Swingroove Review

November



George Garzone "Moodiorogy"

 ジェリー・バーガンジがややメジャーになった今、彼に続くアカデミックなジャズの街ボストン発の知られざる才人テナー奏者ジョージ・ガーゾーン。彼の新作が、マイク・マイニエリのレーベルNYCよりリリースされました。
 NYCレーベルでの3枚目のアルバムとなる今回の作品のメンバーは、ガーゾーン(ts,ss)ケニー・ワーナー(p)ジョン・ロックウッド(b)ボブ・ギュロッティ(ds)というカルテットが基本で、3曲に2人のサックス奏者(無名のミュージシャンです。)を加えたサックスアンサンブルがフィーチャーされ、またプロデューサーのマイク・マイニエリも何曲かヴァイヴで参加しています。
 NYCレーベルでの作品は、1枚目がヴォーカル入りのボサノヴァ風、2枚目がジョー・ロヴァーノとの2サックスと企画モノばかりでしたが、この新作では、カルテットを基本にしたシリアスなジャズを聴かせてくれます。ここで強く感じるのが、やはりジョン・コルトレーンの強い影響です。1曲目の小曲「ムーディオロジー」などは「至上の愛」っぽい感じですし、6曲目にはトレーンの名バラッド「ネイマ」まで入っています。ソプラノで演奏される「ネイマ」はピアノのケニー・ワーナーとのデュオによる演奏なのですが、これがなかなかのものです。ディヴ・リーヴマンを滑らかにしたようなタッチで演奏されるそのソプラノの表現力は、マイケル・ブレッカーやスティーヴ・グロスマン、ディヴ・リーヴマンなどの名立たるコルトレーン派サックス奏者に引けを取らないどころか、凌駕している感じさえさせるものです。
 「ネイマ」「4月の思い出」「ソウル・アイズ」という3曲のスタンダード以外は、ガーゾーンのオリジナルですが、彼のテナーとソプラノを引き立てる60年代中期テイストなカッコいいナンバーばかりです。またワーナーのピアノも、無名なリズム・セクションもイイ感じのサポートぶりです。特にハンコック・テイストなワーナーが良い仕事をしています。
 湯水のように、斬新なアドリブ・ラインが噴出すガーゾーンの瑞々しい(年齢は若くないですが…)テナー&ソプラノを聴いていると、70年代後半〜80年代初期のマイケル・ブレッカーを思わせるものがあります。正直に言うと、マイケルの新作よりも、数倍「うぅ〜いくぅ〜」という感じがしたアルバムです。コルトレーン派の白人テナー奏者がお好きな方は是非ともチェックして頂きたい隠れ名盤です。
11.2 Update

★★★★

Dave Valentin  "Sunshower"

 あのGRPレーベルのリリース第一号アーティストとして知られる、フュージョン系フルート奏者ディヴ・ヴァレンティンの新作が、コンコード・レーベルのコンテンポラリー部門である、コンコード・ヴィスタよりリリースされました。
 70年代終わりのArista GRPの頃から、GRPレーベルからリリースを続け、94年の「トロピック・ハート」を最後に古巣GRPを離れ、96年サルサ系レーベルRMMへ移籍し、「プリミティヴ・パッションズ」を発表。そして今回の新作は、その「プリミティヴ・パッションズ」に続く、3年ぶりの新作となります。
 80年代初期には、一時ディスコ・ミュージック的なアプローチ(すごくミスマッチな変な作品でした…)をした作品をリリースしたものの、その他は、プエルトリカンである彼のキャラクターを生かしたラテン・テイストな心地よいフュージョン・サウンドを多くのアルバムで聴かせてくれました。GRPでのラスト作やRMMでの「プリミティヴ〜」では、ややサルサをルーツにしたラテン色の濃い作品となっていましたが、今作は、GRP時代を思わせる、あっさり味のラテン・フュージョン作に仕上がっています。少々懐かしい感じのする16ビート系の心地良いフュージョン・ビートにのせての軽やかなフルートが奏でるそのサウンドは、70年代〜80年代フュージョンのファンにはこたえれないものでしょう。
 サポート・ミュージシャンも古くからヴァレンティンとゆかりのあるミュージシャン中心で、ビル・オコンネル(p)ロビー・アミーン(ds)ルーベン・ロドリゲス(b)ミルトン・カルドーナ(Perc)、それにゲストとして、元スパイロ・ジャイラのディヴ・サミュエルズ(Vib)スティーヴ・カーン(g)エド・カレ(sax)らが参加しています。特にヴァレンティンのお抱えピアニスト、ビル・オコンネルのピアノとサミュエルズのヴィヴラフォンがラテン・テイストなサウンドで大活躍です。
 ライブで熱くなった時に聴かせてくれるフルートと自分のスキャット・ヴォーカルを一度にパフォームするような少々エグイ(下品?)なプレイももっと聴いて見たい気もしますが、心地よさ重視のライトなラテン・フュージョン作としては、結構レベルの高い作品だと思います。個人的には、6曲目のエリントン・ナンバーでのジャジーなプレイと、アルバム・ラストのタイコのロビー・アミーンが大活躍の少しハード目なラテン・ジャズ・ナンバーが印象に残りました。
11.3 Update

