ホラー

  1. ジョーズ
  2. シャイニング
  3. グレムリン
  4. 遊星からの物体X
  5. オーメン
  6. オーメン2 ダミアン
  7. フューリー
  8. ルール
  9. ザ・リング
  10. ファイナル・デスティネーション
  11. デッドコースター
  12. 28日後・・・
  13. 13日の金曜日 完結編
  14. エイリアン
  15. エイリアン2
  16. 13日の金曜日PART7 新しい恐怖
  17. IT
  18. ヘルナイト
  19. ゴーストシップ
  20. 13日の金曜日PART6 ジェイソンは生きていた!
  21. ゾンビ伝説
  22. 誕生日はもう来ない
  23. ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀
  24. エクソシスト
  25. 新・13日の金曜日
  26. ショーン・オブ・ザ・デッド
  27. クライモリ
  28. モンスター・パニック
  29. ゾンヴァイア/死霊大血戦
  30. ランド・オブ・ザ・デッド
  31. ザ・フォッグ
  32. 死霊のえじき
  33. 蝋人形の館
  34. キャビン・フィーバー
  35. ビヨンド
  36. ゾンゲリア
  37. フレディVSジェイソン

ジョーズ

原題:JAWS
監督:スティーブン・スピルバーグ
1975年
70年代に流行った動物パニック物の火付け役にして最高傑作。なんとスピルバーグ27歳のときの作品。スピルバーグ作品としても、最高峰に位置付けられるだろう。
ストーリーは今更解説するまでもないだろうが、海水浴場を持つ小さな島に、巨大な人食い鮫が現れるというもの。前半は極力サメの姿を見せずに観客の不安をあおり、一転して後半はバンバン姿を見せてサメの獰猛さを観客に叩きつける、見事な演出だ。ちょっとしたカットでも構図、動きが素晴らしく、スピルバーグの才能が映画中に満ちている。
ジョン・ウイリアムスの音楽も素晴らしい。誰でも知っているあの「ズンズンズンズン・・・」という重低音が恐怖感を倍増させている。クライマックスの対決シーン、どんどん沈んでいくマストにつかまるブロディと、突進してくるサメを短いカットで交互に映し出す。そのカット割りも素晴らしいが、BGMもまた素晴らしく、手に汗握る名シーンになっている。。
キャストも皆味がある。都会派で海の臭いをあまり感じさせない主人公・ブロディ署長にロイ・シャイダー。対照的に男臭さをぷんぷんさせた肉体派・クイント船長にロバート・ショー。ロシアより愛を込めての殺し屋役だが、あれから年代が過ぎていい感じに年をとっている。それから、ひげ面だがどこかお坊ちゃんぽく頼りなさそうな海洋学者・フーパーにリチャード・ドレイファス。3人が3人の個性をぶつけ合って、サメ対決と同じくらいの面白さを見せている。反目しあっていたクイントとフーパーが、お互いの傷を見せて打ち解けるところなどいいシーンだ。
確かに古い作品だけあって、CGを駆使した「ディープ・ブルー」などに比べると、サメはいかにも作り物といった感じでちゃちではある。しかしそんなことではいささかもこの映画の魅力が減ずることはない。
サメの退治方法だが、原作者が「ありえない」と言い切っている。確かによく考えると嘘臭い。しかし、原作の様にサメが力尽きて死んでいくというのは、画的にあまりに地味だ。私も子供のころ原作のラストだけは読んだことがあるが、何でサメが沈んでいくのかさっぱり理解できなかった。
ソニー・ピクチャーズが出しているこのDVD、特典映像がやたらめったら凝っている。1時間やそこらではとても見きれない。映画の内容も合わせて、ズバリこのDVDは買いだ。
この映画が大ヒットしたため、次から次へと動物パニック物が作られた。ジョーズも例外ではなく、2、3D、復讐編などと続編が作られた。かろうじて見れるのは2までで、あとはまるで駄目というのはシリーズ映画のセオリーどおり。むしろそれらの続編より、イタリアのパチモン「最後のジョーズ」のほうが面白かったりする。
一応私のお勧めする動物ものは「黒い絨毯」「オルカ」「アリゲーター」「トレマーズ」「アナコンダ」「ディープ・ブルー」など。

シャイニング

THE SHINING
監督:スタンリー・キューブリック
1980年
完璧主義者で知られるキューブリックの撮った唯一のホラー。ホラーに興味がない人でも、ドアの割れ目から顔を出すジャック・ニコルソンの怖い顔のビジュアルは見たことがあるのではないだろうか。ジョジョでもパロられていたし。原作は(映画では)駄作量産作家スティーブン・キング。
ストーリーは、冬の間にホテルの管理を任された男が、ホテルに巣食う亡霊どもにそそのかされ、家族を殺そうとするもの。なんてことのない話だが、突然挿入される双子の女の子や、エレベーターから噴き出す大量の血、意味不明なジャックニコルソンのアップなど、結構怖いことは怖い。しかしキューブリックだけあって、わけが分からないのはいつもの通り。
題名のシャイニングとは、主人公の息子が持つ予知能力のこと。しかし何の役にも立たないし、ストーリー上ほとんど意味がない。
このホテルはインディアンの墓地をつぶして建てられたという設定だが、悪霊自体はみんな白人で、過去にここで大量に人が死んだという説明もなく、なぜここに悪霊どもがたむろしているのかよく分からない。ラストのほうで、悪霊は妻にも姿を見せる(しかも着ぐるみとか意味不明)。亡霊は主人公にしか見えず、全ては狂った主人公の見た幻覚なのか、という演出のほうがより現実的で恐いと思う。そして最後の一枚の写真でニヤリとさせる、という見せ方はどうだろう。
ラストの雪の迷路は、メイキングを見るまでセットだと分からなかった。見るからに寒そうで、よく出来ている。言われれば確かに息は白くないし、ニコルソンのおでこが汗でテカっている。
これといったゴアシーンもないので、ホラーファンには物足りないかも。ステディカムが効果的に使われているのが見所か。そういえばこのDVD版は無修正ということで、ヘアが見れる。若い女だけではなく、汚いバアサンのまで。見たくねえ。この映画、私は小学生のころ父親と一緒に見に行った(併映は時計仕掛けのオレンジ)のだが、なぜその部分だけピンぼけになるのか全く分からなかった。幼かりし純情なころか。

グレムリン

原題:GREMLiNS
監督:ジョー・ダンテ
1984年
スピルバーグ率いるアンブリンの作品。劇場で観たときはかなり面白かったが、今観るとやっぱり子供向けな感は否めない。ギズモの動きとか、やたらマペットっぽいし。しかし、あまりに悪ノリがひどい続編に比べて、楽しめるのは確か。
「ピラニア」「ハウリング」のジョー・ダンテ監督だけあって、意外とグロテスクなシーンが多く、小さな子供にはお勧めしない。ヒロインの父親がクリスマスに死んでいるというのもブラックな設定だ。
主人公役のザック・ギャリガンは今ひとつぱっとしないが、人のいい好青年といった感じで印象は悪くない。ヒロインのフィービー・ケーツはかなり可愛いく、あんまり活躍しないのが残念。「パラダイス」みたいに見せてくれれば・・・。
ストーリーはメジャーなので特に触れる必要もないだろう。結局、人間の不注意から生まれたグレムリン達を、問答無用で虐殺するという話になっている。特にひどいのは主人公の母で、生まれたばかりのグレムリンを、部屋を散らかしたという理由だけで、見た瞬間にミキサーでミンチにし、包丁でメッタ刺しにし、電子レンジで焼き(?)殺している。アメリカ人は外観が醜く(=白人ではなく)、自分に不快感を与えるものは、殺して当然という考えをもっているようだ。さすが世界の平和を守る正義の人だけのことはある。ところで、劇中電子レンジに入れられたグレムリンが爆発しているのだが、実際生き物を入れたらどうなのだろう。確かに玉子を入れると爆発する。うちは猫を飼っているが、今度試しに・・・。
憎まれ役を演じるばあさんがいる。金にがめつい嫌な性格ではあるが、決して人を殺したりはしていない(夫が詐欺で逮捕されたという設定だが)。しかし劇中、グレムリンに殺される。そういうところが西洋人の嫌なところで、金にがめついばあさんやシャーロックや日本人はバチが当たって当然という思想が見え隠れする。このばあさんよりは、作るもの作るもの全て役に立たない主人公の父親のほうが、よっぽど存在価値がないと思うがどうだろうか。
何人死んだか知らないが、この家族は払いきれない賠償金を一生背負って生きていかなければならないのだろうか。

遊星からの物体X

原題:THE THING
監督:ジョー・カーペンター
1982年
ホラー映画史上に名を残す1本。特筆すべきは頂点を極めたとも言えるSFX。犬の顔がガバッと割れたり、人間の首が千切れて手足が生えてきたりと、信じられないほど見事な特撮は必見。多くのホラー映画や漫画に多大な影響を与えた。
ストーリーは、南極を舞台に人間に変身する怪物との戦いを描いている。南極という、圧倒的閉鎖空間での逃げ場の無いサバイバルは緊迫感に溢れている。仲間のうち、誰が何人怪物なのか、全く分からないというところがスリリング。オープニングの、いかにも何かが起こりそうな雪原での追跡シーンから、ぐいぐい画面に引き込まれてしまう。主役のマクレディを演じるカート・ラッセルの男くささも魅力的。ノリスが変身するところから血液検査の辺り、見事な特撮とスリリングな展開はホラー映画の最高峰と言える。
さて、私はこの映画を大好きだと断言した上で、いつもの通りケチをつけさせてもらう。まず登場人物の描き分けが弱い。人数が多い上、自己紹介的なシーンが無いので、誰が誰だか分かりにくい。そのせいで、観客にとっては誰が怪物か分からないという恐怖がぼやけてしまっている。特にマクレディとウィンドウスは同じようなヒゲ面だし、ブレアと医者、クラークとベニングスなども1回観ただけでは区別が付きにくい。
次に、登場人物のあまりの馬鹿さ加減。冒頭片言の英語すら話せないノルウェー人もお馬鹿だし、それを一発で撃ち殺す隊長もどうかしている。登場人物はみな、観客が見て最善と思える行動を取らないし、発電機を壊されたからといって、ヤケのヤンパチで基地を壊しまわることも無いだろう。そのせいで、せっかく盛り上がった血液検査の後、物語が尻すぼみになってしまっている。ラストのブレア・モンスターの登場も意味不明。とりあえずデカイのを出したかっただけなのだろう。血液だけでも生きている生物を、ダイナマイトでふっ飛ばしてもいいものだろうか?
物体XがUFOに乗って飛んできたり、さらにはUFOを作ってしまうというのはどうだろうか?私的には、物体Xに高い知能があるというのにかなり違和感がある。犬に取り付いても、やっぱりUFOを作れるぐらいの知能を持っているのだろうか?私だったら、物体Xは隕石にくっついてきたアメーバ状の生物とかにして、宿主と同等の知性を持つぐらいにしておくが。
この映画の最大の問題点は、物体Xの同化のプロセスがはっきりしていない、という点にあると思う。どれぐらい時間がかかるのかということもあるし、宿主が知らない間に同化してしまえるのか、それとも宿主を殺してから同化するのか、そこの点がはっきりしない。同化したほうはどうなるのか?数が増えてるところから、同化した側も生き残っているのだろう。カーペンターとカート・ラッセルの会話で、同化された側がそれに気がつくのかどうか、よく分からないようなことを言っていた。おいおい、それが一番最も最高に重要な点じゃないのか?監督がそれを決めないで映画を撮ってどうする。
ラストの後味の悪さはどうだろう。非常にカーペンターらしいが。金を払った方は、気持ちよく映画館を出たいのだが・・・。まあ作家性ということで。ちなみにチャイルズの吐く息が白くないから物体Xだと言う人もいるが、ちゃんと白い息を出しているし、そもそも物体X化したベニングスの息も白かったので、議論が成り立たない。
映像特典の出演者のインタビューでは、繰り返し映画がヒットしなかったヒットしなかったと言っている。しまいには同時期公開のETのせいにしているし。それは違うのでは・・・。しかし、製作者には何の慰めにもならないが、私はこの映画のほうがETの10倍は好きだ。

