今日のレビューはゼロゼロナナ、ゼロゼロナナ言いますのは、イギリスのスパイですね。まあ〜スパイ、スパイってなにする人でしょう。 と、淀川さん風に書き出してみましたが、このページではOO7(ダブルオーセブン)ではなく007(ゼロゼロセブン)と表記しています。子供の頃からの習慣なので。 ターミネーター2以降、CGの発達は目を見張るものがあります。しかしそれに反比例して、アクション映画は魅力を失ってしまいました。特にハリウッド映画は、上っ面の派手さだけにとらわれて、肝心のアクションシーンもCGだらけです。アクション映画の老舗、007シリーズはその点を把握しており、確かにCGも多用していますが、基本的には肉体を駆使したスタントが見せ場になっています。今後CG技術が発達して、全く本物と見分けがつかなくなってしまったら(最近の映画はかなり精巧になってきています)、アクション映画はどうなってしまうのでしょうか?また、007シリーズはアクションをメインディッシュに、ユーモアとお色気でスパイスを効かせ、全編をダンディズムで彩っています。そこが凡百のハリウッド製アクション映画と一線を画すところです。 いや〜、映画って本当にいいもんですね。 |
ドクターノオ |
原題:Dr. No |
監督:テレンス・ヤング |
1962年 |
記念すべき007シリーズ第1作。なんと40年も前の作品だ。 古い作品だけに、内容も十分古臭い。予算も少なく、アクションはかなりチャチ。特に中盤のカーチェイスとか、火を噴くドラゴン戦車など、脱力するほどショボい。しかしながら、古い作品だと覚悟して観れば、それなりに見所のある作品になっている。 特筆すべきはボンド=ショーン・コネリーのキャラクター。若く、スマートでよく動き、スタイリッシュでなおかつ粗暴。後期作品のもっさりしたコネリーとはまるで違うカッコ良さだ。テレンス・ヤングの演出がピタリとはまった結果だろう。親玉のジョゼフ・ワイズマンの科学者然とした面構えがかっこいい。テレビ版の吹き替えで「100万ドルだよボンド君」というセリフがかっこよかったのだが、本人の肉声はあんまり良くないかも。煮立ったお湯の中に落ちて死ぬという、1作目にして最も嫌な死に方を迎えることになる。 初代ボンドガールのウルスラ・アンドレス。美人かなあ?むしろ不細工?ノーブラ・濡れたTシャツというサービスカットもあり。 アクションには金がかかっていないが、その分場面の見せ方やちょっとしたシーンが上手い。髪をクローゼットの扉に張り付けてみたり、部屋に誰かいるという緊張感のあと、ボンドがドアを開けたらシャツ1枚の女の人がいたり、上手いなーと思う。有名なデント教授との対決シーンや、毒蜘蛛のスリリングなシーンもいい。メイキングによると、ボンドと蜘蛛の間にはガラスが敷いてあり、言われてみると蜘蛛が浮いているのが分かる。大仰なBGMは今ならギャグだが、当時は大真面目だったのだろう。 ストーリーは、かなり適当。月ロケット打ち上げを妨害してなにがしたかったのだろう。大体、誘導ミサイルならともかく、月ロケットを電波で妨害できるのだろうか。人間が通れる大きさの、熱くなったり水が流れてきたりする通風口って何?燃料入れすぎただけで爆発する原子炉って一体・・・。 まあ揚げ足を取ればきりが無いが、ファンとしては必携の1本だろう。ション・コネリーの個性、テレンス・ヤングの演出、モンティー・ノーマンのテーマ曲、ケン・アダムの見事なセット、これらのどれかが欠けていただけでも、映画の魅力は大きく減じただろう。低予算映画ながら、それらの要素が見事に融合・昇華した今作の奇跡に、1映画ファンとして感嘆を禁じえない。 |
ロシアより愛を込めて |
原題:FROM RUSSIA WITH LOVE |
監督:テレンス・ヤング |
1963年 |
シリーズ第2作。今でもこれをシリーズ最高傑作に挙げる人が多い。確かに今ひとつぱっとしなかった前作に比べて、アクションシーンは格段にスケールアップしている。現在の目で見れば確かに古臭さを感じるが、当時の観客が絶賛したのもうなずける。題名の「ロシアより愛を込めて」もアクション映画とは思えないロマンチックさだ。まあ原題の直訳だけど。最初の日本公開時には「007危機一発」だったのは有名な話。「ききいっぱつ」は本当は「危機一髪」と書くので、漢字テストで間違えないように。 ストーリーは結構複雑で、犯罪組織「スペクター」が英露両国を手玉にとって、ロシアから暗号解読機を奪い、007を抹殺せんとするもの。そこにストーリー上関係の無いキャットファイトとかジプシー村襲撃とかが挿入されるので、一回観ただけでは非常に話が分かりにくい。3回ぐらい観てやっとスーツケースが2つあるのに気付いたり。 ボンドのライバル、グラントを演じるのはロバート・ショー。ジョーズで船長役をやった人だが、全然イメージが違うのにびっくり。まあ年代が違うけど。綺麗な銀髪に鍛えた肉体、超一級の暗殺者としての腕に変質狂な性向、かなり面白い役柄だ。列車内での格闘は、ただ殴り合ってるだけだが、なかなか緊迫している。冒頭でボンドを倒すシーンがあって、観客を驚かせ、悪役を印象付ける非常に上手い演出だと思う。 それから敵のボス、クレッブにロッテ・レーニア。イヤなオバサンを憎々しげに演じている。スペクターの幹部より、ラストの掃除婦がぴったりはまっている。靴の先からシャキンと毒針が出るのがかっこいい。 ボンドガールのタチアナ・ロマノワ(どっちが名前だかわからない)を演じるはダニエラ・ビアンキ。歴代ボンドガールNo.1に推す人も多い。確かに美人だし、乳もでかい。でも描かれ方があまりにも昔風で、活躍もしなけりゃ自由意志も感じられない。ウーマンリブの現在の目から見るとあんまり魅力的ではないか?乳はでかいが。 ボンドとタチアナのベッドシーンを撮影して、それを元にタチアナがボンドを脅して、ボンドがタチアナを殺して自殺(に見せかけて暗殺)する、というスペクターのシナリオ。なんか回りくどいことしてるなあ。あとボンドはトルコのソ連領事館を爆弾で爆破したりしてるけど、それってテロリストだよ。イギリスのスパイがそんなことしていいのか? アクションシーンの見せ場は、ヘリコプターの追撃戦、ボートチェイスなど。ヘリコプターのシーンは今見ても緊張感がある。ボートのほうは、仕掛けが大掛かりなわりにはテンポが今ひとつかな。ドラム缶を流したらすぐに撃って欲しかった。なんか敵がちんたらしていて興をそぐ。もっとも当時は斬新なアクションであったことは想像に難くない。 主題歌はマット・モンローが歌う。ロマンティックで雄大な、シリーズ中でも出色の曲だ。オープニングタイトルではインストゥルメンタルでエンディングにボーカルが流れるという、以降の作品とは毛色の違う使われ方をしている。 |
ゴールドフィンガー |
原題:GOLDFINGER |
監督:ガイ・ハミルトン |
1964年 |
シリーズ第3作。007シリーズのベスト3を挙げるとしたら、誰もがこの作品を挙げるであろう名作。古い作品ゆえにチープなところもちらほら見えるが(飛行機のシーンなどワイヤーが丸見え)、シナリオ・演出・キャラクター・アクションなど、全ての要素が見事なまでに高いレベルにまとめられている。 まず、金保管庫を襲い、原爆を爆発させて放射能で汚染させるというアイディアが秀逸。これがただの銀行強盗だったとしたら、ここまでの名声は得られなかっただろう。 主役のショーンコネリーも油がのっていて、間違い無くこの頃が最盛期だろう。ゴールドフィンガー役のゲルト・フレーベの、偏執的でありながらユーモアも感じられる独特の存在感がいい。サンダーボール作戦のラルゴと並び、シリーズ中最高の悪役キャラクターだろう。シルクハットが武器のオッドジョブも素晴らしい。平気で人を殺しもするが、笑顔が憎めない。以降のボンドシリーズの敵役は全て今作のオッドジョブが原型となっていると言っていいだろう。ボンドガールのプッシー・ガロア(オナー・ブラックマン)はなんと言うか、オバサン。胸はでかいが色気なし。プッシーという名前はすごいが。むしろ2人目に出てくるボンドガールのほうが美人。あっけなく殺されてしまうのが残念。シャーリー・イートンの全裸金粉死体も非常に美しくて印象的。でも本当に金粉塗っただけで死ぬのかなあ? アクションの見せ場も盛りだくさん。特に秘密兵器満載アストンマーチンのカーチェイスと、ラストのフォートノックスでの決闘は手に汗握る映画史上に残る名シーンと言える。時限爆弾が7秒前で止まるのもシャレが効いている。 特に不満を言うところもないのだが、フォートノックスの兵隊達がなんで死んだふりをしてゴールドフィンガーの好き放題にさせたのか、その点が説得力不足。ご都合主義が見えてしまって多少減点。 主題歌はシャーリー・バッシーが熱唱。なんと彼女はシリーズに3度も起用されている。3曲の中ではやっぱり今作が一番迫力があって聴き応えがあると思う。 |
