船越山(727.2m)  佐用町   25000図=「千草」


瑠璃寺から倒木を越えて山頂へ

「奥の院」北の571m峰より船越山山頂を望む

 氷ノ山・後山・那岐山国定公園に位置する船越山。
 ふもとの瑠璃寺は、神亀5年(728年)聖武天皇の勅願で行基が開創したと伝えられている古刹である。

 うっそうと茂るスギの巨木の下を車で抜けて瑠璃寺へ。下の売店で、モンキーセンターの職員の方に聞いてみた。観音堂から池ノ谷沿いに進むと、荒れてはいるが頂上まで行けるということである。
 ちょうど、逃げ出した猿を探しにいくところで、常福寺の上の観音堂まで軽トラに乗せてもらった。

瑠璃寺へ

 観音堂で軽トラを降り、歩く準備をして池ノ谷の脇の杣道に入った。杣道は、すぐに谷から大きく左にずれ尾根をめざしていた。
 雑木の下に、ガレ石が連なっている。その上に、二匹のサルが体をくっつけていた。傍らには、先ほど観音堂まで案内してもらった職員。
 モンキーセンターから逃げ出したサルで、職員に連れられて山を下りているところであった。なかなかいうことを聞かず、遊んでいてすぐには下りない。
 帰りにモンキーセンターで聞いてみると、なんとか全部無事に帰ったということであった。もとは、この山にいた野生のニホンザルを、餌付けしたものらしい。

なかなか帰らないサル

 道は尾根の手前で右に曲がって、元の池ノ谷に下った。
 初め広かったこの谷も、少し登ると狭くなり水も流れるようになってきた。
 間伐された杉の木が山ほど倒れていて、それを乗り越えたり巻いたりしなければ前に進めない。道はいつの間にか消えていた。
 沢の上の斜面を歩いた方が歩きやすいところもあって、谷から離れたり、また谷に下ったりしながら倒木を越していった。
 ときどき、自然林が現れた。大きなブナの木が一本立っていた。
 標高550m地点の三股は、真ん中の沢を進む。広い岩の上に水が滑っている。
 少し行くと標高620mの二股に。ここは、右の沢を進んだ。
 傾斜はしだいに急になり、ガレ場が谷の斜面に広がっていた。そういえば、瑠璃寺の案内板に、この谷の上流部は”鬼の河原”とあった。

池ノ谷の倒木を超えて進む

 スギの倒木はずっと続いた。消耗しながら登り詰めていく。ようやく、杉の木立の間から空の青が見えた。最後は頂上南東斜面を直登すると、船越山の山頂に達した。

 山頂の三角点も杉の林の中だった。。杉の落ち葉に敷き詰められた地面には、ミヤマシキミやモミの幼樹が疎に生えている。眺望はほとんど開けないが、静かな冷気の漂う山頂であった。

船越山山頂

 山頂から尾根を北にたどり、千合地峠へ向かった。ここには、かすかな踏み跡が続いていた。
 山頂を下って最初の鞍部に着くと、なんとすぐ左に車道(林道)が通っていた。千合地峠から尾根の西側をここまで林道が延びてきていたのだ。
 静かな人の気配のない山頂だっただけにがっかりしたが、この林道が山頂にまで達していなかったことを幸いと思い直し、千合地峠までは尾根の踏み跡を進んだ。

 千合地峠からは地形図に破線路を下った。千種川の支流、寺谷川に沿った道で、清らかな水が横を流れていた。
 やがて、道はモンキーセンターの中に入っていった。。モンキーセンターには人間動物園というのがあり、人が檻の中に入って、自然の中の猿を見るようになっている。その檻の外を、猿と同じように人に見られながら下りていった。
 落差4m。弁天の滝が架かっていた。

寺谷川に架かる「弁天の滝}

 モンキーセンターの下から、奥の院に通じる道が西へ上っていた。そこまで登ると船越山の姿が見えるかと思い、奥の院をめざしたが、急な道でなかなかハードだった。スギの巨木が続いていたた。
 奥の院の南に天狗堂があった。ここには、行基にこの山を案内した”天狗さま”の説明板が立っていた。
 そこには、天狗さまは、「奥の院(薬師堂)近くの聖谷山山頂にお祀りしてあります」と記されている。聖谷山とは、奥の院の北の571mピークなのだろうか。
 奥の院を越して571mピークまで登ると、アカマツの間から西日に照らされた船越山の山頂がわずかに見えた。
山行日:1999年10月9日


瑠璃寺駐車場〜常福寺〜観音堂=(池ノ谷)=船越山山頂〜千合地峠=(寺谷川)=モンキーセンター〜奥の院分岐〜奥の院〜571mピーク〜奥の院分岐〜瑠璃寺駐車場
 瑠璃寺から船越山まで北に延びるのが池ノ谷。船越山の西を巻いて千合地峠へ続くのが寺谷川。
 池ノ谷を登って船越山に達し、尾根を北へ進んで千合地峠へ。千合地峠から寺谷川に沿った破線路を瑠璃寺へ下った。約5時間の山歩きであった。

山頂の岩石  白亜紀後期 安山岩質凝灰岩
 山体全体に、白亜紀後期のいわゆる生野層群が分布している。
 頂上付近には露頭がないが、歩いたコース沿いには好露頭がたくさん見られ、安山岩と、安山岩質凝灰岩が交互にでてきた。また、転石にはシルト岩や砂岩が含まれていた。
 安山岩質凝灰岩は明灰色のシルトの礫を多く含んでいる。石英の結晶をほとんど含んでいないが、モンキーセンター下の露頭で見られた火山礫凝灰岩には少量の石英の結晶が見い出された。
 安山岩は、やや緑色がかった暗灰色で硬く緻密である。斑晶として、長さ2mm程度、短冊状の角閃石あるいは輝石が含まれている。(緑色粒状の鉱物も含まれているが、これはカンラン石かもしれない。) 

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