オーメン

原題:THE OMEN
監督:リチャード・ドナー
1976年
ホラー映画の最高傑作の1本。オカルト映画と呼んだ方がしっくりくるか。監督はリチャード・ドナー。スーパーマンやグーニーズの監督がホラー映画の傑作を撮ってしまうのだから、なんとも不思議。映画のムックでは「職人監督」などと揶揄されていたが・・・。
ストーリーは、聖書の黙示録に記された悪魔が人間の姿をして生まれてくるというもの。そしてそれに関わった人間が、一人また一人と不可解な死を遂げていく・・・。秀逸なのは、その死因に超自然的なものが含まれないということ。最初の乳母の自殺は別としても、神父の死、母親の手すりからの転落、カメラマンの死、そしてラスト。どれも「誰かが仕組んだり、超自然現象ではない、偶然の死」になっている。例えばカメラマンの死で、トラックのドライバーが降りるときにサイドブレーキにぶつかって、サイドブレーキが解除されるシーンがある。この「偶然サイドブレーキが解除されて」というところが重要。これが続編になると、勝手に列車が動き出したり、落とし穴の蓋が閉まっていったり、全然ダメ。
登場人物もみな素晴らしい。主役には名優・グレゴリー・ペック。一人息子の正体が悪魔だったという難しい役を、知性的に、そして貫禄十分に演じている。電話で妻の死を知らされるシーン、息子として育てたダミアンに剣を振るおうとするシーン、など非常に上手い。彼の主演が映画の格を押し上げているのは間違いない。妻役のリー・レミックは驚いたときの瞳が綺麗で印象的。ホラー映画のヒロイン(と言うには歳だが)にふさわしい。ダミアン役の子役も上手い。例の振り返って笑うシーン、監督の意図しない演技らしいが、これはまさにこれで正解。悪魔信者の乳母も怖い。こういう、最初いい人に見えて実は・・・というのは生理的に嫌(誉め言葉)。その他、黒ずくめの不気味な神父とか、うだつのあがらなそうなカメラマンなど、みないいキャラクターだ。犬でさえすばらしい演技をしている。
この映画を語るとき、忘れてはいけないのはジェリー・ゴールドスミスの音楽。この映画でアカデミー賞を取っただけのことはある。黒ミサを思わせる声楽(賛美歌と言うのか?)が緊迫感を思いっきり盛り上げる。英語圏の人には歌詞の内容が分かるのだろうが、英語が分からない私でも十分怖い。
ストーリーの面白さ、キャラクターの秀逸さ、音楽の怖さ、心理的緊迫感、ショックシーン。全てを高いレベルで満たした本作、ホラー映画ファンならずとも必見だ。間違えて続編から見ないように。
ところで以下バレになるが、
ダミアンの母親って本当に山犬なのか?確か2ではダミアンの染色体が犬と同じというシーンがあったと思う。それはいくらなんでも嘘臭いのでは?別に普通の人間の子でも、あるいは主人公夫婦の実子でもいいのでは。むしろその方が主人公の苦悩が深く、ストーリーとしても面白かったのでは。多分そうしなかったのは、実子殺しというのが全くキリスト教圏には受け入れられないからだろう(旧約聖書にはあるとしても)。もし上述のような設定だった場合、西洋人と無理心中などに同情的な日本人の間に、どのような受け止め方の違いが出来ただろうか。

オーメン2 ダミアン

原題:DAMIEN OMENII
監督:ドン・テイラー
1978年
名作の続編はボロクソな出来という例は多いが、今作もまさにそのパターン。とにかく人を殺せばホラーだと言わんばかりに、やたらと不必要に人を殺しまくる。前作の格調などあったもんじゃない。冒頭のセット丸出し生き埋めシーンから始まって、トラックにはねられる、氷の湖での溺死、化学工場でのガス漏れ、など怖くも無ければ必要でも無いような死が延々と描かれる。前作の避雷針貫通に対応する見せ場は、エレベータによる胴体切断だろうか。視覚的な仕掛けは派手になっているが、嘘臭いったらありゃしない。しかし見せ場も無くは無い。連結器による圧死などは、結構嫌な死に方で好感度高い(?)。湖での事故にしたって、もっと見せ方を工夫すれば非常に印象的な見せ場になっただろう。何しろすぐ上に仲間が見えているのに、水面に出ることが出来ないのだから。「レガシー」というホラー映画で、プールで泳いでいるうちにガラスを貼られて息が出来ずに死ぬというシーンが非常に嫌な感じだった。今作では水面下を適当に流された後に水面に顔を出してから沈んでいくが、思いつく限り最高に下手な演出だろう。
その演出はドン・テイラー。あまり聞かない名前だが、新・猿の惑星の監督。どうも名作を駄作にするのがお好きなようで。音楽は前作同様ジェリー・ゴールドスミス。前作同様雰囲気を盛り上げてくれるが、ちょっとやりすぎな気も。
俳優陣は前作に比べると風格が落ちる。特筆すべきは、主役ダミアンを演じるジョナサン・スコット=テイラー。他の映画では見たこと無いが、端正なルックスがぴったりの配役だ。一言で言えば美少年。私はショタコンではないが、彼ならいいかな?という気もする(なにがだ)。
ダミアンは自分が悪魔の化身だということを知らない設定になっている。そして劇中に、悪魔崇拝者にそのことを知らされる、という筋書き。知ってしまえばその後はエスパーかスタンド使いのような活躍ぶり。映画もどんどんトーンダウン。ただ一つ、ダミアンが自分の頭を鏡で見て666の印があるのを発見してショックを受けるシーン、初めて自分に毛が生えているのを見てびっくりするローティーンのようでほほえましい。

フューリー

原題:The Fury
監督:ブライアン・デ・パルマ
1978年
ブライアン・デ・パルマがキャリーに続いて監督した超能力物。巷ではキャリーの2匹目のドジョウと言われ評判の悪い今作ではあるが、私はキャリーよりこっちの方が好きだ。
超能力が題材ということで、SF40%、ホラー40%、アクション15%、メロドラマ5%ぐらいがブレンドされ、このごった煮感覚がいい感じ。前半のぬる目のアクションシーンも悪くは無い。ただ古い映画ということで、DVDなのに画質はやたら汚い。ちゃんとマスターから撮ったのか?
スプラッタ映画ではないが、とにかく血がドバドバ流れるのが特徴。鼻血〜指先からダクダク〜全身血まみれ、とストーリーが進むにつれてどんどん過激になっていくのが楽しい。ラストシーンは今見てもショッキング。キャリーの有名なラストシーンはただのハッタリだが、今作はまさしくクライマックスという感じ。そこでいきなり終わってるのも好印象。私事ではあるが、小学生のころビデオデッキを買ってもらってすぐに今作がTV放映され、ジョーズとフューリーのラストシーンだけ何度も何度も繰り返してみた記憶がある。いやなガキだ。
音楽は「スターウォーズ」の巨匠、ジョン・ウイリアムス。ラストの緊迫感を煽りまくるBGMなどさすが。映画パンフレットのJ・Wのフィルモグラフィーにまずフューリーが挙がることは無いが・・・。
監督は映像派のデパルマ。今作でも、カメラがぐるぐる人物の周りを回って背景に映像が合成されたり、やたら長いスローモーションや、鏡越しに人物を撮ってみたり、いろいろ実験的な手法が取られている。特に多用される、ガガガッと段階的にズームアップするシーンが印象的。キャリーでの漫画のコマ割り的な多重画面はちょっとやりすぎのように思ったが、今作は押し付けがましくなく、それでいて効果的にいろいろな手法が使用されているように思う。
主演はカーク・ダグラス。冒頭のたるんだ腹はいただけないが、中盤からえらくかっこいい。あのアゴの窪みがチャームポイント。主役の女の子はエイミー・アービング。スピルバーグの元奥さんだそうだ。どう贔屓目に見ても可愛くないが、ノーブラTシャツで頑張るシーンもある、けど貧乳。能力に開眼してからのラストシーンには、目の離れた爬虫類顔の彼女はまさにハマリ役。でもやっぱりもっと可愛い子を使ってもらいたかった気が。超能力者・ロビンを演じるのがアンドリュー・スティーブンス。彼が超能力を使うときは顔に青筋が立ち、多分この特技のおかげで抜擢されたのだろう。
ストーリーは、ピーター(カーク・ダグラス)の息子ロビンが超能力者で、政府機関が彼の能力を研究するために彼を拉致する。ピーターは息子を救うために奮闘し、そこにもう一人の超能力少女ギリアンが絡んでくるというもの。正直冒頭の銃撃シーンは意味が分からない。2グループがマシンガンで撃ち合ってるけど、あれ両方とも政府機関の手先なの?大体なんでロビンを拉致する必要があるのだろうか。題名である「Fury」というのは「激怒」という意味であるが、ギリアンが敵の諜報機関のトップであるチルドレスに激怒を向けた理由が弱い。任務に忠実なだけで、そんなに彼が悪人のようには思えなかったけど(特にギリアンから見て)。ギリアンの母親を殺すとか、ロビンやピーターを目の前で殺すとかしても良かったのでは。ギリアンから見れば、ピーターは突然出てきた人殺し野郎だし(ロビンとの精神の交感はあるにしても)。
映像映えしないのか、実写であまりサイコキネシス物はなかったように思う。私はキャリーやスキャナーズより1段上にこの作品を推したい。

ルール

原題:URBAN LEGEND
監督:ジャミー・ブランクス
1998年
スクリーム(’96)、ラストサマー(’97)の流れを汲むスラッシャームービー。
邦題は「ルール」だが、原題は「URBAN LEGEND」、つまり都市伝説。都市伝説にならった連続殺人が起こるというストーリーで、そこいらは唄になぞらえた「獄門島」や「そして誰もいなくなった」を連想させる。
ストーリーの核になる都市伝説だが、車の後席に人が乗っていて首を切られるとか、車の上で人が首を吊っているとか、アメリカでは有名なんだろうか?日本人の私には全然分からない。しかし、それらがメジャーであるという大前提の上に映画が成り立っている、というか観客はそう納得して見ざるを得ない。日本では都市伝説というと、口避け女、人面魚、トイレの花子さんのような物の怪が主だ。それに比べて、アメリカの都市伝説はやけに生々しく現実的。やはり実際にそういった猟奇殺人が起こるという土壌があるからだろう。この映画は病んだアメリカを象徴している、というのは水野晴朗的解釈か。
話を戻して、ホラー映画としては殺しのバリエーションが豊富で、そこそこ楽しめる。スクリームなどはナイフで殺す一辺倒で、途中で退屈してしまったものだ。ホラー映画でよくある、緊張感を高めておいて、「バーン」と大音響で驚かすシーンが頻繁に出てきて、ちょっとくどい。そこいらから思うに、監督は真のホラー映画ファンではないと思う。
で、肝心のプロットがかなりおざなり。詳しく書いてしまうとネタバレになるので書けないが、○○が犯人なんて無理ありすぎ、というシーンが掃いて捨てるほどある。それ以外にも、無理なシーンや不自然なシーンがありまくりで、脚本家の頭の悪さが一見して分かってしまう。もっとシナリオを練れば面白くなっただろうに。
役者は知らない人ばかりだが、主役の男はなかなかハンサム。それに比べて、主人公の女の子が全く可愛くない。ホラー映画はヒロインの危機にハラハラドキドキできるかが肝で、こんなブスとっとと死ねと思ってしまうようなキャスティングは問題あり。
日本語吹き替え版では、脇役のDJの女の子の声を、私のお気に入りの三石琴乃嬢が当てている。「彼氏の蛋白シェイクを飲んじゃったのね」とか言われてハァハァ。

ザ・リング

原題:THE RING
監督:ゴア・ヴァービンスキー
2002年
日本最強のホラー映画だと私は確信する、「リング」のハリウッドリメイク版。
機微の分からないハリウッドにまともなリメイクなんかできるわけ無いと思って観たが、意外に元ネタに忠実に、きちんとしたホラー映画として撮れている。元ネタに忠実と言うかほとんど内容が同じで、リメイクした意味はあったのだろうか。
以下に、邦画版を既に観ていることを前提に、邦版との相違点を述べる。
まず始めにビビッたのが、貞子に殺された被害者の断末魔の形相。さすが特殊メイクの本場ハリウッド、つかみはOK。
次に映画の根幹をなす呪いのビデオ。邦版ではノイズに埋もれたおどろおどろしい映像だったが、本作ではわりと映像がクリアで、しかも椅子がくるくる回っていたりと前衛アート感覚。そのくせ口から変なものをドバッと吐き出したりして、即物的スプラッタ風味。はしご(の下の空間)が不吉だという感覚は日本人には理解できないが、西洋人には充分不安感を煽るものなのだろうか。劇中盤で、ビデオ中のハエがテレビから出てくるシーンがある。もちろんあのシーンの伏線なんだが、まだあの段階で超常現象を出したらまずいだろう。主人公が口からヒモを吐き出す変なシーンも有り。昔志村けんがよくやっていたなあ。
呪いのビデオを観ると、例のごとく電話がかかってくる。邦版は無言電話だったが、本作では親切にもかないみかが「あと7日」と言ってくれる(吹き替え版)。ここはどう考えても無言電話のほうが怖い。
本作オリジナルは、馬がうんぬんという設定。確かに短期間に主人公が呪いの元凶にたどり着くためには、過去にそれなりに話題になる事件が起こっている必要性があったのだろう。ただ、フェリーのシーンは必要だったのだろうか。もしかして本当にフェリーから馬突き落としてる?ひどいことするなあ。
本作では、貞子と山荘の関係がよく分からなくなっている。DVD特典として収録されているシーンを見ると、そこいらの説明がばっさりカットされていることが分かる。そこは必要なシーンだと思うが。あと、本作では貞子が養女ということになっている。やはり西洋では実子殺しは受け入れられないということだろうか。カットシーンでは実は実子なのでは?という含みがある。
次に井戸での貞子とのご対面。邦版では、必死に水を汲む主人公たちと、迫り来るタイムリミットの対比にハラハラさせられたが、本作では偶然・ばったり・出会ったよ〜(byトシちゃん)。このシーンは邦版のほうの勝ち。
そして有名な例のシーン。貞子素早いです。CGなど使っているが、ローテクで撮ったのそのそ動く邦版の貞子のほうが怖い。そして貞子の顔。邦版のあの目つきは心の底から怖かったが、本作ではそのまんまエクソシストのリンダ・ブレア。やっぱり米国って即物的。
キャストに関しては、松嶋奈々子より本作のナオミ・ワッツのほうが美人。行動する知的な女性というイメージも本作のほうが上。主人公の元夫役は、真田広之のほうが私は好きだ。しかし邦版では超能力者という設定で、ご都合主義っぽくていただけない。特筆すべきは主人公の息子。かなり目つきが怖く、普段から死臭がぷんぷんしている。演技やメイクだったらたいしたものだ。
私がいつも参考にしている「みんなのレビュー」ではやたら評判が悪い本作だが、私は悪くないと思う。確かに邦版を見たときの怖さにはかなわないが、それは先に邦版を観ていてネタが割れているというのも大きいと思う。アメリカらしい舞台的なスケールの大きさは本作の長所。未見の人はどちらから見てもかまわないと思う。ただし、見るときは必ず1人で真夜中に見ること。これだけの作品を、恐怖を堪能せずに見てしまうのはもったいない。

