ビビの記憶
「ただいま・・・」
やっと帰ってきた。
全てが終わり、懐かしい村にやっと帰ってきたというのに、浮かない表情、重い足取り。
つまずき、転んで帽子を落とし、拾う動作は心持ち鈍い。
「おかえり。」
「オカエリ!」
「また、来ることをここではオカエリというのか?」
「ああ・・・ありがとう・・・」
みんな優しい言葉をかけてくれるけど、耳に入らないようで宿屋に入ってしまった。
そばには、お姉さん風を吹かせたエーコが,かいがいしく世話を焼いている。
1
ボクは・・・これからどうしたらいいんだろう?
ボクにも誰かを助けられるかな?
ボクは・・・
ボクは、いつ止まっちゃうんだろう・・・
「こんな時、マダイン・サリじゃこの歌を歌うんだよ。」
宛もなく彷徨っていた
手がかりもなく探しつづけた
あなたがくれた想い出を
心を癒す詩にして
・・・・・
ジタン・・・
ジタンも止まっちゃったの?
まだ聞きたい事がいっぱいあったのに・・・
また教えて欲しいよ・・・
クルシイ・・・胸が苦しいよ・・・
これが泣くって事なの?
クスッ、おかしいよね?涙も出ないのに。
ああ、エーコいい歌だねえ・・・
スー スー・・・
2
「オハヨー」
目を開けると目の前にいつもと変わらないエーコの笑顔があった。
「オ、オハヨ」
ビビはちょっとどきっとした。
「ダイジョーブ?うなされてたみたいだけど。」
「元気出してね。ジタンも死んだってわけじゃないんだから。」
「ジタン。どうしちゃったんだろう。生きてて欲しいね。」
「クジャは止まっちゃったのかな?」
「ビビ! 余計なこと考えないで!」
「ビビはビビのことだけを考えて。きっと生きてるさ。そのうち帰ってくるよ。ね?」
「エーコってやさしいんだね。」
エーコは顔を赤くしてうつむいてしまった。
「エーコ。ボク、どうしたらいいんだろう。何が出来るんだろう。」
「うーん。とりあえず、ここでしばらく休もうよ。」
「それから考えればいいじゃない。うん、そうしよう。そうしよう。」
「そう言うことで、チョコボ、見に行こう!」
「イタタッ!」
エーコに強引に手を引っ張られベッドから降り、チョコボの小屋に行った。
「どうしてボコって言うの?」
「本当は、ボビー・コーンウェイって言うんだって。24号さんが言ってたよ。」
「ふーん。なんかどっかで聞いた名前だね。」
ビビはしばらく考えて、エーコにいった。
「エーコ。ボク、ジタンみたいになりたいんだ。
ジタンが今どうしてるかと思うと、不安なんだ。ボクにも誰かを助けられるよね?
ジタンみたいに・・・」
「うん、ビビはとっても強くなったよ。アタイも探しに行こうっていうのを待ってたんだ。
まだ、ジタンのことを諦めたわけじゃないし・・・」
「エッ!」
「なんでもない、なんでもない。」
「そうと決まったら道具をそろえて出発しよう!」
3
ビビとエーコは、森の中のモンスターに会わないように、ボコに乗って出発した。
森は以前より静かになったとはいえ、まだ霧がところどころ誘うようにまどろんで時折モンスターも出現していたのだ。
ビビは、まだ何かを考えているようで、下を向きながらいった。
「ねえ、途中で沼に寄ってクイナも誘おうと思うんだけど、どうかな?」
「うん、クイナがいれば安全だね。」
「ボクさあ、いつ止まっちゃうんだろう・・・もし止まったら、お墓に入れてね。」
「ビビッ!! まだそんなこと考えてるの! みんなだっていつかは止まっちゃうんだよ。
あたいだって・・・それがいつかはわからないけど。」
「そうじゃないんだ。もしボクが止まってもみんなはボクのこと覚えててくれてるよね。
でも、ぼくが、ジタンや、エーコや、みんなのことどう思ってたか誰に伝えたらいいの?