★★★☆

Andy Snitzer "Some Quiet Place"

 80年代から、ボブ・ジェイムスなどと共演するなど、NYのスタジオ・シーンで頭角を現し、94年に「タイズ・ザット・バインド」(WEA)でソロ・デビューを果たしたサックス奏者アンディ・スニッツァー。WEAでの最後の作品となった「イン・ザ・アイ・オブ・ザ・ストーム」から約3年ぶりとなる新作が、スムース・ジャズ系のインディ・レーベル、カウントダウンからリリースされました。
 WEA系のジャズ・ミュージシャン整理というリストラの風をモロに受け、惜しくもマイナー落ちをしてしまったアンディですが、この新作では、マイナー盤を意識させない豪華なサポートミュージシャンとサウンドのクォーリティーを感じさせる作品となっています。
 サポート・ミュージシャンは、ボブ・ジェイムス、フィリップ・セス(key)チャック・ローブ(g)ショーン・ペルトン(ds)ディヴィッド・チャールス(Perc)マイク・ディヴィス(tb)クリス・ボッティ(tp)などスムース・ジャズ界のそうそうたるメンバーが参加し、よく作りこまれた骨のあるスムース・ジャズを聴かせてくれます。
 スムース・ジャズといえば、R&Bテイストなサウンドが中心ですが、彼のサウンドはそんな中で、ややロック〜AORテイストを感じさせる8ビート中心のスムース・ジャズがキャラクターとなっています。またアンディは、テナーやアルト、ソプラノをこなすサックス奏者ですが、特に素晴らしいのがテナーによるプレイです。ディヴィッド・サンボーンが吹きそうなフレーズをマイケル・ブレッカーのテナーで聴いているかのような骨のあるアンディ・スニッツァーのテナーサックスは、没個性なミュージシャンの多い、スムース・ジャズ・サックスの世界において、貴重なキャラクターといえます。
 今作では、嬉しいことに、テナーサックス1本で勝負しており、素朴でありながらチープさを感じさせないバックトラックと相俟って、凡庸なスムース・ジャズ作品が多い中で、キラッと光る存在の作品となっています。
 印象的なトラックは、ボブ・ジェイムスのアコーステック・ピアノが大きなアクセントとなっているミディアム・ナンバーと、3曲目のフィリップ・セスのちょっぴりレトロなムーグ風のシンセとチャック・ローブのギターがキーとなった「カーグラフィックTV」のBGMに出てきそうなミディアム・ファンクナンバーを挙げておきましょう。
 彼はスムース・ジャズだけでなく、97年にはライアン・カイザー(tp)サム・ヤヘル(p)チャーネット・モフェット(b)コディ・モフェット(ds)らとともにGファイブというユニットを結成し「メンフィス・アンダーグランド」(テイチク)、という作品をリリースし、ストレートなジャズを聴かせてくれるなど( ストレートなジャズでは結構普通ですが…)、スムース・ジャズの枠にとらわれない幅広い活動を続けているだけに、これからのより一層の飛躍がおおいに期待できます。
 70年代のディヴ・サンボーンのサウンドをコンテンポラリー化したような高品質なスムース・ジャズ・サックスです。次作は再びメジャーへ返り咲きか?そんな期待を抱かさせる好作品です。
11.3 Update

