岩見の岩壁 豪快な柱状節理と急冷縁 
(たつの市御津町)

岩見の岩壁(石切場跡)
写真右の白い帯が流紋岩急冷縁
そこから左に柱状節理の発達した流紋岩(室津流紋岩)、右が溶結凝灰岩(岩見層)

 たつの市御津町の岩見港に、「岩見の柱状節理」として知られている大岩壁があります。
 溶結凝灰岩の地層に流紋岩が貫入し、その流紋岩側に大規模な柱状節理が発達しているのです。
 流紋岩には溶結凝灰岩との接触部に幅1.5mほどの急冷縁がつくられ、白い帯として直線的に延びています。

 この岩壁は、かつての石切場です。ここで見られる景観は地質的に重要であり、兵庫県レッドリスト(地質)Bランクに選定されています。
 レッドリストでは「ひん岩岩脈」とされていますが、石英の斑晶が多くふくまれていることや西に分布する流紋岩と一連の岩体と考えられることから「流紋岩岩脈」としました。

 ※この岩壁は、対岸の「道の駅みつ」からよく見えます。また、岩壁の岩石は、岩見マリーナのゲートの手前で観察することができます。
 ※岩壁に近づくのはたいへん危険なので止めてください。今も岩壁からの崩落が続いています。また、岩壁の下に積み重なった岩砕はどれも尖っています。


1.岩見の岩壁を見る

 この岩壁があるのは、たつの市御津町の岩見港の南東です。国道250号線から岩見の集落に下り、住宅地を抜けて南に進むと「岩見マリーナ」のゲート前に達します。

岩見の柱状節理の位置図
 
 この岩壁は、「道の駅みつ」から見ることができます。道の駅の駐車場の東端に立つと、湾を隔てた対岸に「岩見の柱状節理」の全景が見えます。ここから見るには、午前より西日の当たる午後の方が観察しやすくなります。
 斜めに延びている白い帯は、流紋岩岩脈の急冷縁です。この左上が流紋岩岩脈。流紋岩は薄い褐色で、柱状節理が発達しています。柱状節理の割れ目は、溶結凝灰岩との境界面に直交しています。
 右下は溶結凝灰岩です。暗い灰色の岩体で、こちらには流紋岩のような斜め方向の柱状節理はなく、鉛直方向にあまり明瞭ではない節理が見られます。
 急冷縁は溶結凝灰岩に流紋岩マグマが貫入したとき、流紋岩マグマの溶結凝灰岩に接触した部分が急速に冷やされてできたものです。
 急冷縁がこのようにくっきりと見える例は多くありません。

「道の駅みつ」から見た岩見の柱状節理

2.「柱状節理」と「急冷縁」

 岩見マリーナのゲート近くに行くと、この岩壁の姿が間近に見えます。柱状節理による幾本もの割れ目が平行に走って壮観です。柱状節理の断面は四角形が多く見られます。
 この流紋岩岩脈は、あとで述べるように幅1.5km・長さ6kmに及ぶ大規模なものです。ここで見られる流紋岩は、この岩脈の周縁部、つまり母岩との境界部です。柱状節理は、この境界部に発達しています。

 この柱状節理は、貫入したマグマが固結し冷却すると体積が収縮するためにできたものです。このようにしてできる節理を冷却節理といいます。
 節理は岩石が冷えるときの等温線に対して垂直に生じます。そのため、柱状節理の亀裂は、母岩(ここでは溶結凝灰岩)と垂直な方向にできるのです。

流紋岩の柱状節理

 柱状節理の発達してるのは、母岩との境界から20~30m程度の幅です。そこから板状節理に移行しているようすが、この岩壁で観察することができます。

柱状節理(右)と板状節理(左)の移行部
 
 岩壁に斜めに延びる白い帯は、流紋岩の急冷縁(chilled margin)です。急冷縁は、急冷周縁相ともいいます。
 貫入岩などの周縁部は、中心部に比べて急速に冷却固結するために、ガラス質または細粒な岩相になります。この部分を急冷縁といいます。
 ここでは、急冷縁の幅は1.5~2mほどで直線的です。右下の凝灰岩との境界はシャープです。左上の流紋岩本体との境界もシャープですが、一部漸移しているように見えるところがあります。

