↑インナージャケットです。
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Bennie Wallace "Someone To Watch Over Me" |
1946年テネシー産まれのテナーサックス奏者ベニー・ウォレスの新作がドイツのEnjaから到着しました。 トミー・フラナガンとの共演が話題となった前作の米オーディオ・クエスト盤「Bennie Wallace」から約1年半振りとなる今作は、ジョージ・ガーシュインのソングブックで、サポート・メンバーは、マルグリュー・ミラー(p)ピーター・ワシントン(b)ヨローン・イズラエル(ds)となっています。 Tを含めて多くのウォレスのファンは、R&B〜ブルース・スタイルでの豪快な演奏が話題となった80年代中期のブルーノート時代からでしょう。故スティーヴィー・レイ・ヴォーン(g)をフィーチャーした「トライライト・タイム」やドクター・ジョンとのコラボレーションが見事な「ボーダータウン」など、これらのBN作では、豪快なホンカーを思わせるようなブロウに、てっきりR&B出身のジャズメンかと思ったほどです。しかし、彼はベン・ウェブスターやコールマン・ホーキンスに多大な影響を受けたビ・バッパーで、アルバート・アイラーやアーチー・シェップをも好むというユニークなバック・ボーンを持ったテナー奏者だったのです。また70年代中期にNYを進出するまで、南部のテネシーで活動していたという経歴も、サウス・スタイルの豪快なキャラクターを育んだのでしょう。 さてこの新作ですが、BNから離れてからのスタイルを踏襲したもので、過剰演出のきらいもあったR&Bテイストも自然な形でブロウの中に溶け込んでいます。選曲は、タイトルナンバーをはじめ、「ザ・マン・アイ・ラブ」「アイ・ラヴ・ユー・ポーギー」などガーシュインの名曲ばかりで、印象的にはバラード・アルバムといった感じです。(別にバラードばかりでは無いのですが)サポートメンですが、マルグリューを含むトリオは、非常に良い仕事をしていると思うのですが、ウォレスのテナーのパーソナリティーが強いので、正直言うとあんまり印象に残るものではないです。だだマルグリュー・ミラーのウォレスのサックスを包み込むようなサポートが光っています。特にデュオで演奏されるタイトル曲は見事なものです。 とにかく個性的というイメージが強く、食わず嫌いとなっている方も多いかと思う、このベニー・ウォレスですが、この新作は、幅広くジャズ・ファンにお薦めできるアルバムだと思います。バックが至極常識的なトリオなため、ウォレスの魅力のひとつであるアクロバティツクなアドリブも幾分控えめとなっており、彼のフェエイバリット・ミュージシャンの一人であるコールマン・ホーキンスを思わせる豪快な直球勝負のすばらしいジャズアルバムに仕上がっています。 スティーヴ・グロスマンの新作と並んで、今年のベスト・テナー・アルバムとしてレコメンドしたいほどの素晴らしさです。ディヴィッド・マレイや故ジョージ・アダムスあたりを好きな方にもお薦めします。 9.23 Update
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★★★★☆ |
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Sting "Brand New Day" |
オリジナル作としては、前作「マーキュリー・フォーリング」から約3年ぶりとなるスティングの新作「ブラン・ニュー・ディ」が9月22日日本先行リリースされました。 91年に発表した「ソウル・ケージ」以来3作続いたヒュー・パジャムとのコラボレーションを解消し、今作では、スティング自身とキッパーなる謎の人物がプロデュースを担当しています。スティングの今作に関するインタビューなどでも、スティングの口からキッパーという人物のインフォメーションが皆無なことから、一説では、スティングの偽名ではないかとも言われています。 「ソウル・ケージ」(91年)〜「テン・サマナーズ・テイル」(93年)〜「マーキュリー・フォーリング」(96年)とかなり内省的なサウンドとなっていましたが、今作ではその作風が一転。