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Ivan Lins "Live At MCG" |
最近の新作はブラジル盤中心で、あまり活動の詳細が日本へ伝わることの少なくなったブラジリアン・アーティスト、イヴァン・リンスの新作が、米のスムース・ジャズ系インディーズ・レーベル"Heads Up"からリリースされました。(米でのリリースは今年の春らしい) この新作はライブ盤で、収録は1997年9月、マンチェスター・クラフツマンズ・ガイドという場所となっています。 バックバンドは、イヴァンのレギュラー・バンドで、ジャバンのドラマーとしも知られるテオ・リマ(ds)が良いプレイを聴かせてくれます。 アメリカでのライヴということで、選曲もアメリカ向けのものとなっており、パティ・オースティンの大ヒットナンバー「ジ・アイランド」のオリジナル・バージョンである「コメサー・ジ・ノーヴォ」や「ラブ・ダンス」などの日本でもお馴染みのナンバーが多く収録されています。またセルジオ・メンデスも最新作でカヴァーしていた「アンジョー・ジ・ミン」のライブ・バージョンも聴き所です。 プロデューサーの一人にジャズ・トロンボーン奏者ジェイ・アシュビーの名前もあるように、全体的にはブラジリアン・フュージョンぽい仕上がりのライブで、イヴァン・リンスの入門盤としてもお勧め出来る1枚です。ブラジル音楽の好きなコアなファンには、イヴァンの代表曲の1曲でもある「ルア・ソブレーナ」を含むラストの12分以上にも及ぶメドレーで熱いブラジリアン・サウンドを聴くこともできます。 素敵なアーティスト、イヴァン・リンスの素顔に逢える1枚。 8.26 Update |
★★★ |
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Dwight Sills "Easy" |
90年代初めにメジャーのソニーからデビューを果たし2枚のアルバムを残し、その後は、ウェイン・ヘンダーソン(tb)率いる新生ジャズ・クルセイダースなどにも参加していたギタリスト、ドゥエイト・シルスの久しぶりのリーダー作が、「シティ・ライツ・ミュージック」というマイナーレーベルよりリリースされました。 デビュー以来基本的には、他の黒人系ジャズ/フュージョン ギタリスト同様、ベンソン・ライクなギターサウンドで、お世辞にも個性的とはいえないものでしたが、今作では若干テイストが変わってきた感じがします。今までの、ブラコン・フュージョン的なサウンドから、リッピントンズやアール・クルーを思わせるような優しいスタイルのフュージョン・スタイルになっているようで、彼のギターもいつになくナチュラルな響きをしています。 マイナー・レーベルからのリリースながら、サポート・メンバーは結構豪華で、ビル・カントス、ラッセル・フェランテ(key)ラリー・キンペル、ジミー・ヘイスリップ(b)ダン・ヒギンズ、カーク・ウェイラム(sax)らが参加しています。 全体的には地味な感じの作品ですが、ビル・カントスやラッセル・フェランテのアレンジにより、中々良く作りこまれたフュージョン・ギター・アルバムです。オーティス・レディングの名曲「ドック・オブ・ザ・ベイ」のあっさりとしたカヴァー入り。 8.28 Update |
★★★ |
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Doc Powell "I Claim The Victory" |
ルーサー・ヴァンドロスのサポートギタリスト出身で、何枚ものリーダー作を発表し、ファーストアルバムは、あの「グラミー」にもノミネートされたという黒人ギタリスト、ドク・パウエルの新作が到着しました。 ドク・パウエルといえば、最近ウィンダム・ヒル・ジャズから、ボビー・ライルやマーカス・ミラー、ジョー・サンプルらが参加したプロジェクト盤「ダブル・スケール」のプロデュースを担当し、上質なソウル系スムース・ジャズを聴かせてくれたのですが、このドク・パウエル名義のソロ6枚目となる新作はかなりパーソナルな作品となっています。 何がパーソナルかと言えば、ジャンル的にはゴスペルに分類されるもので、かれの信仰するキリスト教を称えるクリスチャン・ミュージックとなっています。ほとんどの曲は、「ジーザス・クライスト〜」「ハーレルーヤー〜」といった内容のヴォーカルや、ゴスペル・クワイヤーがフィーチャーされており、そこだけ聞くと完全にゴスペルなんですが、全体のサウンド・メイクが、コテコテのゴスペルではなく、結構軽めのフュージョン・スタイルで作られているので、ゴスペルを理解できない人でも、聴けないことはありません。また、所々でフィーチャーされるエレアコのようなドク・パウエル独特の美しくメロディアスなギターも、彼ならではの素晴らしいサウンドなので、ファンとしては、これはこれで納得してしまいます。 ただよほど熱心な彼のファン以外は、単なる暑苦しいゴスペル作としか聞えないでしょうから、普通のファンは次ぎのフュージョン作を待ちましょう。 8.28 Update |
★★☆ |
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Dave Santoro "Standards Band" |