サンダーボール作戦 |
原題:THUNDERBALL |
監督:テレンス・ヤング |
1965年 |
シリーズ第4作。ゴールドフィンガーが大ヒットしたので、取りあえず金をかけて大作路線を突っ走ってみましたという作品。NATOの原爆を強奪して大金を恐喝しようとするプロットは、非常に奇想天外でありつつも現実味があって、シリーズNo.1のアイディアだ。ネバーセイネバーアゲインでリメイクされたのもうなずける。しかし脚本の細部はいたって稚拙。ともかく見せ場さえあればいいだろうという考えが見え見え。空軍パイロット入れ替え騒動がある病院に偶然ボンドが入院していたり、殺されたパイロットの妹の近くに超偶然にも作戦の首謀者がいたり(よく考えると全く納得できない)、敵はトングです、スペクターですと言わんばかりに刺青や指輪をしていたり、クライマックスの水中戦などストーリー上全くわけ分からなかったりと、挙げればきりがない。ちなみに、序盤ボンドがミサイル装備のバイクに救われるシーンがある。これは敵車に乗っているのがリッペ伯爵で、バイクに乗ってるのはスペクターの刺客フィオナ。別にボンドを救おうとしたわけではなくて、任務に失敗したリッペ伯爵を暗殺したということらしい。そのことに気がつくまで何回この映画を観たことだか。 ハイライトシーンの水中戦だが、確かに水中での集団格闘シーンの撮影が困難なことは分かる。しかしストーリー上意味のないシーンを延々と見せられても困る。敵は原爆を持っているというのに、悠長に水中銃で立ち向かってる場合じゃないでしょ。しかもなんか命がけの戦いというよりは、敵の水中メガネを取った方の勝ちという水中騎馬戦を見ているようだ。 巻頭の小型ロケットと、切り離しできる水中翼船はおおっと思える出来。しかしまあ、水中翼船の後部に残された部下は悲惨。駆逐艦だか巡洋艦だかにマシンガンで立ち向かってるし。今作のボス、ラーゴ(テレビではラルゴだったけど)は部下を殺し&見殺しにしすぎ。こんな上司にはつきたくないよ。 序盤で、ボンドがストレッチマシンで危機一髪というシーンがあるが、間違いなくシリーズ中最もかっこ悪いピンチだろう。しかもその後、腹いせに近くにいた人物(多分犯人なのだろうが)を蒸し焼きにしたり、看護婦を脅迫して強姦まがいのことまでしてる。私が観たテレビ版ではすっぱりカットされていたが、まあ当然。 私は007といえばロジャームーアという世代だが、初期の作品を観ると、古い世代の人が007=ショーンコネリーというのも分かる気がする。しかしショーンコネリーの最盛期もこの作品ぐらいまでかなあ。ラスボスのラーゴ役のアドルフォ・チェリはシリーズ屈指のはまり役。眼帯と銀髪が非常にかっこよく、残酷非道でありながら、部下を動かすだけでなく、最前線で陣頭指揮する魅力的な悪役を貫禄たっぷりに演じている。ボンドガールのドミノ役クロディーヌ・オージェはとても綺麗な女優さん。今一つ顔に特徴がないような気もするが、スタイルは抜群。特に登場時の水着は、胸の部分がメッシュのシースルーになっていて、お色気たっぷり。2度目の水着も胸の部分がたっぷり空いていて、目の保養になる。悪役のフィオナ(=ルチアナ・パッツィー)もなかなか綺麗で非常にグラマラス。風呂場のシーンは生唾もの。死に方がやたら嘘っぽかったが。 音楽はおなじみジョン・バリーで、緊迫感のあるBGMを作曲している。水中シーンのBGMはなんとなく素晴らしき世界旅行か野生の王国っぽい。後の作品で監督を務めるピーター・ハントの編集は、BGMと合わせて迫力のあるラストの格闘シーンを作り出している。 あとどうしても書かずにはいられないが、ラストのボンド&ドミノの救助シーンはいくらなんでもうそ臭い。ボンドはいいにしても、手が疲れたら哀れドミノは空中散歩となってしまうのでは? 追記:上述のBGMはロシアより〜の使いまわしの様子。2度死ぬでも再使用されていた。 |
007は二度死ぬ |
原題:YOU ONLY LIVE TWICE |
監督:ルイス・ギルバート |
1967年 |
シリーズ第5作。なんと日本が舞台。若き日の丹波哲朗も出演。 原題は非常に訳しにくく、特に「ONLY」をどう訳すかが重要だが、邦訳はそれをすっぱり切って「LIVE」を「死ぬ」と意訳している。なかなかかっこいい訳ではないだろうか。劇中でも字幕でブロフェルドの台詞を「二度死ね」と訳してあったが、今ひとつ決まっていない。TV版では「(007)これが二度目の人生さ」「(ブロフェルド)これが最後の人生さ」という吹き替えが非常にサマになっていたのだが。 映画は前作から更に調子に乗って大作路線を突っ走っているが、出来たのは見るも無残な駄作だった。ともかくシナリオがだめ。脚本家も監督もプロデューサーも、製作者が全員ラリってハイな気分の中で作ったとしか思えないようなだめさ加減。ツッコミどころ満載で、もしかしてそのためにわざわざ大金をかけて作ったのか? 車を磁石で吊り上げるとか、組み立て式オートジャイロの空中戦とか、金のかかった巨大なセットとか、見るべきところは無いでもない。むしろ頭を空っぽにしてみたら、結構楽しめる娯楽作品になっているのかもしれない。だが残念ながら私の頭の中には脳みそが入っているので、この作品を楽しむことは出来なかった。レビューになってなくて申し訳ないが、これ以上この作品について語るつもりはない。ショーン・コネリーがこの作品を機にシリーズから降りたのも納得できる。もっとも映画会社は、降板の理由を日本のパパラッチのせいにしたいようだが。 |
女王陛下の007 |
原題:ON HER MAJESTY’S SECRET SERVICE |
監督:ピーター・ハント |
1969年 |
シリーズ第6作。映画評ではよく「異色作」と言われる。 主演はこれ1本だけの、ジョージ・レイゼンビー。巷で言われるほど悪いとは思わないが、さりとてこれと言って特色の無い男優。あと2本ぐらい主演していれば、彼なりのボンド像が出来上がっただろうが、たらればの話をしても仕方がないか。インタビューでの年をとった彼の姿は、全く若い時の面影がなく、衝撃的だ。 この映画、今ひとつ評判が良くなく、しかし最近になって再評価されつつあると言うことらしい。しかしながら、やっぱりアクション映画としてみると物足りない気がする。確かにスキーアクションは時代を先取りしていて、今見ても迫力がある。ラストのボブスレーシーンなど、スピーディーで緊迫感のあるいいアクションだ。ただ、もうちょっと別のアクションも見たかった。途中のカーチェイスは迫力不足だし、タイトル前のプレシークエンスは殴りあうだけ。タイトル前と前半の冗長な部分に、はっとするアクションを入れて欲しかったところ。雪山撮影は金がかかるのか、チープな部分が見え隠れする。ラストの要塞爆破シーンはやたらヘボい。特撮で名をはせた007シリーズとは思えない出来。 特撮がチープならストーリーまでチープで、スペクターの首領ブロフェルドが細菌兵器の使用と引き換えに要求したものは、なんと恩赦だった。恩赦してもらって、老後は縁側で猫をなでながら日向ぼっこでもしようと思ったのだろうか。 ブロフェルド役は、刑事コジャックで有名なテリー・サバラス。なんと言うか、ブロフェルドと言うよりコジャックだよ、やっぱり。渥美清が金田一耕介役だったときぐらいの違和感だ。ブロフェルドは、2度死ぬのドナルド・プレザンスの印象がすごく強烈だったため、彼こそブロフェルドという気がしてならない。しかし、狂気の科学者といったプレザンス版ブロフェルドでは、自らスキーで007を追いかけるアクティブな今作のブロフェルドには合わなかっただろう。ボンドとブロフェルドは2度死ぬで顔を合わせているにもかかわらず、会ったときボンドに気が付かなかった。そりゃそうだ。2人とも役者代わってるし。 ボンドガールはダイアナ・リグ。正直言って、彼女のどこにボンドが惚れたのか分からない。映画始まっていきなり入水自殺しようとしているし。この映画で、なんとボンドは結婚までしているのだ。2度死ぬでも結婚してたけど、今度は本気。しかしラストでトレーシー(リグ)は撃ち殺される。それなら最初から結婚なんかしなくてもいいと思うが、原作がそうだから仕方ないというところか。他に、ブロフェルドの研究所には何人もの女性がいるが、どれも古いタイプの女性で、魅了が全く無い。 テレビで放映されたとき、冒頭のガンバレルやプレシークエンスが無く、いきなりタイトルから始まった。さすがは異色作と思ったが、DVDを観て、単にカットされただけだと分かった。そう言えばトレーシーとの出会いが不自然だなとは思ったのだが。 監督ピーター・ハントはこれが第一作ということで、凝ったカットが多い。冒頭ボンドの顔半分だけを写しつづけたり、プールにカジノのネオンが浮かび上がったり、窓に雪のシーンが映されたり、など。いくつかのシーンでは凝っているというより、ちょっとやりすぎの感じも受ける。格闘シーンは彼の得意技で、短いカットをつないで非常に迫力のあるものに仕上がっている。 主題歌はうっとりするほどのダミ声のサッチモ=ルイ・アームストロング。めちゃくちゃスイートなラブソングで、珍しくタイトルバックには使われずに、劇中ボンドとトレーシーがデートするシーンに使われている。これがまたこっぱずかしいったら。そしてタイトルバックには、今作の主題曲とでもいうような低音重視の曲が流れる。この曲はアクションシーンにも使われ、緊迫感を高めている。 |
