八ヶ尾山(677.6m)    篠山市               25000図=「村雲」

筱見四十八滝を遡り、八ヶ尾山へ


毘沙門山からの八ヶ尾山(2007.6.16) 八ヶ尾山山頂

 筱見四十八滝を遡り、そこから稜線に出て八ヶ尾山をめざした。今回は、下山にたどった東尾根が岩稜のヤブで厳しかった。

 梅雨前線が南に退き、青空に巻雲が筋を引くさわやかな朝だった。
 登山口のキャンプ場に、筱見四十八滝の名の由来。『八つの滝が始終流れているので「四十八滝」と言います。』 だじゃれ!?

 沢に沿った小径を上ると、早くも最初の滝が現れた。「手洗滝」である。昨日の雨で量を増した水は、落口から横に広がりながら勢いよく流れ落ちていた。滝の下の岩陰に、ツルアリドオシの白くて小さな花が咲いていた。

手洗滝 ツルアリドオシ

 滝のしぶきを受けてつるつると滑る岩を上ると、両側に大岩の屹立する峡谷に入った。深くて暗いその谷を進むと、突き当たりの岩に次の滝がかかっていた。
 二つの滝が上下に連なり、下が「弁天滝」で上が「肩が滝」。滝下の岩がうがたれ、その中に弁才天の石仏が祀られていた。

 滝の右の急な木の根道を上る。そこから、東へ大きくトラバースして折り返すと、4番目の滝「長滝」を見下ろす斜面に出た。
 滝の下まで下ると小橋が架かっている。そこから滝を見上げた。落ち口から飛び出した水は、岩に当たって飛び跳ね、幾筋のも線を描いて滝つぼに流れ込んでいる。陽射しが、流れ落ちる水を白く輝かせた。

 道は滝の左の急斜面を巻き上っていた。岩盤にはくさりが固定されていた。滝の上は、緩やかな渓の道。
 前方から聞こえる水の音がしだいに大きくなってきた。「シャレ滝」は、狭い岩溝に水が集まり、飛び跳ねながら一気に流れ落ちて、轟音を谷間に響かせていた。

 滝の横の急な岩場を上ると、開けた斜面に出た。ここから、再び谷底に下り、渓の石を伝って上る。四十八滝を巡る道は野趣にあふれ、滝を見るために最小限しか手が加えられていない。それがいい。
 落差20m、「大滝」の下に出た。青い空、落ち口を覆う緑の中から飛び出した水が、射し込む光を反射し、飛び跳ねながら下り、さらには左右に広がって落ちている。滝の下には、これらの滝をつくる層状チャートが見事に褶曲していた。

 滝の左の急な斜面を上った。四十八滝の最後は、「一の滝」と「二の滝」。滝そのものは小規模だが、丸い滝つぼがおもしろかった。
 滝の左の大きな岩盤を、くさりにつかまって上った。上り切ったところに、ヒトツバの小さな群落があって、その中にヤマツツジが赤い花をつけていた。

肩が滝(上)と弁天滝(下) ヤマツツジ

 滝の上に出て、沢に沿った道を進むと標識があった。谷を離れて左へ折れると小金ヶ嶽へ続く縦走路。そちらには曲がらず、そのまま谷沿いに進むと草原の中に細い踏み跡があった。その先の二股を右へ進んだ。
 踏み跡は、小さな流れに沿って続いていた。小鳥の影が、木漏れ日の雑木の中を走った。遠くでツツドリが鳴いていた。やがて、渓に水は枯れ、浅くなった谷を上り詰めると、いくつかの踏み跡が交差する地点に出た。
 起伏が緩く、地形が分かりづらい。マップとコンパスを頼りに、強引にヤブをこいだ。雑木のすき間からわずかに見える地形で方向を修正し、予定の尾根に乗った。
 見え隠れする踏み跡を探しながら、その尾根を進んだ。その踏み跡は、明瞭な切り開きとなった。

 570mピークを超えて次のコルに下っていると、突然前方が開け、八ヶ尾山が現れた。雄大な八の字、山全体が深い緑に包まれ登路の見当もつかない。
 コルから、急緩を繰り返す尾根道を進み、少しずつ山頂に近づいていった。足元の葉の裏からキシタエダシャクが次々と飛び出し、狭い切り開きを乱れて舞った。1匹のキンモンガが、落ちた枯れ枝にじっと止まっていた。

登路から仰ぐ八ヶ尾山 キンモンガ(左)とキシタエダシャク(右)

 尾根は次第に岩がちになり、尖ったチャートが地表に突き出るようになった。いくつかの岩を乗り越えて、八ヶ尾山の山頂に達した。

 山頂は広く切り開かれ、その中に白いポールが立っていた。ポールには、いろいろな方向を向いた板が打ち付けられ、その板にはWashington11149、Sydney7858などと記されていた。
 ここからは、ぐるりと360度、どこだって見えた。東西に連なる多紀連山、その北には氷ノ山、千ヶ峰、粟鹿山、京都丹波の三峠山や長老ヶ岳……。多紀連山の南には、京都の地蔵岳、愛宕山、天文台を乗せた大野山……。
 巻雲・巻積雲を浮かべていた空の下層に高層雲が北西から広がり始め、日もしだいに翳ってきた。幾重にも重なった山々も、しだいに白っぽくなってきた。

 山頂から東尾根を下った。ほとんど踏み跡のない尾根のヤブ歩き。急斜面に岩場の連続。やっとの思いで、尾根の末端からイヤ谷に下り着いた。

八ヶ尾山山頂より大野山方面

八ヶ尾山山頂より毘沙門山・櫃ヶ嶽
写真中央奥に愛宕山・地蔵山

山行日:2007年6月23日
筱見四十八滝キャンプ場(上筱見)〜筱見四十八滝〜Ca.600mピーク〜570mピーク〜八ヶ尾山山頂〜イヤ谷〜小原〜筱見四十八滝キャンプ場
 筱見四十八滝から西へは、多紀連山の縦走路が通じている。今回は、その反対方向、東へ八ヶ尾山をめざした。
 四十八滝のかかる渓をそのまま上り、二股を左に進んで源流まで遡る。小さなコルにたどり着くが、小道が現れ地形も不明瞭なので、いったんCa.600mピークに上り、そこから東へ尾根をたどった。やがて尾根上に切り開きが現れ、それは八ヶ尾山山頂まで続いていた。
 八ヶ尾山山頂からは、東尾根を下った。東尾根には道がなく、険しい岩稜のヤブこぎとなった。
■山頂の岩石■ 古生代ペルム紀〜中生代ジュラ紀  丹波層群U型地層群三尾コンプレックス チャート

 三嶽や西ヶ嶽に分布する丹波帯のチャートが八ヶ尾山へ連続している。
 四十八滝も、チャートでできている。「大滝」の下では、見事に褶曲した層状チャートが見られた。
 八ヶ尾山山頂西(標高600m)で採集した緑色のチャートは、ハンマーで叩くと貝殻状断口を示して薄くはがれるようにして割れる。一見オパールのように見えて美しい。
 八ヶ尾山山頂は、淡灰色と淡赤色が縞模様をなす層状チャート。チャートを割ると、径2〜3mm程度の放散虫の化石が、透明な円形の模様として見える。

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