ブルース・リー

カンフーの真似事をするときに、そのほとんど全て100%の人が発する言葉、「アチョー」。この怪鳥音の始祖が、何を隠そうこの偉大なる求道者、ブルース・リーなのです(多分)。彼がいなかったら、ケンシロウの「アタタタタタ・・・」も承太郎の「オラオラオラオラ・・・」も無かったことでしょう。さらにはバーチャファイターのサマーソルトも無くなり、ストIIのフェイロンも鉄拳のマーシャル・ロウもDOAのジャンリーもワールドヒーローズの金龍もいなかったでしょう。当然「燃えよデブゴン」も無かったはず。偉大なり、ブルース・リー!!

  1. ドラゴンへの道
  2. 燃えよドラゴン
  3. 死亡遊戯

ドラゴンへの道

原題:THE WAY OF THE DRAGON
監督:ブルース・リー
製作:1972年
ブルース・リーが主演・監督・製作・脚本・武術指導・音楽の一人6役をこなしたワンマン映画。
題名から想像されるような修行ものではなく、最初からひたすら強いリーが、レストランの用心棒となって嫌がらせにきたギャングを倒し、その仕返しにきたギャングをまた倒し、そのまた仕返しにきたギャングをまた倒し、そのまたまた仕返しに来た・・・を延々と繰り返すというもの。最初の30分は格闘シーンがなく、スープを飲みすぎて腹をこわしたり売春婦に誘われたりと、テンポの遅いシーンが延々と続いてリーの監督としての力量を疑ってしまうが、ひとたび戦いが始まるとあとは戦ってばかり。ワンマン映画だけあってリーがとにかく強い。って言うか敵がめちゃくちゃ弱い。最強の敵はチャック・ノリスなのだが、攻撃を食らったのも最初のほうだけ。あとは一方的にリーがチャック・ノリスを殴りまくり、見ていてかわいそうになってくる。しかも最後は首を折って殺してしまう。チャック・ノリスはただの雇われ用心棒で、殺されるほど悪いことはしてないと思うが。人相もそんなに悪そうに見えないし、登場シーンなどビートルズのようだ。
リーの映画に出てくる日本人は大抵悪役なのだが、今作でもばっちりインチキジャパニーズ空手家が出てくる。ご丁寧に日本語で「オマエガタンロンカ」としゃべってくれる。そう言えばリーは英語がしゃべれないという設定なのだが、吹き替え版なので意味なし。
「燃えよドラゴン」に比べるとエンタテイメント性は数段落ちるが、手のひらを上に向けてクイックイッと挑発したり、ジャンプハイキックで電球を割ったりなどのブルース・リーらしいアクションが満載なので、リーのファンやリーの物まねをレパートリーにしたい人は観て損はないと思う。

