八 幡 山 の 岩 塊 流
八幡山山上の岩塊流
 神河町猪篠の西にそびえているのが、八幡山です。「大歳神社」の少し南から播但連絡道路の下をくぐって山に取りつき、谷沿いに、あるいは尾根沿いに山頂を目指します。登山道はありませんが、スギやヒノキの植林の下は、下草がほとんど生えていないので、比較的短時間で山頂へ登ることができます。

八幡山の山頂部には、不思議な光景が広がっています。山頂のすぐ南西は、緩い斜面が広がりその底が小さな平坦面となっているのですが、ここに大きさ数10cm程度の岩石(最大長径1m50cm)が積み重なって岩の流れのように並んでいるのです。どのようにして、このような景観が生まれたのでしょうか。


 

岩塊流の谷
 
岩塊流最大の岩石(長径1m50cm)
 かつて、地球に氷期が訪れた頃、このあたりの気温も7〜8℃低かったと考えられています。高い山の上では、岩石の割れ目に入り込んだ水が夜間に凍り、体積が増えることによって岩石の破砕が進みました。このようなはたらきを、凍結破砕といいます。砕かれた岩石は、凍結と融解を繰り返し粥状になって流動化した斜面の土の上を滑り動いて、谷間に集まります。八幡山山頂に見られる岩石の流れはこのようにしてできたもので、これを岩塊流といいます。岩石は、緻密な安山岩で、ハンマーでもなかなか割れません。しかし、このような硬い岩石であっても、長年にわたって地表に出ていると、表面から風化してしだいにひび割れていきます。ここに見られる岩石は、ちょうどタマネギの皮をむくように外側からはがれ落ちるような風化のしかたをしています。どの岩石も丸みを帯びているのは、このためです。

八幡山山頂部の岩塊流は、長さ30m、幅15m程度の小規模なものですが、兵庫県内では峰山高原や、段ケ峰などでもっと大きなものが見つかっています。岩塊流は、氷期の地形形成機構を示す貴重なもので、私たちに自然の営みの不思議さを教えてくれます。

八幡山の山頂は、細長い平坦地となっています。ここにも、ひとかかえもあるような岩石が多くのっています。山頂部や尾根上では、地表の土が流動化した氷期であっても、岩石がどちらの方向にも滑り落ちることができないので、このように残ることがよくあります。
 

岩石の風化のようす
  
どの岩石も同じ安山岩からできている

■岩石地質■ 後期白亜紀 生野層群 安山岩
■ 場 所 ■ 神河町 25000図=「生野」
■探訪日時■ 2004年12月2日

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