金輪山(こんりんやま)(227.7m)   たつの市      25000図=「龍野」


冬の散歩道、梛獅子の丘 金輪山


林田川を隔てて見る金輪山

 たつの市の金輪山(片山)は、梛獅子(なぎじし)の丘として整備され、山頂まで遊歩道がつけられている。

 梛八幡神社の横に登山口があり、ここに案内図が立っている。この案内図にはちょっとした注意が必要で、描かれているのは山頂までの行程の半分ぐらい。一番端の片山テレビ塔は、そこにあるのではなくて、その方向を示しているだけである。

 獣除け柵を開けて山に入った。冬枯れの落葉樹に常緑樹が交じった林。山道は、昨日までの雨でしっとりと湿っていた。
 頭の上にカナメモチやソヨゴの、足元にマンリョウの赤い実が冬の雑木林に彩りを添えていた。
 エナガの群れが木々を忙しく移っていった。メジロが混じっていた。コゲラの鳴き声も聞こえたが、その姿を見つけることはできなかった。
 すぐ尾根に達した。送電線鉄塔の下を抜けて、丸太階段を登っていく。

雑木の中の登山道

 落葉の上に、長さ3cmほどで袋状になったものが落ちていた。それは、ウスタビガの空まゆだった。茶色に染まった地面に、その黄緑色は絹のような光沢を放って鮮やかだった。

ウスタビガのまゆ

 標高133mの小ピークは、のろし台跡。小さく切り開かれた平地で、北への眺望が開けていた。揖保川の流れる新宮の平野を、ぐるりと山並みが取り囲んでいた。
 丸太階段を下り、平らになった道を進む。冬の低い太陽が雑木林に射し込み、幾筋もの光の縞模様をつくった。
 ゆるく下ったコルには、大池・小池への分岐があった。
 コルから急な坂となり、丸太階段を登る。ここを登ったところにも分岐。帰路はここから北東へ下ることにする。
 分岐の先は、再び急な階段道となった。この坂を登り切るとベンチがあって、ご夫婦が二人で休んでいた。
 「いつも、ここで休むんです。」
 金輪山から梛八幡神社への尾根道をいつも往復しているという。今は、その復路の途中だった。
 そこから、アカマツやソヨゴの若木の山道をゆるく登ったり下ったりして進んだ。南へ向かう山道には、陽が正面から射し込んだ。

 210mのピークにもベンチがあった。コナラやネジキの中に、葉をすっかり落としたタカノツメが枝を空に広げていた。
 行く手に、山頂の電波塔が見えた。西に、揖保川を隔てて的場山や亀山が近かった。

葉を落としたタカノツメ 210mピークから見る的場山・亀山

 すこし下ったあと最後のゆるい坂を登っていくと、電波塔が林立する山頂に達した。この山の三角点金属標は、毎日放送中継所の屋上に設置されている。三角点が建物の上にあるのは珍しい。

山頂の電波塔

 山頂の先に小高い草地が広がっていた。金輪山展望台で、ベンチが三方に置かれていた。
 眼下に龍野の町並みが広がっている。揖保川が水面を光らせて流れ、文化ホールの屋根の曲線の向こうに回り込んでいた。

金輪山展望台 眼下に流れる揖保川

 龍野の平野を低い山並みが囲んでいた。遠くの山ほど山影が淡くなり、その稜線を小刻みに起伏させていた。

南東の山並み
(前は松尾山から笹山、後は京見山)

 北西から吹く風が冷たい。青い空に、輪郭のくずれた積雲が流れていく。視線を下げていくと空はだんだんかすんで白くなり、海との区別はつかなくなっていた。

 山頂をあとにして、2つ目の分岐まで行きと同じ道をたどり、そこから東回りコースで下山した。
 コナラやクリやアベマキの落葉の道を下り、大池と小池の間を抜けた。池に浮かんだ丸太の上で、一羽のキセキレイが遊んでいた。

小池

山行日:2017年1月10日

行き:梛八幡神社登山口〜のろし台跡(133m)〜南展望ベンチ(160m)〜金輪山山頂(片山テレビ塔 227.7m)
帰り:金輪山山頂〜南展望ベンチ〜大池・小池〜梛八幡神社登山口
 金輪山は、梛獅子の丘として整備されている。登山口は、梛八幡神社の横にあって、ここに案内板が立っている。コースは、「眺望の小路」、「谷すじの小路」、「ドングリの小路」がある。
 また、西の島田からのコースも整備されている。

山頂の岩石 後期白亜紀 的場山層  溶結火山礫凝灰岩
 金輪山には、後期白亜紀の的場山層が分布している。
 この地層は、火砕流による堆積物から成っていて、そのときの火山活動で生じたカルデラを埋めたものと考えられる。
 山頂のテレビ中継所付近で見られるのは、黄灰色の溶結火山礫凝灰岩である。強く溶結していて、基質は珪質で硬い。レンズ状に押しつぶされた軽石が一定方向に並ぶ溶結構造を示している。
 ここで観察された軽石レンズの最大のものは、長
さ12mm、幅3mmであった。結晶片として、石英、斜長石(白色)、カリ長石(淡いピンク色)、黒雲母を含んでいる。黒雲母は変質しているが、六角板状の自形を示すものが見られる。結晶片の大きさは、1〜2mm程度のものが多い。
 また、岩石片として、流紋岩、黒色頁岩、砂岩、シルト岩、チャートを含んでいる。

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