クラーク・テリーといったトラディショナルなスタイルから、ディヴ・リーブマン、ボブ・バーグ、ジェリー・バーガンジといったコンテンポラリーなジャズまで幅広く活躍する中堅どころのベーシスト、ディヴ・サントロの新作が、ニューヨークのジャズ・シーンにおける期待のレーベルDouble Timeからリリースされました。 この新作も、彼の盟友であるテナー奏者ジェリー・バーガンジが全面参加し、タイトル通りスタンダードばかりを、バーガンジ(ts)ブルース・バース(p)トム・メリト(ds)サントロ(b)というカルテットでパフォームしています。 このメンバーで、「グリーン・ドルフィン・ストリート」「タイム・アフター・タイム」「アイ・ラブ・ユー」などなどのスタンダードをやるということで、何か仕掛けがあるんだろうな、と身構えて?聴いてみたのですが…。えらいあっさりとしたものでした。ジェリー・バーガンジのテナーはいつもながら、ジョー・ヘンダーソンをひとひねりしたようなスタイルで、独自のスタンダード解釈で、やや辛なプレイを聴かせてくれますが、サントロを含む他のメンバーは、常識的な普通のプレイに拍子抜けしてしまいました。 ポール・チェンバースやスコット・ラファロ、レイ・ブラウンなどに影響を受け、マイケル・ムーアやディヴ・ホランドに師事したという経歴のベーシスト、ディヴ・サントロですが、ステディなバッキングには好感は持てますが、その他はとりたててどうこう言うものはありません。 Tを含めてジェリー・バーガンジのファンは間違いなく買いのCDですが、それ以外の人にアピールするポイントは正直希薄です。 NYスタイルのちょい辛のスタンダード集。 8.28 Update |
★★★ |
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Eric Alexander Quartet "The Live At The Keynote" |
Tの若手テナー一押しの本命君、エリック・アレキザンダーの新作が、日本のヴィデオ・アーツからリリースされました。 新作は今年の3月に東京のライブ・ハウス「キーノート」で収録されたライブ盤で、サポート・メンバーは、ハロルド・メイバーン(p)ナット・リーヴス(b)ジョー・ファーンスワース(ds)によるバリバリのカルテットです。 日本のアルファ・ジャズ制作のエリ・アレ盤は、どうもプロデュース過剰で、日本人が勝手に想像しているエリック・アレキザンダーというテナー奏者の虚像に無理やり合わせようとする作品のように感じていました。今作もリリースはヴィデオ・アーツながら、アルファ・ジャズ時代のプロデューサーである平野氏が制作しているということで、どうかな?と思ったのですが、これがいいんですよ。マジで。もう一人のプロデューサーであるマイルストーン・レーベルのトッド・バルカンのいい働きがあったのかもしれません。(このことからも分かる通り、多分アメリカではマイルストーンからこの作品がリリースされるものと思われます。) 93年のデルマーク盤のデビュー作から、サイドメン参加作を含めてほぼコンプリートでチェックしてきたTが、断言いたします。エリ・アレの最高傑作の誕生です。 まず、エリ・アレのテナーですが、この作品でひとつのスタイルが完成したようです。デビュー当時は、デクスター・ゴードンばりの豪快なテナーでしたが、日本盤のアルファ・ジャズでアルバムをリリースするようになると、コルトレーンの影響も見え隠れするようになり、地に足の付いた豪快なプレイが売りのはずが、頭で考えたようなスケールの小さな演奏になりつつあるような気配がありました。ところが、このライブ盤では、その2つのスタイルが、有機的に融合され、豪快さはそのままに、フレージングにより一層の幅が出来たようでアドリブの表現力もパワーアップしています。2曲目のスタンダード「メイビー・セプテンバー」のバラード演奏や、続く3曲目の急速調なコール・ポーターの「イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト」を聴けば、そのことが良く分かると思います。 エリ・アレをここまで成長させ、ホットにしたのは、ピアノのハロルド・メイバーンの力に負うところは大きいと思います。年甲斐もなく?(失礼!)豪快に煽りまくるピアノに、エリ・アレもインスパイアされて最高のプレイが出来たような気がします。 デルマーク時代からの盟友ジョー・ファンスワースのタイコも、ケニー・ギャレットとも来日していたベースのナット・リーヴスも、大はしゃぎ状態のエリ・アレとメイバーンを、上手くサポートしています。 また録音の素晴らしさも付け加えておきたいポイントです。 ライブの臨場感の中で、最高のエリ・アレが楽しめる一押し盤です。 PS〜今作もライナーは「辛口オヤジ」寺島靖国氏なんですが、文章に一時の切れがなくなり、好々爺状態なのは少し心配です。エリ・アレが可愛いのはわかるんですけど…。 8.29 Update |
★★★★★ |
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Meshell Ndegeocello "Bitter" |
あのマーカス・ミラーもが認めたベーシストとしての才能とシンガー、ソングライターとして類稀な才能を発揮し、ニュー・ソウル・シーンに君臨するフューメール・ソウル・アーティスト、ミシェール・ンデゲオチェロの新作が、ファースト作以来、リリースを続けるマーべリック・レーベルからリリースされました。 ファーストやセカンド作では、スクリッティ・ポリッティのディヴィッド・ギャムソンとのコラボレーションなどによるニューソウル・テイストなファンクサウンドを聴かせてくれたミシェールですが、今作ではその雰囲気が一転。プロデュースに、カサンドラ・ウィルソンやホリー・コールなどを手掛けたクレイグ・ストリートを迎え、ディープでフォーキーなサウンドとなっています。カサンドラ・ウィルソンの近作などと同様、アメリカン・ルーツ・ミュージックにスポットを当てたもので、抑揚の無いモノトーンな曲が延々と続いてゆきます。 歌詞の世界では相変わらず独特なセンスを発揮していますが、いかんせん、サウンドが単調な為、個人的には、退屈きわまりない作品という感想しかありません。 T的には、この種のサウンドが苦手なため、こんなインプレッションしか出来ませんが、趣味趣向を別にすれば、フォーキーでアーシーなニューソウルとしてのクオリティーは相当高いことは確かのようです。 3、4年前のチャカ・カーンの作品で「ネバー・ミス・ザ・ウォーター」という、デヴィット・ギャムソンがプロデュースし、ミシェールがベースとラップで参加した、抜群にファンキーでグルーヴィーなサウンドを聴いて以来のファンなんですが、今度の作品では、ファンクやグルーヴといった類の雰囲気とは無縁のものなので、T的には一回休みの作品です。 8.30 Update |
★★ |