流紋岩岩脈急冷縁の白い帯
 
3.岩壁の地層と岩石

 この岩壁の流紋岩は室津流紋岩(室津ハリ質流紋岩類)と呼ばれています(兵庫県,1961)。また、溶結凝灰岩の地層は岩見層(佐藤ほか,2016)と呼ばれています。
 それぞれの岩石を観察しました。

■ 室津流紋岩
 下は、ゲート付近の流紋岩です。淡い緑褐色で、石英・長石の斑晶に富んでいます。有色鉱物は多くが変質していますが、黒雲母が確認できます。
 泥岩や安山岩などの異質岩片をふくんでいます。

ゲート付近の流紋岩
 
 下は、ゲート付近で採集した流紋岩です。
 石英と長石の斑晶に富み、黒雲母の斑晶も確認できます。基質は緑褐色です。石英の多くは破片状あるいは融食形を示しています。
 この流紋岩と同じ岩相は、岩見層との境界付近に見られます。基質の色が濃い、異質岩片に富むなどの特徴がありますが、斑晶の種類や量は本体の流紋岩と変わりません。

ゲート付近で採集した流紋岩(左右10.3cm)
左の流紋岩の拡大(左右3.2cm)

 
下は、室津流紋岩本体の流紋岩です。この岩壁の上から崩落した岩屑から採集しました。
 淡い褐色の石基の中に石英と長石の斑晶がふくまれています。有色鉱物は変質しています。風化面で、流理が見られることがあります。

岩壁の上部から崩落した流紋岩(左右3.7cm) 流紋岩岩屑に見られる流理(左右5.0cm)
 
■ 室津流紋岩の急冷縁
 室津流紋岩の急冷縁(急冷周縁相)は、幅1.5m前後の白い帯として岩壁の中央にくっきりと現れています。
 基質は淡い緑色で、ガラス質です。石英の斑晶を少量ふくんでいます。

流紋岩の急冷縁
 
急冷縁の岩石(左:風化面、右:破断面)
左右(3.8cm)


■ 岩見層 溶結凝灰岩
 強く溶結した流紋岩質の溶結凝灰岩です。青味を帯びた灰色で硬く緻密な岩石です。
 石英と長石の結晶に富み、少量の黒雲母と角閃石の結晶をふくんでいます。風化面で、本質レンズが確認できるところがありました。

岩見層の溶結凝灰岩 溶結凝灰岩の標本(左右10.6cm)
 
4.周辺の地質

 下の図は、周辺の地質図です(兵庫県 1996)。この地質図では、岩見の柱状節理は岩見層の中にプロットされますが、実際はこの地点に室津流紋岩と岩見層の境界が現れています。
 岩見層は、流紋岩質の溶結凝灰岩からなっています。岩見の東、黒崎から8,300万年前のジルコンU-Pb年代が報告されています(Sato et al, 2016)。
 流紋岩は、室津層と岩見層の間に幅1.5km・長さ6kmにわたって分布しています。この流紋岩は、岩見の集落北西の道沿いや「道の駅みつ」の近くの国道沿いで見ることができます。
 室津流紋岩の西に分布する流紋岩は「天下台流紋岩」と呼ばれ、赤穂カルデラが形成されたとき環状割れ目に沿って貫入したと考えられています。室津流紋岩の位置づけや天下台流紋岩との関連は明確にされていません。

「岩見の柱状節理」周辺の地質図
兵庫県(1996)を利用して作成
 
引用文献
 佐藤大介・山元孝広・高木哲一(2016) 5万分の1地質図幅 播州赤穂付近の地質,産総研地質調査総合センター
 Sato, D., Matsuura, H., Yamamoto, T. (2016) Timing of the Late Cretaceous ignimbrite flare-up at the eastern margin of the Eurasian Plate: new zircon U-Pb ages from the Aioi-Arima-Koto region of SW Japan. J. Volcanol. Geotherm. Res., vol. 310, p. 89–97.
 兵庫県土木地質図編纂委員会(1996) 兵庫の地質(兵庫県地質図1:100,000および兵庫県地質図解説書・地質編).財団法人兵庫県建設技術センター

 
兵庫県(1961) 17万分の1兵庫県地質鉱産図及び同説明書.兵庫県

■岩石地質■ 後期白亜紀 室津流紋岩・岩見層溶結凝灰岩
■ 場 所 ■ たつの市御津町岩見
■探訪日時■ 2026年3月1日(最終)