ファイナル・デスティネーション

原題:FINAL DESTINATION
監督:ジェームズ・ウォン
2000年
また1本、ホラー映画史に名を刻む傑作が登場した。題名はセイント星矢の必殺技のようだが、直訳すると「最終到達地」。destination の動詞形はdestine で、派生した名詞にdestiny (運命)がある。実に内容をよく表したスマートな題名だ。
主人公アレックスは平凡な男子高校生。修学旅行のパリ行きの機内で、飛行機が爆発する予知夢を見る。慌てて飛行機を出るアレックスと仲間達。アレックスを置いて飛行機はパリへ出発、そして予知夢通りに爆発。乗客は全員死亡。幸運にも死を免れたアレックス達7人だったが、死の運命は彼らを放ってはおかなかった。一人また一人、不可解な事故死を遂げる仲間達。果たして、死の運命から逃れることはできるのか?
主人公達が「死の運命」にまとわりつかれる、というプロットが最高。「スクリーム」のようにただの人殺しはもちろん、ジェイソンやブギーマンのような不死身の殺人鬼でさえ、ちょっと頭を使えば逃げ切れるように思えてしまう。むしろ登場人物たちの頭の悪さにイライラすることが多い。だが本作の敵は、なんとも形容のしがたい「死の運命」というやつだ。一体「死神の見えざる手」から逃げきることなど可能なのだろうか?そんな見ているこちらが絶望してしまいそうなシチュエーションの中、主人公は果敢に運命に対峙しようとする。果たして、結末はいかに?
シナリオの優秀さもさることながら、一人一人の死に様が大きな見せ場になっている。死の予兆からその瞬間まで、長々と回して観客をハラハラさせるシーンもあれば、予想だにしない突然の死によって度肝を抜かれるシーンもある。一人一人の死は、あくまで「事故死」であって、そこに人為的なものや超自然的なものは無い(とも言えないシーンもありはするが)。それはまるで、傑作オカルト「オーメン」の現代パワーアップ版、といった趣だ。何がパワーアップと言えば、進化した特撮によるストレートな死の描写だ。首を絞められて目が充血するシーンなんて嫌過ぎで最高だし、ネタバレで書けないがあのシーンやこのシーンなど。序盤の飛行機爆発シーンも、そこだけでグッと映画に引きつけられるパワーを持っている。特撮だけに頼るのではなく、演出もパワフル。後半の車暴走から踏切でのアクシデントのシーンなど、観るのは2度目なのに本当にハラハラした。監督の力量は本当に大したものだと思う。
アレックスを演じるのはデボン・サワ。全然パッとしないし、頼りにならなさそうなガキなのに、後半になって運命と戦う姿勢を見せてからは俄然カッコよくなるのが不思議。魅力的なヒロイン・クレアを演じるのがアリ・ラーター。色白で綺麗な顔立ちでふくよか。100点あげちゃいましょう。こういった女の子がゴマンといるのがハリウッドの凄いところだ。
私はこの映画、ホラー映画の最高傑作の一本に推すが、私がいつも参照する「みんなのレビュー」では、ウケは今ひとつ。中にはコメディーだとか言う輩もいる。おいおい、お前さんは登場人物に感情移入できないのか?この絶望的な状況を理解できないのか?そんな奴らに映画を見る資格は無い!(いつになく偉そう)。
べた褒めだけなのもなんなので、気になった点をいくつか。まず死の運命を黒い影のようなもので表現している点。映画だから目に見えるようにするのも大切だが、これはちょっとやり過ぎでは?まるで何か、主人公達を殺さんと欲する生命体が暗躍しているかのようだ。そうじゃなくて、意思も無く目的も持たない、文字通り運命そのもの、見ることも感じることも出来ない、という描き方の方が良かったのではないだろうか。同様の観点から、最初の被害者を狙う不自然な水の動きは減点対象。ここは普通に、こぼれ落ちた普通の水でよかったはず。特に事後に水が引いていくシーンは蛇足。そして本作の最大の不満はエンディング。ここから先はネタバレになるので、映画を未見の人は一人では絶対に見ないでください。と言うか二人でも三人でも、映画を観ていない人は絶対読んじゃダメ。
奮闘の結果、運命を出し抜いてラストまで生き残った3人だったが、結局運命からは逃れられず、唐突な死を迎えることになる。結局、主人公達の必死の努力って無駄だったわけ?人生ってそんなもの?その後、アレックス達はいつ来るか分からない絶対死におびえながら縮こまって生きていく(どうせすぐ死ぬだろうが)しかないということ?山小屋にこもって、知恵を尽くして防御策を練り、命をかけて友人を救った代償がこれ?それはあんまりだってものだ。クレアを救ったところで3人が助かってハッピーエンドではいけないのか。確かに、順番を飛ばしたから助かるというのも意味は分からない。分からないが、どこかに救いが必要ではないだろうか。これじゃあ、とっとと飛行機事故で死んだ人たちが得で、死の恐怖におびえながら、人間らしく抗って抗いぬいた主人公が損だということになってしまう。世の中に、運命なんてものがあるのかどうか、誰にも分からない。不確定性原理や量子論的揺らぎやカオスがあったところで(それは未来は予言できないと言っているに過ぎない)、初期条件と境界条件が決まっている以上、世界は未来永劫まで一意に決定されているのかもしれない。それでも私は、人間の自由意志を信じたい。人間の自由意志と努力と英知が、きっと世界を良い方向に導くものと確信している。
ちょっと脱線したようだが、本作はDVD特典として、もう一つのエンディングが収録されている。アレックスはクレアを救うために命を落とすことになる。しかし、クレアの体内にはアレックスの魂が残され、分かりやすく言えばアレックスとクレアが×××して、アレックスの××がクレアの××に、って全然分かりやすくないですね。早い話がクレアがアレックスの子供を生んで育てていく決意をする、という終わり方。もともとはこちらの終わり方なのだが、試写での評判が悪かったので、ヤンキーが好きそうな即物的なエンディングに変更された、という経緯。出産エンドの方が、多少なりとも爽やかさがあるし、哲学的な雰囲気もある。しかし、アレックスが死んでしまうのはどうかと思うし、クレアも助かった保証があるわけでもない。最悪の場合、生まれてきた(飛行機事故で死んでいれば生まれなかった)赤ん坊もろとも殺されるかもしれない。出産エンド、私は嫌いではないが、詰めが甘いと思う。
しかし、試写の評判でラストを変えるなんて、いかにもハリウッド的大衆迎合指向だ。それはそれで興行師としては立派な姿勢だが、やっぱりそれでいいのか?もし試写後のアンケートで全員が「クレアはおっぱいを見せろ」と書いたら本当に見せてくれていたのか?なんでそう書かないんだよ〜。試写に行った奴のバカ〜。

デッドコースター

原題:FINAL DESTINATION2
監督:デヴィッド・エリス
2003年
名作ファイナル・デスティネーションの続編。前作が良く出来ていると続編は全然ダメ、と言うパターンは多いが、本作はなかなか良く出来ている。前作が日本ではあんまりメジャーでは無いので「デッドコースター」という邦題を付けたのだろう。死のジェットコースター、というのもなかなか本作の雰囲気を出していてナイスな邦題だ。
前作は飛行機事故だったが、本作は交通事故。高速道路での阿鼻叫喚の玉突き事故シーンは、かなりの迫力があって本作の見せ場の一つ。
続編だけあって、死ぬシーンは大幅パワーアップ。ホラー慣れした私にもかなりエグく感じたので、初心者は要注意。本作で面白いのは、死ぬときに色々フェイクをちりばめ、観客に「ああそれが危ない!」と思わせておいて、予想を裏切って全く別の方法で殺す、というパターンが多かったところ。ただ単に被害者を増やしただけのオーメン2などと違って、製作者はしっかり考えて作っているのが分かる。一番面白かったのは嫌味なキャリアウーマンが死ぬところかな。ネタバレになるので伏せておくので、観てからのお楽しみ。ただ、排水口から手が抜けなくなるとか、バラ線で胴体切断とか、どうも嘘っぽいシーンもちらほら。ここは『バラ線が体に巻きついてもがいているところを、遠くからゆっくり走ってきたトラック(ブルドーザー・ロードローラー)に轢きつぶされる(しかも顔だけ)』というのが私的にはベストな選択かな。
ストーリーは前作を踏襲していて、登場人物たちが前作の事件を知っているというのがミソ。なんと、前作の主人公はその後死んでしまったという設定。折角前作の主人公には感情移入していたのに、始まりから後味悪いな。生き残りの女の子は精神病院にいるという設定で、その後の扱いも酷い。登場人物が前作の事件を知っているので、『死の運命』が周知の事実になってしまい、存在するか分からない死の影におびえながら日常生活を送る、という恐怖感は薄れてしまっている。実際本作では事件から数日のうちに、登場人物がバタバタ死んでいく。スピード感重視ということかもしれないが、私だったら前作とは全く別の舞台を設定するだろう。
なぜか、本作の登場人物たちは前作の登場人物たちと接点があったということになっていて、話が複雑になっている。そこまで運命論を強調する必要があるのだろうか。ラストシーンの必然性も今ひとつ良く分からない。この少年誰?
本作では、新しい命が誕生すれば死の運命から逃れられるということになっている。正直意味がよく分からないが、前作の当初のエンディングと関連していることは間違いないだろう。
登場人物たちは、どれも精彩を欠いている。主人公は女の子で、ブスでは無いけど特別可愛くもないし、その他ヤク中とかガキとか嫌味なキャリアウーマンとか、どいつもこいつも死んで結構ですというようなメンツだ。前作で魅力的だったアリ・ラーターも、設定に合わせて病んでるっぽいメイクになってしまっている。
前作に比べると恐怖感や作品の重厚感は劣る気はするが、本作は本作ならではのエグさやスリルがあるので、前作を楽しめた人にはお勧めできる。特典映像のメイキングシーンも、スプラッタシーンの裏側が覗けて楽しい。例えば、一人目の犠牲者は顔がつぶれるマネキンと実際の役者を合成している。そうやってリアルさを出しているのか。CGが気軽に利用できるようになって、ゴアシーンにも迫力が増した。いい時代になったものだ。

28日後・・・

原題:28 DAYS LATER
監督:ダニー・ボイル
2002年
「伝染性の強いウイルスのせいで人間が凶暴化する」というアイディアの、今風のゾンビ映画。
のらりくらりしたゾンビと違い、全速力で襲ってくるウイルス感染者はパワフルでかなり恐ろしい。が、映画の出来は期待したほどではなかったな〜と言うのが正直な感想。
映画は大体3部構成になっている。主人公のジムが、病院で昏睡状態から目を覚ますと、ロンドンの町が無人になっているという導入部から、2人の仲間と巡り合うところが1部。フランクとハンナという親娘と知り合い、車で軍の救援所を目指すというロードムービーっぽい2部、軍の施設に入って、軍人達とバトルを繰り広げるという3部。
出だしは、かなり好調。冒頭の研究所のシーンは無かったほうが良かったと思うが、まあそれはいい。ジムが目覚めると(なんとフルチン無修正)、病院には誰もいない。外に出ても、ゴミが散らかっているだけで誰もいない。無人のロンドンを変なロックをバックにさ迷い歩く寂寥感は、異色の出来だと思う。ネットのレビューを読むと死体が無くて街が綺麗過ぎるという意見が多い。確かにそうなのだが、ここは「大都会」と「誰もいない」と相反する要素を結びつける違和感が面白く、画的にこうなるのは正解だろう。
出合った感染者(以下ゾンビと表記)に襲われたところを、二人の男女に助けられる。さあ3人でサバイバルだと思った矢先に、男はウイルスに感染して仲間の女にめった斬りにされる。意表をつく展開で、映画にぐっと引き込まれた。
フランクとハンナに出会ってからは、ちょっと映画のペースを落とし、親子愛などを語りながらほのぼのロードムービー風に進む。ここもなかなか、よくあるゾンビ映画と違う本作の特徴的な部分だ。
軍の施設に着くと、いろいろあって人間同士で死闘を繰り広げるようになる。ネットのレビューでは終盤がつまらないという意見が多数で、私も全く同意。本当に危険なのはゾンビでなく人間だ、などという主張は、もはやありきたりで陳腐だ。折角のゾンビ映画なんだから、最後までゾンビと戦ってほしかったところ。施設内には研究用ゾンビが飼われていて、「死霊のえじき」の丸パクリでしょ。
ラストはいい。劇場公開版とDVD版でエンディングが違う(DVDに特典として収録されている)。私はDVD版のハッピーエンドがいいと思う。救助を待つ主人公達が地面に書いた大きな文字は、「HELP」ではなく「HELLO」。冒頭の主人公の「HELLO」が上手く繋がってきているわけだ。
ところでストーリー展開もそうだが、映像的にもやたらに違和感がある。どうも監督はスタイリッシュに見せようとしすぎだ。今ひとつ場面と合っていないプロモーションビデオのようなBGMを流した画作りとか、意味も無く背景にCG処理していたり、ゾンビの出るシーンでは不必要にコマ落ちっぽい見難い演出をしていたり。ホラーにそんなものは要らない。もっと直球勝負すべきだ。
それから、血しぶき愛好家の私としては、残酷度が足らない。ゾンビが人間に何をしたいのか、さっぱり分からない。食うわけでもないし、上に乗っかってハアハアしてるだけで、直接人間を殺すシーンは一箇所しかない。どうせ死霊のえじきをパクるのなら、あの胴体引きちぎりとかの残虐シーンのオンパレードも今風にパクってほしい。
ちなみに、私の推すゾンビ映画No.1は「サンゲリア」。ロメロ3部作はどうも観念的過ぎて、単細胞な私には面白くない。「バタリアン」「デモンズ」「ドーンオブザデッド(新)」など、どれも終わり方が救われないし面白くない。ほっとけばゾンビどもが餓死してくれることを明示した今作は、それだけでも希望が持てる新機軸と言えるのかも。
どうでもいいが、「流されて・・・」とか「アンドロメダ・・・」とかの「・・・」って読み方に困るんですが。ちなみに『渚の「・・・」』は『ナギサノカギカッコ』と読む。

