有馬富士(374.0m)  三田市     25000図=「三田」「藍本」


福島大池の水鳥と岩場の山頂・有馬富士


有馬富士と福島大池

 三田市の有馬富士公園は、野鳥の観察と軽い山登りが楽しめる。それに、地質の観察も・・・。

 公園の駐車場から、パークセンターの脇を抜けて自然学習センターへ入る。自然学習センターを出た展望デッキから、公園が一望できた。

 森の中にたたずむ福島大池は青い空を映している。その向こうに、有馬富士の茶色やオレンジ色に染まった山肌が朝の光を浴びていた。

有馬富士公園パークセンター

 公園の散策道を歩いた。道は、自然が学習できるように整備されていた。ポイントを示す番号杭が50mごとに立てられていたり、木に名札が架かっていたりしていた。
 「鳥の道」に入ると、木のデッキ道となり、三角屋根の野鳥観察シェルターがところどころに造られていた。
 音を立てないように、デッキの上の落葉をそっと踏みながら進む。ホオジロがずっと鳴いていた。ヒヨドリも、朝からにぎやかだ。雌のジョウビタキが、くりっと可愛い目でイヌザンショウの枝先に止まった。

「鳥の道」の野鳥観察シェルター

 「鳥の道」から、「野鳥の広場」に入った。林床には、落葉の間からオカメザサが葉を伸ばしている。階段を登ると、紅葉や黄葉の木々に囲まれるように円形の建物「鳥の講堂」が建っていた。

 散策道を北に進み森を抜けると、福島大池が広がっていた。
 池の畔から、水鳥を双眼鏡で探した。今日はコンパクトカメラながら光学30倍というカメラを妻から借りてきた。これで、水鳥の姿を撮るのも楽しみだ。

 コガモが岸辺で15羽ほど群れていた。雄、雌ともに翼鏡の緑が金属光沢を放って鮮やかだ。そのうち、数羽の雌が水面を泳ぎ始めると、1羽の雄がそれを追った。

泳ぐコガモの列

 池の周りを西へ回り込むと、岸の砂の上にカワウが休んでいた。そのそばで、背中に頭を埋めているのがヒドリガモ。カワウもヒドリガモも動く気配がない。
 オナガガモが向こうからやってきた。優雅に水面を滑っては、逆立ちをして首を水底に伸ばすことをくり返している。
 水鳥の動きは、見飽きない。別のヒドリガモが、向こうから近づいてきた。
 自然学習センターでもらった、パンフレット「福島大池のカモ」に載っている「常連さんのカモ」は7種類。その中で、今日は3種類が見られた。

コガモ ヒドリガモ
オナガガモ カワウ

 有馬富士へ向かう道は、福島大池の東端から出ていた。池を離れ、ここから山道に入った。アベマキやコナラの落葉が積もる道。
 広葉樹の林を抜けると、芝生の広場に出た。

有馬富士(中央奥)を目ざす

 そこから、車道を東へ進む。山麓周遊道の入り口を通り越すと、その先に登山道の入り口があった。
  登山道に入ると、すぐに一つの古墳があった。石室が現れ、数枚の蓋石が崩れそうになりながら残っている。

有馬富士登山口

 道はよく歩きこまれていた。地面は削られて、木の根が道の脇から伸びている。植林されたヒノキはどれも細く、その間にアカマツ、ソヨゴ、アラカシなどの木々が広がっている。
 道に落ちている落葉を見つけながら歩いた。リョウブ、ダンコウバイ、ホオノキ・・・、どの落葉も新しい。木の上で、ヤマガラが鳴いた。

 道が急になり、丸太階段を登っていくと、広い道と合流した。頂上ではないのに、「頂上広場」。ここにも野鳥観察シェルターが造られていた。
 ムラサキシキブの葉や実に木漏れ日が射し、その色を鮮やかに浮かび上がらせた。

 そこから山頂へ向かった。道は急な岩場となった。岩の間にアカマツやアベマキの根がたくましく張り出している。このあたりは、「わんぱく砦」と名付けられいる。
 クジラの背のような大きな岩を越した。まだ、岩場は続いている。

「わんぱく砦」 岩と木の根の道

 岩の角や木の根をつかんで登っていった。平たい岩を一つ越し、木の根道をひと上りすると山頂に達した。

 山頂は南に開けていた。眼下に、有馬富士公園の森が広がっている。水鳥のいた福島大池も見える。そのずっと向こうには、六甲の山並みが稜線を引いていた。
 ハイカーが次々と上がってきた。ちょうど昼時。みんな同じ方向を向いて弁当を食べ始めた。

有馬富士山頂

 山頂から、北西への尾根につけられた登山道を下った。こちらも、はじめは急な岩場の道。岩の間に落葉が深く積もる。コウヤボウキの葉が揺れていた。
 岩場が切れると、丸太階段になった。青紫の実をつけたアオツヅラフジが、リョウブの木にからんでいた。
 峠で広い道に合流し、この道を福島大池に向かって下った。広葉樹の林の中を、エナガの群れが渡っていった。

山行日:2019年12月4日

有馬富士公園第1駐車場〜自然学習センター〜鳥の道〜野鳥の広場〜福島大池〜芝生広場〜有馬富士登山口〜頂上広場〜有馬富士山頂〜福島大池〜駐車場
 福島大池と有馬富士周辺は、有馬富士公園として整備されている。公園内には散策道が張りめぐらされ、有馬富士山頂へも、いくつもの小道が通じている。
 福島大池の東端から山道を芝生広場まで登り、そこから車道を東へ進む。有馬富士登山口から、登山道を山頂へ上った。
 山頂から登山道を北西へ下り、峠から広い道を福島大池へと下った。
 自然学習センターで、公園のマップがもらえる。

山頂の岩石 白亜紀後期 佐曽利層  溶結火山礫凝灰岩
福島大池西畔の溶結火山礫凝灰岩の地層
 福島大池から有馬富士にかけては、白亜紀後期の佐曽利層が分布している。
 山頂周辺の岩場の岩石は、褐色の溶結火山礫凝灰岩である。多量の石英・長石の結晶片と少量の黒雲母の結晶片を含んでいる。褐れん石が集斑状に集まっているところがある。
 また、流紋岩・チャート・頁岩の岩片を含んでいる。溶結構造は、明瞭ではない。

 福島大池の西端で、平らな岩盤として表れた広い露頭が見られる(写真左)。
 淡い緑色の弱く溶結した火山礫凝灰岩である。石英・長石・黒雲母の結晶片を含むが、その量は有馬富士山頂周辺に比べると少ない。数mm〜1cm程度の流紋岩や頁岩の岩片を少量含んでいる。この露頭の平らな表面は、凝灰岩の層理面である。
 佐曽利層は、およそ7000万年前の火山活動によって生じたカルデラ(佐曽利カルデラ)を埋めた火砕流堆積物と考えられている。
 この露頭について、現地の案内板やもらった地図に「流紋岩の露頭」とあるが、それはまちがいである。
 

「兵庫の山々 山頂の岩石」 TOP PAGEへ  登山記録へ