必殺! |
監督:貞永方久 |
1984年 |
今でもファンに根強い人気を誇る時代劇、必殺シリーズの劇場版第1作。当時放映していた「必殺仕事人IV」がベースになっている。 後に何本も作られる劇場用必殺第1段だが、実はこの1作目が最も必殺らしく、映画としても面白い。必殺の見せ場はなんと言っても殺しのシーンだ。今作はストーリーが仕事人VS殺し屋軍団ということで、ふんだんに殺しの見せ場が盛り込まれている。こういう映画は敵が強ければ強いほど面白くなるのだが、黒い仮面をつけた不気味な暗殺集団は、仕事人のレギュラーと張り合う資格十分だ。 登場するキャラクターも魅力十分。普段はさえない窓際族だが、ひとたび殺しとなると恐ろしいまでの切れ味を発揮する中村主水(藤田まこと)。三味線の糸で相手を吊り上げるクールな殺し屋・勇次(中条きよし)。無口だが熱い情熱を秘めた飾り職人の秀(三田村邦彦)。お笑い担当の何でも屋の加代(鮎川いずみ)。今回ほとんど役に立たなかった未成年殺し屋・西順之助(ひかる一平)。厚化粧が怖い元締・おりく(山田五十鈴)。彼らがテレビ版の魅力をそのままに、殺しの技も劇場版ならではのアイディアでスクリーン狭しと暴れまわっている。せんとりつ、田中様などの脇役陣も魅力的だ。お民ちゃんや順之助を付回すオカマがほとんど出てこなかったのが残念。確かテレビのIVでは毎回出てきたと思ったのだが。また、ゲストの殺し屋・朝乃助(片岡孝夫)の蝶が舞う華麗な殺陣も魅力的。殺すときにはすごく怖い顔をするのもまたかっこいい。研ナオコが仲間にブロックサインを送るシーンがあるが、当時放映していた「おむすびやま」のCMのパロディーだということに、今見た人の何割が気づくことやら。たこ八郎や斉藤清六の出演はちょっとくどいような気もするが、まあ必殺シリーズらしいお遊びということで。ラスボスの庄兵衛の渋い声や、くどいまでのしぶとさもいい感じ。配下の大男(牛鬼という役名らしい)が強そうでいい味。それ以外の殺し屋軍団は十羽一絡げで、個性に乏しいのが残念なところ。 トランペットを軸にした緊迫感のある殺しのメロディーが素晴らしい。今作は仕事人2〜4作目の殺しのテーマがラストの激闘に使用され、見せ場を華やかに彩っている。仕事人1作目の殺しのテーマはどんなのだったっけ?「荒野の果てに」のインストゥルメンタル?ちなみにIVの殺しのテーマは、唐突に始まるトランペットのファンファーレに、エレキギターのジャカジャーンという破壊的な音をかぶせ、ちょっと物悲しいバイオリンの音色につないでいる。私はシリーズの中でも最も好きな殺しのテーマの一つだ。私は仕事人IIIぐらいから見始めたので、今作で「荒野の果てに」の歌が聴けたのがとても嬉しい。フルコーラスではないのが残念だが。 劇場用2作目以降は、ひたすら馬鹿らしかったり、やたら陰惨な話だったり、唐突に主水が殺されたりと、テレビ版の面白さから外れたつくりになってしまっている。もし今から必殺を観ようとする人には、私は真っ先にこの第1作をお勧めする。 |
魔女の宅急便 |
監督:宮崎駿 |
1989年 |
日本中の家庭に大好評の宮崎駿監督作品。どうも私は宮崎駿の偽善的雰囲気が生理的に受け付けなく、この作品もラピュタやトトロほど嫌いではないが、これと言って好きではない作品。出てくる人間がみな善人ばかりなのがイラつく。 ストーリーは、魔女のキキが修行のために街に出てきて、飛行能力を活かして宅配便屋を始める、というもの。ヤマト運輸がスポンサーなので魔女の宅急便。佐川がからんでいたら魔女の佐川急便、日通だったら魔女のペリカン便になっていただろう。ストーリーは淡々と進むので、あまり盛り上がりがない。魔法がどういう原理のものかは知らないが、ストーリーの都合上、途中で魔法が使えなくなったと思ったら、また何の説明も無く突然使えるようになったりする。大丈夫マイフレンズですか? 宮崎駿の作品は、根底に「飛ぶことへの憧れ」がある。ナウシカしかり、ラピュタしかり、トトロ、紅の豚、そして今作もしかりである。私は生まれてこの方、一度も空を飛びたいなどと思ったことも無いので(フライトシミュレーターなども嫌いだし)、そこいらが彼の作品が合わない理由なのかもしれない。 主役のキキは、宮崎駿作品群のヒロインの中ではかわいいほうではないだろうか。声優の高山みなみもいい演技をしている。クレジットを見るまで、二役を演じていることに気がつかなかった。さすがだ。 音楽関係は、宮崎作品らしくレベルが高い。ユーミンのレトロっぽい主題歌も作品にあっている。美術的には、それほど見るべきところは無い。舞台がヨーロッパの町をモチーフにしているので、郷愁というか街への感情移入度は薄い。 小さな女の子が1人暮らしで一生懸命頑張っている姿に感銘を受ける人もいるだろう。それはそれで反論はしないが、年齢は別にして人間誰しもいつでも一生懸命生きているものではないだろうか?それとも世間一般的にはそうでもないのだろうか?少なくとも私は今までも今でも一生懸命頑張って生きているつもりだが。 |
必殺5 黄金の血 |
監督:舛田利雄 |
1991年 |
