尼子山@(259.4m)    赤穂市         25000図=「相生」


若葉に包まれた尼子山

千種川の対岸から望む尼子山

 千種川の河川敷の空高く、ヒバリが舞っていた。風が少し強いが、よく晴れた好天の朝だった。
 民家の路地で登山口を探して迷っていると、後ろで「おーい!おーい!」と大きな声がする。振り返ってその声の主のところへ近寄ってみると、「尼子山?」と声をかけられた。うなづくと、尼子神社の前まで案内してくれた。
 ヤブツバキの花をくぐり、石段を登って社殿の新しくなった尼子神社へ。うしろの林で、クロツグミが鳴いていた。

 鳥居の横に、「尼子山城跡登山口」の標柱が立っていた。その標柱には、「尼子山城は尼子将監義久の居城であったが、永禄六年(1563)毛利元就に背後から攻められ落城。」とこの山の歴史。
 降り積もった落葉を踏んで、山道を歩いた。登山口から少し進むと、道の傍らに「尼子将監の墓」があった。かつての城主の墓は、古い土塀の中にやや傾いて立っていた。
 道は、墓のあるところで方向を北へ変えてゆるく上り始めた。常緑樹の濃い緑にコバノミツバツツジやリョウブのやわらかな若草色が混じる。林床にはコシダ。木漏れ日の差し込む緑の中を歩いた。

若葉のトンネル

 少し登ると、はげ山への分岐を示す標識が立っていた。そこからはげ山へ向かって斜面を登ると、すぐ山頂に達した。
 アカマツに囲まれたこの山頂は、かつては広くはげていた。節句などには村の人たちがここに集まって飲んだり食べたりしたと、ふもとで教えてもらった。
 山頂を少し越すと展望が開けた。河川敷に残してきた車が小さく見えた。近くでホオジロがさえずっていた。

はげ山からの景色

 分岐に戻り、尼子山をめざした。大きなヤマモモの木が立っていた。
 モチツツジの咲く急坂を登ると展望のよい所に出た。「4合目休憩所」の標識が立っていた。振り返ると、眼下にはげ山が低くなり、千種川が緑色の水をたたえていた。

モチツツジの花

 コシダの中の細い道を登った。道はいったんゆるくなり、また急になった。周囲の木々がしだいにまばらになり、背も低くなってきた。強い日差しが、道を埋めたうす褐色の小石の上に影をつくった。
 大きな岩盤の下に出た。カナメモチの小さな実は、まだ緑色。
 7合目は、岩の上の見晴し台。もう山頂が間近に見えた。山頂の左には、この山のシンボル大岩が飛び出していた。

7合目より山頂を見上げる

 ここから急坂を登った。岩の節理にでできた割れ目を通る。
 石の鳥居は花崗岩で作られていた。頭がつきそうなほど小さい。ここから、大岩がさらに迫って見えた。

山頂西の大岩

 古い瓦の破片が道に落ちていた。赤い木の鳥居をくぐると山頂に達した。
 山頂の尼子城跡には、尼子神社が建っていた。社殿の裏に、尼子城屋敷跡の遺構と思われる瓦を埋め込んだ土塀が残っている。四等三角点が、社殿の東に埋められていた。

尼子山山頂

 社殿の脇から西へ道がついていた。その道の先に大岩があった。斜めに走る割れ目をつたって大岩の上へ。

 不規則な小さな割れ目でごつごつした大岩の表面は、うす緑の地衣類におおわれていた。南から強い風が吹き上がってきた。
 眼下に千種川がS字に曲がって流れ、千種川が開いた平野を低い山々が囲んでいる。

大岩から西への眺望

 南には瀬戸内海。白くかすんだ海に、家島の島々がシルエットになって浮かんでいた。
 山陽道を走る車の音がここまで届いた。その向こうを新幹線がすべるように走り抜けた。
 
 岩から下りようと神社の方角を振り返ると、ウラジロノキが5弁の白い花を枝いっぱいにつけていた。

ウラジロノキの花


山行日:2013年5月5日

河川敷〜尼子神社〜尼子将監の墓〜4合目〜7合目〜分岐〜石の鳥居〜尼子山山頂(尼子城跡)〜分岐〜上高野登山口〜河川敷
 南麓に建つ尼子神社の鳥居横に登山口がある。登山道は、山頂までよく整備されていた。
 7合目のすぐ上に上高野への分岐がある。帰りはこの道を下った。急な斜面につづらにつけられたこの道は、曲がり角や道の縁に石が組まれた古くからの道であった。 

山頂の岩石 白亜紀後期  赤穂層  流紋岩質溶結凝灰岩
 尼子山には、白亜紀後期の赤穂層が分布している。ガラス質で不規則に割れやすく、登山道の小石はどれも角張っている。
 新鮮な岩石は暗灰色で硬いが、登山道で見られる岩石は、風化によって赤紫やうす褐色や灰白色を帯びていることが多い。結晶片として、石英と長石が含まれている。
 新鮮な岩石は、帰りに立ち寄った高取峠近くの採石場で見ることができた。この岩石は、暗灰色、ガラス質で緻密な火山礫凝灰岩で強く溶結している。結晶片として、長石(<5mm)、石英(<3mm)、黒雲母(<1mm)、普通角閃石(<1mm)を含んでいる。軽石が伸ばされた緑灰色のレンズや火山礫が含まれている。


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