赤穂市立海洋科学館                     赤穂市  
瀬戸内海の成り立ちと塩の結晶
 赤穂市立海洋科学館は、赤穂市御崎の塩田跡につくられた赤穂海浜公園内にある。館内に入ると、ホールの中央に、直径1.8mの大型地球儀がゆっくりと回っている。ここを中心として、「塩のギャラリー」、「ようこそ赤穂へ」、「海を知ろう」の各ゾーンがある。「ようこそ赤穂へ」のゾーンには、瀬戸内海の形成や赤穂の地質を解説したパネルや、化石や岩石の展示があった。海洋科学館の北には、「塩の国」の塩田が広がっている。ここで、家族3人で塩作り体験に挑戦してみた。

瀬戸内海の形成と成因
地質に関する館内展示
 赤穂に塩の恵みをもたらした瀬戸内海。その瀬戸内海の成立について、パネル展示での説明があった。今から1500万年前に最初の瀬戸内海ができてから、6000年前の縄文海進まで、瀬戸内海の移り変わりが図で分かりやすくまとめられている。パネルを参考にして、また文献によって新しい知見も加え、瀬戸内海の移り変わりをまとめてみた(下表)。
年代 地質時代 瀬         戸        内        海
3500万年前 古第三紀漸新世  日本がまだ大陸の一部だった頃のことです。神戸市西部や淡路北部には海水が進入し、神戸層群の多井畑層や岩屋層と呼ばれる貝の化石を産出する地層を堆積した。その後、神戸から三田にかけて網状河川と湖沼が広がった。この内海は、古神戸湖と呼ばれ、当時にできた地層(神戸層群)は、砂岩・泥岩・礫岩が主体で、厚い凝灰岩層をはさんでいる。この神戸層群の地層からは、保存良好の植物化石が多く産出し、それらの化石から、この頃は亜熱帯的な気候から温帯的な気候へ移り変わる時期だと考えられている。
300万年前〜 新第三紀鮮新世  播磨〜伊勢湾にかけての地域が沈降し、大きな浅い湖ができた。この湖は、古瀬戸内湖と呼ばれている。この湖のほとりには、アケボノ象が住み、ニホンムカシジカなどの鹿の仲間が群をなして生活していた。森林は、針葉樹と広葉樹が混じり、今よりやや暖かな温暖性の気候だった。この時代、河川や湖沼で砂やシルトが堆積し、大阪層群明石累層と呼ばれる地層をつくった。
120万年前〜 第四紀更新世  大阪湾に第四紀になってはじめての海が進入した。この海が、今の瀬戸内海の始まりといえる。その後、氷期と間氷期もの繰り返しによる周期的な海面の昇降によって、海が入ったり退いたりを繰り返した。
50万年前〜 第四紀更新世  播磨平野に海が進入した時代であった。朝霧の海、高塚山の海、岩岡の海と、海域が西へ移動した。2万年前の最終氷期には、海面が100mも低下し、瀬戸内海は陸化し、海は今の紀淡海峡や鳴門海峡まで後退した。
1万年前 第四紀完新世  最後の氷河期も終わり、地球全体の気温が上昇し、ほぼ今の瀬戸内海の姿となった。6000年前の縄文海進では、今よりも水面が4mも高くなっていた。その後、この海は退いて現在の瀬戸内海になった。
瀬戸内海の移り変わり
化石と岩石の展示標本
 アンモナイト・フズリナ・アロサウルスの頭骨(レプリカ)・ナウマン象の歯(レプリカ)など約20点の化石が展示されている。また、岩石の標本も十数点あった。また、「世界の海底資源」のコーナーには、南鳥島付近の海山で採取されたコバルトクラフトが展示されている。
塩の結晶
各国の塩の結晶
 いろいろな国でとれた岩塩が展示してある。純粋な塩の結晶は無色透明であるが、NaClにいろいろな成分が加わって、赤・ピンク・緑灰色などと塩の色は多様であった。また、不純物が混じらなくとも、天然の放射能の影響で結晶構造にわずかの不整ができ、いろいろな色を帯びるという。重さ1.42トン、直径90cm、高さ101cmのポーランドの巨大岩塩は圧巻であった。
塩作り体験
 海洋科学館の北側に、塩田の広がる「塩の国」がある。海洋科学館の入館券(半券)を示すと、ここで塩作り体験ができる。指導員の方が、気さくに説明してくれた。海水の塩分濃度は約3%であるが、これを流下式塩田で約19%まで濃くした「かん水」が土鍋に入っている。これを煮詰めて、塩を作るのである。沸騰が始まると、白く泡立ち、みるみる水の量が減ってきた。最後は、土鍋をコンロから降ろして余熱で水分を飛ばしていく。このとき、竹べらでひたすらかき混ぜる作業がちょっと大変。ほんのりと黄色がかった塩ができた。この塩には、NaCl(88%)の他に、K・Ca・Mg・I・Feなどが4.4%、水が7.6%含まれているそうである。少し甘みの感じられるマイルドな味。千種川の河口で釣ったハゼの天ぷらに、この塩をつけて食べた。ハゼは、まだまだ小さかったが……うーん、最高の気分。
塩作り体験中 流下式塩田(中央奥)と入浜式塩田(手前)
■ 場  所 ■ 赤穂市御崎1891番地の4    25000図=「播州赤穂」  TEL 0791ー43−4192
■ 開  館 ■ 午前9時30分〜午後4時30分
■ 休館日 ■ 火曜日 (祝祭日は翌日)・12月28日〜1月4日
■ 探訪日 ■ 2001年9月8日
      

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