水槽立ち上げ談1

わたしが立ちあげた水槽の手順を以下に示します。一般的な情報は水野さんか森川さんかアクロポラさんかCPFさんのHPに詳しくありますのでそちらを見てください。それ以外の特にわたしが、失敗した点を振り返りながら重点的に述べていきます。中に書いてあることは私の独自の解釈ですので、間違いだらけだと思います。本気で信用しないでください。海外のHPを見ても相当個性的なものが多いし間違ってもいますので個人のHPはこれで良いと思います。どんどん異論反論objectionしてください。
正しい知識がほしい方はDelbeek/Sprung 著の
「The Reef Aquarium1」を読んでください、すばらしい入門書です。
さらに詳しい情報がほしい方は
Nilsen / Fossa著のThe Modern Coral Reef Aquarium vol.1 vol.2を読んでください、すごくdeepですよ。

目次

  1. リーチンイン式
  2. モナコ方式
  3. Algae Scrubber 方式
  4. ベルリン方式
  1. ライブロック
  2. 強力な照明
  3. 強力な水流
  4. ライブサンド
  5. Plenum
  6. カルシウム供給
  7. プロテインスキマー
  8. 微量元素添加
  9. ベントス
  10. 苔食生物
  11. サンプ、沈殿槽
  12. リフジウム
  13. 大きな水槽

はじめに

1997年1月に海水魚飼育を始めて5月にベルリンを始めて10月に転勤でいったん水槽たたみました。そして10月に転勤した後1998年1月に新築の家を建てたのをきっかけに5月に再度ナチュラルシステムを立ちあげるべく計画をスタートしました。どんな水槽にしようかな? この時が一番楽しいです。

<やってみたいこと>

ナチュラルシステム?

ナチュラルシステムの説明はミズノさんのHPかアクロポラさんのHPを見てください。
そこで私はどんなナチュラルシステムにするのか?いろいろ情報を集めてナチュラルシステムを比較することから始めました。

  1. リーチンイン式
    強い直射日光の下でライブロックを入れ、強力なエアレーション(大きな泡で)を行ったもの。
    ポイントは1)
    ライブロック 2)強力な光 3)隅々まで行き渡る水流である
  2. モナコ方式
    底砂(20cmくらい?)をひいて貧酸素域を作りその上にライブロックを載せて、強力な照明と曝気と水流を行う。
    底砂はPlenumと呼ばれる空間を作り、粗目の網をひいて下層に大粒の珊瑚砂、上層に細かい珊瑚砂をひいて、下層にデトリタスが蓄積しないようにスクリーンで下層と上層を分ける。上層はライブサンドを導入する。最近は、珊瑚砂はアラゴナイト(石灰岩)が良いという話がある(汚れていない、溶けやすい)。 プリナムニストと呼ばれる熱烈な愛好家もいて改良が進んでいる。
    ポイントは1)
    ライブロック 2)強力な光 3)水流 4)ライブサンド 5)プリーナム 6)石灰の溶出
  3. Algae Scrubber方式
    algae Scrubber とういうのは一部であって、ミクロコスモとかメゾコスモと呼ばれているシステムで食物連鎖の概念から自然を真似しようという学術的な試みで、鑑賞用の水槽には適用できないものである。プランクトンを発生させるためのリフージウムや、プランクトンを殺さないためにベローズポンプやウエーブバケットと呼ばれる脈動する波発生器を使っている。この水槽は、生態系の研究用の水槽であるために決して綺麗を追求していないようである。
    ここで趣味でも真似出来そうなのが
    リフージウム です 後で述べます。
  4. ベルリン方式
    ドイツ、ベルリンで趣味家の間で自然発生したシステムで、あまり学術的にナチュラルであることにはこだわらずに、いろいろな装置や仕組みを用いて綺麗な水槽を簡単に作り上げることに成功した方式。
    前2方式は学者が提唱したシステムだけあって、学術的なこだわりがあるが、ベルリンにはそういったところが無く、何でも珊瑚に良いことは全部やりましょうといった取り組み姿勢が感じられる。
    プロテインスキマーでどんどん汚れを取ろう。カルシウムが不足したら水酸化カルシウムを入れよう。微量元素が不足したら追加すれば良いじゃない。ライブサンドも入れましょう。なんていう風に発展してきました。
    ポイントは1)
    ライブロック 2)強力な照明 3)強力な水流 4)ライブサンド 6)カルシウム供給 7)プロテインスキマー 8)微量元素添加 9)生物によるライブサンド攪拌、清掃を目的としたベントス導入 10)サンプ沈殿槽

