伊勢山(353.0m)〜空木城跡(270m)  姫路市・夢前町   25000図=「姫路北部」「前之庄」「龍野」「安志」 

谷から尾根への樹林を抜けて岩峰へ
 
写真上:西峰北端岩峰より空木城跡(中央やや左)
写真右:伊勢山西峰北端岩峰

 標高353m、姫路市の北西部に位置する伊勢山は、山頂部の切り立った岩が豪快な景観をつくり出している。雑木林に開かれた小径を谷から尾根へと上り、山上の岩峰へ。伊勢山からは、北西の尾根伝いに空木(うとろぎ)城跡まで足を伸ばした。梅雨空で視界には恵まれなかったが、変化に富む山歩きが楽しめた。

 「姫路打越 木もれ日の森」の駐車場に車を止めて歩き出す。沢の流れに寄りそうようにして、一本の小径が続いている。地面には、ノグルミの花序が散り落ちている。緑に満ちた林内の所々を白く彩っているのは、尾状に垂れ下がったクリの花と、枝先に群れ咲くクマノミズキの淡く黄色味がかった花である。

沢沿いの小径 道標(右上:クマノミズキ  左下:ノグルミ)

 やがて径は沢を離れ、山の斜面を上っていった。ヒノキの植林が現れたが、すぐに雑木林に戻って径は尾根上の小径となった。コナラ、ソヨゴ、アベマキなどの高木が多くなり、コシダが林床を敷き詰めている。湿気で蒸れた林内に、ウグイスの鳴き声が軽やかに響いた。
 斜面が緩やかになると、これまでのジャングル様の植生は一転した。もとの凝灰岩の色を反映した緑色の痩せた土の上に、アカマツ、ネズミサシ、ミツバツツジなどの背の低い木がまばらに生えている。
 径は再び急になった。葉がギラギラ光るヒメヤシャブシの木の下をくぐり、ヤマツツジの朱色の花を横に見て、現れた露岩を上ると、伊勢山西峰の南端(316m)に出た。

 伊勢山西峰は、屏風を立てたように西方向がスッパリと切れ落ちている。起伏を失ったそのやせ尾根を進むと、西峰北端岩峰が目前に大きく現れた。豪快に露出するその岩の上に夫婦二人が寄り添って座り、絵になる風景をつくっていた。
 私も、この岩峰の上に立った。梅雨の湿気で白くかすんで視程は良くないが、高度感あふれる景色が目の前に広がった。白く重なる山々と谷あいの街や道……、眼下に見下ろす山の斜面には木々の緑が競い合うようにして重なっていた。数羽のアマツバメが山上を舞い、またどこかへ消えていった。

 この岩峰を北から西へ回り込むように下りていくと、大きな岩窟(神坐の窟)になっていて、またびっくりした。巨大な岩が下から立ち上がり、上で湾曲しておおいかぶさっている。その岩をもう一方からの大きな岩が斜めから支え、全体としてアーチ型の天井をつくっている。岩窟の奥の岩盤は、コケや蘚苔類におおわれ、割れ目にそって開いた空間に2体の石仏が祀られていた。

岩窟より空木城跡 伊勢山西峰(中央が北端岩峰、左下に岩窟が見える)

 岩窟横の分岐から、北西へ伸びる尾根を進んだ。灌木とコシダの中の消えかかってはまた現れる道をたどって、370mピーク空木城跡へ達した。細長く伸びた平坦面が、かつてここに城があったことを今に伝えている。「赤松遠見の城」とも呼ばれたこの城で、原田大炊助は置塩城最後の城主赤松則房と命運を共にしたという。コザサにおおわれ、ネズミモチが白い筒状の花をつける城跡に、霧雨が降り、あたりが白くけぶった。

伊勢山本峰手前のCa.340m峰
(伊勢山西峰北端岩峰より)

 

 岩窟横の分岐に戻り、伊勢山本峰に向かう。西峰北端岩壁から見たときに、小振りながら尖った頂を突き上げていたのは、本峰手前の340mピークであった。このピークを越えて、伊勢山本峰にたどり着いた。西峰とは対照的な、木々に囲まれた静かな山頂であった。

 今日は、二度も虫に刺された。一度目は、岩窟の中。首に鋭い痛みを感じたので振り払うと、ムカデが地面に落ちて走り逃げた。二度目は、下山後のヤマザクラ公園。桜の枝に小さなサクランボを見つけたのでひとつもぎ取ると、いっしょに毛虫も落ちてきてまたも首をチクリ!おまけにサクランボもひどくすっぱかった。
 みなさんも、洞窟の中と桜の木の下は気をつけましょう。

山行日:2003年6月15日

※「伊勢山西峰北端岩峰」、「伊勢山本峰」、「神坐の窟」の名や「空木城跡」に関しての記述は、『はりま歴史の山ハイキング』(横山晴朗、2003)から引用しました。

山 歩 き の 記 録

「姫路打越 木もれ日の森」駐車場〜ヤマザクラ広場〜東尾根分岐〜展望広場分岐〜伊勢山西峰316mピーク〜伊勢山西峰北端岩峰〜「神坐の窟」〜空木城跡(270m)〜「神坐の窟」〜伊勢山本峰(353.0m)〜298mピーク〜Ca.200mコル〜東尾根分岐〜「姫路打越 木もれ日の森」駐車場

 菅生川に沿った車道を、打越の交差点で西へ折れ、北西へ進んで緑台の最奥へ。「姫路打越 木もれ日の森」の駐車場に車を止める。駐車場に隣接した「ヤマザクラ広場」から、沢に沿って一本の小径が続いている。途中、東へ東尾根分岐、西へ展望広場分岐(284mピークの展望広場・あずま屋を経由してヤマザクラ広場へ続く道)があるが、沢沿いの小径をそのまま直進して、伊勢山西峰の南尾根にとりつく。尾根道を上り、西峰の316mピークを越えて西峰北端岩峰へ達する。

 西峰北端岩峰からは、その下の岩窟「神坐の窟」を見て、岩窟横の分岐から北西尾根を空木城跡(270m)へ。西峰北端岩峰から空木城跡までは、踏み跡がヤブに消えかかっている部分があった。
 岩窟横の分岐に戻り、伊勢山本峰(353.0m)へ。ここから南東へ伸び途中から南へ続く尾根(東尾根)には新しく登山道が開かれ、コース上の木には色テープが巻きつけられている。298mピークなどいくつかの峰を越えて、Ca.200mコルへ。コルから先の東尾根分岐に下り、沢沿いの小径を駐車場へ戻った。 

   ■山頂の岩石■ 流紋岩質多結晶凝灰岩 (白亜紀 相生層群伊勢累層)

 伊勢山には、相生層群伊勢累層が分布している。西峰に露出しているのは、石英・長石・黒雲母・角閃石などの結晶片を多量に含む流紋岩質多結晶凝灰岩である。全体的に風化による変質が進み、褐色を呈する。産状は、塊状で不規則な割れ目がおおまかに入り、風化面は凹凸に富んでいる。

 山体の他の部分も同様の岩石から成るが、西峰の南尾根や本峰の南東尾根の一部で黒色頁岩などの岩片を多く含む緑色の凝灰岩(「長石」に似ている)が分布している。

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