馬船丸山(515.5m)・御所山(520m) 神河町・市川町 25000図=「寺前」「粟賀町」
ヒカゲツツジ咲く春の山頂
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市川の畔から望む御所山山塊
(右端が馬船丸山、その左奥が御所山、左端が401.9mピーク) |
神河町新野の集落の西に、馬蹄型に尾根を連ねる山並みがある。
尾根上には幾つかのピークが並んでいるが、どの地形図にもそれらの山名は記されていない。地元では、正法寺のある谷を御所谷と呼び、その奥の山を御所山(520m)と呼んでいる。また、登山口の案内板には、515.5mの三角点から南東に伸びる尾根に馬船丸山尾根と記されている。
山々に瑞々しい新緑が萌え広がる春の一日、この山並みを歩いた。
登山口は、比延の「はにおか運動公園」。ここから送電線鉄塔の立つ尾根上の地点に出て馬船丸山に達し、そこから南東に尾根を下って御所谷に至るルートが最近ハイキングコースとして整備された。
金網のゲートを開いて山に入った。後ろから、少年野球の掛け声が聞こえてくる。
ハイキングコースは始め、林道(西脇谷林道)を利用している。道端には、ヤマエンゴサク、タチツボスミレ、カタバミ、カキドオシ……春の花が咲き競っている。ミツバツチグリの黄色の小さな花が陽光をつややかに照り返していた。
道は大きく屈曲して谷川を渡った。谷川の水は、昨日までの雨を集め、勢いよく流れていた。
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次の屈曲点には「鉄塔へ35分」の標識が立ち、そこから杉林の中に小道が新しくつけられていた。これがハイキングコースの小道であるが、地形図にある峠に出たくて、そのまま林道を上った。
林道は標高270mの地点で終点となった。そこから、沢に沿って少し上ってみたが、伐採された杉の幹に行く手をふさがれた。標高290mの二股で引き返す。
林道終点の手前にも、新しい道が雑木の斜面につけられていたので、この道を上ることにした。
斜面の急なところには丸太階段、小さな谷を渡るところには丸木橋が架かっている。急登後、山の斜面をトラバースするように上ると小さな尾根に達した。
尾根を九十九折れに上る。ヒノキ林を透かした木漏れ日が、凝灰岩が風化してできた黄土色の土の上に落ちた。土は水を含んでふわふわと柔らかい。歩くのには気持ちがよいが、補修を怠ればすぐに消えてしまいそうな道である。
標高370mで浅い谷に出合ったところで、この道は唐突に途絶えた。その浅い谷を真っ直ぐ上った。ヒノキの枝葉におおわれ、林間は薄暗かった。
前方の斜面を見上げると、木々の幹の先に、陽光に照らされたシダの緑とその上の青空が見えた。植林が途切れ、尾根までウラジロを分けようと思ったとき、一本の道に出合った。林道の屈曲点から上ってきた道がここへ伸びてきていた。
この道を上ると、すぐに尾根の送電線鉄塔に出た。
鉄塔の下は、北によく開けていた。市川が南北に流れ、JRの線路がそれに沿って伸びている。市川には、西から小田原川、東から越知川が合流し、それらの流れが沖積平野を広く発達させている。
城山、大嶽山、初鹿野山……、平野部には四方から山々が山脚を下ろしている。山々は幾重にも重なり、平石山・段ケ峰・白岩山・笠型山などが遠くを取り巻いていた。
ゴトゴトという電車の音が風に乗って上ってきた。見下ろすと、寺前駅にえんじ色の電車がゆっくりとすべり込んでいった。
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| 尾根へ |
鉄塔下から北を望む |
鉄塔から、尾根上に道が開かれていた。新緑萌える雑木の道。ショウジョウバカマが咲いていた。
幾度かアップダウンを繰り返して進むと、標高515.5mの馬船丸山の山頂に達した。花こう岩でできたまだ新しい標石の横に、山名ではなく「三角点」と書かれた標識が立っていた。
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| ナガバタチツボスミレ |
ショウジョウバカマ |
ハイキングコースは、ここから南東尾根を下っているが、そのまま下らずに、さらに御所山をめざした。
少し戻って、南への踏み跡に分け入ったが、その踏み跡はヤブに消えた。うまく尾根に乗ったと思ったが、それは町界尾根のひとつ東の小尾根のようだった。
木々の枝やトゲと格闘しながら下っていくと、流れの音が聞こえてきた。御所谷を流れる沢の源頭部である。沢まで下りて少し遡ると、目の高さに切り開きがあった。ウラジロをつかんで、体をこの切り開きに引き上げた。この町界尾根の切り開きを南へ進んだ。
もう少しで、御所山の山頂というところに、黄色の花が散っていた。見上げると、一本のヒカゲツツジの木。そして、その先にヒカゲツツジの小さな群落があった。時、ちょうど満開。桃源郷を翔る思いで御所山の山頂に達した。
御所山の山頂は、一筋の切り開きの道が通っているだけであった。アセビの枝先の新葉は、まだ開きかけたばかり。ネジキの若葉も、まだ十分には広がらずに、その裏表に銀色の毛が光っていた。
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| ヒカゲツツジ |
御所山から、さらに尾根道を南へ進んだ。木が疎らになったところでは、西に大中山が大きく、その左に七種の山々が望めた。ところどころに、角のとれた岩が飛び出している。花こう岩がつくる地形らしくなってきた。
486mピークは、コバノミツバツツジの赤紫色の花に包まれていた。このあたりから切り開きはしだいにあやしくなってきた。花こう岩が古代遺跡のように積み重なる小さなピークを越えて進むと、401.9mの三角点が埋まっていた。
もうここからは、尾根も完全にヤブに埋まった。途中、大きな岩の上に出てからは、町界尾根を離れて、真っ直ぐ北に下った。
ヤブの混沌を抜けてようやく下りついたところに、正法寺が端正な佇まいで建っていた。
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486mピークから北を振り返る
(右に馬船丸山、左に御所山) |
御所谷の上の稜線より北東を望む |
山行日:2008年4月20日