以上まとめると1)ライブロック 2)強力な照明 3)強力な水流 4)ライブサンド 5)プリーナム 6)カルシウム供給 8)微量元素添加 9)生物によるライブサンド攪拌、清掃を目的としたベントス導入 10)サンプ沈殿槽 11)リフージウム


それぞれの構成要素はどうも背反しないようなので全部やってみようというのが私の結論です。
この
何でもやっちゃえ精神はベルリンですから、私の水槽はベルリンと言って良いでしょうか?

  1. ライブロック
    とにかく、ナチュラルシステムの基本中の基本です。ライブロックは濾過装置ではなく、生態系をそのまま導入する入れ物だと思います。とにかく上質なライブロックをストレスなく水槽にお迎えすることに努力してください。「キュアリング」と称して付着生物を取り除くようなことをしないでください。
    多様な生物相が優れたナチュラルシステムを作ります。

    上質なライブロックは、
    CPFの空港止めがおすすめです。とにかく付着生物が豊富です。
    ライブロックは濾過装置ではなく生態系を導入する入れ物ですから、海草は取り除きなさいとかスポンジやホヤは駄目ですとか良く書いてありますが、空港止めなら全ての生物をダメージなく導入できます。
    地方により違いますが気温が25℃前後の時期をねらって導入しましょう。5−6月か9−10月がベストシーズンではないでしょうか?
    わたしは5月初旬(茨城、名古屋)に導入しましたがちょうどほっておいても水温が25℃程度でまったくストレスなくライブロックを導入することが出来ました。

    CPFの空港止めライブロックは後から後から玉手箱のように生物が沸いて出ます。

    今までの実績
    ガンガゼウニ、ナガウニ、カニ各種、ニシキウズガイ、ミズイリショウジガイ、ウミウシ、ホヤ、スポンジ、ウミブドウ、サボテングサ、各種海草、ハゼ、クサビライシ、サンゴイソギン、ケヤリ、ゴカイ、そして何とミドリイシ、ディスクコーラル、ハナズタ、スターポリプ、石灰藻、ハマサンゴ、各種微生物....


    今までいろいろなショップ(関東、関西、愛知)を見て回りましたが、CPFのライブロックほど付着生物がいっぱい付いたものは見たことがありません。
    中には腐った海水の中でデッドロックと化した真っ白の石を平気でライブロックとして売っている店まであります。
    ほとんどのショップではライブロックは苛酷な環境でストックされており、ほとんど付着生物がないプアーなライブロックになっています。
    とにかく、暗くてよどんでいて、わずかなエアレーションだけという場合が多いです。
    付着生物を維持するためには、強烈な水流、強力なFF、強力な光が必要ですがこういった環境でライブロックをストックしている店を見たことがありません。

    ただし、CPFのライブロックは豊富な付着生物ゆえこれを殺さないように導入するにはコツが必要です。ライブロックの導入を見てください。
    そこで私はCPFよりライブロックを合計15箱(200Kg?重さは重要ではない すかすかの軽いライブロックが良いです)導入しました。

