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宰相ヶ岳(500.5m)・羽束山(524m) 三田市 25000図=「木津」「武田尾」 夏の花咲く羽束三山
朝から時おり、ポタポタと雨が落ちていたが、車を降りた頃には薄日が射し始めていた。
ダムの左岸を回り込むと、山道が小さな渓流に沿ってついていた。あたりはしっとりと湿り、ドクダミの白い花が暗い林内に際立っていた。 道は、左岸から右岸へと渡り、やがて渓流から離れて、水音も小さくなった。道の両側からリョウブやクロモジの枝葉が張り出してきた。 足元の葉の裏から、うす茶色の蛾が次々と飛び立ち、ホタルガが林内を漂った。 クモの巣を払いながら、湿気に蒸す山道を登った。道は岩がちとなった。ときどき、木漏れ日が林内に差し込み、岩の上のコケを明るく照らした。木の上からは、オオルリの澄んださえずりが聞こえていた。 道の傾斜はしだいに大きくなり、ロープをつかんで登ると峠に達した。四方から山道の集まった峠は、風がよく通った。 ここから西へ、宰相ヶ岳に向かった。ヤブツバキやシキミの間を、はっきりした小道が真っ直ぐに上っていた。 ひと登りすると道は平坦になり、少し下ったと思うと再び急な上りとなった。標高差50mを一気に登り詰めると、宰相ヶ岳の山頂に達した。 山頂は、三角点の周りが小さく伐り開かれ、その周りをコナラやクリの雑木が囲んでいた。山頂を少し通り越したところに、展望のよい岩場があった。南東に、羽束山が壁のように立って迫っていた。羽束山はすぐそこなのに、その山肌は濃い水蒸気に白くかすんでいた。羽束山の右に布見ヶ岳や大岩山がくすみ、その奥に大峰山がさらに薄くなって重なっていた。イワツバメが山頂をかすめ、トビが風に乗って空高く舞い上がった。
2、羽束山へ
ようやく傾斜が緩くなって、スギの木の下をくぐると、そこは羽束山の山頂部で観音堂が建っていた。境内には古いイチョウの木が立ち、その下の草地にはコナスビやトキワハゼが小さな花をつけていた。 観音堂の南には、鐘撞き堂が建っていた。鐘の音は、長く響いて周囲の木立に吸い込まれていった。鐘撞き堂の南がこんもりと高くなっていて、ここが羽束山の山頂だった。 山頂は木々の中で、ホオノキやウラジロガシがそびえるように立っていた。数枚の小さな山名プレートが、木々の枝に掛けられていた。
山頂を下ると羽束神社が建ち、その南に細長い広場が開けていた。日陰をえらんで、広場の岩に腰かけた。山のへりには、オカトラノオが白い花をつけ、ニガナやコオニタビラコが黄色の花を風に揺らせていた。
ひと休みしたあと、広場から手すりロープに沿って南に進むと、地面に大きな岩が広がっていた。岩の先に立つと、目の前に大きく展望が広がった。 眼下には、依然として白くかすんだ丘陵が小さな山々を乗せて横たわっていた。遠くには、六甲の山脈が薄い青みを帯びた山影となって稜線を広げ、その上には夏雲が湧き始めていた。 道はここで消え、立ち入り禁止の看板もあったので、神社に戻って、その脇から下った。
3、香下寺へ 丁石の立つ古くからの参拝道が、急坂をつづらに下っていた。道の両側には、スギやモミの大木が立っていた。一丁から始まった丁石が四丁を過ぎたところで傾斜がなくなり、五丁を過ぎると石仏が現れた。やがて、お地蔵さんの立つ六丁峠に達した。 ここから、少し南に足を伸ばして甚五郎山に寄った。甚五郎山の山頂には、腰掛けるのにちょうどよい岩がひとつ、コナラの木の下に飛び出していた。木漏れ日が林内に差し、風に枝葉のこすれる音が聞こえるだけの静かな山頂であった。 六丁峠に戻り、つづら折れの石段を下った。丁石は、いつの間にか十丁になっていた。十一丁を過ぎると、ようやく傾斜が緩くなり、十二丁でアジサイの咲く香下寺にたどり着いた。 山行日:2011年6月30日
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| 木器荘苑登山口〜峠〜宰相ヶ岳(500.5m)〜峠〜羽束山(524m)〜六丁峠〜甚五郎山(432m)〜六丁峠〜香下寺 | ||||||||||||||||||||
| 木器荘園の住宅地の最上部から、南に進んで宰相ヶ岳と羽束山をめざした(地形図実線路)。峠から宰相ヶ岳へも、羽束山へも明瞭な道がついていた。 羽束山からは、参拝道を香下寺へ下った。香下寺からは、デポしておいた自転車で元の登山口へ戻った。 |
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| 山頂の岩石 後期白亜紀 佐曽利凝灰角礫岩層 流紋岩質溶結火山礫凝灰岩 |
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| 宰相ヶ岳と羽束山の周辺には、佐曽利凝灰角礫岩層が広く分布している。宰相ヶ岳山頂で見られた岩石は、結晶質の流紋岩質溶結火山礫凝灰岩である。石英(最大5mm)、長石(最大3mm)、黒雲母(最大1mm)の結晶片を多く含む淡褐色の岩石である。黄土色の粘土鉱物に変質した長さ10mm程度のレンズが見られる。また、黒色のチャートの岩片が含まれている。 羽束山山頂にも同様の岩石が分布している。溶結火山礫凝灰岩の中に、砂岩や頁岩の岩片が観察された。 |
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