神前山(330m)・坂戸山(316.2m)・大師山(277.7m) 
   福崎町・市川町         25000図=「北条」「前之庄」


落ち葉の周回道、神前山から大師山

市川駒ヶ岩より見る神前山(右)・坂戸山(中央奥)・大師山(左)

 神前山は、「神崎郡」の郡名の由来となった山である。「播磨国風土記」に次のような記述がある。
 「神前と名づけた理由は、伊和の大神の子、建石敷命(たけいはしきのみこと)が山使村の神前山に在た。そこで、神が在ることで名とした。だから、神前の郡という」
 山使村は、福崎町山崎と考えられ、神前山のふもとの二ノ宮神社には建石敷命が祀られている。

 神前山は標高330mと低いが、市川の右岸に張り出したこの山塊はふもとからよく目立つ。市川町側からは千束山あるいは扇山とも呼ばれている。

 二ノ宮神社では、もう初詣客を迎える準備がされていた。この境内から裏山にかけて、イチイガシの林が広がっている。イチイガシがこのように多く残っているところは、兵庫県下では少なく、貴重である。
 地面に落ちたイチイガシの葉を見ると、葉の裏が細かな毛におおわれてふわふわしていた。老木の樹肌はひび割れて樹皮がはがれ落ちかけていた。
 神社の裏から山に入り、右に登ると小さな尾根に送電線巡視路があった。巡視路を進むと、標高155mあたりでやや大きな尾根に出た。アベマキの木が多く、道にはその落ち葉がいっぱい積もっていた。
 写真を撮るために立ち止まっていると、目の前の枝にヤマガラが止まった。ヤマガラが飛び立ったあとには、エナガ、メジロ、コゲラが次々と枝を渡っていった。
 落ち葉に半ば足をうずめながら、尾根を登った。落ち葉にぽっかりと穴を開け、その下の黒い土を見せているのはイノシシにちがいない。240mピークの東を巻くと、送電線鉄塔の下に出た。西には、緩く稜線を波打たせている大師山が見える。送電線は、その重みによって曲線を描き、谷を越えて大師山へ延びていた。
 ここから、一気にヤブの中に入った。尾根の切り開きは、ほとんど消えかかっている。ネズミサシの葉が、ちくちくと刺して痛い。ネズミサシの黒い実、ソヨゴの赤い実が目に入る。地面には、マンリョウが実をつけていた。
 しばらくヤブを漕ぐと、林床の潅木が消えて歩きやすくなった。あたりは、すっかり葉を落としたコナラの林。株元から幾本にも分かれたシャシャンボの大きな木が、ブルーベリーによく似た実をつけていた。樹上では、相変わらずヒヨドリがうるさく鳴いている。
 再びヤブの中に入り、ネズミサシやサルトリイバラの攻撃をかわしながら登っていくと、神前山の山頂(Ca.330m、東ピーク)に達した。山頂には、落ち葉の中にコンクリートの杭が一本立ち、木の枝に「境界見出標」の赤いプレートが1枚掛かっていた。
 石を調べたあと、西ピーク(Ca.330m)へ。ここには、幅2mほどの露岩が土の中から頭を出していた。その南の332mピークに足を伸ばし、坂戸山へ向かった。 

落ち葉の尾根道 神前山山頂(東ピーク)

 町界尾根には、切り開かれた跡があった。ヒノキ林と雑木林の間の尾根は落ち葉も少なく、切られた木の株が30cmほど伸びていて歩きずらい。コルに向かって下り始めると、植林におおわれた坂戸山が正面に尖って見えた。途中で、この尾根に新しい道が左手から伸びてきていた。この道を下ってコルへ。
 コルでこの道と別れて尾根にとりつくと、今度はそま道があった。このそま道は初め尾根を上っていたが、やがて坂戸山の南を巻き始めた。いつの間にか坂戸山を通り越して、その南で尾根に出た。ここから、尾根を坂戸山へ戻った。
 坂戸山の頂上には、白いチャートが乗っていた。この岩の横に立てば、北が大きく開けて市川町の町並みが一望できた。七種の山々が近く、そうびろ山、薬師峰、七種山、七種槍と峰々を林立させている。その東に大中山。さらに、遠くに段ヶ峰、入炭山〜八幡山と続き、市川の流れを隔てて笠形山が大きく裾を広げていた。
 午後になって、空には雲が広がり肌寒くなってきた。

坂戸山山頂より市川町を望む 坂戸山山頂より七種の山々を望む

 坂戸山からは、明瞭な切り開きがあった。いくつかの起伏を越して進むと、尾根はアカマツ林となって道の両側にはビニールひもが張られていた。送電線鉄塔を過ぎると、その先に大師山の山頂があった。
 10年前、生徒たちと一緒に登ったなつかしい山頂……。アカマツ林の中の裸地の真ん中に四等三角点が埋まっている。10年前と何も変わっていない。一匹のヒメアカタテハが山頂から飛び立っては、何度も戻ってきて岩やナツハゼの木に止まった。
 地元の子供たちは、この山を水晶山と呼んでいた。この山のチャートに、水晶の結晶が採れるからである。大師山を下りながら、水晶を探してみた。大きなものは見つからなかったが、チャートの割れ目にキラキラと光を反射している水晶の集まりをいくつか見つけることができた。

10年前のなつかしい山頂 ナツハゼの枝に止まるヒメアカタテハ

山行日:2008年12月20日
二ノ宮神社〜神前山(Ca.330m)〜坂戸山(316.2m)〜大師山(277.7m)〜二ノ宮神社


 二ノ宮神社は、福崎町山崎にある。車は、二ノ宮神社の前の公園に車を止めることができる。ここから、神前山、坂戸山、大師山と、尾根を反時計回りに巡った。大師山から東へ下り、山崎の小さな神社(地形図は卍記号)に着いた。
山頂の岩石 ジュラ紀 丹波帯U型地層群八千種コンプレックス 珪質頁岩及びチャート


坂戸山山頂のチャート
 今回歩いたコースには、ジュラ紀の付加体である丹波帯八千種コンプレックスが分布している。
 神前山山頂には、珪質頁岩が分布している。屑砕物の粒度に差があったり、石英の細脈が複雑に入り込んでいたりして不均質である。
 坂戸山の山頂には、白〜淡褐色のチャートが分布している。幅1〜2cmの層状チャートであるが、岩体の一部では層状構造が不明瞭である。チャートは、やや結晶質であり、一部に屑砕物をはさんでいる。
 大師山山頂には、珪質頁岩が分布している。褐色に風化していて、もろい。
 
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