    通常濾過(ウエット、ドライ)からベルリンに切りかえる方も多いと思いますが、この場合あまりうまくいったという報告を聞きません。
    硝酸塩が下がるのに時間がかなりかかったという方が多いです。
    これは、通常濾過の栄養塩の多い状態にさらされ続けたライブロックが、生物相のかなり貧弱な状態になっているためだと思います。
    生物相が復活するのに時間がかかるのだと思います。

    ベルリンは途中切り替えより最初から立ちあげるほうがうまくいきます。


  2. 強力な照明 アクロポラさんのHPにわかりやすく説明があります
    太陽光に勝る照明はありません。照度10万ルクスこれが太陽の直射光の強さです。
    造礁珊瑚のエネルギーの源は太陽光です(珊瑚礁の科学参照)
    それを真似すべくメタルハライドランプなどの高照度、高色温度(6500Kが太陽の直射に近い)を実現する照明器具が珊瑚水槽の世界に導入されてきました。

    照明を褐虫藻の光合成や、S−320のような珊瑚の色素との関係だけが説明されていますが、もう一つ重要なのが藻類、フィトプランクトン、生物相全体への影響です。
    水槽内に降り注ぐ光エネルギーは藻類、植物プランクトンを増殖させ、多様な生物相を作り出します。具体的な効果は
    @ライブロックが活性化する
    Aプランクトンが増殖し珊瑚だけでなく生物相全体の餌になる
    B藻類が魚の餌になる
    C窒素、燐を固定したプランクトンがFFで効率的に濾し取られ貧栄養価に貢献する。

    一言で言うと
    「すごく元気な水槽(生物相)が出来上がります」

    好日性の珊瑚を元気良く育成しようとしたり、ライブロックの生態系を元気に保つためには太陽光に近い照度とスペクトル分布が必要なのです。

    150Wのメタハラで10万ルクスを実現しようと思うと、思いっきりスポット光に絞って、30cm四方ぐらいしか10万ルクスになりません。
    つまり60cm水槽に300W、120cm水槽に1200W(150W8灯)必要ということになります。
    5mくらいの深さの海を想定すれば、5万ルクスくらいで60cm水槽で150Wのメタハラ、120cm水槽で150Wを4灯ということでなんとか実現できそうなレベルになります。
    蛍光燈にすると30Wのものを30本くらい必要で、これは蛍光燈ではこの照度は実現できないことを意味します。
    (30本も蛍光燈を乗せるスペースが無いし、仮に蛍光管を隙間なくびっしりならべた場合、蛍光管上方に出る半分の光が水槽内に届かないことになり 60本必要ということになってしまいます)。
    さらに真似できないのがスペクトルです。何万ルクスというようなメタハラ照明を珊瑚に当てたときと、太陽の同程度の照度を浴びたときの珊瑚の開き方や成長のスピードはかなり違い、太陽のほうが優れています(経験)。

    以下は私に推定ですが、太陽光のスペクトルは非常に滑らかなスペクトルをもっています(熱輻射)しかしメタハラはかなり鋭い刺のような尖ったスペクトルがあります(蛍光)。そのためにこのとがったスペクトルが珊瑚にダメージを与えるのではないか?と思っています。
    メタハラのUVが悪影響を与えているのではないかと言う説もありますが、メタハラのUVより太陽の直射のUVのほうがはるかに桁違いに大きいのです。
    それでも太陽光の下では珊瑚は嬉しそうに思いっきり膨らんでポリプを伸ばして成長します。

    刺のようにとがったスペクトル、これがメタハラの最大の欠点だと思います。

    下の図を見てもらえばいかに激しいピークをメタハラが持っているかがわかります。

    ここで注目すべきは6500Kの球が比較的滑らかなスペクトルを持っている事です。
    このグラフにはのっていませんが、スーパークール青球 赤球という球が最近評判が良いですが
    この球はスペクトルは6500Kなのですがフィルター(ダイクロイックミラー)で赤の色を削って青にしています。
    つまり、青い色でありながら、トゲトゲの少ないスペクトルであるのです。
    通常の20000Kの青色の球は下の図のように強烈な蛍光単一スペクトルで青を出しているので
    一見同じ青に見えても、スペクトルのトゲトゲはまったく異なるものになっているのです。

