らくがき帖〜音楽編


11.21st Century Schizoid Band 大阪公演 200311月12日 なんばHatch


 ちょうど1年ぶりの来日公演.ドラムがMichael GilesからIan Wallaceに変わっていますが,それ以上にこのバンドが持つ意味づけも(少なくともわたしの中では)変わってしまいました.昨年の来日公演に感じたような葛藤や期待感(昨年のライブ・レポート参照)はもうありませんが,「大好きな懐メロ・バンドの定期公演」みたいな割り切りが出来た分,気軽に参加できたし,それなりに楽しい時間を過ごすことが出来ました.ただ,わたしに限らず,会場全体として去年のような期待感には欠け,演奏内容も最高とは言えなかったと思います.
 
 前置きはこれぐらいにしてライブ・レポートを.会場のなんばHatchは本来オール・スタンディングが基本のライブ・ハウスとおぼしき雰囲気.開演30分前ぐらいに到着しましたが,みなさんのんびりした様子.まさしく"お達者倶楽部"的なノリで,「そんなものプログレでもロックでもない!」と言う罵声が聞こえてきそうですが,まさにその通り(笑) ただ,その辺のこだわりを吹っ切ることが出来れば十分に楽しめたと思います. ライブ料金とは別にドリンク券の購入が義務だったので,早めにビールとつまみを購入してちびちび飲みながら開演を待つ.グッズはTシャツとイタリア公演のライブCD.CDは未入手だったため購入(3000円也).袋もなく裸のCDをそのまま豪快にポンと渡してくれました.でも,愛想は悪くなかったのでまあ問題なしでしょう(笑)
 
 肝心の席ですが,最前列近くながら会場の左端,かつスピーカの真ん前.かなり最悪な場所ですが,去年はIan MacDonald側の端っこだったのが今回はMel Collins側なので,我慢できないというほど不満でもない.
 
 今年の来日メンバーは以下の通り.前述したようにドラムがMichael GilesからIan Wallanceに変わった以外は昨年と同じです.

Ian McDonald (sax, flute, key, vo)

Peter Giles (bass)

Mel Collins (sax, flute)

Jakko Jakszyk (g, vo)
Ian Wallace(ds)

 セットリストは昨年の曲を踏襲しつつも何曲か新レパートリーが含まれていて,選曲そのものは非常にいい感じ.例によってだいたいは合っているはずですが,曲順は若干記憶違いがあるかもしれません.まあ,今回の目玉はなんと云ってもアンコールで演奏した「Starless」でしょう.

1. A man, a city
2. Cat food
3. Let there be light
4. Circus
5. Cadence and Cascade
6. (new number, original)
7. In the court of the Crimson King
8. Ladies of the road
9. Formentera lady
10.Sailors' tale
11.I talk to the wind
12.Epitaph
13.21st century schizoid man

e-1.Starless
e-2.Bird man 〜reflection

 アンビエント・ミュージックのような曲(Schizoid intro ?)が流れる中メンバーが登場.出だしの3曲は去年と全く一緒.Giles信者(笑)のわたしが聞いてもIan Wallaceのドラムは迫力があり,Gilesとは違った魅力がありますが,全体的に淡々と曲が進行.
 4曲目に新レパートリーの「Circus」が演奏されると少〜し挽回.これまたお初の「Cadence & Cascade」ではMacDonald,Jakko,Collinsの3人がフルート3重奏を披露するなど新しい展開があってさらにもう少し会場の雰囲気もアップ.

 そして期待の(?)Schizoid Bandオリジナルの新曲が登場.が...これがまた何とも...評価のしようがない.かなりソリッドな雰囲気のインストゥルメンタルで,フュージョンっぽい部分があったり,メタル・クリムゾンをちらっと感じさせる面もあったりと,とにかく取り留めがない.さらに始末の悪いことに,現在のSchizoid Bandのイメージに全然合っていない.散々な書き方しましたが,要は"Schizoid Bandのオリジナリティって何?"という問いかけになるのでしょう.したがって,この曲の真の評価はオリジナル・アルバムが出るまでは保留です.
 
 そんな消化不良もあってか「In the court of the Crimson King」も今ひとつ盛り上がりに欠けましたが,ここで起死回生の一発が飛び出します.「Ladies of the road」,この曲は昨年も聴き所たっぷりの名演でしたが,今年も期待に違わぬパフォーマンスを披露してくれました.立て役者はもちろんMel Collins.個人的な嗜好という点は否定しませんが,今回の公演におけるパフォーマンスははっきり言ってMel Collinsが突出していました.昨年以上の出来...とは言いませんが,純粋に演奏そのもので痺れました.会場もこの日一番の盛り上がり.本公演の終了時や「Starless」終了時を除けば,公演全体を通してもこの曲に対する拍手が一番だったと思います.
 
 今回はIan Wallaceが参加していることもあり「Formentela Lady 〜 Sailor' tale」へとアルバム通りのつながりで前回以上の満足感があった反面,「Epitaph」はやはりGilesのドラミングでなければ...とも感じました.Wallaceの粘りけがあってからみつくようなドラミングも好きなんですが,「Epitaph」のとくに最期のリフレインあたりのドラムはやはりGiles以外は考えられません.まあ,このへんは好みの問題なので人それぞれでしょう.
 そしてここで本公演終了か?との予想を裏切って「21st century schizoid man」が始まりました.お馴染み&お気に入りの曲なのですが,(わたしも含め)どこか呆気にとられ,そしてアンコールは何?という疑問も湧くのか,みなさんどこか乗り切れない様子.演奏内容自体もそれほど特筆すべきものではなかったし... それに,わたしはこんな考えも頭に浮かんできました. 「今日はあんまり盛り上がらなかったし,メンバーも乗ってなくて...もしかしたらアンコールはなしじゃないのか!?」 今考えると笑い話ですが,そんな考えが浮かぶほど盛り上がりに欠けたのも確か.

 それでも最後はパラパラと立ち上がる人もいて,かなり盛大な拍手で本公演終了.客電も消えたままなのでアンコールは有りそうでしたが,いったい何を演奏する?との疑問を抱えたまま拍手を続けていると,おもむろにメンバー登場.「Starless」のイントロが流れてきた瞬間はかなりびっくりしました(笑) さすがに男泣きのWettonのヴォーカルには及びませんが,これはこれで充分楽しませてもらえました.心憎い選曲.観客の反応もやはり良好で,終了後の拍手も本公演以上.なかなか客電が明るくならないので期待しつつ拍手していると,MacDonaldが勢い良く登場し(予想通り)「Bird man」が始まりました.昨年と同じく「reflection」部分のみの演奏でしたが,これで聴きたかった曲は全て聴けたかなっと個人的には満足感いっぱいでした.
 
 以上,昨年よりはかなり醒めた感想だったのは事実.演奏自体も淡泊だったように思います.その中で光っていたのはMel Collins.繰り返しになりますが今回は彼のパフォーマンスが突出していました.次点はIan Wallace.このあたりは好みの問題で,Wallaceの力量も素晴らしかったのは間違いありません.反面,他のメンバーは期待はずれとまではいかなくても,懐かしさなどの付帯的な要素を除けば,演奏そのもので感激できる部分が少なかったのは事実.ただし,Jakkoのヴォーカルは慣れたのか覚悟が出来たのか,去年ほど気にはなりませんでした.いわゆる,"馴染んだ"というヤツでしょうか(笑)
 
 さて,来年はどうなるんでしょう?また来るのかな?...来年も(無理してまで都合つけないけど)来たら行っちゃうでしょうね.まったり,ゆったりした気分で.


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