ダイヤモンドは永遠に |
DIAMONDS ARE FOREVER |
監督:ガイ・ハミルトン |
1971年 |
シリーズ第7作。「女王陛下〜」がコケたので、莫大なギャラを払って無理やりコネリーを復帰させた。ギャラで制作費が底をついたのか、どこもかしこもチープ。肝心のアクションもスローテンポで、見せ場らしい見せ場が全く無い。007シリーズ中で最もつまらない作品のひとつだろう。 ダイヤモンド衛星を使って、レーザー光線で地上を攻撃するというプロットなど、非常に稚拙。次は東京の水がめに毒を入れたり幼稚園バスを乗っ取ったりするのだろうか。 冒頭のブロフェルドとの対決、カーチェイス、ラストの海底油田基地での戦闘など、どこを取っても退屈。しかも核ミサイルの爆発シーンとかヘリの爆発シーンなど、信じられないぐらいにチープ。敵のホモコンビやどう見ても弱そうな女用心棒とか、キャラクターメイクもまるで空回りしている。敵の首領のブロフェルドは、前作、前々作とまた違う俳優が演じている。この人、2度死ぬですぐに殺された人じゃん。何でこういう重要な役を使いまわすかな。決して存在感が無いわけではないが、あまりにも前作・前々作とイメージが違いすぎ。他にも、前のシリーズで見たことある人、あるいは後のシリーズで出る人がわんさか出ている。そのくせ、ライターは変な中年のおじさんが演じていて、まるでらしくない。 ボンドガールはジル・セント・ジョン。決してブスではないしスタイルも悪くないが、もう見るからにビッチ。もうちょっとマシな人はいなかったのかな。途中で殺されるラナ・ウッドのほうがよっぽど綺麗だしボイン。しかし下手くそな編集のおかげで、ラナ・ウッドの死があまりにも突然すぎ。あと冒頭で、ボンドが女の人のビキニを剥ぎ取るシーンがあり。スローにすればバッチリです。 製作者は、この映画をアクション映画ではなくコメディ映画としたかったのかもしれない。だとすれば、全然迫力の無いアクションシーンや、変な顔のショット(冒頭で日本人がふすまに頭をぶつけて痛そうな顔をする、ブロフェルドの女装、ホモが股間を締め上げられて変な顔をする、など)も合点がいく。でもそんなの007じゃない。 主題歌はゴールドフィンガーのシャーリー・バッシーで、ちょっとフレーズがくどい気もするが、迫力があって耳に残る。 |
死ぬのは奴らだ |
原題:LIVE AND LET DIE |
監督:ガイ・ハミルトン |
1973年 |
シリーズ第8作。ニューボンド、ロジャー・ムーア初主演作。私ぐらいの年代では、007と言えばショーンコネリーではなくロジャームーアだろう。そしてロジャームーアと言えば広川太一郎なのだが、残念ながら吹き替え版は入っていない。 映画はカリブ海のブードゥー教やニューオリンズの黒人の風俗などを興味深く描いているが、それに力を注ぐあまり、肝心のアクションのほうは今一つ。最大の見せ場のボートチェイスは非常によく出来ているが、それ以外の2階建てバスのチェイス、空港での飛行機アクション、ラストの残党とのバトルなど、どれもぱっとしない。ボートチェイスの次に印象的なのは、因幡の白兎よろしくボンドがワニの背中を渡るシーン。命はかかってるが金のかかっていないアクションシーンだ。 この映画で一番印象的なキャラクターは、ニューボンドでもなく敵のボスでもない、ミステリアスな美女ソリテール。美人でグラマラスと、ボンドガールの中でも5本の指に入るお気に入り。ボスのカナンガは今一つぱっとしないが、リアリティーを目指したのかな、ということでよしとしよう。でもあの死に様はちょっといただけない。ボスの傀儡(かいらい)の黒人二人は、今一つお笑いっぽくて好きになれない。サミディの笑い声はすごく魅力的だが、あのラストシーンはいったいなんだったんだろう。 余談だがTVで放映されたとき、2階建てバスのチェイスとかハンググライダーによる潜入シーンとか、予言が外れたソリテール(TVではソリティア)をなじるシーンとか、結構重要なシーンがばっさりカットされていた。2回目の放映では、1回目でカットされたシーンが復活した代わりに、他のシーンがカットされていた。2回合わせてやっと1本の映画と言った感じ。あとやっぱりボスを倒したシーンでは「おおぼらを吹き過ぎて、吹っ飛んじゃったよ」と言ってほしかったなあ。仕方ないとはいえ、字幕はかなり意味がはしょられちゃっているんだよな〜。 シナリオも結構いいかげんだし、正直言ってニューボンドが成功しているとは言いがたい。ボンド=ロジャーと言えるようになるまでには、10作目まで待たなければならないだろう。あとQが出てこないのが個人的には不満。最初のシーンはMじゃなくてQでよかったのでは? 音楽はポール・マッカートニーを起用。エネルギッシュなリズムが印象的。映画中のBGMにも、ほとんどアレンジせずに使われている。タイトルバックの、女性がガイコツに変わってしまうシーンが非常にショッキングで面白い演出だ。 |
黄金銃を持つ男 |
原題:THE MAN WITH THE GOLDEN GUN |
監督:ガイ・ハミルトン |
1974年 |
シリーズ第9作。シリーズ中最もつまらない作品のひとつ。 007シリーズの華とも言うべき、アクションシーンに冴えが無い。中盤の、車の宙返り河越えアクションは見事だが、そこ以外に見せ場が全く無い。その河越えシーンも、SEがヘボくて(ヒュ〜っと脱力加減)迫力が半減。カメラアングルも平凡。 当時流行りのカンフーシーンがあるが、迫力はジャッキー映画の百分の1程度。 変なからくり屋敷内でのラスボスとの一騎打ちは、今ひとつ緊迫感に欠ける。ラスボスの手下の小人はお笑いキャラでこれまた凄みが無い。 ボスのクリストファー・リーはなかなか好演しているとは思うが、脚本がまずく魅力を活かしきれていない。ボンドガールのブリッド・エクランドは、ブス・貧乳・無能と3拍子揃い踏み。ボンドガール史上最低として異存は無いだろう。「オクトパシー」で主役を獲得したモード・アダムスも出演。オクトパシーの頃よりは若くて多少は綺麗。前作で出てきた保安官がまた出てきたりして、悪ノリし過ぎ。 どこを取っても魅力の無い今作だが、唯一色気だけは他作品の15%増し。恒例のタイトルバックはシリーズ随一の露出度。見えないように隠してはいるが、拡大すればヘアが見えているような気がする。モード・アダムスのシャワーシーンも、ローブを渡すときにおっぱいが見えているような。プールでの全裸水泳もお色気満点。まあ私の妄想が多分に盛り込まれているので、あまり期待はしないように。 |
私を愛したスパイ |
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原題:THE SPY WHO LOVED ME | |
監督:ルイス・ギルバート | |
1977年 | |
シリーズ第10作。ロジャー・ムーアになってからぱっとしなかった007シリーズだが、起死回生ということか、制作費をたっぷりかけた超大作になっていて、映画的にも興行的にも成功している。 有名な崖からのダイビングで映画は始まる。空中を舞うボンドを見事に捉えた映像が素晴らしい。映画の舞台はアルプス、エジプト、地中海、そして敵基地と移っていく。雪山、砂漠、海、とバラエティーに富んでいて面白い。エジプトでのコメディーっぽいアクションのあと、列車内の格闘を挟み、舞台は地中海へ。今作最大の見せ場が「潜水艇になるロータス・エスプリ」だろう。サイドカー、乗用車、ヘリコプター、小型潜水艇など、これでもかこれでもかと敵が登場し、観客を飽きさせない。秘密兵器に頼ったアクションは感心しないが、まあ面白いのでよしとしよう。次に巨大タンカー内での戦闘シーン。このタンカーのミニチュアもよく出来ているし、敵基地の巨大なセットも秀逸な出来栄え。2度死ぬの火山内のセットもすごかったが、それと比べても遜色のない壮大さだ。デザイナーのケン・アダムの面目約如というところか。何でもこのセットのために、新規にスタジオを建設したそうだ。やることがでかい。 今回の悪者は核ミサイルでニューヨークとモスクワを破壊しようとする。