ちょうど87年リリースされたスティングの3枚目のソロアルバム「ナッシング・ライク・ザ・サン」のような、様々な音楽要素が散りばめられたバラエティー豊かな良い意味でのポップなサウンドとなっています。中近東風のエッセンスから、スティング自身も大好きというボサノヴァ、R&B、カントリー等などの要素が絶妙に絡みあった新曲の数々は、ロックのカレイドスコープ(万華鏡)というべき輝きを感じさせます。 サポートメンバーは、長年培ってきた彼のバンドのメンバーである、ドミニック・ミラー(g)マヌ・カッチェ、ヴィニー・カリウタ(ds)をベースに、
ケニー・カークランドの後釜であるキーボードには、ジェイソン・ロベロ、ドン・ブラックマン、クラリネットには、盟友ブランフォード・マーサリス、トランペットにクリス・ボッティ、ハーモニカにスティーヴィー・ワンダー、ヴォーカルにジェームス・テイラーなどが参加。そして、スティング自身が「いつもの安上がりなベーシスト」と紹介する彼自身のベース&ヴォーカル。キッパーなる謎の人物のプログラミング&キーボードとなっています。 今作の聴きどころですが、全曲といいたいのですが、その中でも3曲目の「ビッグ・ライズ・スモールズ・ワールド」というボサノーヴァがロックに変わって行くユニークな曲や、ケニー・カークランドみたいなジェイソン・ロベロのピアノがフィーチャーされたフレンチ・ラップ入りのR&Bテイストな5曲目の「パーフェクト・ラブ」それにフェンダーローズのバッキングが印象的で、マイケル・フランクスも歌いそうなAORテイストなアレンジのスタンダード「風のささやき」などが特に気に入ったポイントでした。 とかく最近のポップスは洋邦問わずくず同然なものが大半を占める中、このスティングの新作はロック〜ポップスの明るい未来を感じさせる数少ない作品のひとつです。こうすればロック〜ポップスのサウンドはまだまだ面白くカッコイイものが創れるんです。ただくだらない音(音楽とも呼ぶに足らないもの)に慣らされた一般のリスナーが、このカッコ良さやセンスの良さをどこまで理解できるかが心配です。 9.23 Update |
★★★★ |
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Ramsey Lewis Trio "Appasionata" |
1992年の「アイボリー・ピラミッド」以来在籍したGRPを離れ、ニューエイジ系のレーベルNaradaのジャズ・デヴィジョンNarada Jazz移籍第一弾となる新作「アパッショナータ」がリリースされました。 80年代の半ばにビリー・テイラーとのアコーステックピアノ・デュオ作をリリースしていますが、私の記憶ではそれ以来となるアコーステッックな作品となるものです。GRPでのラスト作となった「ダンス・オブ・ザ・ソウル」がかなりアコーステックなものだっただけに、今回のフル・アコーステック作の登場はある程度予想出来ましたが、ピアノ・トリオになるとはやっぱり驚きです。 「ラムゼイ・ルイス・トリオ」としてクレジットされているとおり、今回はピアノトリオによるジャズアルバムとなっています。 ダイアン・リーヴスやスタンリー・タレンタインとの共演歴を持ち現在のラムゼイのグループのドラマーであるアーニー・アダムスと、シカゴのジャズ界では有名なベーシストというラリー・グレイを従えたラムゼイ・ルイス・トリオですが、一言で言えば上品なピアノ・トリオです。収録曲には「パヴァーヌ」等もあり、コントラバスのアルコ・ソロなどがフィーチャーされたナンバーなどは、クラシックの室内楽的な雰囲気も感じさせます。また「アパッショナータ」というタイトルが示すとおりラテンのフレーバーをも散りばめた作品となっています。 正直、1回聴いた感じでは、もう2度と聴かないCDコーナーへ直行かな、と思うほど地味に感じたのですが、よく聴いて見るとルイスのピアノは、フュージョン・フォーマットと変わらない程、ファンキーなんです。なにせ20世紀を代表するファンク・グループといっても過言ではないEW&Fの産みの親なんですから。