さになった。朝の雨は上がり、いつの間にか薄日が射すようになっていた。沢の傍らにはフサザクラの木が立ち、その下にヤマトウバナが小さな花をつけていた。
 流れは変化に富み、小さな滝が連続していた。滝の下の水面には、滝の白い流れが映っていた。
 
 ミソサザイのさえずりが聞こえたので、沢へそっと下りてみた。そこは、浅いゴルジュになっていて、その奥に落差4mほどの滝があった。滝は、二筋に分かれて階段状の岩盤を流れ落ちている。ミソサザイの声は大きいが、その姿はなかなか見えなかった。
 気持ちのよい場所だったので、岩に腰掛けて一休みした。おにぎりを食べていると、ミソサザイが姿を現した。そこに巣を作っているのか、滝の真ん中の岩の間に入っていった。

渓流にかかる滝 滝とオオギバボウシ

 道は、沢の上の斜面を急登していた。再び平坦になったところに分岐があって、そこには「黒岩の滝」の標識が立っていた。分岐を滝へ下った。岩を乗り越えて沢へ降りると、そこは黒岩の滝の真下であった。

 落差20m。文字通り黒い岩肌。飛び跳ねながら流れ落ちる水。
 水は、木の間からもれて差し込んだ光を反射して純白にきらめいている。滝の岩にはオオギバボウシがつき、ヤマアジサイが青紫色の花をつけていた。滝つぼは深く水をたたえ、上に咲くヤマボウシの花を映していた。
 

黒岩の滝

 元の道に戻り、小さな枝沢を越えると、また杉林。林床に咲くコナスビの黄色い花を見ながら上ると、大田池へ続く水路に出た。水路は、コンクリートや石積みにコケが生えてあたりの風景に溶け込んでいた。

 水路を北に進むと、舗装された広い車道に出た。車道を横切り、沢を進んで高原の中へと入っていった。
 枝沢との合流点を過ぎるごとに、流れの水量が減ってきた。沢の右手の斜面に上ってみると、そこには高原の古い散策道があった。美しいミズナラの林の下を、正方形のコンクリート板を連ねた一本の道が真っ直ぐ伸びていた。イカルの鳴き声が聞こえてきた。
 峰山高原ホテルでもらったマップを手にして、高原内を歩いた。ゆるくうねって広がる地面には、落ち葉が降り積もり、その中に岩が点在している。
 いくつの流れがこの中から始まり、並走し、合流し、複雑な水流となって流れている。その流れに沿って、あるいは流れと流れの間に、岩が重なるように連なって岩塊流をつくっている。マップに、水流や岩塊流の位置を色鉛筆で書き込んだが、今日も完成はしなかった。

 ここまで来たのだから、暁晴山に上ることにした。山頂まで広い道が通じているが、その道を歩かず林の中を直登した。傾斜の緩くなったところは湿地になっていて、その周辺ではヒカゲノカズラが地面をおおっていた。湿地を過ぎ、ササや潅木の枝を分けて進むと、山頂直下の道に出た。
 山頂には、無線アンテナを立てて交信している先客が1人。梅雨の湿気で周囲の山々はどこも白くかすんでいた。ホテルの上の夜鷹山さえ、白くぼやけている。
 先ほどまでさまよっていた峰山高原が眼下に広がっている。高原は木々の緑におおわれ、その表面は地形を反映してゆるくうねっていた。

峰山高原のミズナラ林 暁晴山を見上げる

山行日:2008年7月6日
上小田 黒岩の滝登山口〜黒岩の滝〜峰山高原〜暁晴山〜峰山高原駐車場=(自転車)=黒岩の滝登山口
 上小田集落で県道がヘアピンに曲がるところに、黒岩の滝登山口がある。そこから、黒岩谷を流れる沢に沿って登山道が北に伸びていた。黒岩の滝の下り口には標識が立っている。
 黒岩の滝を過ぎ、さらに北へ上ると峰山高原へ至った。高原の中央部は、「リラクシアの森」として整備され、散策路がつけられている。
 峰山高原から暁晴山までは、広い舗装路がついている。今回は、植林地や自然林の中を山頂に向かって直登した。山頂のすぐ下で舗装路に出て、最後はこの道を歩いて山頂に達した。
■山頂の岩石■ 白亜紀後期 峰山層 安山岩質溶結火山礫凝灰岩

 黒岩谷で見られた岩石は、暁晴山山頂と同じ岩石である。暗灰色を呈し、斜長石と普通角閃石の結晶片を含んでいる。溶結していて、硬く緻密な岩石である。

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