五峰山(258.4m)・角尾山(343.8m)・引尾山(279.3m)
加東市・西脇市     25000図=「西脇」


名刹光明寺から尾根を辿って三つの峰へ

角尾山山頂

 加古川中流の名勝、闘竜灘の西に緩やかな山容で広がる五峰山(ごぶさん)。五峰とは、宿尾・明星が辻・経の尾・大岩・弥木場の五つの峰をさす。
 実際、標高250mから300mの峰がいくつも連なるが、5つの名のそれぞれがどの峰をさすのか分からない。一般には、258.4mの三角点をもつピークが五峰山とされている。
 また、その山稜がちょうど扇をひっくり返したような形をしていることから、地元では扇山とも呼ばれている。
 白雉2年(651年)、法道仙人がこの山に修験の道場として光明寺を開いた。南北朝時代の戦い(光明寺合戦)の場でもあり、その本陣跡が光明寺本堂のすぐ裏手にある。

 光明寺石門からコンクリートの急坂に足を踏み入れると、うっそうとした森の中に入った。スダジイ・コジイ・アラカシの巨木が茂る見事な照葉樹林で、「ひょうご森林浴場50選」にも指定されている。
 見上げれば、スダジイの樹冠が幻想的な模様をつくっていた。カエデの若葉はまだ初々しい。
 多聞院、遍照院、大慈院などを左右に見て坂を登ると、銅板葺屋根の光明寺本堂がシイの森の中に鎮んでいた。

光明寺山門とシイ・カシの森 五峰山本堂

 本堂裏手の光明寺合戦本陣跡から、自然林の小径を進むとすぐに鉄塔下に出た。そこから、平坦な道を西に進むと、「五峰山三角点」と「高倉・奥の谷コース」の分岐点に出た。
 五峰山
に向かい、最後の坂を登り切ると、五峰山山頂三角点(258.4m)が、ササの中に埋まっていた。
 山頂は、クヌギやツツジに囲まれて眺望は開けなかった。播磨中央公園付近で開かれているマラソン大会のアナウンスが聞こえてくる。梅雨入りしたばかりの曇った空が、ほんの少し明るさを増してきたようであった。

 分岐に戻り、角尾山をめざした。地形図の破線路である。少し歩くと、十字路コルに着いた。地形図では破線の三叉路であるが、北に角尾山をめざす道がついていた。
 稜線上のこの道は、狭いが明瞭だった。両側から張り出す濡れた枝葉、払っても払ってもまとわりつくクモの巣……。快適とはいえないが、久々の山はやっぱりいい。
 ピンク色をしたモチツツジの名残の花、露に濡れたササユリの花、赤茶けた凝灰岩の岩盤にアカマツという岩尾根の景観……。湿った山の空気をいっぱい吸いながら歩いた。

モチツツジ ササユリ

 急な坂には、何カ所かロープが吊されていた。いくつかの小さなピークを越え、送電線のすぐ手前の分岐に着いた。右へ「奥の谷コース 光明寺地区」の道標がある。
 左へ進み、ここまでよく目立っていた岩稜の320mピークを越すと、初めて角尾山の山頂が見えた。

角尾山への稜線
(中央手前:280ピーク、左奥:320mピーク、
角尾山はさらにこの奥にある)

 大きな岩塊がいくつも転がった高みが、角尾山の山頂であった。山頂は、眺望が四方に開けていた。東に、光明寺合戦の舞台の一つ引尾山や鳴尾山が座り、その奥に東播磨の山々が、梅雨空に薄く白い稜線を連ねていた。
 山頂の岩の上に立つと、街並みや田植えの終わったばかりの田園風景が眼下に近い。野間川が、ゆるやかにうねって流れている。涼しい風が、麓から吹き上がってきた。


角尾山山頂から北を望む

 角尾山山頂からは、北東へ八坂町に降りる破線路が地形図に描かれている。しかし、急斜面のヤブの中に、この道は見つからなかった。
 そこで、「奥の谷コース 光明寺地区」の分岐まで戻り、西脇市と加東市の境界を東へ進んだ。

 引尾山の三角点(279.3m)は、小径の傍らにひっそりと立っていた。
 引尾山を越えて進むと、標高250mで破線路をはずれた道が、南東尾根を八王子池の土手まで続いていた。

山行日:2000年6月11日

※ 五峰山の山名については、滝野ケーブルコミュニケーションの西山修三さんに多くを教えていただきました。

※ その後、西山修三さんから、次のようなメールを頂きました。丁寧に教えていただいて感激です。ありがとうございました。

先日、五峰山光明寺の大慈院の老僧に出会うことができ、五峰山
のいわれについて聞くことができました。

五つの峰の場所
大岩・・・・遍照院の裏に稲荷神社があり、そこに大きな岩がある。
      大岩稲荷と呼ばれている。
宿尾・・・・本堂のあるところ付近
明星が辻・・大慈院の西、東光苑と呼ばれる見晴らし台
       一番、開けており、星がよく見える場所
経の尾・・明星が辻から下、なだらかな様がお経のよう。
弥木揚・・場所不明。花蔵院の裏か駐車場の下付近か?

記録として何も残っていない。
夢のない話しですが、五峰山の名前が先にあり
あとで、五つの峰を指定した可能性もあり。

こんな話しでした。
何かの参考になれば幸いです。

2000年9月26日


光明寺山門駐車場〜五峰の細道〜光明寺本堂〜五峰山山頂(258.4m)〜200mコル(十字路)〜272mピーク〜送電線手前分岐〜角尾山山頂(343.8m)〜送電線手前分岐〜引尾山山頂(279.3m)〜八王子池〜光明寺山門駐車場
 播磨中央公園の北を東に進むと、表参道石門に達する。(ここからは、「扇山コース入り口」との道標のある小径が、五峰山山頂に向かって伸びている。)石門を通り、五峰の山麓を巻くように車で進むと、山門下の広い駐車場に着いた。
 ここから光明寺本堂までは、表参道。光明寺裏の本陣跡から、尾根に沿って自然林の中を小路が通じている。
 五峰山、角尾山、引尾山と巡り、八王子池に下った。

山頂の岩石  白亜紀 有馬層群玉瀬溶結凝灰岩層  流紋岩質溶結凝灰岩
溶結凝灰岩の露頭
溶結構造に沿って割れ目が発達している
 五峰山付近には岩石の露出が乏しいが、五峰山から角尾山までの尾根や角尾山山頂に好露頭がある。
 岩石は、流紋岩質の溶結凝灰岩である。石英・長石の結晶片が多く含まれ、黒雲母や角閃石も認められる。基質は赤褐色や灰色をしていることが多い。
 表面を観察すると、押しつぶされた火山ガラスが風化して抜け落ちた細長い穴が同一方向に並んでいることがあり、溶結凝灰岩であることが分かる。
 全体的に風化が進んでいる。また、尾根上に露出する岩盤は、珪化していることが多い。

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