★★★☆

Klaus Doldinger "Blind Date〜Back In New York"

 1970年にパスポートというクロスオーヴァー〜フュージョン・グループを結成し、70年代〜80年代にかけて活躍、高い評価を集めた1936年ドイツ・ベルリン生まれのサックス奏者クラウス・ドルディンジャーの新作がWEA Europeからリリースされました。
 90年代に入ってからは、あまり名前を聞くことのなくなったこのベテラン・サックス奏者ですが、なんでも、90年代以降はアメリカから再び故郷のドイツと移住したとかで、アメリカでの音楽活動が少なくなったことが、あまり名前を聞かなくなった要因のようです。
 かく言う私も、パスポートを含めそんなに熱心なドルディンジャーのフォロワーではないため、彼の作品をすべて聴いている訳ではありませんが、近年のアコースティック・ジャズに回帰してからの彼のサウンドには好感をもっていました。
 1994年に、ロイ・エアーズ、トミー・フラナガンやチャーネット・モフェット、ヴィクター・ルイスらを迎えてNYで録音された「Street Of Dreams」という作品の続編ともいえる今回のニューアルバムも当然NY録音で、サポート・メンバーは、ピーター・バーンスタイン(g)アイラ・コールマン(b)ステフォン・ハリス(Vib)ケヴィン・ヘイズ(p)ヴィクター・ルイス(ds)となかなか興味深いメンバーが顔を揃えています。
 収録曲全10曲のうちスタンダードの「セプテンバー・ソング」「ホワッツ・ニュー」以外は、ドルディンジャーのペンによるナンバーで、70年代のフュージョンを経由しているミュージシャンだけに、アコースティック系のジャズ・サウンドとはいえ、ちょっとひとひねりしたもので、感覚的に近いと思ったのは、エレクトラ・ミュージシャンからファースト・アルバムをリリースした頃のステップス・アヘッドを思わせる雰囲気です。(サックスがブレッカー・スタイルという訳じゃありません。)特にヴァイヴのステフォン・ハリスが参加したナンバーなどその印象が強いです。またギターのバーンスタインやヘイズのピアノも好調です。
 全体的には、ソプラノ・サックスを中心にした清涼感のあるクールな印象のある作品ですが、8曲目のアコーステック・ファンク調のナンバーでのファンキーなプレイや、ラストのモダン・ハードバップ・スタイルのナンバーでは、ビ・バッパーとしての本領発揮ともいえるテナープレイを聴かせてくれるなど、バラエティ豊かなアルバムとなっています。
 主人公のドルディンジャーを知らなくても、ちょっとコンテンポラリーなNYのアコースティック・ジャズが好きな方なら楽しめる1枚です。深夜よりも昼間似合うクールなアコーステック・ジャズ・アルバムです。
11.6 Update

★★★☆

Marcus Roberts "In Honor Of Duke"

