円山川下流の小石
豊岡市日高町西芝

 円山川は、播但国境の山々から北に流れて日本海に注いでいます。
 長さ68km、流域面積1300kmで、但馬でいちばん大きな川です。
 
 下流部は、たいへん流れが緩やかで、深い水が川幅いっぱいに広がっています。そのため、小石を採集した西芝より下流には石の川原はありません。

 円山川の小石は、流域の多様な地質を反映して、その種類が豊富です。
 蛇紋岩は、約5億年〜4億年前の兵庫県でいちばん古い岩石で、、養父市おおや高原あたりから流れてきています。
 また、玄武岩には神鍋火山の噴火で生まれた新しいものがふくまれています。。
 緑色凝灰岩は、日本列島ができた時代の火山活動によって生まれ、但馬に広く分布しています。
 チャートは、古生代〜中生代の深海底でできた岩石で、上流の丹波帯や超丹波帯の地層から流れてきています。
 他にも、いろいろな種類の小石を見ることができます。

 採集地点は、八代川合流地点付近の右岸にあり、円山川運動公園が近くにあります。堤防の上の道に車を止め、川に向かって田んぼの中の道を歩き、最後は背たけ以上に生い茂ったヤブをこいで川原に着きました。草木の生い茂っていない冬なら、もう少し楽に行けると思います。

泥 岩

 平たくて丸い小石です。乾いていると写真のように濃い灰色ですが、水にぬれると真っ黒になります。
 海や湖の底にたまった泥が固まってできた岩石で、粒子が小さいため手でさわるとすべすべしています。
 養父市の養父町や大屋町に分布している舞鶴層群中の泥岩だと思われます。

砂 岩

 丸い形をしていますが、平たかったり長細かったりしていることもよくあります。薄い褐色や薄い灰色をしています。
 海や湖の底にたまった砂が固まってできた岩石で、粒子が大きいため手でさわるとざらざらしています。目で見ても、砂粒の一つ一つがわかるものがあります。
 写真の右2つのように、地層の縞模様(葉理)が見える場合があります。

チャート

 ごつごつと角張った形をしています。色は、白、黒、灰色、赤、緑などさまざまです。
 硬いことが特徴で、カッターナイフでも傷がつきません。
 深い海の底に、放散虫の死骸などがたまり固まってできた岩石です。

凝灰岩

 丸くコロッとした形をしています。色は薄いオレンジ色で、川原の中では一番白っぽく見えます。手でもつと軽い感じがします。
 凝灰岩は、火山灰が固まってできた岩石です。石英や長石や火山ガラス、それらが変質してできた粘土鉱物などが集まってできています。
 流紋岩によく似ていますが、表面がざらざらしていていることで区別がつきます。
 そっとなめてみると、舌がくっつく感じがすると、それは凝灰岩のことが多いです。

溶結凝灰岩

 形は丸かったり角張っていたり、それぞれです。薄い褐色、オレンジ色、灰色などの色があります。
 火山灰が固まった細かい基質の中に、目で見える大きな粒がたくさん入っています。この大きな粒は、火山礫(マグマが冷えて固まった岩石の破片)や石英や長石や黒雲母などの結晶です。
 軽石が押しつぶされてできたレンズのように細長く伸びたものが見られるのが特徴です。
 この岩石は、火山が噴火して起こった火砕流によってできました。

緑色凝灰岩

 緑色をした凝灰岩で、グリーンタフと呼ばれているものです。石をつくっている粒が小さなものもありますが、写真右下のように大きな石の破片をふくんでいることがよくあります。
 海底での火山の噴火によってできた岩石です。海水の影響などで変質して緑泥石などの鉱物ができたため、全体が緑色をしています。

流紋岩

 丸いものも角ばったものもあります。色は、薄いオレンジ色のものが多いです。
 マグマが地表や地下の浅いところで冷えて固まった岩石です(火山岩)。
 石の中に見られる粒は、石英や長石の結晶です(斑晶)。
 縞模様が見えることがよくありますが、これは流理構造といってマグマが固まるときの流れが表れたものです。