13日の金曜日 完結編

原題:FRIDAY THE 13TH THE FINAL CHAPTER
監督:ジョセフ・ジトー
1984年
今のところフレディVSも含めて11作出ている、人気スプラッタシリーズの4作目。ホラーファンとしてどの作品も見ているはずだが、テレビで見たぐらいなので、正直どれがどれだかよく分かっていない。そんなドジョウが一杯のシリーズだが、この「完結編」が一番ホラーとしてよく出来ていたように思う。
スプラッター人気の火付け役のシリーズであるが、実はあんまり怖くない。大抵突然現れて一撃で犠牲者を葬り、すぐに消えてしまうので、殺しの前のドキドキ感とか殺しの余韻が希薄。殺し方も刃物で一突き!というものが多く、あまり印象に残らない。登場人物の描き方が弱く、誰から殺されるのかといった緊迫感が無い。無駄に犠牲者だけ多く、本作でもヒッチハイクのおばちゃんなんて出てこなくてもよかったのでは。
ホラーとしてはバーニングやローズマリーの方が面白いと思うが、それでも人気シリーズになるだけあって、ホッケーマスクをかぶった不死身の殺人鬼、ジェイソンのキャラクターは貫禄十分。特にジェイソンが現れるときの、エコーのたっぷりかかった「ツッツッツッツッ、ハッハッハッハッ・・・」というSEは緊迫する。「kill kill kill・・・」と言っているんだと書いてあったサイトがあったが、本当かなあ。どうでもいいが、このSEを聞くと「フラッシュバック」という大昔のエロビデオを思い出してしまうのは私ぐらいだろうか。
本作では、完結編ということで、ジェイソンとトミー少年の対決が見もの。冒頭で生き返っている不死身の怪人をナタで切り刻んでなんになるとも思うのだが、一応決着は付いたことになる。ラストシーンはオーメンのようでホラーファンはニヤリとさせられる。
特殊メイクはトム・サビーニが担当している。それほどすごいメイクは無かったが、多分他人が担当してる2や3よりはよく出来ているのでは?いつかDVDで見て確認することにしよう。
13日の金曜日シリーズのどれか1本だけ見るのなら、本作がお勧め。ポロリもあるよ!

エイリアン

原題:ALIEN
監督:リドリー・スコット
1979年
SFホラーの名作。見所は、なんと言っても造形美&映像美。悪夢のようなギーガーのデザインを、見事に立体化している。特に題名になっているエイリアンのデザインは見事で、ギーガーなくして本作の成功はなかっただろう。エイリアン以外にも、異星人の乗る宇宙船の外観や、有機的な内部の構造も見事。エイリアン、カブトムシの角のような宇宙船、キャノン砲のような異星人の座席、この3点は一度見たら忘れられないインパクトを残す。異星人の宇宙船の曲線美に比べて、地球人の宇宙船は工場の一角のようなゴテゴテとした、宇宙船とは思えないような不恰好さというのも面白い。宇宙船の乗組員が、優秀なアストロノーツではなく、ボーナスにグチをたれるブルーカラーというのも興味深い。また、宇宙船の中で雨が降っているような変わったシーンがあるが、後にブレードランナーやブラックレインを撮る監督らしい、重みのある映像だと思う。
ストーリー的には、超有名な作品なので今更語ることもないだろう。突っ込みたいところがいくつもあるが、取り合えず2つだけ。エイリアン成長早すぎ。何で貨物船に自爆装置なんてあるの。
主役は言わずと知れたシガニー・ウィーバー。「ヒロインのくせに嫌な女」を演じている。演じているというか地なのでは・・・と言ったらファンには怒られるか。口にエロ本突っ込まれたり、半ケツ出したりと大サービス。監督の話では、トップレスのシーンも撮ったようだ。決して美人ではないのに、大女優になれるというところが、アメリカの懐の広さ・才能をきちんと評価する姿勢を表しているように思う。私がずっと昔に観たテレビ放映版では、野際陽子が吹き替えで、「幸運の星よ・・・私を守って、助けて、守って・・・」とかなりうるさかったのだが、実際は意外と静か。初めて観た版だからかもしれないが、私は放映版の独自の演出も好きだ。
BGMはジェリー・ゴールドスミス。監督はべた褒めしているが、今ひとつ印象に残る楽曲が無い。が、その印象の残らなさこそが、ジョン・ウィリアムスと違うジェリー・ゴールドスミス独自の味なのかもしれない。
79年と古い作品だが、今見ても特撮にアラが無いのは見事。久し振りに観たら結構ドキドキしたし、登場人物の描き方も分かりやすくて上手い。古典的名作として、ホラーマニアじゃない人にも観てもらいたい1作だ。

エイリアン2

原題:ALIENS
監督:ジェームズ・キャメロン
1986年
名作の2作目は大抵ダメだが、本作は1作目と並んで高い評価を得ている。しかし、個人的にはやっぱりダメ。
監督はジェームズ・キャメロン。私はキャメロンが大嫌いだ。キャメロンを一言で言うと、脳味噌が足りない。むしろ頭空っぽなんじゃないだろうかとさえ思う。映画自体は、なかなかいいところを突いてくる。1場面だけ切り出せば、印象的ないいシーンも沢山撮っている。ところが、映画の根幹となるような部分が、勢いだけで構成されていて何も考えていないのがバレバレで、それが鑑賞後のしらけ気分を引き起こす。本作、ターミネーター、ターミネーター2、トゥルーライズ、タイタニック。タイタニックなんてマジでコケれば良かったのに・・・。キャメロンで一番面白かった映画は、やっぱり「ギャラクシー・オブ・テラー」でしょう。特に芋虫とお姉ちゃんのカラミがGOOD!(と思ったら、キャメロンは監督じゃなかった。知識不足スミマセン)。
それから、シガニー・ウィーバー。確かに前作では主役だったが、何も2にまで出なくてもよかったのに。シガニーが老けたんで、脚本を無理やり57年後とかしている。あまりに不自然な脚本に初っ端から鼻白んでしまう。2で無理やりシガニーを出したものだから、「エイリアンシリーズ=シガニー出演」というありがたくない刷り込みが出来上がってしまった。しかも、57年前の人間がでしゃばりすぎ。無能な海兵隊とでしゃばりなリプリー、という構図でずっと最後まで映画は続く。私はDVDのレビューを書くとき、最低2回は通しで観るようにしているが、あまりにもシガニーの怒鳴り声が多くて2回目は途中で鑑賞を断念した。題名を「エイリアンVSリプリー」に変えたほうがいい。
映画としては、面白くなる要素を多分に持っていたと思う。前作ではエイリアンは1匹だけだったが、本作では原題が示すように、複数のエイリアンがウジャウジャ出てくる。前作と毛色を変えてドンパチやらせたのはいい判断だ。前作と同じことをやってもどうせ前作は越えられないだろうし。「今度は戦争だ」のコピーも小気味いい。
役者は主人公も含めどうでもいい連中ばかりだが、ニュート役の女の子が可愛いのと、アンドロイドのビショップ役が美味しい。前作ではアンドロイドは悪役だったが、果たして本作では?顔は見るからに怪しい。こんなにもアンドロイド顔した役者がいるんだから、アメリカも底が知れないねえ。
私が見たのは完全版と銘打った長尺版。映画館で観たのが20年近く前だから細かいことは分からないが、確かに観たことの無いシーンが増えている。リプリーに娘がいたとか、機関銃の弾が無くなっていくくだりや最初の惑星探査シーンも多分追加シーンか。確かに重要なシーンもあるが、全体の尺が伸びたせいで、なんとなく間延びした感じは否めない。私はこのDVDを観たとき、途中で退屈してしまい、3日に分けなければ最後まで観れなかった。
ラストは、エイリアンのボスを宇宙空間に放逐。・・・え、それって前作と同じじゃない?どうでもいいけどエアロック、2重扉になってるならインターロックちゃんとかけとけよ・・・。よくSF映画で、宇宙船に穴が開くと宇宙船内に大風が吹いて、船内のものがビュンビュン吸い出されていくが、実際にそうなるのだろうか?空気の流れが激しいのは、断面積の狭い出口部だけだと思う。膨らませた風船の口を解けば勢いよく風を吹き出すが、風船内部で風が吹き荒れているとは思えないし・・・。
ストーリー展開上、気に入らない点はゴマンとあるのだが、いちいち指摘するのは面倒なので割愛。エイリアン2、ストーリーを要約すると、「エイリアンのいる星に人間が行って邪魔なエイリアンを全滅させて帰ってきました」。さすがアメリカンジャスティス!エイリアンをインディアンやイスラム教徒に変えても違和感が無いネ!
ところで、本作で命からがら脱出したメンバーは、3作目の冒頭でリプリー以外全員死んでる。それはいくらなんでも非道いってもんだろう。というわけで3作目も大嫌い。4作目もつまらなかったし。

13日の金曜日PART7 新しい恐怖

原題:FRIDAY THE 13TH PART VII:THE NEW BLOOD
監督:ジョン・カール・ビュークラー
1988年
超マンネリズムの13金も本作で7作目。まあよく続いたものだ。本作でジェイソンと対峙するのは、なんと「超能力少女」。ぐはっ、観る前からテレビの電源を落としたくなるようなプロットだ。
相変わらず殺しのシーンに独創性が無く面白くない上、旧作でトム・サビーニが担当していた特殊メイクの足元にも及ばない。途中でチラッと出てくる生首の適当さは失笑物。ラストのオチも一体なんなんだと唖然。次回作の「ジェイソンNYへ」のラストもひどかったが、ほぼそれと肩を並べるガックシ落ちだ。
主人公の女の子がちっとも可愛くないのも大幅減点。キャリーにしろフューリーにしろ、超能力少女は美人ではいけないのだろうか?一番可愛かったのが「炎の少女チャーリー」のドリュー・バリモアだというのがなんとも。昨今はハリウッドもネタが尽きたようなので、「超能力少女明日香」とか「赤い牙シリーズ」なんかを実写化したら面白いかも。是非主役はかわい子ちゃんでお願いします。
唯一の見せ場は、湖で全裸で泳ぐ女の子を下から撮ったアングルぐらいか。アメリカの女の子は夜にすっぽんぽんで湖で泳ぐのが普通なのだろうか?朽木がアソコに刺さったらどうしようとか思わないのだろうか?