燃えよドラゴン

原題:ENTER THE DRAGON
監督:ロバート・クローズ
製作:1973年
ブルース・リーの遺作にして最高傑作、そしてカンフー映画の頂点であり映画史上に残る名作。これを見ずして映画は語れない。もう30年近く前の映画だが、今観てもその魅力は衰えることを知らない。
この1作にブルース・リーの魅力が全て詰まっている。研ぎ澄まされた肉体、鋭いカンフーアクション、知性的な立ち振る舞い、美しいまでのヌンチャクシーン、いかにも強そうで悪そうな悪役達、幻想的な鏡の部屋での戦い、などなど、見せ場がてんこ盛り。DVDデッキ持っててこのソフトを持っていなかったらモグリでしょう。なんと言っても2000円で新品が買えるし。
ブルース・リーだけでなく、脇を固めるキャラも最高だ。パッチリした瞳がりりしいローパーをはじめ、憎憎しいハン、3枚目だがブルースリーに劣らないカットアップされた肉体のウィリアムズ、いかにも悪者面のオハラ、筋肉の塊のボーロ、巻頭に出てくるサモハンなどなど。リーの妹役もなかなかのカンフーを見せてくれる。ブ○だけど。
さて、誉めてばかりでは片手落ちなので、軽くツッコミなど。
ブルース・リーというと、ストイックな求道者、弱きを助ける正義の味方、無益な殺生をせずに罪を憎んで人を憎まず、といったイメージがある。この映画ではどうだろうか。カマキリの賭けでローパーからなけなしの金を巻き上げるシーンは心底嬉しそう。正々堂々と戦おうとするパーソンズを罠にかけて(船に乗って島に行く途中なのに、小船に乗って陸に上がろうなどとするこいつもこいつだが)、水攻めにするという非道ぶり。正規の制服を着ろと言われても聞く耳持たないわがままぶり。潜入捜査しているんだから、わざわざ目立つなよ。妹の因縁があるとは言え、格闘大会中に最初から相手を殺そうと決めている(に違いない)非道ぶり。オハラにとどめを刺したときのイッちゃってる表情。17歳の女の子が必死に助けを求めてもあっさり無視。ブルース・リーが夜中に出歩いたために、なんの罪も無いウィリアムズと数人の見張りが処刑されたというのに、全く動じない冷血漢ぶり。敵の首の骨を折るときの嬉しそうな表情。ヌンチャクを手に入れたときのハッスルぶり。そう、今までの点から推測できるブルース・リーは、武器を持たせたら手におえない、殺戮大好きの暴れん坊なのだ!
ラストの鏡部屋での決闘は映画史上に残る美しいシーンだ。カメラが映らないように撮影するのも大変だっただろう。ただ別に迷路になっているわけではなく、基本的に広間の回りの壁が鏡張りになっているだけのようだ。それなのにハンは変幻自在に出現しては消滅を繰り返す。もしかしてハンは鏡に出入りできるスタンド使いなのか?バックを取ったら、背中引っかいてないで一気に殺せって。
ハンの部下には妖艶なタニアというお姉さんと、投げナイフの達人達がいたはずなのだが、いざというときなんの活躍もしなかったのが残念。タニアにいたってはいつのまにか殺されてるし。ずっと牢屋に入れられていた男たちの集団に殺されたんだから、相当酷いことをされたのかもしれない。ところでこの男たち、いったい誰なんだろう。最初出てきたときは精気の無い老人ばかりだったのが、ラストのバトルでは大活躍。人数もやけに増えてるし。白と黒の団体戦は非常に分かりやすくてグッド。

死亡遊戯

原題:GAME OF DEATH
監督:ロバート・クローズ
製作:1978年
ブルース・リーの死後に作られた作品。なだけに、全編にせものの嵐。細かく本人のクローズアップをはさんでいるが、逆に違和感ありまくり。顔だけ2重写しなんてシーンも。アクションシーンも悪くはないが、やはりリー本人に比べたら切れ味がぜんぜん鈍い。しかしまあ、主演が亡くなっても映画を作ってしまうという香港のバイタリティーには感心させられます。更にこの後「死亡の塔」なんてのもあるし。
ラストのバトルはリー本人のもの。やっぱり迫力が段違い。塔(実は中華料理屋?)のフロアごとにその階を守る達人がいて、一人ずつ倒して上に上るという、少年ジャンプ黄金パターン。ヌンチャクの達人、変な構え&変な胴着の空手家、巨人、仕込み槍使いと見せ場の連続。特筆すべきは220センチもあるという巨人との戦い。カメラが引くとまさに大人と子供のよう。さすがに北斗の拳に出てくるようなマッチョではないけど、長すぎるリーチを生かした戦いが堪能できます。各階の敵は単なる用心棒なんだけど、容赦ないリーは殺しまくります。ちょっとかわいそう?
音楽はなんと、007シリーズのジョン・バリー。ジョンバリ―とかジェリーゴールドスミスとかジョンウイリアムスとか、結構マイナーな映画の音楽もやってるんですよね。


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