何でそんなことをしようとするのか、その後どうするつもりなのか、全く理解不能。とにかくスタッフは何か悪いことをやらせたかったのだろう。悪玉ストロンバーグを演ずるは、クルト・ユルゲンス。確かに貫禄のある俳優だが、シナリオが悪役を活かしていないのでもったいない。なんだかそこいらの中小企業の気難しい社長さんという感じ。彼の手には水かきのようなものがあるが、だからなんなんだ。悪玉がぱっとしない分、手下のジョーズがいい味を出している。2.2メートルの巨体、いかつい顔、そしてピカピカの銀(?)歯。演出によっては、とんでもなく恐ろしい役にも出来たのだろう。銀歯で相手の喉に噛み付いて窒息死させるというのが彼の技。確かに喉笛を食いちぎって殺すというのでは、あまりに残酷すぎる。しかし窒息死させるなら、そのでかい手で首を絞めればいいと思うが。劇中何度もしつこくボンドにまとわりついてくるが、ことごとく撃退。独特の外見とコミカルな味付けから、オッドジョブに並ぶ人気悪役になった。だからといって次回作で善人になってしまうのはちょっと・・・。ボンドガールはバーバラ・バック。ロシアの一流スパイを演じる。「私を愛したスパイ」の私とは多分彼女のことだろう(ボンドと解釈することもできるが)。頬骨が目立ってあんまり美人とはいえないかも。ロシアのエージェントのくせに、大して活躍をしないのは時代が古いからか。彼女は恋人をボンドに殺されたため、ボンドへの復讐を誓うが、結局なし崩し的にボンドと寝てしまう。今ひとつ設定が活きていないか。最初のほうでサメに殺される、マネキン風の顔の女の人が秘密を漏洩しなかったら、ストロンバーグの計画が失敗することはなかったのかと思うと、微妙なシナリオだ。悪役が失脚するのは必然ということにしてもらいたいところ。 敵のタンカーの特撮は非常によく出来ているのだが、ラスボスの基地である「アトランティス」の出来は今ひとつ。SF的なデザインはカッコいいのだが、水上に出たり海中に潜ったりするという設定に無理がある。撮影用のミニチュアもそれほど大きくないため、画面上でもちょっとしょぼい。もう2〜3倍大きかったらよかったかも。 主題歌は「NOBODY DOES IT BETTER」。ピアノの静かなイントロから始まって、途中で曲調が変わって盛り上がるのがいい感じ。ちゃんと歌詞に「THE SPY WHO LOVED ME」が盛り込んである。 余談だが、今作は私が初めて劇場で見た007シリーズだ。多分、今30代の007ファンには、結構そういう人がいるのではないだろうか。子供のときはすごい面白い映画だと思ったのだが、さすがに大人になってから観ると子供向けだなあと思う。しかし理屈抜きで楽しめば十分面白い作品だと思う。007シリーズ初心者には是非お勧めしたい。 |
ムーンレイカー |
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原題:MOONRAKER | |
監督:ルイス・ギルバート | |
1979年 | |
シリーズ第11作。前作がヒットしたため、費用をたっぷりかけて大作路線を突っ走っている。次から次へと出てくるアクションは面白いのだが、あまりにもコメディーに走ってしまって、ばかばかしくさえ思えてしまう。たとえば冒頭のスカイアクション。パラシュートなしで空中に放り出されたボンドが、敵のパラシュートを奪うというスリリングなもの。実際に空中で撮影していて、かなりすごい見せ場だ。しかし、ジョーズが出てきていきなりトーンダウン。パラシュートがいかれたジョーズが空中で手をばたばたさせたりして、あーあという感じ。確かに子供には受けるだろうが・・・。リオのロープウェーにしてもアマゾンでのボートチェイスにしても、万事がその調子でがっかり。 シナリオは最悪。基本プロットは前作のそのまま焼き直し。アクションを見せるためだけのシナリオで、話のつながりとかもういいかげんの極み。毒ガスによる人類抹殺ってなにそれ。「なぜムーンレイカーを奪い返した?」「必要になったからだ」。なんじゃそりゃ。 特撮は今のレベルで見てもかなり良く出来ている。CGなど一切使わずに、多重露出だけでここまでやってしまうところがすごい。相変わらず豪華なセットやミニチュアがよくできている。 ロジャームーアはまだまだ若く、このようなコメディータッチの作品にはぴったりのはまり役といえる。悪役のドラックスはアメリカ人の設定だと思うが、なぜかフランス人が演じている。私を愛したスパイと同じで、とりあえずボスですといった感じのキャラで、今ひとつ存在感が無い。ボンドガールはロイス・チャイルズ。確かに知的な感じはするが、今ひとつ色気や華やかさにかけている。役名はホリー・グッドヘッド。頭がいいからグッドヘッド、なんてストレート。前作で人気を得たジョーズが再登場している。確かにジョーズは得がたい存在感を持った好キャラだが、いくら前作で受けたからって安直に出すのは考え物。ジョーズのおかげでかなりこの作品の格調が落ちてしまった。しかも今作では彼女が出来て、改心していい者になってしまうという噴飯もの。ここまで徹底して子供向けに作った製作者の姿勢にはある意味敬意を表する。キャラといえば、ジョーズの恋人がおいしいキャラ。金髪、みつあみ、メガネ、巨乳と、煩悩の塊のようなキャラ。しかも結構可愛い。なぜジョーズと一緒に宇宙コロニーにいたのかはまったく謎だが・・・。あと名前も無いボンドガールたちが、みんなおっぱいが見えそうな衣装なのが高得点。 このシリーズには製作者たちの音声解説が特典として入っている。いつもは監督が解説しているのだが、今作では監督や製作ら4人がまるで同窓会のように好き放題しゃべっている。話がちっともまとまっていないが、映画製作現場の雰囲気が感じられて結構面白い。出演者に「彼女は嫌な女だった」とか言ってるし。 |
ユア・アイズ・オンリー |
原題:FOR YOUR EYES ONLY |
監督:ジョン・グレン |
1981年 |
シリーズ第12作。私事だが、初めて買ったDVDソフト。宇宙に飛んだりしてやりすぎた前作の反省から、シリアスなスパイ物に路線変更をしている。それは高く評価したいが、残念ながら映画の面白さは今一つ。アクションシーンは数多く積めこまれていて、どれも高いレベルのアクションなのだが、見ていて手に汗握るというほどのものではない。その原因はただ一つ、さえないBGMにあると思う。音楽はいつものジョン・バリーではなく、ロッキーのビル・コンティ。彼を起用したのがたった一つの、そして最大のミステイクか。特にシトロエンのカーチェイスとスキーチェイスのシーンは酷く、せっかくの体を張ったアクションを大なしにしてしまっている。無難に007のテーマでもかけていればよかったのに。BGMを抜きにすれば、巻頭のヘリスタント、スキーチェイス、車を崖から突き落とすシーン、海中をボートで引き回されるアクション、ラストのロッククライミングなど、とても優れた見せ場だと思う。特にロッククライミングは非常にスリリングで、007シリーズのベストスタントと言っても過言ではない。 ボンドガールのキャロル・ブーケは非の打ち所のない美人。顔の整い度ではシリーズ中ダントツNo.1だろう。ただあんまり綺麗過ぎて面白みがないのと、胸が小さめなのが残念。なぜかボンドとのベッドシーンがないのが特徴。ラスボスのクリスタトスを演じるジュリアン・グローバーはいまいち貫禄がない。ただそういう役柄なので、適役といえるかも。その分コロンボ役のトポルがいい味を出している。 ラストのサッチャーのシーンなどちっとも面白くないのだが、監督自身は非常にご満悦の様子。イギリスではこういうのが受けるのかなあ? 先ほどぼろくそ書いたビル・コンティだが、主題歌はシャープでいい曲だ。歌はシーナ・イーストン。シリーズ最初にして多分最後、タイトルバックに顔を出して熱唱している。映像特典として彼女のミュージックビデオが入っているが、なんのことはない、映画のオープニングからキャストなどのクレジットを抜いただけ。ただし邪魔な文字がなくなったため、曲のラスト辺りで監督の名前に隠れて見えなかったモノがばっちり拝めます。 ところで邦題はなんとかならなかったのかなあ。確かに「読後焼却すべし」ではサマにならないけど、「極秘事項」とか「機密文書」とか、う〜ん、やっぱりダメかな。そもそも「FOR YOUR EYES ONLY」という原題自体、あんまり内容と関係ないもんなあ。ここはひとつ、「ギリシャより愛を込めて」とか「007危機100発」とか映画中のセリフを取って「007は殺されの番号」なんて・・・ぜんぜんダメ。 |
オクトパシー |
原題:OCTOPUSSY |
監督:ジョン・グレン |
1983年 |
