淡路市の岩屋港の東にある絵島は、高さ約20mの小島である。『古事記』では、イザナギ・イザナミの二神が海原を天の沼矛(ぬぼこ)でかき回して造った最初の島『おのころ島』に降り立ち、国生みを始めたという。その最初の島『おのころ島』が、淡路島とも沼島(南あわじ市)ともこの絵島ともいわれている。絵島は、郷土記念物にも指定され、島に渡る橋、夜間ライトアップ用の照明、説明板などが整備されている。
橋を歩き、海食台である平地に渡る。この島は、約3500万年前(古第三紀始新世)の岩屋累層の砂岩からできている。この砂岩は、淘汰のよい(粒の大きさが揃った)灰色の砂岩で、手で触ってみるとざらざらした感じがする。地層中には、様々な赤褐色の模様ができている。これは、地層中の鉄分が割れ目に沿って浸み出し、風化によって褐鉄鉱に変化してものである。小さく壊れた二枚貝の化石が含まれている部分もあった。地層中からまん丸く飛び出した褐色の玉は、ノジュールと呼ばれるもの。ハンマーで割れば化石を見つけることができるかもしれないが、郷土記念物には手を出せない。
海食台にはベンチもあり、目の前の明石海峡や海峡を行き来する多くの船をゆっくりと眺めることができる。島の頂上には、石の鳥居や石塔が見えるが、登上禁止となっていた。釣り竿を出している人が何人かいた。聞いてみると、小さなアブラメやベラが釣れたということである。
「千鳥なく 絵島の浦にすむ(澄む)月を 波にうつして見るこよいかな」(西行法師)……古人もその優美さを讃えた島は、今も明石海峡の荒波にたえて立っていた。 |