    スパークルの評判が良い事が上記の、
    私の仮説(刺のようにとがったスペクトルがメタハラの欠点)を証明しているのです。

    これは人間もいっしょでメタハラの光は妙に明るく感じたり、目に痛く感じませんか?
    もし人間が照度10万ルクスのメタハラ照明の下に立つと、眩しくて目が開けられないと思います。
    太陽光では何にも感じません。それに、朝日には神秘的な力が有るといわれています。この程度で止めておきます。

    そこで私は水槽をサンルームに設置し太陽光をメインの照明にしました。家の東側に設置し朝日から正午までの光がたっぷり入射するようにしました。
    補助照明として12時から18時までメタハラ(150W)6灯を点灯、18時から23時まで鑑賞用に蛍光燈(30W)を3灯つけています。

    たぶん多くの水槽で決定的に不足しているのが照明ではないでしょうか。
    珊瑚がかろうじて生きていくのに必要な照度と、元気いっぱいの珊瑚に必要な照度とは、たぶん10倍程度違うでしょう。
    蛍光燈でも育ちますがイメージとしては「裏庭のじめじめした薄暗いところに生えたキノコ」のような水槽になります。

    照明に関して詳しい話は
    DIYのところでもっと詳しく述べたいと思います。もっとスポットライトで高くから多灯照明にすると、理想に近づきます。
  1. 強力な水流
    上質なライブロックと強力な照明と強力な水流、これがナチュラルシステムの基本だと思います、3種の神器です。
    これまでのいろいろなナチュラルシステムにこの3点はすべて共通します。これさえあればほとんど成功です。
    後に続くもろもろは補足だと思います。しかし、この水流がなかなか難しいのです。
    ライブロックにはとにかく強く水流を当てたほうが調子が良いです。
    しかし水槽の中はライブロックだけではなく、さまざまな珊瑚がいます。
    それぞれ好きな水流というのがありますので両立させるのが難しいのです。

    私はライブロックの後ろと水槽の間にPHを入れて隙間を水流が流れるように配置しました。
    これでライブロックには強い水流があたりますが、珊瑚にはそよそよとライブロックの間を通過してきた水流があたります。ちょうど良い具合です。

    Total 8 Power Heads (RIO 1700)

    水流の作り方は2通りあります。

    @比較的小さなパワーヘッドをたくさん使ってライブロックにぶち当てる方式。
      これは小さな水槽向けで、大きな水槽には不向き

    A強力なパワーヘッド(ポンプ)を使って、太くてエネルギーの大きな渦を作る方式。上図 参照
      ゆっくりとした渦は、非常に大きなエネルギーを持っており、ライブロックの奥のほうまで染み入る水流が出来る。
      大型水槽に適した方法である。定常的な流れにならない様に定常流を乱すパワーヘッドを1個インターバル動作させると良い。


  1. ライブサンド(底砂)
    ベルリンの教科書、TRAには3cmくらい底砂をひいても良いというようなことが書かれています。しかし最近は、10cm以上ひくいている方が多いようです。
    やはり、今までの常識からすると、病原菌の発生や硫化水素の発生などが懸念されて底砂をこんなに厚くひく人はいなかったと思います。
    しかし最近はここまで厚くひくようになっています。
    底砂の目的は、ライブロックと同じで多様な生物相を導入することです。砂の中にすむ多くの生物を導入することです。脱窒を行う面積も増えます。