また収録曲も、4ビートものから、ラテン・チックなもの、それに8ビートなフュージョンスタイルのリズムのナンバーから、ラストのパワフルなゴスペル調のナンバーまで、バラエティ豊かなものとなっています。 しかし、それらのどの曲を聴いてもピアノが登場すると誰がどう聴いてもラムゼイ・ルイスの雰囲気になっているのは、やっぱり凄いことではないかと思います。日本ではフュージョン・ピアノというイメージがありますが、アメリカでは、ジャズやフュージョンを超えて、ポピュラーミュージック界の重鎮として幅広く人気を誇るだけのことはあります。そういい意味で、このピアノ・トリオ作は、コアなジャズ・ファンだけでなく、一般のポピュラーファンにも楽しめる作品に仕上がっているようです。 名作「ジ・イン・クラウド」の少々お上品な世紀末バージョン。もう少しファンキーでも…。 9.25 Update |
★★★ |
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Brian Culbertson "Somethin' Bout Love" |
スムース・ジャズ界の新進気鋭ピアニスト、ブライアン・カルバートソンの新作がリリースされました。 ブルームーン・レーベルやアトランテックから何枚もアルバムをリリースし、どれも好リリースを記録し、日本ではまだ無名に近いですが、ご当地ではかなりのアーティスト・バリューを持っているピアニストです。 約2年振りとなるこの新作ですが、前作同様、ライブ楽器のグルーヴ感を上手く活かしたグルーヴィー&スムースなサウンドに仕上がっています。この手の音楽では、リズムは打ちこみによるものが大半ですが、この作品は、アレックス・アル、リチャード・パターソン(〜マイルス・ディヴィス、ディヴィッド・サンボーン バンド):b マイケル・ホワイト、リッキー・ローソン:dsによるリズムが、作品のクオーリティ‐をアップさせているようです。その他には、渋いオルガンのバッキングにリッキー・ピータソン、ギターにポール・ジャクソンJr.マイケル・トンプソン、トニー・メイデン、リード・ベースにウェイマン・ティスディル、サックスにスティーヴ・コール、パーカッションにレニー・カストロなどのファースト・コール・ミュージシャン達が、絶妙なサポートを聴かせてくれます。 またヴォーカルナンバーも収録されており、1曲にはぺリ・シスターズのロリ・ペリーが、そしてもう1曲は、クインシー・ジョーンズの「バック・オン・ザ・ブロック」に収録されていたスロウナンバー「シークレット・ガーデン」のカヴァーで、クインシー・バージョンにも参加していた元シャラマーのハワード・ヒューイットがハイトーンなヴォーカルを聴かせてくれます。 ブライアンは
、アコーステックピアノ中心のプレイで、正直、特段な個性を見出すことは出来ませんが、ツボを心得たプレイで、ベタな表現をすれば「黒さの入ったディヴィッド・ベノワ」といったところでしょうか?。 スムースジャズは、コンポーズ、アレンジ、レコーディングのバランスの
センスが重要だ、みたいなことは、ここでも何度も書いたことですが、改めてこのことを再確認させられる1枚です。カルバートソンは、無名時代、どこかのエアラインの機内放送のBGMを制作し、それが高い評価を受けソロ・アーティストとしての道が開かれたということなのですが、まさに、スムース・ジャズの制作ノウハウと同じことなのではないでしょうか?。 スムース&メロウなヴァイヴが心地よいアフター5なスムース・ジャズ・アルバムです。 9.30 Update |
★★★★ |
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Dave Koz "The Dance" |
ボビー・コールドウェルやジェフ