IT

原題:IT
監督:トミー・リー・ウォーレス
1990年
スティーブン・キング原作のテレビシリーズ。キングの映像作品で面白い率は非常に低いのだが(ミザリーぐらいか?)、本作も期待にたがわず低調な出来。ちなみに題名はイットと読む。アイティーじゃないよ。
DVDの両面を使った前後編構成で、テレビシリーズだけあって時間はかなり長い。前半は「IT」と呼ばれる謎の殺人鬼が出現し、30年前にITと対決して撃退した少年達が成長した大人たちが、ITの出現を契機に昔の記憶を思い出し、少年時代の約束を元に故郷に集結する様を描いている。少年達は「スタンド・バイ・ミー」のような感じで魅力的に描かれ、謎の「IT」が引き起こす超常現象、大人たちが少しずつたぐり寄せる記憶の糸のミステリーをからめて、非常にいい感じに仕上がっている。正直、「これはキングの最高傑作か?」などと思いながらハラハラしながら観ることが出来た。ところが後半に至って物語は急激に失速。特にラストはなんなんだ。「IT」はピエロの姿をした謎の生命体で、人間を実際に食い殺したり、自由自在に出現しては幻覚を見せたりする、ほとんど無敵の存在として描かれている。ところがその実態は、しょぼい造形のカニ道楽で、主人公達に素手でボコられて昇天してしまっている。はあ?
前半部は、本当にいい雰囲気を醸し出している。敵がピエロの姿をしているというのもいい。ピエロって、人を楽しませる為に存在するわりには、よく見るとグロテスク。ドナルドが怖いという人も結構いるようだし。ピエロと言えば、「キラークラウン」というコメディーホラーがかなり面白いので、お勧めしておきます。それはともかく、30年前の少年達の交流シーンはすごくいい雰囲気で、自分自身の幼い頃を重ねあわせ、小学校の頃の友達と久し振りに会ってみたいなあ、という気にさせられた。それにしても後半の出来は・・・。テレビシリーズだけに、ゴアシーンがほとんど無いのも私のようなスプラッタフリークにはマイナス点か。
ビデオでは確か前後半に分かれていたと思うので、前半だけ見て謎は謎のままで取っておくのがいいかも。しかしなんでキングの映画はこうもつまらないものが多いのだろうか。私は原作本を読んだことは無いのだが、キングの小説を映像に落とすのがそれほど難しいのだろうか。キングが直々に監督した「地獄のバトルトラック」でも今度観てみようかな・・・。

ヘルナイト

原題:HELL NIGHT
監督:トム・デ・シモーネ
1981年
ホラー映画が全盛だった80年代初頭に作られた名作の1本。
若者クラブの新歓行事で、4人の男女が12年前に一家惨殺のあった「ガース館」で一晩を過ごすことになる。噂では、その一家の中で死なずに生き残ったものがいて、いまだに館の中をさまよっているという。館に閉じ込められた4人を脅かすために、3人の男女が館に忍び込む。しかし、その7人の男女以外に館の中をうろつく影が・・・。
ストーリーを解説しても、正直これといって目新しいものは無い。すさまじいゴアシーンも無いし、キャストが特別豪華というわけでもない。おっぱいも見せてくれない。しかし私は、ホラー映画ベスト10を挙げるなら必ず本作を入れておきたい。
とにかく、奇を衒わずに真っ当に怖がらせてくれる、今となっては希少なホラーだと言える。いつも殺人鬼に覗かれているような不安をあおるカメラワーク、緩急をうまくつけた場面展開、緊張感をあおるBGMに、ビックリさせるシーンではきっちり、しかも嫌味にならない程度にビックリさせてくれる憎い演出。久し振りに見たら、35歳の中年がまるで少年のようにハラハラと手に汗を握ってしまった。劇場で観た時、階段で殺人鬼に襲われ、もうちょっとでショットガンに手が届くというスリリングなシーンで、首尾よくショットガンで殺人鬼を撃退したときに、観客から拍手が沸き起こったのを今でも覚えている。
監督はトム・デ・シモーネ。あんまり聞かない名だが、有名どころで「コンクリートジャングル」を撮っている(有名どころか?)。昔よく12チャンで放映していた、女囚に放水して泥レス状態になる映画で、私もそのシーンしか覚えていない。他にホラー映画は撮っていないようで、ホラーを未経験だった故に、策を弄さずにホラーの文法に乗っ取った正当なホラー映画に仕上げることが出来たのかもしれない。
主演はリンダ・ブレア。なにか異様にふっくらと言うか豊満と言うか、はっきり言ってデブ。これと言ってアクティブに見えない彼女が、凶悪な殺人鬼と戦うというミスマッチ感が面白い。私はリンダ・ブレアというと真っ先に本作を連想するが、「エクソシスト」を思い出すか「チェーンヒート」を連想するか、はたまた「リンダ・ブレアのグロテスク」が思い浮かぶかでマニア度が計れる、一種のリトマス試験紙のような存在だ。
ガース館がどの程度人里離れたところにあるのかという大事な描写が無いし、そもそも12年も人知れず生きていることが出来るのか?肝試しは例年の行事じゃないのか?仕掛けとか部屋掃除とかロウソクとかどうしたのか?地下室の死体は誰だよ?とか論理的には弱いところが散見される。だが、本作はそれらの弱点を補って余りあるほどのスリルと興奮を与えてくれることを約束できる。グチャドロの人体破壊シーンは無いので、ホラー初心者にもお勧めできる。ちなみに、「リング」が平気だった私の奥さんは本作が怖くて途中で観るのを断念した。
以下ネタバレになるので、未見の人は読まないでください。
本作の最大のキモは、殺人鬼が二人いたということだろう。ミステリー的にはアンフェアかもしれないが、まあそれはそれ。観客の誰もが、ある時点で「ああ、また不死身の殺人鬼か」と思うだろう。そう思わせておいて、ラスト間近でひっくり返し、カタルシス満点の決着を観客に叩きつける。ホラー映画を見慣れている人であればあるほど、この逆転劇にすっかりだまされることだろう。正直私も、すっかりしてやられたという気持ちにさせられたものだった。
公開時のキャッチコピーは「今、映画で肝試し」だった。確か試写をやっていたころは「鍵はいくつ、部屋はいくつ、外に出られるのはたった一つ」とか何とか言っていたような気がする(うろ覚え)。劇場で観た時、「なんか宣伝文句と違うぞ」という気がしたのを覚えている。それと本作公開時に、「24時間ホラー連続上映会」とかなんとかいうイベントをやっていた。私ももちろん応募したが、小学生だったので当然落選した。今思えば嫌な小学生だったものだ。

ゴーストシップ

原題:GHOST SHIP
監督:スティーブ・ベック
2002年
ストレートな題名の幽霊船もの。ホラー専門の製作会社「ダークキャッスル」製作。幽霊船と言えば、誰もが「ゴースト/血のシャワー(原題:DEATH SHIP)を思い出すと思うが(そうでもない?)、本作は別にリメイクではない。
ダークキャッスルの映画は、さすがにホラー専門会社だけあって狙い目はいいのだが、観てみると期待したほど面白くないという感じだったが、本作はなかなか楽しめた。最も大事な、「幽霊船らしい、いつどこから何が出て来るか分からない不安感」が良く出ていたのではないだろうか。登場人物を7人に絞ったのも正解。ドイツもこいつもクセがあって、外見も含めてキャラがかぶっていないので、観ていて誰が誰だか分らなくなることが無い。
美術関係も良く出来ていて、豪華客船や荒れ果てた幽霊船を見事にスクリーン上に描き出している。DVD特典のメイキングも観ていて面白かった。「タイタニック」のように超予算をかけなくても豪華客船が描けるのだから、CGの進歩は素晴らしいものだ。
ストーリーは、ラストがイマイチ腰砕けだったように思う。金塊の強奪事件に巻き込まれて殺された人たちの怨念が船に取り付いている、という単純なストーリーではダメなのだろうか?船を使って悪魔が魂を集めている、とか唐突過ぎて納得いかない。ラストのファンタジックな昇天シーンも浮いてはいないだろうか?
冒頭の見せ場であるワイヤーによる人体切断シーンだけど、ちょっとうそ臭くない?人体は豆腐じゃないんだから、あんなワイヤーじゃ絶対人間切れないって(弾き飛ばされるはず)。ホールにいる全員をまとめてワイヤーでくくりつけ、そこからギリギリとワイヤーを締め付けて殺したら、すごい嫌な名シーンになりそう(外側の人間から体が切断されていく)。
まあ、ダークキャッスルの作品を見るときは、期待しないことが楽しむコツかと。

13日の金曜日PART6 ジェイソンは生きていた!

原題:FRIDAY THE 13TH PART VI:JASON LIVES!
監督:トム・マクローリン
1986年
シリーズ第6作。4作目でジェイソンは死に、5作目は番外編のような感じだったが、ジェイソンの出ない5作目が不評だったのか、6作目ではジェイソン復活。ジェイソンは生きていた!とか言って完全に死んでるんですけど。なんと雷を受けて蘇生。脚本書いたやつ出てこい。
今までは「不死身っぽい奴」だったのが、今作からは完全に不死身のモンスター。そりゃまあ、墓場から生き返った奴になにやっても無駄だわな。マンネリここに極めりのシリーズだが、本作では殺しの技が少しだけひねられている。パンチで胴体ぶち抜いたり、壁に顔面押し付けたり、首をねじ切ったり頭を押しつぶしたり体をへし折ってみたり、かなり力技が多い。刃物で一撃!には飽き飽きしていたので、なかなかいい趣向ではないだろうか。
ホラーならホラーで怖がらせてくれればいいものを、ちょっとお笑いに走ってしまっているのが残念。冒頭の007のパロディーとか、妙なテンションのサバイバルゲームに興じる中年たちとか。真正面からホラーを描くのに照れがあったのかもしれないが、プロなんだからまっとうにホラーを描いて欲しい。
ラストで主人公はジェイソンを湖に沈めようとするのだが、不死身の殺人鬼を水深3〜4m程度の湖に沈めてそれで安心なのか?墓に埋められていても不安だったのは誰だ?あとジェイソンが子供達を殺さないのは、子供に優しいとかジェイソンの本体が子供のままだからとかでなく、ただ単にアメリカでの上映禁止を避けただけだと思う。アメリカは子供への暴力にうるさいからねえ。健全なアメリカだからか、病んだアメリカだからなのか・・・。
主役のトミーはぱっとしない感じだが、ヒロインはおばさん顔ではあるがちょっといい感じ。しかし残念なことに、本作ではお色気サービスはまるで無し。金払ってまでオッパイが見たいわけではないが、金払ったんだからオッパイぐらい見せろっての。何か間違ってる?

ゾンビ伝説

原題:THE SERPENT AND THE RAINBOW
監督:ウェス・クレイブン
1988年
ゾンビの謎を科学的に解明する!というドキュメンタリータッチの作品かと思って観たら、呪いとかサイコキネシスとかがバンバン飛び交うトンデモ系映画だった。期待していたものと全然違ったので、正直あんまり面白くなかった。
主演は「インディペンデンス・デイ」のビル・プルマン。若くてかっこいい。しかし、ジャケット写真でドラキュラよろしく棺から顔を覗かせている、思いっきりかっこ悪いのも彼だ。拷問でアソコに釘を刺されるシーンは心底痛そうだった。
ヒロイン役のキャシー・タイソンはなかなかの美人。しかし役柄自体が少々エキセントリックで、脱ぐとアレが真っ黒なんで萎える。悪役はまさしく悪そうな顔が印象的。
監督はウェス・クレイブン。エルム街やスクリームの監督と言うとホラーの大家のようで期待させるが、サランドラやデッドリー・フレンドの監督と聞くと途端に脱力。ホラー作家らしく、びびらせるカメラワークや特殊メイクシーンもちりばめてあるが、映画の内容からして全般的に怖さは薄い。
劇中で、ゾンビになる現象を「ZOMBIFICATION」と呼んでいて、字幕では「ゾンビ化現象」と訳してある。英語字幕を見るまでは、外人が「ゾンビカゲンショー」と言っているようにしか聞こえなかった。人間の耳(私のヒアリング能力)などいい加減なものだなあ。

誕生日はもう来ない

原題:HAPPY BIRTHDAY TO ME
監督:J・リー・トンプソン
1981年
観客を唖然とさせるラストで有名な本作。期待にたがわず私も「・・・?」。
よくあるティーンエイジ殺戮物だが、一人一人殺し方が違うなど、意外と凝っている。ゴアシーンもそこそこの出来で、脳手術のシーンなんかもいい感じ。単なるスラッシャームービーではなく、「犯人は誰か?」というミステリーの要素で観客を引っ張っていくのだが、それにしてはあのオチはなあ。もうちょっとちゃんと伏線を張っておいてくれれば納得もいくのだが・・・。まあこのオチのおかげで好事家の記憶に残る作品になったのだから、それはそれで計算どおり?オチだけでなく、観客をミスリードさせようと怪しい人物を出してみたり、主人公の幻覚を挿入したりしているが、見事に映画自体が混乱してしまっているように思う。礼拝堂のシーンとか訳がわからないし、ラスト近くで墓の前にいた女はなんだ?車の川へのダイブシーンの撮影失敗(車の向きが違う)も失笑物。
登場人物に魅力が薄いのも難点。主人公は、可愛くないことも無いのだが、肌が荒れていてアップはきつい。撮影当時18〜19ぐらいで年齢的に合っているはずなのだが、ちょっと老けた感じ。その他のキャラもみんな老け顔で、とても高校生には見えない。人数が多くて、誰が誰で、誰と誰が付き合っているのか人間関係がさっぱり分からないまま進むので、次に誰が殺されるのかという緊迫感が薄い。最後まで殺されないキャラなんて、最初からいないほうがすっきりするのに。
監督は名作「ナバロンの要塞」のJ・リー・トンプソン。ずいぶん畑違いのような気もするが、「最後の猿の惑星」なんてのも撮ってるし。
決してつまらないわけではないので、話の種にホラーファンなら観ておくのもいいのでは。邦題のセンスはいいね。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀

原題:NIGHT OF THE LIVING DEAD
監督:トム・サビーニ
1990年
1968年の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のリメイク。オリジナルは、現在の「ゾンビ」のイメージの全てを作り上げた記念すべき作品だ。監督はジョージ・A・ロメロで、リメイク版の脚本も担当している。
で、リメイク版の本作。基本的にはオリジナルを踏襲していて、ロメロが描いたゾンビ観をいじることなく再現している。20年以上の月日が流れているので、特殊メイクの技術も発達し、スクリーンに描き出されるゾンビたちのおぞましさは本作の見所。数あるゾンビ物の中で、本作は良作に数えていいだろう。
が、何か物足りない。本作の良さは、「オリジナルを損なわずに再現した」という点にあり、それ以上のものは見つけられなかった。折角リメイクするのだから、何かひとつでも新鮮なアイディアを盛り込んで欲しかった。ゾンビが全力疾走で追いかけてくる「ドーン・オブ・ザ・デッド」のリメイクは、コアなゾンビファンには受けが悪かったようだが、私は悪くないと思う。それによって新たな恐怖感が得られていたし、大事なのは、ゾンビが走ることを「劇中の登場人物が知っている」「観客が知っている」、それに対しての登場人物の対応に観客が納得できるか、ということではないだろうか。
それともうひとつ物足りない点は、残酷シーン。DVDの特典映像を見ると、ゾンビに対する破壊行為ですら検閲によってカットされているようだ。それは時代の流れということだろうか。「死霊のえじき」を超える人体破壊の一大惨劇スペクタクルはもう望むべくも無いのだろうか。「死霊のえじき」やサビーニが特殊メイクを担当した「バーニング」などのDVD版は残虐シーンがカットされていると聞く。残虐シーンあってのホラー映画だと思うのだが・・・。
主役のパトリシア・トールマンはなかなかいい。最初はパッとしない田舎くさい女優かと思ったのだが、話が進んでからのイキイキとした活躍ぶりは非常に魅力的。リプリーか女ランボーか、ちょっと強くなりすぎな気はあるが・・・。セクシーな肌着での活躍が見れて役得役得。劇中の活動的なショートカットも魅力的だが、DVD特典のインタビューでのロングヘアーも大人の魅力。助演は「キャンディマン」「ファイナルデスティネーション」のトニー・トッド。登場シーンで写ったバールはキャンディマンのパロディかと思ったが、本作の方が2年も前に撮られていた。っていうかキャンディマンって意外と新しい作品だったのか。ずいぶん古臭い内容だったが・・・。
で、そのトニー・トッド演ずるベンは、ヒロインのバーバラ(P・トールマン)に対してヒーローの役割のはずだが、クーパーという中年のおっさんと怒鳴り合いばかりしていて結構嫌な奴。特に言葉の分かる日本語吹き替えで観ていると、いい加減うんざりしてくる。もちろんそれは狙った演出なんだが、それにしても気が滅入る。ベンもクーパーも、どっちもどっち。結果論では、必死に窓に板を打ちつけても何の意味も無かったし、地下室や屋根裏にこもったクーパーの方が正しい選択をしていることになる。誰かが正しい行動をしてくれないと、観客は登場人物に感情移入できずにただの傍観者になってしまうように思う。
監督は特殊メイクの第一人者、トム・サビーニ。CG全盛の現在ではともかく、80年代ではロブ・ボッティン、リック・ベイカーと並んでピカイチの技術を誇っていたと思う。やはりベトナムで見たリアルな死の重さが、彼に鬼気迫る特殊メイクを作らせたのだろう。監督としての腕前は、う〜んどうなんだろう。本作の他には監督をしていないし、本作もロメロのやり方に倣っているだけだし。むしろロメロが監督してサビーニがメイクに専念した方が良かったのでは?ありきたりな意見で申し訳ないが。

エクソシスト

原題:THE EXORCIST
監督:ウィリアム・フリードキン
1973年
70年代オカルトブームの火付け役になった記念碑的作品。
今現代の目で観て怖いと言うものではないが、当時では相当ショッキングな映像のつるべ打ちであったことは容易に想像できる。悪魔に取り付かれた少女の恐ろしいメイクなど、今でも十分鑑賞に足る。メイクと言えば、メリン神父役のマックス・フォン・シドーの老けメイク&演技は迫真の出来。その後の「フラッシュ・ゴードン」のミン大王役と同一人物とはとても思えない。
主役は言わずと知れたリンダ・ブレア。後年の汚れた彼女からは想像できない、天使のような愛らしさだ(ちょっと褒めすぎ?)。その可愛い少女が悪魔の形相になって、緑色の粘液吐いたり十字架をアソコにサクサク刺して血まみれになったりするんだから、当時の観客は度肝を抜かれたことだろう。娘二人の父親としては、ちょっと観ているのがキツかった。
私が観たのはディレクターズカット版で、公開当時より長い編集のもの。旧編集版を観たのがずいぶん前の話なので、どこが追加シーンか分からないが、尺が長くなった分、ドラマが間延びしているように思う。オープニングの遺跡発掘シーンは無駄が多いし、エピローグの映画好きな刑事のシーンも違和感がある。そして本編集のウリの一つである階段をブリッジで駆け下りるスパイダーウォークだが、なんか変なので無いほうが良かったのでは。あと時々一瞬挿入される変な男の顔は、あまりに安っぽい脅かしになっていて感心しない。当時の版でもあった演出なのだろうか?
怖いと言えば、悪魔の活躍シーンより、序盤の検査シーンとか精神病院内のシーンの方がよっぽど怖い。本当にこの監督は、人を嫌な気持ちにさせる天才だ。
リンダ・ブレアの子役とは思えない鬼気迫る演技、マックス・フォン・シドー演じる貫禄たっぷりのメリン神父、ジェイソン・ミラー演じる心の傷を引きずるカラス神父など、各者各様の演技合戦に思わず画面に釘付けになる。クライマックスの神父対悪魔の悪魔払いシーンなど、迫力十分。ただ、特撮はちょっとしょぼくて、リンダ・ブレアが浮くシーンではピアノ線が見えてしまっている。ちなみに物の本によれば、監督のW・フリードキンはかなりヤバい奴で、俳優を銃で脅して演技させたとか。DVDには監督の音声解説も収録してあるので、次はそれを聞いてみよう。余談だが、日本語吹き替え版の可愛い声で放送禁止用語が聞けるかと楽しみにしていたが、さすがにそれはなくてちょい残念。
スプラッタブーム時の鮮血ドバドバ、内蔵ドロドロに慣れてしまっている私には刺激が足りない部分もあるが、さすがに名作だけあって重厚さは十分。ホラー好きを自認する諸兄なら避けては通れない1本だろう。

新・13日の金曜日

原題:FRIDAS THE 13TH PART V: A NEW BIGINNING
監督:ダニー・スタインマン
1985年
シリーズ第5作。前作でジェイソンを葬ったトミー少年が成人して主人公として登場。
シリーズの中でも異色な番外編的作りで、13金ファンからは評価が低い本作ではあるが、私は結構好きな1本。
前作でのトラウマにより、精神に異常をきたしてしまったトミー。体だけはマッチョに育ったものの、いまだにジェイソンの幻覚を見る。そんなトミーが新しい精神病院(ホスピスみたいなものか?)に入院した途端、周辺で起こる連続殺人。犯人は復活したジェイソンなのか、狂ってしまったトミーなのか、あるいはジェイソンを騙る第三者なのか・・・。ただのボディカウントムービーではなく、犯人は誰かというミステリーっぽい味付けがしてあるところが新鮮だ。
演出もなかなか斬新で、序盤の掟破りの白昼の凶行は、ホラー映画馴れした人にも(逆にホラー映画馴れしている人にこそ)ショッキングなのではないだろうか。殺しの技も、口に発煙筒を突っ込んで殺したり(死ぬのか?)、革バンドで目を締め付けたり(死ぬのか?)、バンボロよろしく植木鋏を使ったりと、なかなかアイディアが豊富。終盤はいつものブッシュナイフで一突きの単調な殺しになってしまうのは残念。意外にも本作がシリーズ中最も犠牲者が多いそうだ。その分一人一人の特殊メイクに金がかかっていないのか、ロカビリー野郎の喉を掻っ切るシーンとか、一見して手抜きが分かる。ここは最初の方の犠牲者で、観客を引き込む必要があるシーンなのだから、他の犠牲者を割愛しても、トム・サビーニ風のえぐいシーンを見せて欲しかったところ。
クライマックスの対決シーンは、なかなか緊迫したシリーズ中屈指の名シーンだと思う。決着のつけ方もカタルシスがある。ただラストのオチは、次回作につなげようということなのだろうけど、正直蛇足くさい。せめて病院の窓を破って脱走するところまでで止めておけばいいのに・・・。本作は興行成績が悪かったらしく、続編では本作を完全に無視している。おかげで余計に本作のラストが浮いてしまっている。
本作は、お色気シーンが豊富なのも特筆すべき点。ヒロインの濡れシャツ透け乳も含めて、4人のギャルがおっぱい御披露のお手盛り大サービス。もうちょっとヒロインが若くて綺麗だった言うことが無いのだが・・・。

ショーン・オブ・ザ・デッド

原題:SHAUN OF THE DEAD
監督:エドガー・ライト
2004年
ゾンビをパロったコメディー映画。さすがウィットとユーモアの本場・イギリスの映画で、同コンセプトの米映画「バタリアン」ではクスッともすることがなかったが、本作は十分に笑わせてもらった。
主人公は、仕事も恋人とも義父との関係も問題を抱えた、見るからに冴えない中年男性(と言っても29歳の設定。見えねー!しかも私よりずっと若い!)。冴えない主人公の脇には、とても魅力的には見えないオバサンっぽい彼女、見ていてイライラさせられるデブの友人と、布陣は最強。ところが、話が進むにつれて彼・彼女らがとても魅力的に見えてしまうのがイギリス流マジック。
とにかくコメディーなので、難しいことは考えずにただ楽しめばいい。音楽関係に疎い私は、レコード投げのシーンやジュークボックスに合わせてゾンビを殴りまくるシーンなど、面白さが理解できなかったのだが、心配ご無用。笑えるシーンはまだまだ沢山用意してある。母親&彼女救出のプロットを説明するくだりとか、ゾンビの振りをしてゾンビをやり過ごそうとするシーンとか(個々の演技が秀逸!)、笑わずにいられる人がいるのだろうか。
コメディー映画ながらも、実はグロシーンは結構エグい。多分スタッフはゾンビ映画が大好きなんだろうなあ、ということが容易に想像できて嬉しい。もちろんゴア大好きな私としては拍手喝采なのだが、「この映画面白いから一緒に見ようよ」と奥さんに気軽に言えないことだけが残念。
DVD特典のNGシーンなどを見ると、主役が本当に楽しんで映画を撮っているのが分かる(ちょっと楽しみ過ぎかも・・・。)。やっぱり楽しい映画は楽しい雰囲気中で作られるのだろうか。テーマには義父との確執やゾンビ化した肉親への対処、お荷物としか思えないデブとの友情など、いろいろ深い部分もある。だが、それらを一切合財まとめて笑いにしてしまうのが英国流ユーモアなのだろう。ラストの、ゾンビをテレビで見世物にしてしまうような皮肉っぷりも楽しい。
ホラー初心者からゾンビフリークまで、広く楽しめる映画としてオススメしたい(残虐シーンがあるので子供にはお勧めしないが)。

クライモリ

原題:WRONG TURN
監督:ロブ・シュミト
2003年
80年代を思わせる殺人鬼ホラー。21世紀らしい進歩したVFXを活用して、パワフルでスリリングな佳作に仕上がっている。ホラーの大家スティーブン・キングが絶賛したというのも理解できる。
まず惹かれるのが、カタカナで書かれた「クライモリ」という邦題。なんとも不気味な、無機質のようでもあり生物的なイメージでもあり、捉えどころのないホラーとして一級の邦題だ。この邦題をつけた人はかなりのセンスがあるのだろう。ちなみに原題は「WRONG TURN」。あんまり面白くないかな・・・。
内容は、広大な森に迷い込んでしまった6人の若者が、畸形の殺人鬼たちに一人一人殺されていくというもの。ストーリーを書いてしまうと全くありがちだ。特筆すべきは、邦題にもなっている森そのもの。まるで大海原のように延々と続く深遠な大森林を映したショットは、狭い日本に住んでいる私を思わず映画の中に引きずりこむ。これだけ広大な森林では、中にどんな化け物が隠れていても不思議ではないと思わせる。ちなみにロケ地はカナダだそうだ。さすがのアメリカにもここまでの大森林は残っていない?それから、邦題から想像させるほど画面は暗くない。夜のシーンもあるが、ライトを煌々と照らしているわけでもないのに、画面は結構明るくて見やすい。昔の映画のように「暗くてなにやってんだかわかんねーよ」ということが無いのも、技術の発展がもたらしたものかもしれない。
ネタバレだが、殺人鬼は3人家族。3人が3人とも不気味なフリークで、一つ目だったり指が足りなかったりと特徴付けされている。斧・銃・弓矢と使う武器も個性があるのが面白い。特に弓矢なんてアナクロで痛そうないい武器だ。しかもロビンフッドも顔負けの腕前(後記:ロビンフッドじゃなくてウィリアムテルと言いたかった。でもこの2人似てない?)。割と早い段階で奴らは顔を見せるので、その点を物足りなく言う人もいるようだが、私はこれで正解だと思う。見せないことで不気味さを演出するなんてのは一昔前の話。技巧を凝らさない素直な演出は好感が持てる。
お楽しみのゴアシーンも満足できるレベル。顔面を切断されて瞳孔が開いていくシーンなんていいねえ。
大木の枝の上で殺人鬼に追い詰められるシーンがある。辛くも殺人鬼を突き落とすことに成功するが、下には殺人鬼が待ち構えていて、もはや逃げ場は無い。さあ絶体絶命、と思ったら難なく次のシーンに。ここにはさすがに拍子抜けした。大木の枝を伝って逃げたわけ?お前さんはムササビかテナガザルか?あとは殺人鬼がヒロインをすぐに殺さずにさらっていったのも、ご都合主義で減点。そこまでは全てその場で瞬殺していたのに。
それから、殺人鬼との決着がわりかし平凡なのが残念。ヘルナイトぐらいにアイディアを盛り込んだ決着だったら、間違いなく傑作と言えていたのだが。その辺が佳作止まりな理由。
後一つ残念なのが、お色気シーンが足りないところ。折角ヒロインが別嬪さんなんだから、少しぐらいサービスしてくれても。大の字に縛り付けられたときがチャンスだったのだが・・・。

