東  山 (1015.9m)           一宮町・波賀町     25000図=「音水湖」

河原田不動滝から雪の東山高原

東山山頂近くの風景 山頂展望櫓


河原田不動滝一ノ滝

 揖保川とその支流引原川に挟まれた地域には、三久安山、阿舎利山、一山、東山と、1000mを越す山々が、一宮町と波賀町の境界尾根をつくって悠々と連なっている。寒さの緩んだ休日、この山並みの南に位置する東山の山頂を、一宮町高野よりめざした。

 国道脇に車を止めて準備をしていると、夫婦二人連れの車が対向車線に止まった。波賀町側から東山に登るつもりが、道に迷ってここまで来てしまったというのだ。奥さんが、「帰ろう。迷ってしまったんやから、お父さん、もう帰ろう。」と言うのに、ご主人は「いや、登る。こっちからでも、行けるんや。」……。そんな訳で、同行することになった。

 林道を進むとすぐ、不動の滝への分岐があった。東山へのコースから少し離れるが、滝へ向うことにした。杉木立の斜面をしばらく上っていくと、不動明王を祀ったお堂が見えてきた。その背後から、滝音が聞こえてくる。
 「河原田不動滝」の「一ノ滝」である。落差45m。数段からなるこの滝の上の方は、木々の枝葉に隠れていた。雪に顔を出した黒い岩肌を、水が白くほとばしる。冷たい空気と岩を打つ水音に、気分も凛としてきた。

沢に沿って上っていった

 私はスノーシュー、二人は初めてだというアイゼンをつけ、元の分岐に戻り、そこからまた林道を上っていった。谷が広くなったところで、左へそれていく林道に別れ、破線路に従って沢沿いの山道に入った。ミツマタが、つぼみをつけていた。赤い実をつけたとげのある蔓を、「ウマグイ」と言うのだと、二人に教えてもらった。実を口にしてみると、初め少しすっぱく、あとから甘さが広がった。
 雪の下には、大小の岩がゴロゴロしていて歩きづらい。倒木も多くなり、しだいに道は消えていった。なかなか前に進めずにいると、先に別れた林道が左手に回りこんできているのが見える。雪で埋まった沢を渡って、その林道に上がった。

 林道は、山の斜面を大きく蛇行しながらも山頂に近づいている。立ったまま、三人で弁当を食べた。そこから、次のカーブを回ると、林道はばったりと途絶えた。ところどころに付けられた赤いテープを頼りに、沢の上の斜面を上り、途中で方向を変えて尾根に上がった。
 尾根にも雪が深く積もり、スノーシューも沈んだ。急な斜面を、膝で雪を押し固めるようにして次の一歩を出した。

東山山頂のアセビ

 尾根の斜面を上りきると、高原状の山上に出た。葉を落とした木々がまばらに立ち、その幹や枝には雪がからみついている。あたりはだだっ広くて、山頂がどこなのかすぐには分からない。二人に残ってもらい、先に進んで山頂の展望櫓を見つけた。

 展望櫓に上がった。雲が厚く、周囲のどの山も白くかすんでいる。黒尾山のピークの上から、二条の光が薄く差し込んでいた。
 風を避け、展望櫓の下のベンチで、熱いコーヒーをいただいた。目の前のアセビは、雪の重みで背を曲げながらも、赤い小さなつぼみを、春に向かってたわわにつけていた。

山行日:2003年1月13日

山 歩 き の 記 録

行き:高野橋(一宮町高野)〜不動滝登山口〜不動滝分岐(駐車場)〜不動滝〜不動滝分岐(駐車場)〜三股(標高約450m)〜(破線路)〜(標高約600m地点で破線路を離れ林道へ)〜林道終点(標高約720m)〜804m標高点南鞍部〜東山山頂
帰り:来た道を帰ったが、林道終点から三股まで林道を歩く

 一宮町三方町(みかたまち)から、国道429号線を西へ向かう。高野の集落を過ぎたあたり、西ノ奥川に架かる高野橋に車を止める。高野の集落内の道を南に進むと、すぐに「入口 不動の滝 530m」の看板の立つ登山口がある。広い道を上っていくと、まもなく駐車場や不動滝説明板のある分岐に着く。分岐を右に、不動滝をめざす。沢沿いの山道を分岐から250mほど進むと、お堂の建つ不動滝一ノ滝である。不動滝は、この上に七ノ滝まであるのだが、今回は一ノ滝だけを見て元の分岐に戻った。
 分岐から林道を南西へゆるく上っていく。標高約450mの谷が広くなったところは、三股となっている(真中の沢は小さくてあいまい)。林道は左へ延びているが、地形図の破線路に従って、右の沢沿いの山道に入る。道は、初めは細いながらも明瞭であったが、しだいに灌木や倒木の間に消えていった。左に見える斜面に、先に別れた林道が見えたので、沢を渡ってその林道に上がる。林道は、804mピークの北斜面を大きく蛇行しながら上っていた。そして、その林道は、標高720mほどの地点で途絶えた。
 林道終点から、ところどころに付けられた赤いテープを頼りに雪の斜面を上る。804mピーク西の沢沿いに南へ進み、途中で方向を東に変えて、804mピークのすぐ南の小さなコルに出た。
 コルからは、東山北東尾根を進む。尾根の急な斜面をほぼ上りきると、ゆるく広がる東山の山上高原に出た。Ca.1010mの高まりから、南南東へ進むと山頂の展望櫓に着いた。
 帰りは、林道終点からそのまま林道を利用して山を下った。

   ■山頂の岩石■ 流紋岩質溶結凝灰岩 (白亜紀 深河谷川層)

舞鶴層群の頁岩の露頭
 東山の山頂部には、後期白亜紀の深河谷川層(「山崎地域の地質(2002)」)が分布している。しかし、今回は雪のためほとんどこれらの岩石は観察できなかった。
 頂上のすぐ下の転石は、黒色の緻密で硬い流紋岩質の火砕岩であり、小さな黒色頁岩の岩片を含んでいる。結晶片として小さな石英・斜長石・黒雲母を含み、基質は黒色でガラス質である。

 東山の東と南には、舞鶴層群の地層が分布している。今回歩いたコースでは、頁岩が多く見られた。頁岩は、暗緑色の均質で緻密な岩石で、ところどころに色の濃淡による細かい縞模様が観察される。ルーペで観察すると、黒雲母と思われる細かい結晶が多く含まれている。東山の西には花崗岩体が分布しているが、この岩体の貫入によってホルンフェルス化しているのかもしれない(未確認)。
 また、林道の終点付近には角閃石と斜長石の斑晶を多く含む安山岩が見られた。

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