ケーブル搬送、略して通搬と言います。通搬は各チャンネルの音声帯域(0.3〜3.4KHz)と信号(3.85KHz)を4KHzステップで12チャンネル並べたものです。A端局の送信は、12〜60KHz受信は120〜72KHzでB端局はその逆になり、1対の通信線を使用して12回線が使用できます。
チャンネルの基準レベルは800Hz −8dBmを送ると、相手には、0dBmまたは+4dBmで届くように作られています。電話機のページで説明しているようにハイブリッド回路による通話損失の補償のためです。
A端局の受信(B端局の送信)が120〜72KHzと書いたのは周波数の高い方がCH1で1CHごとに使用周波数が低くなっていきます。例えばCH1に800Hzの信号を流すとケーブルには119.2KHzの信号となります。(800Hzは対数的に音声周波数の中心となり基準の信号として使用します。)周波数配列は下記の表のようになります。
A端局送信周波数配列(KHz)
CH
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
800Hz 12.8
16.8
20.8
24.8
28.8
32.8
36.8
40.8
44.8
48.8
52.8
56.8
信号 15.85
19.85
23.85
27.85
31.85
35.85
39.85
43.85
47.85
51.85
55.85
59.85
B端局送信周波数配列
CH
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
800Hz 119.2
115.2
111.2
107.2
103.2
99.2
95.2
91.2
87.2
83.2
79.2
75.2
信号 116.15
112.15
108.15
104.15
100.15
96.15
92.15
88.15
84.15
80.15
76.15
72.15
これらの信号の他にAGCに利用するパイロット信号が有り、A端局は60KHz、B端局は72KHzを送出しています。
変調方式がSSB(搬送波抑圧単側波帯)なので両方のキャリア(基準になる発信器)の周波数を合わせる必要があります。それにパイロットが使用されています。片側を固定(FIX)とし、もう一方を追従(AUTO)させて使用します。AUTO側は相手のパイロットが受信できなくなったら自分の発信器を使用します。
SSB(搬送波抑圧単側波帯)
搬送波をある周波数で振幅変調すると搬送波と搬送波±ある周波数の3つの成分が現れます。その内の搬送波+ある周波数または搬送波−ある周波数のどちらか一方を使用するものです。前者をUSB、後者をLSBといい、通搬ではUSBが使用されていることが上記の表より解ります。
さて信号(3.85KHZ)は一体何をするものでしょう。音声帯域にはフィルタでカットされるので耳には聞こえません。電話機を例にとると、音声帯域では直流の成分は送受信できません。そこで信号を使って、受話器を上げたり下げたり、ダイヤルパルスを送ったり、電話機のベルを鳴らしたりします。信号線は送り側をアースに落とすと受け側からアースが出てきます。それでリレーを働かして上記の動作をさせます。
受信回路には、イコライザが使用されケーブル損失の周波数特性カーブを平坦になるように補正しています。ケーブル損失カーブが理想的にならないので、調整には勘が頼りです。この調整が出来るようになると一人前と言えます。
入社した当時には、通搬が全盛期で毎日のように据え付けていました。15年も経つと段々と光搬端に押され姿を消していって居ます。調整できる技術者も減っていっているのが事実です。
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