シリーズ第13作。インドとドイツが舞台。全体的に子供向けなつくりだが、細かいことを言わずに童心に帰れば十分楽しめる作品になっている。 まず最初のジェットアクションに度肝を抜かれる。ここで出てくる一人乗りジェット機「アクロスター」は日立だか東芝だかのビデオのCMにすでに使われていたのだが、まあそれは余談。ジェット機が飛び回っているのを見るだけでも高揚するものがある。プレシークエンスとしては出色の出来。舞台がインドに移って、3輪タクシーのチェイスと街中での格闘。緊迫したシーンではなく、コメディー調。ここいらが子供っぽい所以。さらにはジャングルを逃走。ヘビ、虎、象、ヒル、クモ、なんでもござれ。ターザンばりのつた渡りまで見せて、面白いと言えば面白いしばかばかしいと言えば・・・。それから殺人ヨーヨーとの格闘。かなりおもちゃっぽい。次にドイツに移って、車と列車のチェイス〜列車上での格闘。今までに無いアクションで、はらはらさせられる。ホイールだけの車が線路を走るというアイディアが秀逸だ。それからちょっとしたカーチェイス、サーカスでの爆弾騒動。ここいらは子供が楽しめるようにギャグが盛りだくさん。それからインドに戻って、オクトパシー軍団の城攻め。手間隙かかっている割に、単なる見世物の域を出ていないようだ。そして最後のエアアクション。最後を飾るにふさわしい、007らしい手に汗握るアクションだ。 ロシアより愛を込めて、ゴールドフィンガー、私を愛したスパイなどに比べると知名度が低い今作だが、アクションやギャグがこれでもかとばかりに盛り込んであり、サービス精神の高い一本になっている。 ストーリーは、平たく言えばロシアのタカ派の将軍が、西ドイツの米軍基地内で核爆弾を爆発させようとするもの。それに秘宝「ファベルジュ・エッグ」の盗難騒ぎがからむのだが、正直言って何度見てもそこいら辺の意味がよく分からない。オーロフ将軍がソビエトの材宝庫から宝石を盗み出すために、精巧な贋物を作ったらしい。では本物のファベルジュエッグをオークションに出したのは一体誰?劇中オーロフが叩き潰した宝玉は本物?贋物?基本プロットの、「核爆弾を米軍基地内で爆発させれば、事故だと思うだろう」って安直では?普通真っ先にテロを疑うと思うんですけど。 ボンドガールはモード・アダムス。この人「黄金銃を持つ男」にも出てるんだけど、2度も出るほど綺麗な女優だろうか。ほお骨が目立ってお世辞にも美人じゃないんですけど・・・。そう言えば珍しく劇中で全裸見せてくれます。プールから出るシーンで、かなり遠景だけど、DVDの機能を駆使すればばっちり。そしてどちらかと言えばセカンドガールのクリスティナ・ウェイボーンのほうが美人。サリーを使って2階から脱出などというおしゃれなシーンを見せてくれる。結構濃い顔ですが。 悪役のカマル・カーン演じるはルイ・ジュールダン。井上純似の(似てません?)ダンディーな中年。今までの悪役の様に誇大妄想的なところが無く、現実にいそうなところがいい感じ。死ぬのはやつらだのカマンガ、ユアアイズオンリーのクリスタトスのような役どころ。そして誇大妄想狂のオーロフ将軍役はスティーブン・バーコフ。見かけもエキセントリックで、演技もかなりオーバーアクション。「子供に分かりやすい」ということだろう。用心棒ゴビンダ役にカビール・ベティ。ターバン巻いてひげ面の非常に分かりやすい悪役だが、この人実はかなり2枚目。あと双子のナイフ投げなど、やっぱりどこか子供っぽい。 主題歌はリタ・クーリッジ。オールタイムハイ(いつでもハイ)という幸せな曲名。なかなかセクシーで雄大なメロディーと声質で、私も好きな曲の一つ。タイトルバックは、全裸の女性の肌をレーザー光線が愛撫するようでかなりエロティック。 原題は「OCTOPUSSY」。題名にPUSSYなんて入っている。日本語的に言うなら「おくとマ○○」。イアン・フレミング恐るべし。 |
ネバーセイ・ネバーゲイン |
原題:NEVER SAY NEVER AGAIN |
監督:アービン・カーシュナー |
1983年 |
「サンダーボール作戦」のリメイク。サンダーボール作戦は当時から権利関係でゴタゴタがあったようで、今作はブロッコリーファミリーの手を離れたアメリカ映画。主演はショーン・コネリー。 ストーリーはほとんどサンダー〜のままで、療養所で偶然ボンドと敵が会ったり、ラルゴが黒幕とすぐに見破る不自然さも前作の通り。83年ということを考えてもしょぼい特撮で、アクションもこれといった見せ場がないし、何のためにリメイクしたのか分からない出来だ。コネリーのギャラで制作費の大半が吹っ飛んだのかも。しかし、コネリーが出ていなかったら目も当てられない映画になっただろうから、製作者の判断はある意味正しい。 ボンドのほかに、M、マニーペニー、ライター、ブロフェルドなどのおなじみの面々が登場する。しかしながら、どれもパチモン臭く、本家のキャラクターの足元にも及ばない。唯一Qだけは本作と全く異なったキャラクターで、なかなか面白い人選だ。 アクションの見せ場は海中のサメとのチェイス、バイクでのカーチェイス、あとはたいしたアクションシーンはない。サメのシーンは、サメの演技?がとても上手く、どうやって撮影したのだろうか。牙が小さいことから、安全なサメを使ったか、歯を全部引っこ抜いてしまったのだろう。バイクのチェイスが今作一番の見せ場だが、車の下をバイクでくぐるのはバート・レイノルズの「グレートスタントマン」で既出。ブースト吹かすのにハンドルから手を離さなければならないなんて、危なっかしいバイクだ。他に、療養所でのドリフみたいなドタバタ格闘はちっとも緊迫しないし、ラストの銃撃戦からボスとの対決まで、全く盛り上がらない。はっきり言ってサンダーボール作戦のほうが面白い。劇中、ボンドに銃を突きつけたファティマが、紙に言葉を書けと迫るところなど、かなり苦しい展開だ。 ボンドガールは、キム・ベイシンガー。薄々のレオタードなどで頑張ってはいるが、顔がむしろブスな部類?その後何作かに出演してメジャーにはなったが、結局人気女優にはなれなかったようだ。ラルゴ役は、名前も聞いたことのないヨーロッパ系の俳優が演じている。粘着質でいやらしそうな顔で、男っぽかったサンダーボール作戦のアドルフォ・チェリとは雲泥の差。はっきり言ってミスキャスト。ブロフェルドはマックス・フォン・シドー。人のいい老紳士といった風貌で、本家とはまるでキャラクターが違うが、これはこれでひとつの解釈かと。しかし彼の名前を見ると、いまだにフラッシュ・ゴードンのミン大王を思い出してしまう。 監督は「スターウォーズ・帝国の逆襲」のアービン・カーシュナー。あれもビッグネームの割には盛り上がりに欠ける映画だったが、今作もまさにそのまま。劇中でバイクチェイスの前の別荘のシーンだけ、映像や音楽がおしゃれでフランス映画っぽい。舞台がフランスなのでちょっと気取ってみたのだろうか。 007とラルゴがゲームで対決するシーンがある。陣地を取り合うだけのまるでつまらなそうなゲームだが。ツインスティックのようなものをガチャガチャやっているが、レバーは1本で足りるのでは?余談だが、私の持っているPS2用スティックは、バーチャで技を食らうとレバーが振動する。そのたびにこの映画を思い出すのだが、いつかバイブレーター用の電流をオペアンプで増幅して、レバーに電気が流れるようにしてやりたいと思っている。 主題歌は、なんだかバーのママさんの歌みたいな感じ。これといって聴き応えがない。 ちなみに、題名はコネリーの奥さんが「(007役を)2度とやらないなんて言いなさんな」と言ったことからついたらしい。もし「がっぽり稼いできなはれ」とか言っていたら、どんな題名になったことやら。 |
美しき獲物たち |
原題:A VIEW TO A KILL |
監督:ジョン・グレン |
1985年 |
