ダルガ峰A(1163m)・大海里(1206.8m)・駒ノ尾A(1280.7m)
宍粟市・岡山県西粟倉村・美作市 25000図=「西河内」
ちくさ高原スキー場から駒ノ尾へ、スキー&スノーシュー
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| 駒ノ尾山頂(正面に那岐山) |
日本海側に大雪をもたらした冬型の気圧配置もくずれ、西日本には高気圧が張り出してきた。ちくさ高原スキー場の上空には、名残の積雲が列をつくり、その間に青い空がのぞいていた。
シールをはろうとスキーを立てると、朝の弱い陽射しが雪面にスキーの影を落とした。
スキー場を背にし、「後山・駒ノ尾」の標識から新雪に踏み込むと、柔らかい雪にスキーが大きく沈んだ。もう、この瞬間、今日は駒ノ尾までと決めた。
スギ林の中のラッセル。雪の下は玄武岩なので、コンパスはあてにならない。地形図とときどき現れる赤いひもをたよりに、南へ進んだ。
スギの枝に積もった雪が風に吹き飛ばされ、粉雪のように舞った。今日の風は東風。平らな雪原を進むと、やがて東側が切れ落ちてきた。
スギの中に、ネジキやリョウブ、ウリハダカエデが混じってきた。幹が幾本にも分かれた大きなブナが立っていた。蘚苔類におおわれた緑色の樹皮は、西側だけ雪を白く張りつけている。その彩りが鮮やかだった。
東側が自然林となり、ダルガ峰の山頂が近づいた。山頂の手前でコース取りを誤り、潅木帯に入った。ズボッとスキーが雪の中に入り込んで、なかなか抜けない。雪面に上がるためにスキーをはずすと、腰まで雪に埋まった。
ダルガ峰の山頂の標柱は、半ば雪に埋まっていた。西側が伐採地で、展望が開けている。雪をのせた那岐山が、尾根を両側に広げていた。
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| スギ林に立つブナ |
ダルガ峰山頂より那岐山を望む |
ダルガ峰の南は、急な下りで木々も道に迫っている。ここで、スキーをスノーシューにはき替えた。スノーシューもだいぶ雪に沈んだが、雪だまを転がしながらずんずんと坂を下った。
コルまで下り、またスキーに切り替えた。このあたりから大海里のピークを西に巻く道があるはずだが、その入り口が分からない。(入り口はコルのすぐ上にあって、尾根から西に分岐し斜面を緩く上っている。入り口の手前5mぐらいのところに立つヒノキの幹に赤いテープが巻かれている。以上、下山に確認。)
そのまま、尾根を大海里に登ることにした。傾斜が増すと、斜登行を小さく繰り返した。Ca.1160mの小ピークを越すと、左右が自然林とヒノキ林に分かれた。ヒノキ林の中では、ヒガラがもうさえずっていた。ノウサギの足跡が現れた。昨日までの嵐がおさまり、、森の動物たちも動き始めた。
下から仰ぐ大海里は高くそびえていた。真白い雪の斜面に、ブナ、ミズナラ、ウリハダカエデなどが散在している。北面につく雪は少なく、新雪の下のクラストした面でスキーが滑った。あえぎながらの登行。ノウサギは、こんな急な坂をまっすぐに駆け下りていた。
大海里の山頂は、白くて丸い丘。展望が開け、北東に三室山が高く厳しく立っていた。氷ノ山に双眼鏡を向けると、千本杉が白いモンスターとなって並び、三の丸の避難小屋の屋根が陽光を反射して光っていた。
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| 大海里への急登(ノウサギが駆け下りている) |
大海里より東山(左)と扇ノ山(右)を望む |
再びスノーシューに切り替えて、大海里を南に下った。大海里の南面は急角度で落ち込み、背の低い木を雪が隠して、雪面がもこもこと盛り上がっている。
狭いところを抜けようとすると、背に負ったスキー板が枝にぶつかり、なかなか前に進めない。どこを抜けようかと迷っていると、イノシシか何かの獣の通った跡が溝になって下へ落ちているのを見つけた。
そこだけがトンネルのようになって、もつれあう木々の間を抜けている。私も、その跡を落ちるようにして下った。
傾斜がゆるくなって潅木帯を抜けると、大海里峠。峠の手前に、中国自然歩道の標識が立っていた。ここが、大海里の巻き道の南側入り口である。帰りは、絶対、この道を行こう……!
ここからまた、スキーをはいた。やはり、スキーの方が速い。またも急登が始まった。スキーが後ずさりしないように、雪を強く踏みしめなければならなかった。
もう大分疲れてきた。数歩登っては立ち止まって、呼吸を整えた。ようやく登った1211mの小ピークには、「駒ノ尾山700m」の標識が立っていた。
もうひと登り。雪が深く、ラッセルが重い。一歩ごとに、雪が沈む音を立てる。立ち止まると、あたりは静まり返った。遠く上空から、飛行機の飛ぶ音だけが聞こえてきた。
コンクリートでつくられた避難小屋が建っていた。避難小屋の手前で、方向を西へ変えると、青い空と駒ノ尾の白い山頂が見えた。
駒ノ尾の山頂は、昨日までの風で雪面が大きく波打っていた。さえぎるものがなく、ぐるりと四方に展望が開けていた。那岐山、沖ノ山、東山、扇ノ山、氷ノ山、三室山……。どの峰も、光を浴びて白く輝いていた。
山頂には誰もいなかったが、岡山県側から何人かが登ってきた跡があった。
青空に積雲が何列にもなって並んでいる。風はほとんどなく、空気は冷たくしまっている。まだ、下山の行程が残っているが、ここまでのトレースをたどれば、無事に帰ることができるだろう。この好天に感謝した。
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| 駒ノ尾へ |
駒ノ尾山頂(後に東山) |
山行日:2010年2月7日