    砂を厚くひいて本当に大丈夫なのか?
    底砂クリーナー達(ベントス)を導入すれば綺麗な底砂を維持できます。さらに多様な生物やバクテリアが住み着いた底砂は硫化水素の発生がおきないようです。
    ちなみに私の立ち上げ他水槽の底砂は厚いところで5cmくらいですがパワーヘッドがおっこちて砂を巻き上げても硫化水素のにおいはしません。
    サンプの20cmの底砂の止水域の水も硫化水素はありません。
    Plenumを作らないで厚く底砂をひく場合、硫化水素の発生(デッドスポット)もおきる場合があるようですが、上層の嫌気性細菌がエネルギー源として利用して上(水槽の飼育水)には漏れ出てこないようです。

    いままでは、日本においてはライブサンドを販売するところが無かったので、珊瑚砂をひいてひたすらライブサンドになるのを待っていたのですが、
    CPFさんからライブサンドが販売されるようになりました。
    わたしはこれを導入しました。目に見える生物はほとんどいませんが、綺麗なパウダー珊瑚で、導入してもまったくアンモニアが発生しませんでした。

    しかし難点は細かすぎることです。確かに自然の海岸の砂は非常に細かいのですが、水槽の中では巻き上がりやすくて困ります。
    とくにアカハチハゼとの相性は最悪です。水槽の下のほうの珊瑚やライブロックは常にパウダーをかぶった状態になってしまいます。
    もう少し粗いやつにしてくれるとうれしいのですが、阿出川さんいかがでしょうか?


  1. Plenum
    ご存知モナコ式、の底砂です。詳しくはNatural Nitrate Reduction-Plenum Sandbed Filtration  by Sam Gamble 」 この人Plenumすきみたいです。
    わたしはPlenumをメイン水槽下のサンプに作りました。
    理由は、
    @15cm以上の厚さの砂をメイン水槽にひいたらカッコ悪い。
    Aうまく行くかどうか心配なのでいつでも切り離せるようにしたい。
    go to Tank diagram
    Bリフージアムにもしたい。

    こんな感じに作りました。


    園芸店で売っている黒いメッシュ(鉢底にひくもの)で
    そのままでは柔らかいので支えとして下に塩ビパイプなどを
    ならべて支えとする。わたしは花壇のプラスチックの柵をならべました
    底面フィルターでも良いと思います。
    これは下に固形物がたまらない様に目の細かいスクリーンをひきます
    これは東急ハンズでスクリーン印刷用の0.1mm以下のメッシュのスクリーンを使いました。

    赤い線はラインヒーターですこれは秋葉原のヒーター屋で買いました。水草水槽の真似でPlenumuが冬に冷えすぎない様にすると同時に
    非常にゆっくりとした水の対流(イオンの流れ)を作るために入れました。

    PlenumかNonPlenumかの論争があるようですが、Plenumのメリットデメリットは以下のように考えています

    メリット1:下の図のようにPlenumにより底面における急激な酸素濃度の低下を防ぎ硫化水素発生域(デッドスポット)の発生が押えられる。
    メリット2:下に行くほど酸素濃度の低下率が下がるように出来るために、有効な脱窒素域を広く取れる。

    デメリット1:Plenumに窒素やリンが溜まるといわれている。
    デメリット2:きれいではない


    そこで、私はPlenumをサンプに作ってみました。後で述べますがリフージアムもかねています。


  2. カルシウム供給
    カルシウム供給の目的は珊瑚が成長するのにカルシウムを大量消費する(骨格のほとんどが炭酸カルシウムです)ために補給すること
    燐を燐酸カルシウムとして沈殿させFFで取り除くことです。