安山岩

 丸い形をしたものが多いです。色は灰色が主ですが、赤いものもあります。
 流紋岩と同じように、マグマが地表や地下の浅いところで冷えて固まった岩石です。
 石の中の白い粒は、主に斜長石です。黒い粒は輝石でしたが、ほとんどが変質して残っていません。
 細かい石基の中に大きな斑晶がある火山岩のつくり(斑状組織)がよくわかる小石です。

玄武岩

 丸い灰色の石です。手でさわるとすべすべしていますが、石の表面には小さな結晶が見られます。
 玄武岩も火山岩ですが、この小さな結晶は斑晶にあたります。それらの斑晶は、ルーペで観察すると、白や風化によって少しピンクに色づいた斜長石、黒くて劈開で光る輝石、コロッと丸くぎらぎらとガラスのように光る緑色のかんらん石であることが分かります。
 写真右上の石は、表面に丸い穴がたくさんあいています。これは、マグマが固まるとき、気体が抜けた跡なのです。
 

花こう岩

 丸いものもありますが、でこぼこした形であることが多いです。黒と白とピンクのまだら模様をしています。
 花こう岩は、マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まった岩石です(深成岩)。そのため、どの鉱物も大きく成長しています(等粒状組織)。
 白色は斜長石、ピンク色はカリ長石、灰色透明は石英、黒は黒雲母か角閃石です。
 円山川で見られる花崗岩は、全体的にピンク色をしていること、粒の小さなものが多いことが特徴です。

花こう斑岩

 丸い形のものが多く、灰色やピンク色をしています。
 花こう岩に似ていますが、小さめの鉱物の中に、特に大きな鉱物が入っているのが特徴です。
 特に大きな鉱物は、カリ長石や石英の場合が多いです。
 花こう岩と同じマグマが、花こう岩より浅い地層の中に入って冷えてできたと考えられます。

緑色岩

 丸かったり角張っていたり、いろいろな形があります。緑色岩といっても、円山川では写真のように赤茶色ものが多くみられます。
 緑色岩は、海底に玄武岩のマグマが噴出してできた岩石で、海水との反応によって緑泥石や緑簾石などの鉱物ができました。
 さらに、岩石の中の鉄分が酸化すると赤い色になります。
 写真右上の石は、うぐいす色をしています。この部分には、緑簾石が特に多くなっています。

蛇紋岩
 
 薄く角の丸い形をしています。緑と黄緑と青緑がまだらに混ざった石です。
 表面はぬめっとした感じで、手で触ってみるとすべすべしています。とても柔らかく、カッターナイフで簡単に傷がつきます。
 かんらん岩から変化した岩石で、単斜輝石が残って劈開で光っているところがあります。また。石綿の細い脈が見られるものがあります。
 4億年〜5億年前にできた兵庫県でいちばん古い岩石です。

角閃岩

 深緑色の角閃石と白色の斜長石からできた岩石です。角閃石と斜長石が層をつくって並んでいるので、縞模様を描いています。
 斜長石の表面はぬめっとしていますが、角閃石は劈開が光っています。
 角閃岩は、玄武岩のような岩石が地下深いところで高い圧力を受けてできた変成岩です。斜長石と角閃石は、高い圧力のために横に細く引き伸ばされています。

カタクレーサイト

 断層が動くと、断層の近くの岩石はその動きによって壊れ、引きずられるような変形をうけます。このようにしてできた岩石で、もとの岩石の破片がかなり残っているものをカタクレーサイトといいます。
 左上の赤茶色の小石は、チャートが変形したものです。一見すると礫岩のように見えますが、角張ったチャートの破片からだけでできています。
 その他の3つは花こう岩が変形したものです。
 

 その他に、礫岩細粒砂岩(灰色で硬く、表面が白っぽく風化)、角閃石ひん岩緑簾石石英脈などを見つけることができました。

小石の採集日:2016年7月2日・6日

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