金と義と家族と……


最終章 〜それぞれの家族〜


仲間は全員揃った。どの仲間の瞳も、打倒ケフカの炎に燃え盛っていた。あのシャドウでさえも、例外ではない。
「三隊に分かれて突入だ。」
策士エドガーが指示を下す。カイエンの隊は、マッシュ、ガウ、そしてシャドウになった。
「行くぞぉ!!」
マッシュの掛け声と共に、一斉に瓦礫の塔へとび移った。
「ここ、キライ。早く行こう。」
ガウは、何かに怯えるようにマッシュにしがみついて歩いていく。なるほど、常に自然の中で暮らしてきたガウにとっては、このような塔が苦手であるのも無理は無い。
「くっつくなよ、歩きにくいだろ。」
「ガウ〜・・・・。」
「マッシュ殿、良いだろう。怖くとも無理はござらんよ。」
シャドウは傍目からこういったやり取りを見て、実にうらやましく思った。正に家族のようである。
「見えたぞ、あそこからケフカの所へ行けるんだ。」
皆揃って、ケフカと対峙した。
「ヒ〜ヒッヒッ・・・・。これはこれはお揃いで・・・・。用件は言わなくていいよ、分かってるからね。」
「ならば話は早い。さっさと破壊をやめろ。」
エドガーが力強く言い、皆で一斉にケフカを睨み付ける。
「おやおや、怖い顔ですねぇ・・・・。どうせもうこんな世界には何も無いっていうのにさ・・・・。あなたたちはこの死に絶えようとするせかいで、何か見つけられたのですかねぇ・・・・・。」
「見つけた!」
間髪いれずに、ティナが力強く叫ぶ。すぐにマッシュが続けた。
「オレのことを大切にしてくれる兄貴だ。」
次にシャドウが続く。
「友と・・・・。家族と・・・・。」
カイエンは、はっとなった。あの、サマサでシャドウが唸っていた時の言葉を不意に思い出した。なるほど、ビリーというのは彼の友人であり、聞き取れなかった名前はおそらく妻子のものだろうと。
「心の中の妻と子!」
最後にカイエンが力強く言い切った。皆の思いは、1つになった。



ケフカは死に、瓦礫の塔は崩壊を始めた。
「早く逃げろ!!」
来る時はあまり気にもならなかったが、戻るとなるとこの塔はかなり広い。仕掛けも多い。個々の力だけでは、到底脱出は不可能である。協力は、不可欠。
彼らは見事な連携を発揮した。特に、エドガー・マッシュの兄弟は見事であった。
さて、その脱出中、不意にシャドウの足が止まった。それに気付いたのは、カイエンだけである。
「シャドウ殿、どうしたでござる?」
「カイエン・・・・、いやカイエンさん。オレの話を聞いてください。」
いきなり改まった態度をとられ、カイエンは面食らった。
「オレは本当に罪深い男です。友を裏切り、そして家族まで捨ててしまった。だから、もう自分の人生なんてどうでも良くなったんです。あなたに初めて会ったのはそんな時です。カイエンさんはよく“義”という言葉を使っていました。その言葉を聞く度、オレは自分が恥ずかしくなりました・・・・。でも、もう後戻りはできないと思っていたオレは、あなたに対して酷く酷薄な態度で接してしまった。そうすることで、あなたの言う真実から目を逸らそうとしていた・・・・。」
「シャドウ殿・・・・。」
「オレは、この10年間、自分の命を糧に生きてきました。家族の事や過去をひた隠しにしながら。でも、あなたに会ってそんな風に隠していることの馬鹿らしさに気付きました。あなたのように現実と向かい合わずに、逃げていた。そう、オレはただ逃げていたんです、自分の罪から。」
カイエンは黙って聞いてはいるが、目には泪が溢れている。
「今から友と妻の所へ行って、謝ってきます。ただ、娘はまだ生きています。無論、オレが父親だなどとは知りません。あなたに、見守ってやってもらいたい。あなたになら、娘を任せていける・・・・。」
シャドウは1歩ずつ後ずさりながら話をしている。わざと、瓦礫の崩れやすい方へ向かっているのである。
「待つでござる、シャドウ殿!娘さんとは、一体誰なのでござるか!?」
「娘の名は・・・・、・・ム。」
その瞬間、シャドウの頭上の瓦礫がすべて崩れた。
「シャドウ殿!!!」
「おい、カイエン急げ!!脱出するぞ!」
カイエンは、マッシュの伸ばした縄梯子に掴まった。塔は、原型を留めぬようになっていた。

 


〜エピローグ〜


ケフカとの死闘から1年が経った。世界には平和が戻り、仲間は皆各々の生活へ帰っていった。
ここサマサの村も、穏やかな時間が流れている。1人の男が、墓参りにやって来た。花束を二つ持ち、村の隅にある2基の墓の前にしゃがみこんだ。
「レオ殿・・・・。」
男はまず左の墓に花を供え、水をかけて手を合わせた。そう、今日3月19日は、帝国の良心ともいうべきレオ将軍が殉職した日である。
「あなたのおかげで、天国の妻と子も浮かばれます。」
男は次に、右側の墓に花を供え、水をかけた上で、手裏剣を2枚置いた。その時、強い突風が吹いた。
「・・・・殿。」
その風で、男の呟きはかき消されてしまった。
「あなたは立派な男であり、また立派な父親でござった。」
男は合掌し、深く頭を下げ、その場を去った。
1時間後、今度は違う一行が墓参りに来た。
「ん?誰だ、この花供えたの?それに、こっちの墓の手裏剣も・・・・。」
ロックが呟くが、誰も答えるものはいない。だが、一行の中でマッシュだけは、さきに墓参りに来ていた者の正体を見抜いている。
「誰か、知らねぇのか?」
「ああ。分かんねぇな。」
マッシュがロックの質問を遮るように答えた。空は、3月とは思えないほどに澄み渡っていた。

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Wallpaper:月楼迷宮様

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