モンスター・パニック

原題:MONSTER : HUMANOIDS FROM THE DEEP
監督:バーバラ・ピータース
1980年
DNA操作によって(成長促進剤のようなものか)急激に進化したシーラカンス(!)が、繁殖するために女性→レイプ、男性→殺すというトンデモないストーリー。それなんてエロ漫画?超次元伝説ラルが84年、リヨン伝説フレアが86年なので、本作や「悪魔の受胎」にインスパイヤされた部分が多々あるのかもしれない。21世紀になっても連綿と続く、「魔物が女性を犯す」エロアニメ、の源泉がそこいらにあるとしたら興味深い。ってこともないか・・・。
モンスターの着ぐるみなどの特殊メイクを、「ハウリング」や「遊星からの物体X」で名を馳せる前のロブ・ボッティンが担当している。が、映画のランクに合わせてか、かなりチャチなデザインだ。最も生理的嫌悪感を感じるようにコンピューターでデザインした、といういかにも胡散臭い触れ込みである。当時のコンピューターと言えば、AppleIIぐらいか?そりゃショボいデザインにしかなるまい。モンスターデザインはともかく、死体のメイクなんかは結構良く出来ており、才能の片鱗を感じられる。
ストーリーに則ったエロシーンは、ちゃんと何箇所か用意してある。襲うときにきちんとビキニを剥ぎ取っておっぱいを見せてくれる辺り、ちゃんと観客の見たいものを理解しているようだ。監督は名前から見る限り、女性なのだろうか。確かにエロシーンは、本作最大の見せ場にもかかわらず、あっさり目ではある。そこいらが女性監督の限界なのだろうか。少なくとも私が監督だったら、1シーン15分はカメラ回しつづけるね。
あとラストは、かなり後味が悪い。エイリアンが胸を食い破って出てくるのはどうということも無いが、モンスターが子宮を引き裂いて出てくるというのはどうもね・・・。世間の男どもは、女体の神秘、特に出産に関係する器官には神聖冒さるべからずといったイメージを持っているのではないだろうか。それをバリバリ蹂躙してモンスター登場というのだから、女性監督にしか撮れないシーンなのかもしれない。
ストーリーもモンスターもC級なので、結果としてC級映画になっている。三流ホラーが好きな人なら、多分そこそこ楽しめるのではないだろうか。私はそれなりに楽しめましたがなにか。
ところで、ドラキュラやフランケンシュタイン、狼男などが出てくる「モンスターパニック」という映画があったような気がするのだが、ググッてもよく分からなかった。同名の液晶ゲーム(かなりヒットしたはず)と「ドラキュラ対フランケンシュタイン」が記憶の中でゴッチャになっているだけなのかもしれないが、どなたかご存知の方は教えてください。映画のムックで大槻ケンジか誰かがちょっと言及していたけれど。

ゾンヴァイア/死霊大血戦

原題:LEGION OF THE DEAD
監督:オラフ・イッテンバッハ
2000年
「バーニングムーン」「新ゾンビ」のイカレ監督、オラフ・イッテンバッハがハリウッドに進出した作品。私は残念ながら前述の2作品は未見なのだが、ネットでちょっと調れば、その凄さを垣間見ることが出来る。私が観た同監督の、「ビヨンド・ザ・リミット」は、その名の通り常識人の限界をぶっちぎりで越えたバイオレンス描写が衝撃的だった。
で、本作。ハリウッドで撮ったということで、「ビヨンド〜」に比べると残酷描写はずっとおとなしくなっている。まあそれでも、普通の映画に比べれば十分すぎるほどのゴアシーンではあるが。
残酷シーンが減った分、コメディシークエンスが多くなっている。が、面白いかと言えば、かなりそうでもない。素で面白い人が、無理に人を笑わせようとするといきなり寒くなる、そんな感じ。
運悪く殺人鬼にとっつかまったアホなコンビ、セールスマンみたいな格好で人を殺して回るさらにアホなコンビ、バーのウエイターをやっている謎の美女(って言うほどでもないが、丸出しのお尻がイイ!)、の3人のストーリーが並行して描かれる。そして後半になって3本のストーリーが1つに交わるのだが、正直言って意味不明。ラストのオチもまったく理解不可能で、一体何が現実にあったことなのかさっぱりだ。それでも主人公側のアホコンビの掛け合いは意外と面白く、こんな破綻した映画でもそこそこ楽しめてしまう私は、得なのか変なのか。
本作が「フロムダスク・ティルドーン」に似ていると言う人が多いので、今度はそちらも観てみたい。「ロストボーイ」みたいであんまり面白そうではなかったため、まだ観ていないのだが。

ランド・オブ・ザ・デッド

原題:LAND OF THE DEAD
監督:ショージ・A・ロメロ
2005年
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」でゾンビを創造したロメロのリビングデッドシリーズ第4作。ゾンビファンからは神格化されている過去3部作だが、本作は賛否両論、むしろ否定意見が多い。私はナイトオブもゾンビもえじきもそこそこ楽しんだという程度だが、やっぱり本作は過去3部作に比べて劣っていると思う。
本作の一番のキモは、ゾンビが知性を持ち始めたということ。道具を使い、仲間と意思を通わせ、怒りの感情を見せる。それを持って本作が駄作だと言う人も多いのだが、私はそれはそれで興味深いと思う。死霊のえじきで一応前フリはしてあったし、ゾンビが知性を持つことで、今まで以上の恐怖の存在になる、はずだったのだけど・・・。劇中では、ゾンビが道具を使うことの恐怖の描写がまるで出来ていない。それだったら、ゾンビに知性を持たせたメリットがまるで無く、ただ旧作ファンの反感を買っただけだ。
だが私が本作をイマイチだと思うのはその点ではない。なんと言うか、ありとあらゆる点において説明不足ではないだろうか。例えば、見た人誰もがまず初めに感じると思うが、ゾンビに支配された世紀末で、貨幣経済が生き残り金持ちが贅沢を享楽する、なんてことがありうるのだろうか?もちろんロメロの頭の中ではそこまでに至った筋道があるのだろうが、我々観客には全く説明されず、不自然感が心にこびりつく。それから本作で極めて重要だと思われる、街の地理関係。中央のタワーは河で囲まれていて、その周りにも居住区はあるのか?フェンスはどこに張られているの?武器庫はどこにあるの?河をくぐる出入り口がどこで、橋はどこで爆破したフェンスはどこ?2回観たぐらいでは全然分からない。もっと分からせる努力をすべきだ。カウフマンの部下の、デブが仲間を殴った意味もさっぱり。変な装甲車の女ドライバーが誰サイドなのか説明不足。
装甲車のデザインもやけにかっこ悪く、メガフォースとか世界が燃え尽きる日を思い出してしまった。そもそも安全な装甲トラックに乗ってゾンビをバリバリ撃つなんて漫画っぽい展開、ロメロ作品にふさわしくない。
ゴアシーンは意外にも豊富だが、一つ一つが散発的に展開し、ストーリーに絡まない見世物レベル。なんかロメロというより、フルチ監督作品のようだ。
主役は今ひとつパッとしないし、悪役であるところのデニス・ホッパーも冴えが無い。ただ一人、ニヒルなライバル役のチョロがいい味を出している。金にうるさい小悪党かと思えば、ゾンビに噛まれると「ゾンビになるのもいい」などと言ったりするのがクールで素敵。水中銃みたいな武器もかっこいい。
本作で絶対やってはいけなかったシーンをひとつ挙げる。ゾンビどもが川底を歩いて渡ってくるシーンがある。そこでなぜかゾンビどもは、水中からぬ〜っと顔を突き出すのだ。地獄の黙示録のように。まるで、水中でしゃがんでそこから立ったように。違うでしょ。ゾンビが前進しているから、川底が浅くなって段々顔が出てくるんでしょ。ここは前進しつつ、徐々に顔が水面から出てくるシーン以外ありえない。ただ単に、スチール栄えするシーンを撮りたかっただけなのか。巨匠・ロメロも衰えたものだ。むしろ最初から全然巨匠なんかじゃなかったというのが真実かも。

ザ・フォッグ

原題:THE FOG
監督:ジョー・カーペンター
1979年
ホラー監督、ジョー・カーペンターのクラシカルな幽霊ものの佳作。
悪意を持った光る霧が街を覆いつくし、その中には得体の知れない何者かが隠れている、という掴み所の無い恐怖感がうまく出ていて、今観ても十分ハラハラさせてくれる。
悪霊は最後まではっきりとは姿を見せないが、光る霧の中に浮かぶボロボロのシルエットと光る赤い目が印象的。
悪霊たちが自分たちを謀殺した人間に復讐にやって来るというストーリーだが、なぜかやって来るのは100年後。いやもう当事者たち死んでるんですけど。とりあえず6人殺せばいいのだろうか?
船の銘板がいきなり燃え出したり、幽霊に殺された一般人の死体がなぜか動き出したり、細部はかなり適当。ラストも今ひとつ釈然としない。とりあえず脅かしとけばOKさ!みたいな古い思想が見え隠れする。まあ古い映画だけど。
ゴアシーンがほとんど無いので、ホラー初心者には最適。マニアには物足りないかもしれないが、未見なら一度はこの雰囲気を味わうべきだろう。しかし2005年にリメイクされているが、今更リメイクする必要があるのだろうか?クラシックな作品はクラシックだから味があるのではないだろうか。オーメンもリメイクされているようだし、ハリウッドのネタの枯渇ぶりには泣けてくる(2作とも観ていないで言うのもなんだが)。
「ハロウィン」「プロムナイト」のジェミー・リー・カーティスが出演している。スクリームクイーンとか言われたりもする彼女だが、どう見ても色気が足りない。若くてプリンプリンなお姉ちゃんを出してほしいところ。

死霊のえじき

原題:DAY OF THE DEAD
監督:ジョージ・A・ロメロ
1985年
ゾンビ作家ロメロの「ゾンビ」に続くオブザデッドシリーズ第3弾。「ランドオブザデッド」が作られるまでは、ゾンビ3部作最終章などと言われたものだ。
時代はおそらくゾンビより後で、地上はゾンビで埋め尽くされ、わずかに生き残った人間が地下シェルターのようなところで細々と生き残っているという設定。ほんの10人程度の生存者たちが、生き残るために協力もせず、互いに対立しあい自滅していくさまは、いかにもロメロらしい演出だ。もともとは大予算を使ったアクション大作になるはずだったのが、予算の縮小により舞台が地下基地に限定され、人間同士のいがみ合いに焦点が当てられるようになったようだ。ランドとか見ると、偶然の産物とは言え、「えじき」はそれで正解だったのではないかと思う。
本作の最大の見せ場は、トム・サビーニの鬼気迫るまでの圧倒的な残酷描写。冒頭の不気味なあご無しゾンビにも驚かされる(逆光が効果的)し、中盤の人体実験シーンもなかなかの見所。そしてクライマックスの地獄の釜をひっくり返したような人体破壊の残虐シーンのオンパレードは、爽快感さえ感じるほど。20年たった現在でもまるで古臭さを感じないどころか、規制とCGに骨抜きにされた現在のVFXでは到底表現できない、まさに残虐シーンの最終到達点だと言ってもいいかもしれない。
映画のもうひとつのキモは、バブというゾンビの調教をテーマにしているところ。正直当事は思いっきり違和感があったし、今観てもちょっとやりすぎな感は無きにしも非ず。しかしランドを見た後では、ロメロの頭の中でゾンビの進化というテーマがあったのだと思うと、感慨深くもなくも無い。私のように、「残虐シーンさえあればいいじゃん」というような似非ゾンビファン以外からも多数の支持を得ているロメロだけに、私によく分からない深い哲学的テーマがあるのかもしれない。
主役のサラ役のロリー・カーディルは、あんまり色気も無いうえ叫んでばかりで魅力が感じられないのだが、DVDの特典映像に収録された2003年時点の容姿は、年月を経て円熟された感じでなかなか魅力的。まあオバサンだけど。同じく特典映像のローズ大佐のデブっぷりには驚き。ストーリーは主役の女科学者サラと、狂気の独裁者ローズ大佐、壊れた科学者通称フランケン博士の3人を中心に展開する。3人が3人自分勝手にやりたいことをやって言いたいことを言う、そんな妥協点の見つけられない3人の迫力ある演技合戦が見所。食料も物資も十分あるようだし、何より地下は絶対安全なんだから仲良くやってくれよと思うのだが、そう理屈通りいかないのが非常事態だということか。ところで、ローズ大佐とフランケン博士、それにゾンビのボブの3人は幾分演技が大袈裟なように思え、ちょっと鼻に付きがち。もう少し押さえた演技にしてくれたほうが私好みなのだけれど。
オーディオコメンタリーは、ロメロ御大と大御所サビーニ、主演のカーディルらが出演する豪華版。フィルムは24コマ毎秒なので、銃撃の一瞬の火花が写らないとか、カメラマンに火花が見えたらフィルムには写ってないとか、撮影用の空砲でも人が死ぬことがあるとか、ブランドン・リーの事故死の真相だとか、えじきと関係ないところで十分楽しめた。「ラストは観客に不評だった」とか主演女優が監督にはっきり言ってるし。ロメロは弁解しているが、確かにこのラストは無いと思う。
以下バレ
当時もラストで拍子抜けしたし、劇場で見ている観客も「なにこれ」といったリアクションだったように思う。別に、安全な場所を見つけてめでたしめでたし、それはそれで悪くない。しかしその前のヘリのドアを開けたらゾンビが出てきてギャー、次の瞬間島でくつろいでいるってどんな演出だ?ここの展開が納得のいくものであれば、もっと一般的な評価が高かった思うのだがどうだろう。