・ローバーらとの共演で知られるサックス奏者ディヴ・コーズの新作が90年のソロ・デビュー以来同じ、キャピタル・レーベルよりリリースされました。 ずいぶん前のインフォメーションから、タイトルが「ザ・ダンス」となっていたため、ダンス・ミュージック集のアルバムかと思いましたが、そうでは無い様で、ミディアム〜スロウ中心のスムース・ジャズ作となっています。 この新作のセールスポイントは、ズバリッ!超豪華なゲストに尽きるでしょう。バート・バカラック、モンテール・ジョーダン、ルーサー・ヴァンドロス、ビービー・ワイナンスらを筆頭に、ジェフ・ローバー、ディヴィッド・ベノワ、マーク・ポートマン、グレッグ・フィリンゲインズ(Key)トニー・メイデン、マイク・ランドゥ、マイケル・トンプソン、ジョナサン・バトラー(g)フレディ・ワシントン、ジョン・ペーニャ、ニール・ステューベンハウス(b)ジョン・ロビンソン、リッキー・ローソン、スティーヴ・フェローン(ds)レニー・カストロ、ポリーニョ・ダ・コスタ(perc)クリス・ボッティ(tp)…とにかくヴォーカリストからサポートミュージシャンまで1流どころで固められています。 気になるゲストとの共演ですが、ルーサーは、現レイ・グッドマン&ブラウンのリードシンガー、ケヴィン・オウエンスとの「シャ〜ララ」とコーラスをハモッていたり、モンテール・ジョーダンには、ジョージ・マイケルの「ケアレス・ウィスパー」を歌わせたり、またビービー・ワイナンスには、ジャクソン5の「アイル・ビー・ゼア」を歌わせたりと、ソウル〜R&B系のファンにはたまらない演出となっています。ポップス界の巨匠、バート・バカラックとの共演では、何とコーズとの共作によるミディアム・テンポの気持ちの良いナンバーで御大はピアノまで演奏しています。 このように、収録されてるどの曲にも、多彩なゲストや仕掛けなどがあったりして、聴くものを飽きさせない作品だと思いますが、いかんせん、コーズのサックスの印象があんまり無いです。ちょっと泥臭くした感じのケニーGといった感じで、ソプラノの演奏などは、「ケニーG?」と聞き違えるほどです。まぁレコード会社やプロダクションサイドは、この作品のようなロック〜ソウル界とクロスオーヴァーしたものを作ることによって、幅広いファンを獲得し、第2のケニーGにしようとする意図があるようです。しかし柳の下には、そうそうカエルは2匹もいないと思います。ケニーGは、一聴すると軟弱そうですが、ライブなどで見ると、物凄いパワーを持っているプレーヤーですが、コーズにはその力強さと存在感がまだまだ足りないようです。 豪華なゲスト陣のおかげで、多分セールスは好調でしょうが、ゲストが抜けたインスト作をリリースした時に、どれだけの人がコーズのCDを買うのか不安になります。パワーと存在感、これが彼の今後の課題となるでしょう。 9.30 Update
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★★★ |
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Gerald McCauley "The MuCauley Sessions" |
あのジョージ・ベンソンの甥にあたるというキーボード奏者ジェラルド・マッカーリーの初めてのアルバムが、WEA傘下のレーベル、ライトイヤーからリリースさました。ただ初リーダー作というには、「どうかな?」と言う部分があり、それは、未発表曲は叔父さんとの共演曲を含む2曲のみで、残りの収録曲は、ボビー・ライル、ロブ・マリンズ、マーカス・ジョンソン(Key)ニルス(g)などのマッカリーがプロデュースしたアーティスト名義の曲からセレクトされたものなので、CDのタイトルが示すとおりのコンピュレーション作的なアルバムとなっています。またブレンダ・ラッセルやカール・アンダーソン、シャンティ・ムーアのヴォーカルナンバーも収録されています。 叔父さんであるベンソンの「スタンディング・トゥゲザー」に参加して一躍注目を集めるようになったそうですが、このCDでマッカリーのプロデュース作品を聴いても、一時代前のブラコンやB級スムースジャズといった感じのものばかりで、正直どうでもいいようなナンバーばかりです。 唯一ラストに収録されている叔父さんとの共演による渋いミディアム・スローのナンバーがムーディーで良い感じかなという程度です。 タワレコや輸入CDショップでは、豪華なゲストヴォーカリストが収録されているため、R&B〜ソウルのコーナーで、レコメンドされていますが、とにかく古くて安っぽい音なので、それでも買うという人以外は通過したほうが無難な作品です。 9.30 Update |
★★ |