シリーズ第14作。ロジャー・ムーア最終作。確かに50歳をとうに過ぎ、第一線のスパイというよりはユーモラスなおじさんという感が強い。ロジャー・ムーアはともかく、ミス・マニーペニーのロイス・マクスウェルは完全に「お婆さん」の域に突入してしまった。 原題の「A VIEW TO A KILL」はシリーズでも筆頭の意味の分からなさ。邦訳も「美しき獲物たち」と意味不明。原作では「FROM A VIEW TO A KILL」。FROMがあろうとなかろうとやっぱり意味は分からないが。映画では「What a view!」「To a kill.」(「なんて景色」「腕がなる」という字幕。)やっぱり意味が分からない。 ストーリーは、シリコンバレーに人工地震を起こして壊滅させ、マイクロチップの覇権を狙うというもの。監督自身も言っているが、ゴールドフィンガーに似ている。計画に賛同しない人間を抹殺するところなど、非常にそっくり。メインストーリーであるシリコンバレー壊滅と、冒頭のマイクロチップの機密漏洩、さらにはサラブレッドの八百長がどう関係するのか今ひとつ分からない。無駄な枝葉末節は削ぎ落としてシンプルなシナリオにすればいいのに。問題のマイクロチップはコンピューターの心臓部に使われるという設定だが、足の数から見て普通のEEPROMにしか見えない。 アクションは冒頭のスキーチェイス、エッフェル塔からのダイブとカーチェイス、消防車のチェイス、ラストの金門橋上の格闘の4つがメイン。正直どれもアクション映画としては小粒な感じ。ただ他にも馬の障害物競走や燃えるエレベーター内のサスペンス、坑道水没のスペクタクルなどと、退屈しない映画にはなっている。シナリオやアクションは並であっても、映画としてはまあ面白く見せられるのは、監督が007シリーズは3本目でスキルが上達してきた証か。初監督作のユア・アイズ・オンリーはアクションはすごいが映画としては今ひとつで、今作とは逆パターンだ。 冒頭のスキーチェイスは、007らしい楽しいアクションに仕上がっている。公開当時スノーボードは日本ではメジャーではなかったため、非常に新鮮だった。いきなりビーチボーイズの曲がかかるのも面白い。劇場では結構ウケていた。次のパリでの見せ場は、実際にエッフェル塔からダイブしているわりには、なんだかトリックにしか見えない。ダイブする瞬間からパラシュートが開くまでを、私を愛したスパイの様にワンカットで見せても良かった。そのあとのカーチェイスは、笑いを取るシーン。ユアアイズ〜オクトパシー〜今作と、ジョン・グレンはそういうのが好きなようだ。バスを飛び越えてから屋根が吹っ飛ぶシーンのつなぎが上手いと思う。次の消防車のカーチェイス。これもやっぱりお笑い。本気でやればかなり手に汗握るシーンが撮れたとは思うのだが・・・。やはり消防車は借物なので無理はできないということか。実際に橋を飛び越えているのだが、カメラワークが悪く、ごまかしのトリックにしか見えず、非常にもったいない。ラストは金門橋上の格闘。実際に橋の上で取っているのはほんの一部で、あとはほとんどセット撮影。見ているほうにはそれがばればれなので、ユアアイズオンリーのロッククライミングの様なスリリングさは無い。最後の最後にドリフのコントのような爆弾のやり取りがあって敵は爆死。どうせならアフロになって出てきて欲しいところだが。 全般的に、スリル感よりもコメディー要素が強い。正直言ってジョン・グレン監督のユーモア感覚ってちょっとずれてると思うのだが・・・。 ボンドガールはタニア・ロバーツ。顔はわりと整っていて、巷で言われるほど悪くは無い。「シーナ」で見せてくれたヌードは非常に美しかった(もちろん今作では脱がない)。ただし、声がダミ声。声を聞いた瞬間に萎え萎え。 ラスボスのゾリン役はクリストファー・ウォーケン。知性的な2枚目で、ゾリン役にぴったりの配役だ。知的でありながらも狂気と冷酷さを滲み出している。ラスト、橋から落ちるときに笑って見せるのだが、何か意味がある演出なのだろうか?メイデイ役のグレース・ジョーンズもいい役。鍛えられた筋肉質の体と独特の風貌は、一度見たら忘れられない。ボンドとのベッドシーンはあまりにも唐突だし、死に方もかなり適当ではあったが。クリストファー・ウォーケンとグレース・ジョーンズの出演が、この映画を面白くするのにかなり役立っている。 主題歌はデュラン・デュラン。ノリのいいポップな曲で、007シリーズで一番ヒットしたそうだ。タイトルバックは全裸に蛍光塗料を塗った女性が踊っていて、振り付けも含めて珍しく曲と画面が合っている。全裸にテープをヒラヒラさせた女性のシーンはスローで見てしまったのは奥さんには内緒。 特筆すべきはアクションシーンのBGM。ブラスをメインにした迫力のある曲で、アクションシーンの緊迫感を盛り上げている。 |
リビングデイライツ |
原題:THE LIVING DAYLIGHTS |
監督:ジョン・グレン |
1987年 |
シリーズ第15作。ティモシーダルトン登場。私はこのティモシー・ボンドを高く評価する。「消された〜」のコラムに書いてあることは省いて、歴代のボンド役の中で最も演技が上手いと思う。仲間を殺されて怒りで風船を割るシーン、ロシアの将軍とホテルで対峙するシーンなど、今までにない迫力がある。さすがに舞台で鍛えられた俳優だけのことはある。フラッシュゴードンの頃はぱっとしなかったのだが・・・。 ストーリーはちょっと複雑だが、要約すると、悪い奴らが麻薬を売って大もうけをしようとたくらむが、その麻薬を買うための資金を手に入れるためにロシアに武器を売りつけようとする。その取引に邪魔なロシアの大物を消すために、007を利用しようとする。そして007をだますために、亡命のふりをしたり、イギリス情報部員を暗殺したり・・・。面倒なことやってます。最初から手持ちの金で麻薬を買っていたら問題なかったのに。ロシアの金を使わないで武器を揃えられたんだから。 アクションの見せ場は、冒頭のスカイダイビングから車ごと崖からダイブまで、アストンマーチンのカーチェイス、クライマックスのドンパチから手に汗握る空中での格闘、と大体3本立て。ラストの空中戦は、テレビで見てしまうとそうでもないが、劇場で見た時は本当にケツがふわっと浮くようなスリルが味わえた。大きなアクションの他に、殺し屋ネクロスと情報部員の肉弾戦とか、ガスタンク(?)の屋上からVTOLが離陸するシーンとか、ラスボスがバリバリぶっ放すマシンガンとか、細かいところで楽しく、退屈させることがない。今作はミニチュアの特撮が非常に良く出来ていることも特徴。飛行機からジープが飛び降りるところなど、メイキングを見なければミニチュアと気付かなかった。アクションの他にちょっとしたカットやきびきびした編集、ムードのあるロケなど、ジョン・グレン監督作品のなかで最も成功した作品ではないだろうか。ちょっとアストンマーチンが便利機能満載すぎて、2度死ぬのリトルネリーのようにやりすぎの感がないではないが。 ボンドガールを演じるのはマリアム・ダボ。金髪が綺麗な女優さんで、私的にかなりヒット。守ってあげたい可憐な女性といった感じ。お色気シーンがないのも許せる。2代目ミス・マニーペニーのキャロライン・ブリスも知的な美女といった風貌でお気に入り。敵役は2人、コスコフを演じるのはジェローン・クラッペ、ウィティカーはジョー・ドン・ベイカー。コスコフは憎めない敵役で、今までの作品にない面白いキャラだ。最後に死ななかったのも例外中の例外。ウィティカーはこれといってキャラクターが出せていない。まあわざと地味なキャラにしたのかもしれない。この人ゴールデンアイとかにも出てるが、何で007シリーズはキャストを使いまわすんだろう。ネクロスという殺し屋がマッチョでなおかつハンサムで、おいしいキャラだ。フィリックス・ライター役はすかした2枚目俳優が演じていて、今ひとつ印象に残らない。結局ライターは役者が固定しないわけのわからないキャラだった。 主題歌はAHAが歌っている。前作のデュランデュランに続き、若者向けのポップな曲調で私は好きだ。ただタイトルバックの画面がぜんぜん曲にあっていなくて変。 題名の意味がよくわからないことを除いては、シリーズ中お勧めの1本。 |
消されたライセンス |
原題:LICENCE TO KILL |
監督:ジョン・グレン |
1989年 |
シリーズ第16作。007が殺しの許可証を取り上げられるという異色作。興行成績がかなり悪かったらしく、5作を監督したジョングレンと2作を主演したティモシーダルトンは、今作で降板した。ネットで検索しても、不評意見が多いようだ。だが私は非常によく出来た作品だと思う。アクションの見せ場は大きく分けて3つ、タイトル前のセスナ捕獲、水上スキー、ラストのタンクローリーチェイス。どれも今までの007シリーズに無い新鮮なアクションだ。特にヘリでセスナを釣り上げるところなど、素直に「すげー」と思えた。映像特典のメイキング中で、トリックだということをばらしてしまっているが。最もヘリでセスナを吊っているのは本当。ラストのタンクローリーチェイスは、被写体が大きいためにカメラが引き過ぎてしまっていて、「ふ〜ん、すごいね〜」とどこか冷静に観てしまう。しかし迫力ある見事なアクションシーンであることは確か。 シナリオは007シリーズの中で一番よく出来ていると思う。007シリーズのシナリオは、どこかご都合主義のような、細かいところまで練られてないような部分があったが、今回はその点優れた脚本だと思う。例えばクレストから大金を強奪して、それを使ってセンチェスに近づき、襲撃に失敗するもそのせいでサンチェスの信頼を得、金を使ってクレストに罠をかける。一連のストーリーが無駄なくスムーズにつながっている。難を挙げるなら、サンチェスがライターを生かしておいたこと、ダリオがそばにいるはずなのに無謀にサンチェスに接近したこと、ちょっとした火で簡単に研究所が焼け落ちてしまったこと、その辺がちょっとリアリティーに欠ける。