    順調な水槽では、カルシウムは石灰藻、と珊瑚により大量消費されます。
    カルシウムの供給はなかなか難しい問題です。

    カルシウムの供給には今のところ3方式があります。

    飽和水酸化カルシウム溶液(石灰水、カルワッサ)、塩化カルシウム+重曹、カルシウムリアクター

    立ち上げ当初は水酸化カルシウム溶液、安定したらカルシウムリアクターが良いのではないかと思っています。

    以下もう少し詳しく、(あくまで感覚的で正確ではありませんし間違っているかもしれません)説明します。

    1. 飽和水酸化カルシウム溶液添加
      溶解平衡 電離平衡 ヘンリーの法則、強酸 強塩基 弱酸 弱塩基 それぞれの塩、さまざまな化学反応
      一つだけなら簡単なのですが、すべてが絡み合うとかなり難しいです、正確に理解することはあきらめました。
      その中でもCaの挙動が一番難しい。(誰か「海水の科学」という題でわかりやすく完璧に解説してくれないかな?)
      以下感覚的に話したいと思います。


      溶解平衡、電離平衡がCaの挙動を説明します

      ・炭酸イオン(CO
      3-2や Caイオンが増えると難溶解性の炭酸カルシウム(CaCO3)が沈殿する。
      CaCO
      3 ⇔ Ca2+ +CO3-2 この難溶解性の炭酸カルシウムの溶解平衡が左にシフトします。

      ・pHが高いと(7.5を超えるあたりから)炭酸イオン(
      CO3-2)が増加する。下の図で電離平衡が右にシフトします。

      下の式で右にシフトします。
       H2O・CO2 ⇔ H2CO3 ⇔ H++HCO3- ⇔ 2H++CO32-

      海水に直接水酸化カルシウムを混ぜると、部分的に高pHになり電離平衡が右にシフトし、炭酸イオンが増加し、かえってCaイオンが炭酸カルシウムとして沈殿してしまう。(いわゆる雪が降った状態になります)
      この結果 Caイオンも重炭酸イオン(KH)も低下してしまいます。

      珊瑚は光合成で利用するCO2を重炭酸イオンから得ます。
      水酸化カルシウムを直接投入したり、乳液状態で投入したり、水酸化カルシウムを海水で溶いたりしては絶対だめです。
      かえってCaイオンも重炭酸イオン(KH)も減らしてしまいますので、何もしないより悪い結果になってしまいます。

      このために直接海水に混ぜないで飽和水溶液にしてpHの上昇をさせないように少しづつ添加するのです。
      こうすると、KHがあまり低下すること無くCa濃度をあげられます。

      あと飽和石灰水を作るのにRO水を使うのは余計なイオンがあるとCaが溶けにくかったり、高pHで析出したり、水道水中の不純物を水槽に持ち込まないためです。

      水酸化カルシウムのもう一つ副次的な作用として、燐を燐酸カルシウム(骨の成分)として沈殿させ、FFで濾し取る効果です。
      これがどんな原理でおきるのか?(以下想像です)

      飽和石灰水が海水にぽたりと落ちた瞬間、部分的に高pHになります。(飽和石灰水のpHは12.4です)
      なおかつ、その瞬間はCa濃度も海水中の数倍ありますので、一時的にCaイオンが過飽和な状態になります。
      この時、不安定なカルシウムイオンが燐イオンと結びついて燐酸カルシウムとして析出するのではないかと思います。
      そして海水中に漂っている燐酸カルシウムがFFによって分離され水槽外に放出されるというメカニズムです。

      立ち上げ当初飽和石灰水のほうが良いと私が考える理由は、他の2方式(塩化カルシウム、カルシウムリアクター)ではこの様な部分的なCaイオンの過飽和状態が発生しにくく燐を取り除く能力が低いのではないかと思うからです。


      水酸化カルシウムはRO水で溶いて上澄みを(飽和溶液)をポタポタゆっくり添加すること。

      あと必ず皆さんがやる失敗が、垂れ流し事故とpHの急上昇です。皆さん必ずやりますのでご注意ください。

      ・垂れ流し事故
       RO水の停止を忘れて、あるいはスイッチ、あるいはバルブが壊れて石灰水の垂れ流しをしてしまう。
       これは1度は必ずやりますので注意してください。気づくのが遅いと海水の比重が下がりすぎて生体がダメージを受けます。
       立ち上げ当初は観察(見ている時間)を取らないと大変なことになります。

