Swingroove Special Vol.3

Cool Breeze from Brazil

 

 ブラジル音楽特集の最後は、Singroove Reviewらしく、ジャズ、フュージョン系の作品をご紹介しましょう。

 アメリカへ、ブラジル音楽を持ちこんだのは、スタン・ゲッツを始めとするジャズ・ミュージシャンで、「ゲッツ=ジルベルト」の大ヒット以降、ウェイン・ショーターが、ミルトン・ナシメントをフィーチャーした作品「ネイティヴ・ダンサー」を発表するなど、60年代後半以降、ジャズ・シーンにおいてブラジル音楽の要素は切っても切れない重要なものとなりました。

 そんな中、アメリカをはじめとする世界中にブラジル音楽を広めたアーティストとして、セルジオ・メンデスを忘れてはいけません。彼の大ヒットナンバー「マシュケナーダ」によって、ブラジル音楽が、お茶の間へと広く浸透していったのでした。

 左は「マシュケナーダ」を含むブラジル’66のヒットナンバーを集めた作品で、もともとは2枚組みのアルバム。「ワン・ノート・サンバ」「ビンボン」などのブラジリアン・スタンダードと、「ルック・オブ・ラブ」「ディ・トリッパー」「ノルウェーの森」などのポップヒットが、同じフィーリングで楽しめる。これが無ければこれほど世界でブラジル音楽がポピュラーにならなかったと思います。

 右は彼の最新作。(96年)ブラジル音楽の良い部分を上手く取り入れたコンテンポラリー作。イヴァン・リンスの近年のヒット・バラード「アンジョー・ジ・ミン」のカヴァーが秀逸。タイトルはジャバンのナンバーのカヴァー。

 

 70年代半ばからのフュージョン/クロスオーヴァー・ブームの中、それらの音楽の中にブラジル音楽の要素を取り入れた作品はたくさんありますが、その中から、ほんの少しですが、レコメンドしておきましょう。セルジオ・メンデスのグループ出身のこのギタリストの作品は外せません。

 左のアルバムは、リー・リトナー、79年の名盤「イン・リオ」。ここに収録されている「リオ・ファンク」は今もなおライブでは必ず演奏する人気曲。Tは「リオ・ファンク」でのマーカス・ミラーのベースにぶっ飛んだ。ブラジリアン・フュージョンの名作。ディヴ・グルーシン、マーカス・ミラー、エイブ・ラボリエル、アレックス・アクーニャら参加。

 右は上の約6年後の85年に、ディヴ・グルーシンとのコラボレーションにより産まれた作品。ラブ・ロマンス小説のシリーズの「ハーレクイン・ロマンス」のようなロマンティックでセクシーな音楽にしたいと「ハーレクイン」のタイトルが付いたそうです。イヴァン・リンスも2曲ボーカルで参加。また、「アーリーAMアティテュード」という曲ではグラミー賞も獲得。気負いの無いナチュラルなサウンドの中に、ブラジル音楽のクールさや、グルーヴ感がミックスされた80年代フュージョンの代表作。エイブ・ラボリエル、ジミー・ジョンソン、ハーヴィー・メイスン、ポリーニョ・ダ・コスタ、カルロス・ヴェガら参加。

 

 97年にリリースされた、リー・リトナー プロデュースによる、アントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート作品。ソウル界から、オリータ・アダムス、アル・ジャロウ、エル・デバージ、ジャズ界から、ハービー・ハンコック、クリス・マクブライド、フュージョン界から、ディヴ・グルーシン、エリック・マリエンサル、イエロージャケッツなど豪華なラインアップでジョビンの名曲が堪能できます。スタイル的には、かなりコンテンポラリーですが、セルジオ・メンデスとの共演などを経て、ブラジル音楽の本質を理解しているリトナーがプロデュースしているため、ブラジル音楽の持つリラックス感やクールさは保たれています。もちろん、リーのギターもいつもの様に涼しげです。「ちょっとひとひねりしたジョビン」のタイトル通りのサウンドに仕上がっています。

 

 

 現代のブラジリアン・ジャズの名盤をレコメンド。

 

 左は、サックス奏者ジョー・ヘンダーソンの95年の作品でジョビンのトリビュート作「ダブルレインボー」。イリアーヌ・エライアスやオスカー・カストロ・ネヴェスを加えたブラジリアン・セッションとハンコック、ディジョネット、マクブライドによるジャズ・セッションの2本立て。ジョビンが生きてれば、ジョビン自身も参加するはずだったという。ジョーヘンの枯れた渋いテナーによるボサノヴァ集。

 右は、ランディー・ブレッカーの元かみさんでブラジル人ピアニスト、イリアーヌ・エライアスの最新作でこちらもジョビン集。イリアーヌのピアノとヴォーカルにサックスのマイケル・ブレッカーが絡むというのがポイントで、さながら、現代の「ゲッツ=ジルベルト」といった趣。収録曲も「イマネマの娘」他有名曲揃いで、気軽にたのしめそう。ブレッカーのテナーもゲッツにならってかいつになくウォームな感じ。

 ベルギー出身のハーモニカ/ギター奏者トゥーツ・シールマンスの92年作「ザ・ブラジル・プロジェクト」。トゥーツとブラジル音楽と言えば、クインシー・ジョーンズのアルバム「愛のコリーダ(The Dude)」で、イヴァン・リンス作のナンバー「ヴェラス」のハーモニカ・ソロが有名です。ここでは、そのイヴァン・リンスやジャバン、カエターノ・ヴェローソ、シコ・ブアルキ、ジルベルト・ジル、エデゥ・ロボ、ミルトン・ナシメント、それにアメリカから、ディヴ・グルーシン、リー・リトナー、ブライアン・ブロンバーグ等などが参加し、ゲストの代表曲を披露。ゲスト全員参加による、約10分弱にも及ぶトゥーツの名曲「ブルーゼット」は、聴きものです。同メンバーによるVOL2もありますが、こちらの方が断然上です。

 

 ブラジルのフュージョンをいくつか…。

 左はブラジリアン・ピアニスト、タニア・マリアのファンキー&ホットなライブアルバム「ワイルド!」。「ファンキー・タンボリン」「カム・ウィズ・ミー」という彼女の人気曲も収録。とにかくかっこいいです。タニア・マリアを聴くにはやっぱりライブでしょう。(85年)

 右はブラジルのフュージョン・グループ、アジムスの80年の作品。ジャズ・ファンクの名曲「ジャズ・カーニバル」収録。また人気FM番組だった「クロスオーヴァー・イレブン」のテーマソングにもなった「フライ・オーヴァー・ザ・ホライズン」も収録。JRベルトラミのフェンダーローズが   醸し出す独特のヴァイヴとクールなフィーリングは、一度覚えたら忘れられない。

 

 という訳で、ジャズ方面から、ブラジル音楽を駆け足でご紹介してきましたが、如何でしたか?まだまだ紹介しきれない作品やアーティストがあるんですが、今回はこのあたりで終わりにしましょう。少しでも、ボサノーヴァの歴史やジャズとの係わり合いなどを知る上でのアシストになれば幸いです。なんか理屈っぽくなりましたが、とにかく気持ちの良い音楽ばかり紹介しましたので、どれか1枚でも、聴いて見て下さい。また皆様のお気に入りのボサノーヴァのCDも教えて下さい。

 

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