 ウィントン・マーサリスのピアニストとして注目を集め、1988年Novusより「 Truth Is Spoken Here 」で鮮烈なソロ・デビューを果たしたブラインド・ピアニスト、マーカス・ロバーツ。
 今回の新作は、95年の「 Plays Ellington 」に続くデューク・エリントンをテーマにしたもので、デューク・エリントンにインスパイアされたという12曲のマーカス・ロバーツのオリジナルが収録されています。
 マーカス・ロバーツといえば、最近ではソロ・ピアノのイメージが強いですが、今作はほとんどがローランド・ゲリン(b)=ジェイソン・マーサリス(ds)を従えたトリオによるものです。(1曲のみドラムがアントニオ・サンチェス)
 私はデューク・エリントンについて熱心にアナライズするほどのファンではないので、これらのデュークに影響を受けたコンポジションを聴いても、なにやら小難しい楽曲だなぁ、と思うだけで何の感銘も受けませんでした。デュークといえば、確かにビ・バップ時代以前に、独特のリズムとハーモニーを黒人音楽にもたらした訳で、その革新的なポイントを、マーカス・ロバーツなりにアナライズし創り出した音楽がこの作品だと思うのですが、芸術的な価値は高いと思いますが、正直楽しむ音楽として考えると、きわめて退屈なものと言わざるえません。
 また彼の音楽を一番上手く伝えられるフォーマットは、ピアノ・ソロなんだなぁということを、ここでのトリオによる演奏を聴いて逆説的に感じました。彼のピアノは好き嫌いを別にして完璧なんです。リズム、ハーモニー、アドリブ…それらすべてが、ピアノだけで成立させられるピアニストなんだと思います。この新作を聴いてこれらのコンポジションをトリオで演奏する必然性は何も無いように感じました。逆に、ベースやドラムがうるさく、特にエリントンのピアノにも共通する個性的なハーモニーを聴く上での障害になっているとさえ思います。この新作のコンセプトなら絶対ソロ・ピアノの方がより魅力的な作品に仕上がったと確信します。彼のピアノそのものは、ハーモニーやアドリブのアイディアを含めて素晴らしいものを持っているだけに、非常に残念なのですが…。
 ウィントン・マーサリスの組曲ものやニューオリンズものと同様のいわゆる「お勉強ジャズ」です。多分ジャズ評論家の連中は誉める類の作品だと思いますが、個人的には一度CD棚に返すと2度と聴くことの無い作品です。素晴らしいピアニストであることには違いないので、なんとも歯がゆい思いでいっぱいです。どんなフォーマットでもいいですから、一度は楽しめる作品を作って欲しいと思います。
11.11 Update

★★

Mino Cinelu "Mino Cinelu"

 マイルス・ディヴィスやスティング、渡辺香津美などとの共演で知られる打楽器奏者ミノ・シネルのリーダー・アルバムが、フランス・エマーシーからリリースされました。(ディストリビュートはユニバーサル)
 ミノ・シネルは、フランス領マルティニーク出身のパーカッション奏者で、81年にカム・バックしたマイルス・ディヴィスのグループへの参加をきっかけに注目を集めるようになりました。
 その後、スティングのツアーに参加したり、様々なせッションにも参加し、トップ・ミュージシャンとしての地位を確立させました。
 彼の名義が前面にでた作品といえば、ピアニスト、ケニー・バロンとのデュオ作や、ワールド・トリオと銘打った、ディヴ・ホランド、ケヴィン・ユーバンクスとのトリオなどが思い浮かびますが、彼単独の名義の作品はこれが初めてのはずです。
 パーカッションといっても、ラルフ・マクドナルドやポーリーニョ・ダ・コスタのように「チャカポコ、チャカポコ」やるだけではなく、アイアート・モレイラのように、ドラムのセットを組み込んだような独自のパーカッション・セットで、空間を活かした個性的な音楽空間を創り出すミュージシャンがミノ・シネルです。
 この新作は、ミノの打楽器、ヴォーカル&ヴォイス、ギター、フルート、バンドネオンに、リチャード・ボナのベース、ミッチ・ステインのギターを加えたトリオによるものです。しかし、打楽器、ギター、ベースによるジャズっぽいトリオではなく、ミノの創り出した、アフリカ、中南米、中近東、それに、欧米のロックの要素をガンボ状態にしたサウンドに、ベースとギターをプラスしたといった感じとなっています。ヴォーカル曲には、スティングの曲の雰囲気も感じました。
 ジャズ/フュージョン的な聴きどころは、現在注目を集めているアフリカ出身のベーシスト、リチャード・ボナとミノの打楽器とのパフォーマンスがスリリングなポイントです。その他は、9分くらいのインド料理店のBGMみたいな曲もあったりして、なかなかジャズ/フュージョンのファンが、そのまま楽しめる作品とはいえないようです。
 しかし、彼の創り出すワールド・ミュージック(安物のいい方ですが、こうとしか呼べない音楽です。)は、私にとっては今流行のある種の「癒し〜ヒーリング」を感じさせてくれました。目を閉じて聴くと、まだ見ぬ見知らぬ国のモノトーンな風景が浮かんできそうです。
 ウェザーリポートやザヴィヌル・シンジケートのようなサウンドが好きな方や、タイプは違いますがパット・メセニー・グループの音楽が好きな方にもお勧めできる作品ではないかと思います。
 万人向けじゃないですが、ハイ・クォーリティーなワールド・ミュージック作です。
11.15 Update