きのう、エーコが歌ってくれたよね。ボクの記憶はどこへ預けたらいいのかなあ。」
「それはさあ・・・。」
エーコはその後の言葉が続かなかった。作られたビビには記憶を繋げることは出来ないのだから。
やがて二人は沼の入り口に着いた。
あいかわらず、モグタロウ達は入り口に立っている。
「おはよう! 元気〜!」
「お、おはよう。今日はな〜に?」
「うん、イーファの樹に行こうと思って。」
「イーファの樹?まだ、モンスターがいっぱいいて危険クポ。」
「だから、クイナを誘いに来たんだ。クイナいるかな?」
「いるクポ。カエルばっかり食べてるクポ。」
「やっぱりねえ。クスッ。」
葦の小道を抜けて沼に着いた。
ちょうど、クイナがカエルを捕っていたところだった。
「クイナ ! 元気だった?!」
「元気だったアルよ。エーコも、ビビも元気だったアルか?」
「ボクも元気だよ。」
「ジタンを探しに行くんだけど、クイナも行かない?」
「いいよ。ジタンにはもっともっといろんな所連れていって欲しかったのに、いなくなっちゃったし、
カエルばっかりたべて、飽きちゃったアルよ。」
「じゃあ、【カエル落とし】もずいぶん強くなったでしょ。」
「おいしいもの食べさせてくれる?」
ビビ、エーコ、クイナはイーファの樹に向かった。
イーファの樹に着いてみると、そこには、サラマンダーが待っていた。
「サラマンダー、どうしたの?」
「遅かったじゃないか。オレ一人で行こうと思ったぞ。」
「なんだ、ボク達を待っててくれたの? ありがとう。でもどうして?。」
「モグが教えてくれたんだ。 ジタンがモグネットを復活させてくれてたから、
どこにいてもわかるのさ。なんでオレが子守をしなきゃならねえんだ。」
「そうか、じゃあ、一緒に行ってくれるんだね。」
「サラマンダーって恐い顔をしてるけど以外とやさしいんだね。」
エーコは本人が気にしていることを平気でいう。そこが子供らしいのだが・・・
サラマンダーはそれには答えず、片手で、ビビとエーコを抱えると一気に走っていく。
「待ってアルよ。そんなに早く走れないアルよ。」
後ろをクイナがドスドスとついていく。
4
イーファの樹の根は、思いのほか深く入り組んでいた。
印を付けておかないと自分たちがどこにいるかわからなくなるほどだ。
思っていたより、モンスターの数は多くなく数時間後、根っこにたどり着いた。
「ふう、やっと着いたね。」
「ジタン、どこにいるのかな。」
「ジターン!どこにいるアルねー!」
「これだけ探してもいないところを見ると、脱出できたんじゃないか?」
それに、暗くなるとさすがに危険だし、そろそろ地上に出ないと。」
「あ!アレはなに?」
ビビの声にみんなの注目が一つのものに集まる。
それは、青いリボンタイだった。
ジタンがいつも着けていたもののように見える。
それをエーコが拾い、
「うん、間違いない。ジタンのだよ。」
「じゃあ、近くにいるのかな?」
「いや、いないだろう。とっくにどこかへ移動してるはずさ。」
「じゃあ、なんで会いに来てくれないの?」
「さあな、なんか事情ってもんがあるんだろうさ。」
5再生
「ねえ、ミコトさん。」
「なにか用?」
「ちょっと教えて欲しいんだけど、ボク達の仲間って作れる?」
「何するの。出来ないことはないけど。機械と霧があれば。でも、霧も、クロマ製造機もなくなってるし。」
「ダリにあるのはもう使えないかな?霧は、イーファの樹にいっぱいあったよ。ボク子供が欲しいんだ。」
「コドモってなんだ?そんなもの生産しても手が掛かるだけで意味がないよ。」
「お願い、みんなを忘れないために、どうしても必要なんだ。いつ止まってもいいように。」
「・・・わかった。じゃあ、ダリに行こう。」
こうして、ビビ達はミコトと共に、ダリに向かった。