それにしても007シリーズの敵の要塞はもろい。燃料を入れすぎて爆発したり、液体窒素に人間が落ちただけで基地ごと吹っ飛んだり。もうちょっと安全装置つけようよ。ガソリンを扱う研究所にスプリンクラーも消火器も無いの? ティモシーダルトンは007に適役だと思う。コネリーにない知性があるし、ムーアにない野性味がある。かっこいいだけのブロスナンに比べて、中年のダンディズムのようなものを感じる。なんで降ろされてしまったのかなあ。ボンドガールのキャリー・ローウェルはかなり美人。しかもセクシーな胸元や太ももを惜しげなく披露。ベスト5に入れていいぐらいお気に入り。簡単にボンドと寝てしまったのが不自然だが。もう1人のボンドガール、タリサ・ソトはいかにもラテン系美人といった感じ。整った顔立ちだけどあんまり私の好みではない。今までのシリーズだったら確実に殺されているキャラだ。ラスボス、サンチェス役のロバート・ダビはかなりの好演。従来の作品では、ボスと言っても大してセリフがなかったりただのやられ役に過ぎなかったりしたのだが、今作は敵ボスの登場シーンも多く、007VSサンチェスの一騎打ちの構図を形作っている。2度死ぬのブロフェルドやゴールデンアイのアレックの顔の傷はメイクだったが、サンチェスのあばた面は本物。ロバートダビはまさしく適役だ。他に、今回Qの出番が多いのもファンには嬉しいところ。それから、ゴールドフィンガーで言うところのオッドジョブ役だが、ちょっとホモっぽい線の細い男が演じている。ナイフを抜くシーンだけやけに気取っててかっこいい。 原題は「LICENCE TO KILL」だが、日本名は「消されたライセンス」。もともと原題は「LICENCE REVOKED」だったらしい。メイキングで監督が「REVOKEDでは馬鹿なアメリカ人には難しいから」という理由で変えた、といようなニュアンスで話していた。だから日本語題名の方が元々の意匠に近い。確かに「殺しのライセンス」じゃあ普通過ぎて面白みがない。 全体的にシリアスな作りだが、サマーソルト(水車蹴り?)や投げ網を使うチャイニーズ忍者部隊が出てきたりして、なんだかなあ。イギリス人の東洋感って、2度死ぬの頃からなにも変わっていないのか。 |
ゴールデンアイ |
原題:GOLDENEYE |
監督:マーティン・キャンベル |
1995年 |
シリーズ第17作。ピアース・ブロスナン主演第1作。 世界的にかなりヒットしたらしいが、私的には007シリーズワースト3ぐらいに入れたい。予告編で見たバンジージャンプがすごいと思ったが、全編を通して見せ場はそこだけだった。落ちていくセスナを追いかけるシーンは「そんなばかな!」という感じだし、合成がありありで見ていてしらけた。戦車でのチェイスシーンが次の見せ場だが、ただバカバカぶち壊しているだけで緊迫感が無い。戦車のドリフト走行など面白いシーンもあるのだが、今一つカメラワークがさえず、ただ撮っているだけといった感じ。そもそも敵が乗用車で007が戦車じゃ、無敵過ぎてスリルが無い。戦闘ヘリからの脱出シーンはダイハード2で見たような。まあ戦闘ヘリということで、こちらのほうが説得力はあったが。湖からアンテナが出てくる特撮もどこかチープ。なんかジラースでも出てきそうだった。 アクションの見せ場も物足りないが、シナリオはそれに輪をかけてダメな出来。ナターリアはどうやって廃墟から脱出した後、町までやってきたのか。007達はどうやってロシアを脱出してキューバまで行けたのか。何の罪も無いロシア兵士をバリバリマシンガンで撃ち殺していいものか。なんで時間が無いのにビキニなんか着て海岸でまったりしているのか。最初のバンジージャンプだって必要なシーンだったのか?普通にロープで下りればいいのでは。敵の見張りがいないのも不自然。爆発するペンのくだりはあまりにもご都合主義。 次にキャスト。ピアース・ブロスナンのボンドは、1作目だからか今一つしっくり来ない。まあこれは私が慣れてしまえばいいのだろうか。敵のボス、アレック・トレヴェルヤンはあんまり貫禄の無いボスだが、007の同期という設定で、同年代ゆえにラストの殴り合いが結構迫力があった。ボリスというキャラが面白い。憎めない風貌をしていて、一見味方かと思いきや敵だった。あとモンチッチのような顔のMは早くどうにかしてほしい。女性が社会に進出している情勢を反映してのキャスティングなんだろうけど、あまりにこのMは無能過ぎるし、貫禄が無い。マニーペニーも前作の方が100倍は良かった。メインのボンドガールのナターリアはなかなか綺麗な女優さんだ。ただロシア女性ということで、あんまり色気のあるシーンが無いのが残念。ビキニはいまいちだった。女殺し屋のオナトップというキャラは面白い。足で敵を絞め殺すという設定は無理があるが、ネバーセイネバーアゲインのファティマに輪をかけたような切れ方がいい感じ。 勉強不足のため、アレックがコサックだったという設定が今一つ理解できない。そのせいか、TV放映時には「こいつは2重スパイだぞ!」というセリフに変更されていた。 主題歌は、「GOLDENEYE」を連呼していて、大した歌じゃない。そもそも「GOLDENEYE」の意味がわからん。「ゴールデンアイは彼の泣き所」ってなに?ゴールデンボールならわかるが。 |
トゥモロー・ネバー・ダイ |
原題:Tomorrow Never Dies |
監督:ロジャー・スポティスウッド |
1997年 |
シリーズ第18作。ピアース・ブロスナン主演第2作。 前作よりアクションが盛り沢山で面白くはあるのだが、いまひとつ「幼稚っぽさ」が目立つ。 例えばいつものプレシークエンス。作戦が行き当たりばったりだったり、ミサイルを撃ったあとに核魚雷が発見されて慌てふためいていたり、本当にこいつら軍人か?ジェット機の後部座席の人間を吹っ飛ばすシーンもうそ臭い。後部座席の非常脱出ボタンが前席についているものだろうか?もしあったとしても、人間がジェット機をぶち抜くなんてあまりにも漫画的。 それからシナリオ。中国とイギリス間に戦争を起こさせて、漁夫の利を得ようとするプロットは「2度死ぬ」に近い。ただそれを、通信衛星やマスメディアを使って起こそうとするのが今風で面白い。ただ、両国間に戦争を起こし、北京をミサイルで吹っ飛ばしたその見返りが中国でのテレビ放映権というのは、いくらなんでも現実味が薄すぎはしないか?衛星からの電波をキャッチされるは、ニュースが早すぎるということで真っ先に疑われるは、あまりに敵の作戦がお粗末。ボンドが研究所から暗号システムを盗み出した時点で、物的証拠があがってしまっているから、ほぼ作戦は失敗だったのでは?あるいはボンドがステルス艦を発見した時点で確実に作戦は失敗しているのだが、そのあとの敵の大言壮語が哀れに思える。それから、一般人も働いているであろう印刷所でマシンガンをバリバリ撃ってきたり、海賊映画よろしく(それを元ネタにしているようだが)垂れ幕を破って飛び降りたり、ヘリに乗った敵が何を考えているのかローターで攻撃してきたり、全体的に子供っぽいシーンが多い。あと最後にミサイルを爆破してしまうのだが、いいのか?オープニングでは核魚雷を爆破したらプルトニウムが拡散して云々と言っていたのだが。イギリス艦が沈められたのはベトナムの領海だという設定。中国の領海でなかったらシナリオ上矛盾すると思うのだが。ロケ地の都合だろうか? アクションの見せ場はかなり多い。まず最初のジェットアクションについては既述。 次にリモコンBMWのカーチェイス。敵がワイヤーを張ったらワイヤーカッターが出てきたり、やりすぎの感もあるが、スピード感のある派手なシーンに仕上がっている。パンクしたタイヤが自動修復するところなど現実にありそうで面白い。実際パンクしないタイヤも発売されているし。 次にボンドとウェイ・リンのバイク2人乗り。これは今までのボンド映画に無いアイディアだ。それだけボンドガールのミシェル・ヨーがアクティブだということだろう。手錠でつながれた2人が片手づつで運転したり向かい合わせになったり、非常に面白い。やはりメカを使ったハイテクアクションより、生身の肉体を使ったアクションのほうがエキサイティングだ。追う敵はレンジ・ローバー。ジャッキー映画ならパジェロが出てくるところだが、やはりイギリス映画だ。ローバーを巻いたら次はヘリ。さっきも書いたが、マシンガン持ってるくせにローターに巻き込もうとしてきたり、なんだか漫画っぽい。そのせいで簡単にやられてしまったし。 それから最後の、お約束の敵基地内での銃撃戦といったところか。その間にも、敵印刷所への侵入とか、高高度からのスカイダイビング、垂れ幕を破っての脱出、などのアクションをつないで飽きさせないようになっている。スカイダイビングだが、ハリウッド映画だったら特撮で済ませてしまうようなシーンを、きっちり手間隙かけて実際に撮影している。