      ・pHの急上昇
       これは飽和石灰水のはずが懸濁液状態(乳液状態、ミルク状態)の石灰水がポタポタ供給されてpHが急上昇する。
       この原因は、スターラーの回転速度を上げすぎて上澄み液が出来なくて懸濁状態で供給されたときや、
       ポリタンクからの流量をあげすぎて巻き上がってしまい懸濁状態で供給されたときなどに起きます。
       私もこの失敗をやらかしました。数時間でpH10まで上がってしまいました。特定の生物が全滅しました。
       珊瑚も復活するのに1ヶ月くらいかかりました。


    1. 塩化カルシウム+重曹
      塩化カルシウムは難溶性ではありませんので、たくさんCaイオンを溶かせ込めます。ただし、炭酸カルシウムの溶解平衡がありますので海水中では、たくさん溶かし込んでも炭酸カルシウムとして沈殿してしまいます。KHがドーンと下がってしまいます。
      さらに、Caイオンは珊瑚が消費しますので、Caイオンが沈殿するか消費されて塩素イオンだけが残って蓄積していきます。これがさまざまな電離平衡や溶解平衡をずらしていわゆるイオンバランスが崩れた状態になります。

      そこで重曹(重炭酸水素ナトリウム)を同時に、別々に加えて塩化ナトリウム(塩)の形でバランスを取るものです。
      海水に入れる前にこの液を混ぜないでください、炭酸カルシウムと塩水になってしまいます。

      飽和石灰水のように比重が変化しないように蒸発分だけしか供給できないとか、装置の必要もありませんので一番手軽なCa供給方法だと思います。
      しかし燐の除去能力はどうでしょうか? 私はわかりません。


      市販のものは個人輸入しかありません。(B-Ionic 、C-Balance)


    1. カルシウムリアクター
      カルシウムリアクターの構造はアクロポラさんのHPを見てください。簡単な構造で自作は容易です。
      しかし、リアクターは簡単に作れても、ミドボンやレギュレーターや電磁弁やペーハーコントローラーなど結構お金がかかります。

      石灰岩や珊瑚砂を炭酸ガスを溶け込ませた低いpHの海水で溶かしてCaイオンと重炭酸イオンを同時に供給するものです。
      CaCO3 + H2O + CO2 ⇔ Ca2+ +2HCO3-
      これの利点欠点はいくつかあります。

      利点
      ・重炭酸イオンも同時に供給できる。(光合成に有利)
      ・珊瑚砂、石灰岩はもともと珊瑚の骨格であり、そこに含まれる微量元素も供給できる。
       (珊瑚骨格にストロンチウムが濃縮されているのでその補給にもなる)
      ・大型の装置(ミドボンや大型のリアクター)を導入すれば半年くらいもつ。

      欠点
      ・装置が大掛かり(pHコントローラーが必須)
      ・サンゴ砂(珊瑚骨格)に濃縮されている不純物(たとえば燐)も溶かしだしてしまう。そのために、純粋な炭酸カルシウムを用いる場合もある。
       でも純粋な炭酸カルシウムを用いるくらいなら、カルワッサーのほうが安くて手軽で良いと思いますけどね。
      ・KHが上昇しすぎる。
      ・メンテナンスが大変。(珊瑚砂の入れ替えや、ミドボンの交換)

      ・KHもCaも高くなりpHが低くなる傾向がある。(のではないかと思う)

    以上3方式を比べてみると。私は自動供給装置があれば(DIY)、水酸化カルシウムの飽和溶液の添加が一番良いような気がします。
    自動供給装置がないと、毎日の石灰水の作成は非常にめんどうくさいので、正直言って続けられないと思います。


    自動供給装置はDIYのページを見てください。

    このほかにもカルシウムの添加材(塩化カルシウム、キレート化したカルシウムなど)が有りますがやめておいたほうが良いです。

 

 

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