火山(ひのやま)(166.8m)  姫路市        25000図=「姫路南部」


梅雨明けの日、姫路の火山(南山)へ


火山(四郷町本郷から望む 山頂は中央奥の鉄塔あたり)

 梅雨の明けた日、姫路市の火山(ひのやま)に登った。火山は、標高166.8mの低山で、地形図には「南山」と記されている。

 御着の姫路工業団地が山とぶつかったところに、北側の登山口がある。登山口には、「御着南山公園」の看板がかかり、そこから擬木階段が雑木林の中を上っていた。
 最初の曲がり角に、「火山」の説明板があった。それによると、

 『この山は火山(ひのやま)といい、神楽山・樋山・南山ともいう。「播磨鑑(1762)」によると、神功皇后が麻生山で天神地祗を祀った際、この山に神火を掲げられたことから「火山」または「神楽山」と名付けられた。
 天正7年(1579)に羽柴秀吉がこの山に布陣して御着城をを攻めたが一旦敗北し、南東の引入谷に退いた後、総攻撃をかけて落城させた。(一部を引用)』

火山登山口

 モチツツジの花が一輪だけ残っていた。セミの声に、工場の音が混じって聞こえる。
 アベマキ、アラカシ、ヤマザクラ、ソヨゴなどの雑木林。道の脇は、コシダにおおわれている。天敵、ヤマウルシがあちこちに生えていた。
 ガマズミの実は、先端部から少し赤くなってきていた。

 道がいったん平らになると、ササが広がり青い空が見えた。
 すぐにまた急坂となり、擬木階段を登る。ノギランが咲いていた。ノギランは、このあともずっと見られた。他に咲いている花がない中で、この花はよく目立った。

ノギラン

 坂を登ったところが展望広場。あずま屋が建っていた。広場から、火山の形が送電線の下によく分かる。
 草の中から、ホオジロが飛び立った。

あずま屋から山頂方面

 もうひと登りすると、尾根に達した。広葉樹やメダケに囲まれた尾根道はうす暗い。オオバヤシャブシが、緑の丸い果穂をつけていた。

 北のピーク(130m)に鉄塔が立っているが、その手前に大きな岩が座っていた。この岩は、「牛岩」と呼ばれている。
 この火山やとなりの麻生山は、かつて国分寺の境内だった。「牛堂山国分寺」の山号は、この山から黒牛が現れたという伝説が由来している。「牛岩」は、この伝説から名づけられた。

 牛岩に立つと、ふもとから風が吹き上げてきた。眼下に、四郷町の街並みが広がっていた。古墳時代中期から飛鳥時代にわたって、宮山古墳や見野古墳群・見野長塚古墳などが築かれた里である。そのころは、もっと海が近かった。
 街並みの向こうに麻生山(小富士山)と仁寿山が重なっていた。南にかすむ播磨灘に、大阪ガスのタンクが並んで突き出していた。

牛岩からの眺望

 牛岩からいったん下り、コルを登り返した。コシダにウラジロが混じり始めた。クモの巣が体にまとわりつく。
 坂を登り切ったところ、2つめのあずま屋が道をまたぐように建っていた。屋根の下で、しばらく火照った体を冷やした。
 あずま屋の先で、山頂に続く道が左に分かれていた。カクレミノやヒメユズリハの林の中を、モンキアゲハが飛んだ。青紫の翅が、チラチラと飛んできた。じっと息をこらして立ち止まっていると、目の前の枝に止まった。ツバメシジミだった。

 ゆるい道を進み、鉄塔を2つくぐった。火山の三角点は、道の脇で木漏れ日を浴びていた。

山頂へ 山頂三角点

 山頂からもとの分岐に戻った。その近くに、西へ下る道が分かれていたが、コシダにおおわれて消えかかっていた。
 南に続く破線路がはっきりしていたので、この道をふもとへと下った。

山行日:2019年7月24日

御着南山公園登山口〜あずま屋〜牛岩〜あずま屋〜火山山頂〜見野
 山体の北端に、「御着南山公園」の登山口がある。ここから2つ目のあずま屋まで遊歩道がつけられている。2つ目のあずま屋からの先に山頂への分岐があり、山頂へ道が続いている。
 2つ目のあずま屋と山頂分岐との間に、西へ下る道の入り口があるがこの道は消えかかっていた。
山頂分岐から、地形図破線路の道を南へ進んだ。コルの手前から西へ急な斜面を下ると、竹やぶの中で「姫路古墳ロード」に合流した。

山頂の岩石 白亜紀後期 宝殿層  溶結火山礫凝灰岩
牛岩の表面
 火山の山頂付近には露頭がない。この山の岩石は、「牛岩」で観察することができた。
 牛岩は、溶結火山礫凝灰岩でできている。溶結凝灰岩とは、火砕流で流れてきた火山灰(発泡した火山ガラス片)や軽石などが、熱と重さによってその一部が融け、圧縮されてできた岩石。火山ガラス片や軽石は、圧縮によって気泡が押しつぶされ、横に押し広げられてレンズのような形になっている(溶結構造)。
 長石と石英の結晶片を含んでいる。また、1cm程度の流紋岩(同質)の火山礫を多く含んでいる。牛岩の表面がゴツゴツしているのは、この火山礫が硬くて飛び出しているからである。


 左の写真で、マウスポインタを上に持ってきたとき、現れる黄色の矢印は溶結構造を示すレンズ。また、赤い矢印は流紋岩の火山礫を示している。

「兵庫の山々 山頂の岩石」 TOP PAGEへ  登山記録へ