日笠山連山(62.4m)  高砂市・姫路市        25000図=「加古川」


早春の日笠山〜牛谷ハイキングコース


天川の向こうに見える日笠山連山(右のピークは北山)

 日笠山連山は、播磨灘も近い、姫路市と高砂市の境界に沿って南北に連なっている。その南端の日笠山から、尾根を北へ六本松まで歩き、牛谷へ下った。

 天川を渡り、日笠山に向かった。途中でコンクリート舗装の小路に入る。群れて咲くヒメオドリコソウの上を、ルリシジミがチラチラと飛んでいた。

 石段を登ると、もう日笠山の山頂だった。クスノキの下が三角点。その向こうは公園になっていて、一組の家族が遊具で遊んでいた。
 玉垣に囲まれた中に、岩がひとつ祭られていた。そこに、「腰掛石」の標識が立っていた。菅原道真が大宰府に流される途中、ここ日笠山に登り、この石に腰かけて休んだという言い伝えが残されている。
 快晴の空の下、天川の流れが播磨灘に注ぎ、銀鱗に光る海面に上島がぽかりと一つ浮かんでいるのが見えた。

日笠山の山頂

 日笠山の山頂から、尾根に沿って小道が続いていた。足下にテングチョウが現れては、どこかに消えていった。
 平坦な竹林が続いた。ゆるく下ってひと登りすると、北山のピークに達した。アベマキ林の中に、十数個の岩が載っている。この中の、大きな二つの岩が「夫婦岩」。
 ここには、ベンチや「夫婦岩壱番地」の表札のかかる小屋があって、常連さんたちの憩いの場となっている。
 一本歯の天狗下駄を履いた常連さんに、この連山に並ぶ山の名前を教えてもらった。

北山 夫婦岩

 北山を下って、登り返す。アオキの花が開きかけている。林床には、テイカカズラやヤブソテツ。シュロもところどころに入りこんでいて、景色は南国風。トベラの冬芽がふくらんでいた。
 大北山(92m)の山頂は、明るく開けたピークだった。子どもたちが歓声が、反対側から近づいてきた。

 大北山を発ち、木の間越しに天川の流れを見下ろしながら急な坂を下った。コバノミツバツツジの赤紫が陽光を受けて鮮やかだった。
 1本のアベマキの木の根元に、「起上り古木」の標識が掛けられていた。2004年の台風23号で倒れたが、1年以上も過ぎた2006年にひとりでに立ち上がったという。
 アベマキは、根を地面にもぐらせ、岩にからみつけて立っているが、根の一部は宙に浮いて枯れている。三方から木の棒で支えられているのは、何とかこのまま倒れないでほしいという人々の願いだ。

コバノミツバツツジ 起上がり古木

 坂を下ったところが馬坂峠。尾根のコルを掘りこんで、大塩と牛谷をつなぐ峠道が通っている。女子中学生が二人、自転車を押してこの峠を越えていった。

 馬坂峠から、日当たりの良い山道に入った。中筋山(96m)を東に巻いてゆるやかに登る道である。。道の脇には、オオイヌノフグリやカラスノエンドウ、ノゲシが咲いている。ヒメウズの白い花も、ひそかに下を向いて開いている。日陰にはベニシダが葉を伸ばし、ヤマツツジのつぼみが開き始めていた。

 送電線鉄塔の下を通り、登り返して、なだらかな下山(81m)を越える。陽のよく当たるアベマキ林が続いた。
 次のピークは、赤山(92m)。この手前に、「大塩山城跡」の案内板が立ち、そこに低い石垣の遺構が残っていた。城は、天正6年(1578)、羽柴秀吉によって落城したという。
 

大塩山城跡

 赤山を越して進んだ。青い空に、ヤマザクラの花がちらほらと咲いていた。

 最後のピーク、六本松(91m)は、西に大きく開けていた。眼下に大塩や北浜の街並みが広がり、その向こうを高坪山に連なる山並みが囲んでいる。行基ヶ鼻が海に突き出していた。

ヤマザクラ 六本松からの眺望

 その山並みの向こうはまた海で、男鹿島と家島が浮かんでいる。さらにその上には、小豆島が山影を薄く引いていた。
 しばらく、海と空を見て立っていた。その間、姫路バイパスを走る車の音と新幹線の通る音が背中の方から聞こえてきた。

六本松から望む男鹿島、家島と小豆島

 六本松を北へ下った。地面からわずかに顔を出したばかりの、高さたった5cmほどのコバノミツバツツジも花を咲かせていた。
 下ったところが、清勝寺坂の峠。峠道を、牛谷の町へと下った。コゲラやメジロが、木々の枝を渡っていった。

山行日:2020年3月21日

日笠山(62.4m)〜北山(夫婦岩 85m)〜大北山(92m)〜馬坂峠〜下山(81m)〜赤山(92m)〜六本松(91m)〜清勝寺坂峠〜牛谷
 日笠山から牛谷へは、ハイキングコースが整備されている。日笠山の登山口と牛谷の登山口には、ハイキングコースの地図が「全長3km 約3時間」として描かれている。
 日笠山は桜、夫婦岩周辺はノジギクの名所として、地元の人たちに親しまれている。日笠山周辺に適当な駐車スペースが見つからなかったので、コンビニの駐車場に車を止めさせてもらった。

山頂の岩石 白亜紀後期 宝殿層  溶結火山礫凝灰岩
夫婦岩の表面
 日笠山連山には、白亜紀後期の火砕流堆積物が分布している。
 風化の進んでいる場合が多いが、北山の南の露頭でやや新鮮な岩石が観察できた。
 溶結構造が明瞭で、石英・斜長石(白色)・カリ長石(ピンク色)の結晶片をふくんだ溶結火山礫凝灰岩である。泥岩・黒色頁岩・チャートなどの異質岩片を多くふくんでいる。

 岩片の量や種類に変化が見られ、夫婦岩の岩石は、同質の流紋岩の岩片を多くふくんでいる。
 六本松付近の岩石は、伸ばされた軽石は気泡がつぶれ、変質して緑色を呈していた。
 

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