ミコトはいろんな事を教えてくれた。クジャのこと、ガーランドのこと、ジェノムのこと。
ミコトの話し方、ジタンによく似てる。ボクの顔を覗き込み、説明するときなんかジタンそっくりでびっくりしちゃう。
ダリの村に着いた。村長に言ったら地下の鍵をくれた。
相変わらず、金儲けの話をしていたので、ボクの持っていた「ミニブラネ、ミニシド、ミニブルメシア」をあげた。
地下は、あの時止まったままだった。
「じゃあ、すぐ始める?」
ミコトは機械的にボクに言った。
「ビビは、そこに入って。」
やっと一人は入れるぐらい小さな部屋にボクが入って、ミコトは壁のスイッチを入れた。
運んできた霧が部屋にいっぱいになる。ポンと音がすると、ガタンと歯車が回る音がした。
「いくつ作る?100ぐらいでいい?」
「そ、そんなにいらない。5人ぐらいいれば。」
「なんだ、それでいいのか。じゃあ、もう出来た。」
ミコトは、そう言ってスイッチを切ってしまった。
見上げればボクがいっぱい吊されてる。
「あとは、言葉を覚えさせるためのチップを入れれば出来上がり。」
「そうなんだ・・・ ボクって簡単に出来ちゃうんだね。」
ビビは、簡単に出来たことで、複雑な気分になった。
「うん、ビビはプロトタイプだから、特別な仕掛けがないし、戦闘用じゃないから魔法もいらないでしょ。」
「あ、ありがとう。」
ちょっとホッとした。
あふれるその涙を
輝く勇気にかえて
いのちはつづく
夜を越え
疑うことのない明日へと続く
6記憶
「ただいま!」
「おかえり。」
「おかえりなさい。」
「3回目でもオカエリ、っていうんだな。」
その日からボクは、『ビビ』達にボクの覚えていることを話しかけた。
生まれたときの記憶はないけど、いつの間にか何かを探して歩いていたこと。
そして、お芝居の券をもらいリンドブルムで劇場艇の「君の小鳥になりたい」のお芝居を見たこと。
そこで、ジタン、ガーネット、スタイナーと会ったこと。
それからの冒険のこと・・・
でも、みんな何も言わなかった。なんど聞かせても表情一つ変えずただじっと立っているだけだった。
ボクは、ミコトに聞いた。
「ねえ、ミコト。みんな何も言わないんだけど。どうしてかなあ・・・ボクの教え方が悪いの?」
「うーん、話せるようになるまで、個体差があるから一概には言えないけど、作られてから半年はかかるよ。」
「え!そんなにかかるの?それまで止まらないでいられるかなあ・・・」
「なんで、みんな止まるんだよ。いつかは。」
「うん・・・止まるのが恐いから・・・みんなを忘れるのが恐いんだ。」
「恐いって何?」
ボク、最近、覚えた魔法を忘れちゃった・・・
ボク、時々自分が誰なのかわからないときがあるんだ・・・
ボク、みんなのこと、忘れたくないよ・・・
ジタン、会いたいよ・・・
お姉ちゃん、元気で女王様のお仕事してるかなあ・・・
スタイナーのおじちゃん、相変わらず真面目なのかなあ・・・
フライヤのお姉ちゃん、ブルメシアで幸せになってるかなあ・・・
サラマンダーのおじちゃん、まだ、どっかで戦ってるの?
クイナ、また、料理を作って欲しいなあ・・・
エーコ、また遊びたいな・・・
またお芝居見たいなあ
飛ぶ鳥の向こうの空へ
いくつの記憶預けただろう
はかない希望も夢も
届かぬ場所に忘れて
7終章
ボク、どうしたんだろう?
『ビビ』は目を覚ますとそこには『自分』」がいっぱいいた。
「君は誰?」
「君こそ誰?」
「ボクはビビだよ。」
「ボクがビビなの!」
みんな口々に同じことを喋っている。
でも、一人。
傍らには眠ったかのような『ビビ』が。
私が死のうとも
君が生きている限り
いのちはつづく
永遠に
その力の限りどこまでも・・・
fin
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