必殺劇場版第5弾。正直に言って退屈な駄作だ。 私は必殺Vぐらいまでしか見ていなかったので、出ている仕事人の誰がレギュラーで誰がゲストなんだかさっぱり。2回通しで観たぐらいでは、誰がなんという名前なのかも理解できない。もっと登場人物の紹介をきちんとすべきだろう。ひょっとこ面を投げる女とか女子プロ2人組など、ほとんど存在意義が無い。手裏剣男とマシンガン?男と朝吉の3人など風貌が似ていて区別しにくい。朝吉って必殺1に出てきた朝吉?役者が違うぞ。 敵が強ければ強いほど、こういう映画は面白くなる。今回の敵は「地獄組」と呼ばれる全盲の暗殺集団。黒ずくめの見てくれは不気味でかっこいいが、全員刀を持っているだけで芸が無い。しかもまるで弱っちいし。地獄組の頭領の赤目を、仮面ライダーの死神博士である天本英世が演じている。いつも口をぼんやり開けた白痴みたいなキャラクターで、彼の知的な感じが全然活かされていない。赤目は殺しにコウモリを使うのだが、このコウモリの特撮がすごくチャチで、子供向け教育番組のようだ。悪役といえば、黒幕の男の演技がむちゃくちゃ下手クソ。わざとそういう演技をしているのだろうか? 下手クソと言えば、恒例の不幸な女性を演じるノリピーこと酒井法子。プッツン女を演じるためにわざとそうしたのかもしれないが、とにかく演技が下手クソで見るに堪えない。彼女を取り巻くチンドン屋達も素人演技で観ていてイラつく。素人を大胆に起用するのが必殺の面白さではあるが、今回はちょっと白けてしまう。 今回の悪役は、佐渡の金山の御用船を強襲して金を奪い、金の相場を操作して大もうけを企む。株価の不正操作を風刺しているようでもあり、また007ゴールドフィンガーのようでもあり、必殺らしいシナリオだ。しかしそこに、前述の素人集団だとか、必要以上に多すぎる仕事人とか、ほとんど無意味な政のラブストーリーなどが絡んでくるから始末が悪い。バレになるが、必殺IVやVで準主役を張った鍛冶屋(花屋)の政は今回の映画で死ぬことになる。しかし、何の見せ場も必然性も無く、突然出てきて敵と刺し違えるなど、あまりにも脚本がお粗末だ。 不必要に血しぶきが飛び散るのも不愉快だし、中村主水があからさまにセックスしたがるのにも違和感がある。仕事人が、多分悪人ではないと思われる見張りの侍をバタバタ殺してしまうのもおかしい。劇場版は2も3も4も、今ひとつテレビ版必殺の面白さを履き違えて撮ったような感じがあったが、今作はどこを取っても面白みが無く、5作中最低の出来だ。 |
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア |
監督:富野由悠季 |
1988年 |
アムロとシャアが決着を付ける、初代ガンダム完結編といった趣の本作。時代はZZの後ということだ。私は初代とZの終わりの方しか知らないので、全然見当違いのことを言っていたら謝ります。 この映画で強烈に感じるのが、とにかくクェスがウゼエ。言っていることとかやっていることが全て支離滅裂。子供だからとか言って許せるレベルではない。プッツン女と言うより、もはやキチガイ。いつ触手が出てきてヤッっちゃってくれるのかとワクワクして観てましたよ。ブライトの息子であるハサウェイも超ウザイ。味方殺してんじゃねー!。敵方のギュネイも、強化人間だからなのか、頭のネジが2つも3つも飛んじゃっててイライラさせられる。 そして主役の一端を担うシャア。シャアってこんなダサいキャラだったか?なんか人類に絶望して、地球に隕石を落として地上の人類の滅亡を図るが、その理由がよく分からん。Zでも出てきた、「地球の引力に魂を引かれた云々」の意味が全然理解できない。何も考えずにただ言葉の体裁だけでネーム起こしてない?味方からもロリコンとか言われ、アムロへのライバル心から戦争を起こしたと言われ、自ら死んだ女への執着をグチグチ言っている。これがガンダム世代が憧れたシャア・アズナブルの馴れの果てか? アムロは昔のような不安定さは無くなってしまったが、正義側のヒーローとして十分役割を演じている。ブライトはいぶし銀の大人の魅力だ。初代でへたれキャラだったカムランもいい味を出している。敵味方の大人の女であるチェーンとナナイもコケティッシュで魅力的。名前は知らないが、敵方の女ヤンキーパイロットも印象的。いいキャラが沢山出ているが、クェスとハサウェイとシャアの3人でぶち壊し。 初代エルメスの「ビット」というアイディアは衝撃的でしかもカッコよかったが、あまりにも兵器として便利すぎるので、本作では敵も味方もどいつもこいつもファンネル装備。まるで機動戦士ファンネルだ。ありがたみがまるで無くなってしまった。 ついでにTMネットワークの主題歌も盛り上がらない。小室哲哉が作曲しているが、こんなスカしたJ−POPみたいのはアニメの主題歌に相応しくない。アニメの主題歌はもっとこう、燃え上がる燃え上がる燃え上がるような曲じゃないと。まあ「砂の十字架」も「めぐりあい」もアップテンポな曲ではかったけど・・・。 ラストのオチもよく分からないし、昔観たときは結構面白く感じたんだが、今観直してみるとあらゆるところでイマイチに感じる。私が大人になったのか、感受性が衰えたのか。もっとニュータイプと旧人類の確執を前面に押し出しても良かったのではないだろうか? |