焼山(210m)・藤ノ木山(269.2m) 姫路市・加西市 25000図=「笠原」
うずもれた遊歩道から神谷ダムに下りて藤ノ木山へ
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| 焼山への尾根から望む神谷ダム湖と藤ノ木山(写真右奥) |
焼山と藤ノ木山は、神谷ダム湖をはさんで対峙している。焼山から、尾根伝いに藤ノ木山まで歩く計画であったのだが……。
大谷池の北に車を止め、牧野自然公園キャンプサイトの縁を進んだ。あちこちに登山口があって、そこから遊歩道が焼山へ向かっている。登山口を2つやり過ごし、3つ目の登山口から山にとりついた。
雑木の中の細い道は、朝露に湿っていた。紅葉にはまだ早いが、ヤマウルシやヌルデが赤く染まり始めていた。傾斜はすぐ急になった。
最初の丸太階段を登ると、正面に230mピークが現れた。低い標高のわりには、どっしりとたくましく立っている。振り返ると、市川の流れの向こうに香寺の町が広がり、その奥に棚原山、明神山、七種の山々が山並みを連ねていた。ふもとから吹き上げてくる風に、帽子を飛ばされた。
尾根は、しだいに岩がちになってきた。アキノキリンソウが黄色い花をつけている。コウヤボウキは、うすピンクの細い花弁を可憐に広げていた。
230mピークにはあずま屋が建っていて、その前が三差路になっている。ここから南に向かい、焼山をめざした。尾根の道は細く、ススキの穂や幼いコナラの枝葉を分けて進んだ。ときどき足元からキチョウが飛び立った。
山頂のひとつ手前のピークから、展望が開けた。ダム湖は深緑に水をたたえ、焼山が岬のように湖に飛び出している。対岸の藤ノ木山は、山肌が大きく削り取られていた。
いったん下って上り返すと、焼山山頂に達した。ヤマモモやヒメヤシャブシの間に、小さな裸地が広がっている。木の標柱が、その中に一本立っていた。
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| アキノキリンソウ |
コウヤボウキ |
あずま屋に戻り、今度は三差路を東へ向かった。次の小ピークには、イノシシのヌタ場があった。ここで道は方向を北へ変えた。ガマズミが真っ赤な実をつけていた。コチャバネセセリが、羽を半分開いてヌルデの葉に止まっていた。
ゆるく上り下りする道を進むと、藤ノ木山へ向かう道が分かれていた。ササの中に消え入りそうな細い道で、この中に踏み込むと、一転してあたりが暗くなった。
224.8mの三角点を過ぎて先を進んでいるとき、前方の木の枝から丸く茶色いものがぶら下がっているのに気がついた。スズメバチの巣……。
こんなところに限って尾根はやせていて、簡単には迂回できない。かなり戻って、少し開けたところから巣の向こうの尾根へ回り込むことにした。
山の斜面は、すぐに雑木に埋められた。雑木の下のコシダの海におぼれるように進んだ。サルトリイバラのとげが、しつこくじゃまをした。にぎった木の幹を見上げると、ヤマウルシの葉がついていた。
もう巣を越したと思われるところで、斜面を登って尾根に出ようとしたがどうも地形がはっきりしない。尾根らしきところに切り開きの跡があったので、これを進むことにした。
見通しのまったくきかない、ひどい道だったが、方向だけは合っている。しかし、やがてその尾根は急に切れ落ち、木々の間から見えてはならないダム湖が見えた。
元の尾根に戻ったのではなく、その尾根と平行に伸びているひとつ南の尾根を進んでいたのだ。もう戻るに戻れない。そこから、再びシダや木々に体を沈めながら、急斜面を下った。
下り着いたところは、ダム湖畔の人工的にならされた緩斜面。セイタカアワダチソウが咲き誇っていた。
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| ヤブの中の露岩で一休み |
神谷ダム湖に下りる |
道路に出ると裸になって、体や服に着いた木の葉や何かの種やゴミを払い落とした。湖に沿って歩いていると、ランニングしている人に追い越されて驚いた。湖畔の道から、藤ノ木山へ登る遊歩道がいくつかあった。
藤ノ木橋手前の谷から、224mピーク東のコルへ登った。この道も荒れていて、ほとんどヤブにうずもれようとしていた。
コルを東に進むと、すぐに藤ノ木山自然公園の開けた遊歩道に出た。上のほうで子供たちの明るい声が聞こえ、やがてその家族とすれ違った。第1展望台を過ぎると、尾根には岩が多く露出していた。岩の上で、「東の山」からの道と出会い、岩稜を登っていくと藤ノ木山の山頂に達した。
スズメバチの巣に出会ってから、ずいぶん迷走した。日は南西に傾き、丸太が三角に組まれた山頂の標識は、影を長く伸ばしていた。ダム湖の水面は、逆光に鈍く光り、その上をちぎれ雲がゆっくりと動いていった。東には、古法華の山々が波濤のように峰を並べ、加西の平野をバックに浮かんでいる。一匹のアカタテハが山頂の露岩に何度も舞い下りてきた。
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| 藤ノ木山山頂 |
山頂より古法華の山々を望む |
山行日:2009年10月18日