★★★☆

Leo Gandleman "Brazilian Soul"

 バークリー音大出身のブラジル人サックス奏者レオ・ギャンドルマンの新作が、シカゴのインディー・レーベル「JAZZICA」からリリースされました。
 ブラジルではガル・コスタ、ジャバン、ミルトン・ナシメント、ジルベルト・ジル、故エリス・レジーナなどとも共演しているかなりの人気プレーヤーの様ですが、欧米や日本ではリリースがほとんど無いため、あまり知られていないフュージョン系のプレーヤーですが、実力はかなりのものです。
 このCDはタワレコ梅田店でゲットしたのですが、そこの商品紹介のキャプションには、「初のワールド・デビュー作」とありましたが、94年の作品「メイド・イン・リオ」が、米ヴァーヴ・フォーキャストからディストリビュートされていましたので、「初の…」は間違いでしょう。まぁこの程度しか彼のことがまだ知られていないということのようでしょうが…。
 彼の作品をブラジル盤までチェックしていないのですが、今作は、97年にリリースされた「ブラック・パールズ」(この盤は未聴です。)から約2年ぶりの新作となっているようで、私の持っている94年の「メイド・イン・リオ」と同様のフュージョン作となっています。サンバやボサ・ノーヴァの雰囲気をほんのりと感じさせるコンテンポラリーなブラジリアン・フュージョンといった感じの力作で、なかなか気持ちのいいサウンドに仕上がっています。
 今回の作品に力が入っていることは、参加ミュージシャンの豪華さからも伺うことができるほどで、アメリカ〜ブラジルのトップ・ミュージシャンがたくさん参加しています。アメリカからは、フィリップ・セス(key)エディ・ゴメス(b)、ブラジルからは、コンテンポラリー・ブラジリアン・ミュージックを代表するプロデューサーとしても知られるセルソ・フォンセカ(g)やマルコス・スザーノ(perc)、それに、パット・メセニーとの共演でも知られるブラジル音楽界の大物エグベルト・ジスモンチ(p)、アーサー・メイヤ(b)、パウロ・ブラガ(ds)リカルド・シルヴェイラ(g)…、特にブラジルからは、MPB〜JAZZシーンの大物の参加が目立ちます。
 サウンドの方ですが、生楽器とドラム・ループによるコンテンポラリーなリズムを上手く組み合わせたスムース・ジャズ・スタイルとなっています。また選曲は、アメリカのマーケットを意識したような感じで、ハープ・アルパートの「ライズ」やスティングの「フラジャイル」のようなカヴァ‐ナンバーも収録されているほか、ジョビンの「アンティグァ」のようなボサ・ノーヴァ・クラシックも、コンテンポラリーなアレンジが施され、アルバムの中に収められています。
 今作の聴きどころですが、スムース・ジャズ・スタイルにアレンジされた1曲目の「ライズ」や、ギャンドルマンの美しいソプラノ・サックスが光る8曲目のエグベルト・ジスモンチとのデュオナンバー、それに、ループによるのヒップなリズムと、セルソ・フォンセカのアコーステック・ギターのリズムがカッコいい11曲目&12曲目あたりではないでしょうか。
 レオ・ギャンドルマンというミュージシャンは、サックス1本で勝負するというタイプではなく、アレンジやプロデュースなども自らで手掛け、サウンド全体で自分の音楽を主張するタイプだと思うので、サックスそのものの個性はあまりありませんが、透明感いっぱいのソプラノ・サックスの音色は魅力的だと思います。
 リー・リトナーのieミュージック盤「ツイスト・オブ・ジョビン」を思わせるブラジリアン・フュージョンの好作です。特に、スムース・ジャズの好きな方には、強くお勧め出来るもので、凡庸なアメリカのスムース・ジャズよりは、よく作りこまれた数段魅力的なサウンドです。今作をきっかけに、レオ・ギャンドルマンというブラジルのサックス奏者の名前を覚えておいても決して損は無いはずです。
11.15 Update

★★★★

黄色のCDがBest Buy!です。

は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。

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