麻生山(173m)〜仁寿山(175.2m)            姫路市     25000図=「姫路南部」 

麻生山から仁寿山へ凝灰岩の地層を歩く
写真上:仁寿山
写真左:麻生山(麻生八幡神社東の池より)

 麻生山(あさおさん)と仁寿山(じんじゅさん)は、姫路市街地の東、市川の河口近くに並んで立っている。姫路バイパスを走る車の窓からもよく見えるこの二つの小さな山を結んで歩いた。

 麻生山は、その整った円錐型の山形から「播磨の小富士」と呼ばれている。ふもとの池の畔から見える麻生山は、両脇に小さな高みを従えてその名にふさわしい姿で立っていた。緩やかな春の風に乗ってモンシロチョウがたわむれていたが、その風が起こすさざ波で水面に映る「逆さ富士」がそよそよと揺らいだ。

 麻生八幡神社と池の間を進むと、登山口に「麻生山520m」の標識があった。ここから、凝灰岩の岩盤の上に道がついていた。コバノミツバツツジの花はすっかり落ち、モチツツジの花が咲いている。道はやがて谷間から離れ、方向を変えて山の東斜面につづらに上っていた。
 すぐに高さが10mほどもある大きな岩が現れた。凝灰角礫岩でできた岩は、2〜10cm程度の火山礫・火山岩塊を多く含み、これが突出しているために岩の表面がゴツゴツしている。中央の割れ目に沿ってクサリが岩の上から垂れ下がっている。ちょっとしたスリルを味わいながら、このクサリをつたって岩を登った。岩の上には、ガマズミが白い花を付けていた。
 大岩を越えると、階段状の岩が山頂近くまで続いている。凝灰岩や凝灰質砂岩・泥岩がきれいに成層し、その水平に近い層理面に沿って岩が割れて、ちょうど歩きやすい階段になっているのだ。凝灰岩の層理面がこんなにきれいに見えるのは、このあたりでは珍しい。ところどころに、マルバアオダモの白く小さな花がやさしく群れ咲いていた。

大岩の上に咲くガマズミ 階段状になった凝灰岩の道


麻生山山頂
 坂を上りきると、山上の華厳寺にたどり着いた。両側に石仏の並ぶ境内を通って、裸地の広がる麻生山山頂に出た。
 4人の先客に混じって、裸地の先の岩の上に立った。そこは、海に向かっていた。下は、コブのように盛り上がった岩が幾つも重なりながら急角度で切れ落ちている。
 眼下には、白浜の街や海岸の工業地帯。小赤壁から北に伸びる細長い丘は、瑞々しい新緑でおおわれている。にぶく光る播磨灘には、上島やクラ掛島がぽっかりと浮かび、遠くに淡路島や小豆島が霞んでいた。
 海から吹き上げてくる緩やかな風は、下を走る車の低い音までいっしょに運んできた。


 麻生山を西へ下り、コルからそのまま真っ直ぐ仁寿山へ上った。
 仁寿山の植生は極めて貧しい。下草の上に、ツツジやヒサカキなどの低木がまばらに生え、ソヨゴやヤマモモの木も小さい。ふもとから見ても、まばらな草木を透かして地肌が見えている。凝灰岩の風化によって作られた小石混じりの褐色の土壌はやせていて流れやすい。播磨には、このようなやせた土壌に貧しい植生といった山が多く、「播磨のはげ山」と呼ばれている。
 仁寿山の山頂には電波塔が林立している。三角点は、NHKの電波塔を囲む金網の中に上面だけを出してコンクリートに埋まっていた。こんな山にも、とある山岳会の登頂プレートが1枚掛かっていた。

麻生山を仁寿山の尾根より望む 仁寿山校土塀跡

山行日:2003年4月27日

山 歩 き の 記 録

麻生八幡神社〜麻生山登山口〜クサリ場(大岩)〜華厳寺〜麻生山山頂(173m)〜麻生山・仁寿山コル(十字路)〜仁寿山山頂(175.2m)〜Ca.160mピーク〜送電線鉄塔〜仁寿山校跡(地形図記念碑の記号)〜麻生八幡神社

 麻生山南麓の麻生八幡神社と2段の池の間を進むと、登山口がある。ここから、地形図破線路に沿って谷間を北に進み、途中で方向を変えて山の東斜面を急登すると山上の華厳寺に達する。華厳寺の境内を海に向かって進むと、麻生山の山頂である。
 麻生山山頂からは、西へ下る(破線路)。コルは十字路になっていて、仁寿山の山頂へ真っ直ぐに続く道があったので、この道を上っていった。途中で車道を横切り、最初の電波塔を越えれば、すぐに電波塔の林立する麻生山の山頂であった。
 仁寿山山頂から南へ下る(破線路)。山脚の送電線をくぐって少し下ると、姫路バイパスに落ちる崖の上に出た。ここを下るのは、大岩をクサリで登るのよりはるかに恐い。送電線の鉄塔まで戻り、巡視路を利用して東へ下る。巡視路は造園地内の作業道につながり、コル南の小さな池に出た。ここから、仁寿山校土塀跡、仁寿山校址碑の前を通って麻生八幡神社に戻った。

   ■山頂の岩石■ 流紋岩質凝灰岩 (白亜紀 相生層群伊勢累層)

麻生山山頂に露出する凝灰岩
 麻生山、仁寿山には、相生層群伊勢累層が分布している。2つの山とも、岩肌がむき出しになっている部分が多いので、尾根を歩いていてもよく岩石が観察できた。

 岩石は、凝灰岩・火山礫凝灰岩・凝灰角礫岩から成り、一部に泥岩や凝灰質砂岩を挟んでいる。凝灰岩がきれいに成層し、層理面がはっきり分かるのが、麻生山の岩石の特徴である。一部で、軽石がレンズ状に引き伸ばされた溶結構造が観察された。
 麻生山の山頂付近の凝灰岩中に、コロコロと丸い「火山豆石」が観察された。

 麻生山山頂には、明灰色の凝灰岩の地層が露出している。1〜2mm程度の濃緑や白の火山灰の粒が基質の中に多く含まれ、引き伸ばされた軽石のレンズ(最大10mm)を部分的に含んでいる。


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