そういったこだわりがこの長寿シリーズの人気の秘密だろう。垂れ幕のシーンも実際に撮影しているが、こっちは今ひとつ迫力が無い。実際に撮影しているのにやけに嘘っぽいし。ジャッキーチェンだったら1カットで一気に見せてくれただろうか。 悪役のメディア王・エリオット・カーヴァーを演じるのはジョナサン・プライス。全体に漫画っぽい今作の中でも、特に戯画化された悪役を演じている。なんとなくユーモラスなこの俳優、私は気に入った。ミシェルの前でハイハイとカンフーの真似事をして見せる悪役、こんな愉快なやつが今までの親玉にいただろうか。ジョナサンの存在感で、かなり今作の(漫画的な)面白さが増したと思う。あと新作のソフトがバグ満載でうんぬんと言う台詞が笑えた。 ボンドガールは2人、香港のミシェル・ヨー(キング)とカーヴァー夫人を演じるデリー・ハッチャー。ミシェル・ヨーはアクションはいいんだけど、圧倒的に色気が無さすぎ。メインに若くて綺麗な女優さんを配して、ミシェルは活躍するけど殺される役、でよかったのでは。ミシェルの見せ場を作るために、突然香港っぽいカンフーシーンが入るのが違和感あり。デリー・ハッチャーはきつい顔のおばさんだが、なかなか色気があって好みかも。しかし、敵のボスの奥さんとボンドがかつて恋仲だったというのは、かなり苦しい設定では? ボスの手下役にマッチョ系のゴッツ・オットー。ナイフを刺されても平気なタフな役柄だが、今ひとつステレオタイプで特色が出せていないか。 主題歌はシェリル・クロウ。なんだかやる気の無さげな歌声が意外に心地良い。サビの部分の「ベベベンベンベン・・・」というギターが三味線みたいで面白い。タイトルバックで、CGの女体がTV画面によって生身の肉体になるというおいしそうなシーンがあるのだが、CGと裸体のラインがあってなくて残念。 恒例の監督による音声解説は、照明だとかセットのことばかりしゃべっていて退屈。スローモーションを多用しないようにしたとか言って、十分多用している。劇場で見たとき、演出になんとなく007っぽくない違和感を感じたのはそういうことか。 |
ワールド・イズ・ノット・イナフ |
原題:The World Is Not Enough |
監督:マイケル・アプテッド |
1999年 |
シリーズ第19作。 内容に関しては、劇場公開時に感想をエッセーの部屋にアップしているのでそちらを。 吹き替えは、今作から神谷明ではなく別の声優になっている。イメージにぴったりというわけではないが、なかなか渋い声で好感が持てる。彼がピアースボンドの定番になるのでは?それにしても、吹き替えのクレジットが無いのが多いに疑問だ。Mの声は嫌味なおばさん声で非常に合っている。でもM嫌い。早く交代してくれ。Qの声がいつもの人で無かったのが残念。 映像特典でメイキングなどが見れる。チェーンソーに追われてボンドが走るシーンがCGによる合成と知ってびっくり。全く気付かなかった。CG恐るべし。 劇場公開時にはそれほどすごく面白いとは思わなかったのだが、DVDで過去の作品を何本か観て比べると、さすがに最新作ということで派手でスピード感もあり、楽しめる作品になっている。しかし何度見ても筋がよくわからない。特に、パラホーク部隊との戦いから核ミサイル処理場でのアクションの辺りがさっぱり。あとヨーロッパのパイプラインを独占したぐらいで世界が変わるのだろうか?海路だってあるし、中近東の産出量の方が多い気もするし。 当然のことながら、ラストのLUNA SEAの曲は無しで好感度アップ。 追記:「エッセーの部屋」は削除したので、以下に全文を掲載します。 ほとんど映画を観なくなってしまった私ですが、007シリーズだけは欠かさず観ることにしています。というわけで、007最新作の感想などをちょろっと。 いまいちかなあ。悪くはないんだけど。 まず題名。「ワールド・イズ・ノット・イナフ」。手抜きですか?「ロシアより愛を込めて」「007は2度死ぬ」「死ぬのは奴らだ」などなど、かっこいい邦題をつけてきたシリーズとは思えない安直さ。と言うかそのまんま。「A VIEW TO A KILL」を「美しき獲物たち」と無理やり訳したんだから、今回も何かしゃれた邦題をつけてほしかったです。「グーニーズRグッドイナフ」かと思っちゃいました。ア〜ヤヤヤヤ〜。 それで、肝心のアクションなんですが、多分はじめて007を見た人には結構面白く思えたのではないでしょうか。しかしシリーズ全てを見た私には、なんか観たことあるな〜というものが多かったです。たとえばクレジット前のボートチェイスは「死ぬのは奴らだ」。確かに最新作だけあって、スピード感は増していました。しかし今回はQの秘密兵器を使ったボートチェイスということで、普通のボートを使った「死ぬのは〜」に比べてなんでもありという感じで、今一つ白熱しませんでした。次にスキーチェイスシーン。007ではおなじみと言っていいでしょう。今回敵の乗る「パラホーク」が「おっ、いいなあ」と思わせるものでした。しかしながら敵の馬鹿なこと。武装したパラホーク部隊が丸腰のボンドに全滅。木に引っかかったり、味方がいるのに手榴弾投げてみたり、わざわざボンドの下に行ってみたり・・・。ほんとに精鋭部隊なの?それからパイプライン内のアクションは「ダイヤモンドは永遠に」でなかったでしたっけ。まあスピード感はけた違いでしたが。次にチェーンソーつきのヘリとのバトル。「オクトパシー」のノコギリヨーヨー+「トゥモローネバーダイ」の馬鹿みたいにローターでボンドを殺そうとするヘリってとこですか。ミサイルついてるくせにわざわざチェーンソーでボンドを殺そうとしたりして、本当にお馬鹿さん。ボンドの走るスピードに追いつけないヘリなんてあり?ラスボスの目的である、放射能汚染によってパイプラインを使えなくして、自分のパイプラインで荒稼ぎ、なんて「ゴールドフィンガー」そのまんま! 次にキャスティングなんですが、これは個人の好みなんですが、どうもピアース・ブロスナンはボンドという気がしません。ティモシー・ダルトンが気に入ってたからなんでしょうが、ただのすかしたプレイボーイにしか見えないんです。私的には「女王陛下の007」のジョージ・レイゼンビーと大差ない気がします。そして今回のボンドはどうにもカッコ悪い。敵の気球にぶら下がって命乞いみたいなことしてみるし、処刑椅子みたいなのに拘束されたり。「肩が痛いのを知っていた」と言えば「葬式のときに腕をつってたでしょ」と言われて何も言い返せないし。ともかく処刑椅子のボンドがカッコ悪くて、しかもなぜかそのシーンが新聞広告に使われてます。「地獄のサバイバル」かって(マイナー)。そして物語の裏の主役である悪役なんですが、これがまたカッコ悪い。脳に受けた傷のせいで痛みを感じない超人になったという設定は非常に面白いんですが、それがぜんぜん活かされてません。しかもぜんぜん強そうでなく、ボンドに銃を突きつけられておどおどしている始末。まさに007史上もっとも情けない悪役でしょう。逆に好演だったのがソフィア・マルソー。ラ・ブームの頃の純情な感じはどこへやら、肉体を武器に男をたらしこむ悪女は適役でした。欲を言えばもっと冷酷非情でもよかったかな。Mを殺しちゃってもよかったし。そうそう、そのM。「ゴールデンアイ」から女性になってしまいました。昔のバーナード・リーとかロバート・ブラウンは結構気に入ってたんですが、なぜ女性に?しかもきつそうなおばさん。それからミス・マニーペニー。ティモシー・ダルトン時代のキャロライン・ブリスはとても綺麗でお気に入りだったんですが、なぜかどってことない普通のおばさん?に。名前がボンドだったから?そして007真の主役とも言える好々爺、Qを演じるデズモンド・リューウェリンが今作を最後に他界。惜しい人を亡くしました。しかし、ちゃんと引継ぎを行った後というのがすごい。Rは単なるお笑いキャラのようでいまいち。次回作で化けるか?忘れてたけど、メインのボンドガールのデニース・リチャーズ。胸でかいけどタラコ唇だし、色気も存在感もなし。クライマックスでノーブラ?で海に潜るのが唯一の見せ場。 それから最後のスタッフロールで、本当は007のテーマが流れるはずなんですが、日本版はLUNA SEAの曲が流れます。話題性を狙ったんだろうけど、違和感ありあり。他の観客もそう思っていたようでした。 曲と言えば、主題歌はなかなか壮大でかっこいい曲でした。KISSとKILLをかけた歌詞もいい感じです。タイトルバックではおなじみのトップレスの女性が踊りまくるのですが、今作はCGを使ってデュラルの暗黒舞踊といった感じでした。CGよりも生の肌が見たいよ〜。 「ゴールデンアイ」でかなりがっかりしたけど、回を重ねるごとにだんだん面白くなってきているので、とりあえず次回作に期待。どうでもいいけどパンフレット600円は高いよ。しかも4ページが広告だし。 |