蝋人形の館

原題:HOUSE OF WAX
監督:ジャウム・コレット=セラ
2005年
過去のホラーを最新のVFXでリメイクする、ダークキャッスルの作品。本作も「肉の蝋人形」のリメイクだということだが、私は未見なのであしからず。
ダークキャッスルは、ホラーの癖にどこかカッコつけようとかスタイリッシュに見せようとしているところがあるが、本作はそこいらをかなぐり捨てて、真っ当なホラー映画に仕上がっている。私はダークキャッスルのホラーの中で、本作を1番に推す(ゴシカ観てないけど)。
題名を見ただけで、殺人鬼が「うはははは、お前も蝋人形にしてやるぞ」と追ってくる映画であることが容易に想像できるが、まさしくその通り。だが侮ってはいけない。私も相当数ホラーを見てきたが、本作の痛さ加減は正真正銘の本物。ネタバレになるので詳しくは書かないが、アレをめくってウギャー、ナニをチョキンとブギャー、ソレをバリバリうげげっと、本当に見てるこちらが痛くなるようなシーンの目白押し。この嫌さ加減は、名作「悪魔のいけにえ」にも比べ得るのではないだろうか。
殺人鬼の、不気味なマスクも堂に入っている。ハロウィンのマイケル=マイヤーズの不気味さに劣らない。もっとも、マイケルはマイケルでも、こちらはM.ジャクソンに似ている。
ラストのスペクタクルも見もの。正直、ホラーでここまで大掛かりなクライマックスを見れるとは思わなかった。劇場で観なかったことが残念なほどだ。
主演は、美人女優エリシャ・カスバート。カナダの女優さんらしいが、ルックスもいいがおっぱいもでかい。まあ見せてくれるわけじゃないけど・・・。もう一人の女優に、お騒がせセレブ、パリス・ヒルトン。正直言って美人とは思えないが、なかなか役柄に合っていて好印象。死にっぷりも十分楽しませてくれる。
話的には、○の○○が全て○○○だとか、大風呂敷を広げすぎな感もある。合点のいかない点もいくつかあるが、それでも本作は傑作ホラーの1本に数えていいと思う。お勧め。

キャビン・フィーバー

原題:CABIN FEVER
監督:イーライ・ロス
2002年
バカンスを過ごしに森小屋に来たティーンエイジャー(?)が謎の伝染病に襲われるというストーリー。プロットだけ聞くと、かなり面白そうなスリラーを期待してしまうのだが・・・。
とにかくバカ。シナリオがクソカス。よくこんなダメなシナリオに金をつぎ込めたもんだ。登場人物の行動が全てめちゃくちゃ。主人公グループも地元住民も支離滅裂。特に野球帽かぶったウスノロの行動には心底イライラさせられる。気持ち悪い警官も意味分からないし、「パンケーキ」とか叫びながらスローでカンフー仕掛けてくる少年とかいったい何なんだ。監督脳みそ腐ってない?
エロとグロは適度にちりばめてあるので、そっち方面がお好みの人は満足できるかも。シナリオさえまともだったら、かなりイケてる作品になっただろうに。
主人公グループはシボレーのピックアップトラックに乗っている(後部座席が荷台にある)。バットで叩いたぐらいで動かなくなるトラックなんてなんだよと思うが、まあそれは置いておいて。かの自動車評論家徳大寺氏が、「ミニバンブームの次はピックアップだ!」と数年前に言っていた。三菱がピックアップの乗用車を出しているようだが、本作をみる限り、雨が多い日本じゃピックアップなんて売れないだろう。東南アジアでは人気があるらしいが・・・。

ビヨンド

原題:THE BEYOND
監督:ルチオ・フルチ
1980年
フルチの最高傑作とも言われる本作。まあとにかくシナリオは意味不明かつ支離滅裂で理解不可能。ストーリーを簡潔に言うなら、「関係ない人がバタバタ死んで、地獄の門が開いて、ゾンビが出てきたよ」というもの。あれっ、それ「地獄の門」だったっけ。それとも「墓地裏の家」だったかな。
ストーリーなんてどうでもいい、とにかくゴアシーンだ!というのがこの映画。なぜか酸が降ってきて顔が溶けたり、なぜかタランチュラがやってきて肉を食いちぎったり(おいおい)、なぜかゾンビが出てきたり病院からホテルへワープしたり・・・。もう本当にわけの分からない残虐シーンの羅列ではあるが、しかしこの映画はクソではない。なぜかは分からないが、格調があるのだ。単なる見世物映画に終わらない、なんとも表現できない不思議な魅力、わけわかんねーと言いながらも目が離せない謎の引力がある。全くもって抽象的で申し訳ないが、それがフルチ映画なのだ。
主演女優はカトリオーナ・マッコール。なんと地獄の門、墓地裏の家にも出演している。あんまり若くはないし、すごい美人と言うほどでもない(若いころは美人だったのかも)が、不思議に好感が持てる。赤毛のアンのような女の子も出てくるが、肌が汚くてあんまり可愛くない。ここいらは日本人的なロリコン体質とは違うところか。ピストルで頭吹っ飛ばしたりして笑える。
BGMが結構恐い。男声コーラスの低音が不気味さを盛り上げている。DVDに特典としてサントラが入っているので、一聴をお勧めする。
私はストーリーに穴があったり矛盾していたりすると、それでもう観る気を無くしてしまうのだが、本作ほど無茶苦茶だと逆にぐうの音も出ない。やっぱりフルチはすごい。

ゾンゲリア

原題:DEAD & BURIED
監督:ゲイリー・シャーマン
1981年
「ゾンゲリア」とはまたひどい邦題だ。劇場で予告編が流れたとき、題名が出てきて笑い声が上がったのを今でも覚えている。題名からするとどっかの島でマッドサイエンティストがゾンビを兵士にしてたりしてそうだが、もっとまともなミステリータッチの佳作に仕上がっている。
アメリカの片田舎、ポッターズ・ブラフ。そこにやってきた一人の写真家。写真を撮っているところに謎の美女が現れ、ねんごろになるのか?と思いきや突然の集団リンチ。どうやら、よそ者を虐殺している一団があるようだ。いったいなぜ?主人公の保安官の妻も言動が怪しい。そんな疑惑だらけの中、死んだはずの人間がガソリンスタンドで働いているという・・・。
脚本は、「エイリアン」のダン・オバノン。その後、コメディーゾンビ映画「バタリアン」の監督もしている。ダン・オバノンの脚本がいつも面白いとは限らないが(むしろその逆かも・・・)、本作の面白さは彼の脚本によるところが大きいのでは。脚本だけでなく、特殊メイクも頑張っている。焼けただれた顔や、有名な注射針眼球ぶっさしシーンとか、復顔手術シーンなどなかなかいい出来。監督は知らない人だが(ポルターガイスト3の監督)、奇をてらわずに手堅くミステリー風ホラーとしてまとめている。
主演は、なんかショボくしたメル・ギブソンといった感じで、確かにショボ目ではあるが本作には似合っている。その妻をメロディ・アンダーソン。客観的に言って美人なほうかもしれないが、「フラッシュゴードン」のアホなヒロインのイメージが私には強い。そしてなにより、謎の美女役、リサ・ブロントがいいね。冒頭でセクシーななりで登場し、一瞬だけおっぱいまでご披露。その後ナーススタイルで登場。綺麗なブロンドヘアーと端正な顔立ちが本作には不釣合いなほど魅力的。彼女は「愛と青春の旅立ち」にも出演たらしいが、どの役だか思い出せない。あとフレディ役者のロバート・イングランドも出演している。
本作のような楽しめるホラーが量産されて、80年代は本当にいい時代だった。古き良き時代、ってやつか・・・。

フレディVSジェイソン

原題:FRADDY VS JASON
監督:ロニー・ユー
2003年
ホラー映画の2大殺人鬼、エルム街シリーズのフレディと13日の金曜日シリーズのジェイソンが対決するというコンセプト。両キャラとも人気キャラなので、「どうせマジンガーZ対デビルマンみたいに共闘するんだろ?」などと思っていたが、意外にもガチで戦ってくれる。しかもいかにもチープでB級臭漂うな題名とは裏腹に、脚本もしっかりしているし、アクションシーンやスプラッタシーンも手抜き無く、見応えのある佳作に仕上がっている。
安直にキャラの人気に頼るのではなく、きちんと過去の作品の持つ設定・雰囲気を両キャラとも満遍なくちりばめてくるあたり、スタッフが旧作をよく研究しているのが感じられる。ストーリーは、人々から忘れ去られることにより力を失ってしまったフレディが、人々に恐怖を思い出させるためにジェイソンを蘇らせる。しかし蘇ったジェイソンがあまりに無差別に殺戮を繰り広げるため、邪魔になったジェイソンをフレディが抹殺しようとする、というもの。なかなかいいアイディアではないだろうか。没になった「カルト集団がジェイソンを蘇らせて・・・」なんてシナリオより数段いい。「不死身の超人二人を戦わせる」という、かなり難しいハードルをきちんとクリアしている。まあ、人々にフレディを忘れさせるため、フレディに関わった子供たちを精神病院に隔離して・・・という設定にはかなり無理があるけれど。薬を飲ませて昏睡状態になった患者が何人もいるし。また怪し気な主人公の父親(かなりのガタイ)とか、実力ありそうな保安官とか、途中から忘れ去られてしまうのが少々残念。
たいていの人は本作をコメディと評しているし、実際コメディっぽいシーン・カットも少なくない(フレディが現実に引きずり出されたときのびっくり顔は笑える)が、きちんとホラー部分も押さえてある。目の無い子供だとか、昏睡状態の患者(ウルトラマンに出てきた地底人みたい)なんかのシーンも結構恐い。いつもの縄跳びをする少女の幻想的なシーンもいい。スプラッタシーンもCGの援用を受けてかなり頑張っている。まあやっぱりCGが鼻に付くところもままあるけれど。
肝心の両巨頭の対決シーンは、1ラウンド目は夢の中でフレディの変幻自在の攻撃、2ラウンド目はクリスタルレイクでのプロレス張りの肉弾戦と、一粒で2度おいしい構成になっている。特に2度目のドツキ合いは、血沸き肉踊ると言うか、文字通り血吹き出し肉千切れる名格闘シーンになっている。ラストの予定調和的な1カットも、ホラーファンならニヤリとさせられるだろう。
主役はもちろん、ロバート・イングランド。もうフレディを演じてかなりの年月がたつので、R・イングランド=フレディといった感じの余裕の演技。エキセントリックなキャラクターを、馬鹿馬鹿しく感じる紙一重の誇張されたアクションで演じている。ジェイソン役は、誰か知らん。いつものケイン・ホッダーじゃなくて別のスタントマンが演じている。それから人間側の主人公にモニカ・キーナ。顔はまあまあ美人だけど、何よりも乳がでかい。劇中では披露してくれないが、服の上からでも目を引くその存在感は圧倒的。その他のキャラクターも、オタクっぽいケツ出し少年とか、嫌味っぽいけど最後のほうはいい感じになる黒人女とか、頼りないんだけど最後だけ雲のジュウザみたいにかっこいいイジメられっ子とか、キャラが結構立っていて魅力的。主人公の彼氏だけはどうも役に立たないし目立ってもいなかったけど。
DVDは、特典としてメイキングとしてスタント、VFXシーンの裏側なども見せてくれて、なかなか興味深い。火だるまになりながらもズンズン歩くジェイソンのシーンも、耐火物とかの進歩がなかったら撮れないシーンなのだろう。
私は、何でもありのエルム街シリーズがあんまり好きではないし、かと言って13金シリーズも大ファンというほどでもないのだが、それでも本作は十分楽しめた。


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