Others 7
10.PINK
FLOYD
プログレッシブ・ロックを代表するビッグ・ネーム.わたしが最初に聴いたプログレ・バンドです.ただ,個人的には”のめり込む”ほどには聴き込んではいません.超一流のバンドですし,詳しい解説本・サイトは無数にありますから,ここでは一歩距離を置いた(マニアックではない)感想,個人的思い出などを書き留めてみます.
最初に聴いたアルバムはFM放送で全曲ON
AIRされた「原子心母/ATOM HERAT
MOTHER」.その週その番組(番組名忘れました^^;)はFLOYD特集だったようで,次の日「MORE」も全曲ON
AIRされました.この時中学の1年生.しかし,ガキはガキなりに何か感じるものがあり,以後プログレの森に迷い込むことになります.
しかし,この難解な音楽(中学1年生には当然でしょう)にはなかなかついていけません.ある程度わかりやすいELPが当時のお気に入りNO,1. 月日が流れ,その次に夢中になったのはKING
CRIMSON.結局その夢は未だに覚めていません.
個人的に,最初に聴いた2枚(「原子心母」と「MORE」)がどこか冗長なイメージのため(単純に曲の演奏時間ではない!),今に至るまでFLOYD論を語るほどのめり込むことはありません.それでも「狂気/THE
DARK SIDE OF THE MOON」や「炎/WISH YOU WERE
HERE」などは何十回と聴きましたけど.<なんのかの言っても好きなんですね(笑)
ちょっと醒めたファンですが,お気に入り・お奨めなどを.この時期のFLOYDのアルバム/曲には名(迷)邦題が多いので,代表的な邦題を併記しておきます.
「THE DARK SIDE OF THE MOON/狂気」
1. (a) SPEAK TO ME (b) BREATHE/生命の息吹き
2. ON THE RUN/走り回って
3. TIME
4. THE GREAT GIG IN THE
SKY/虚空のスキャット
5. MONEY
6. US AND THEM
7. ANY COLOUR
YOU LIKE/望みの色を
8. BRAIN DAMAGE/狂人は心に
9.
ECLIPSE/狂気日食
何も言いません.聴いて下さい.素晴らしいです.....ロック史上に燦然と輝く名盤中の名盤なので,いまさら感想書くのも憚られるのですが,これだけでは話にならないのでごくごく個人的感想を.
上で冗長という言葉を使いましたが,このアルバムではそんなことは感じません.前出の2枚にあった(と感じられた)饒舌な部分というのが無いんですよね.見事な構築美.わたしがこのアルバムに込められた音楽やメッセージをすべて堪能・理解したか,というと未だに受け止め切れません.それほど内容の濃いアルバムですが,反面すごく”わかりやすい”アルバムです.この”わかりやすい”というのは,単純とか底が浅いとかという意味ではもちろんありません.言い換えれば,”理屈抜きで,素直に凄さを直感できる”と言ってもいいでしょう.奥が深いくせに一聴しただけで良さが分かる,このアルバムが記録的に売れたわけが実感できます.
録音面の先進性もこのアルバムの特徴です.冒頭の心音のリアルさがよく取り沙汰されますが,全編に渡って細やかな気配りが行き届いています.
冗長でなくわかりやすいと書きましたが,FLOYD節とも言うべき音空間の壮大さ/幻想性は損なわれていません.そのへんが「ANIMALS」との違いでしょうか.「ANIMALS」もヘヴィーかつ明快ですが,FLOYD特有の壮大かつ神秘的・幻想的な雰囲気に欠けるので,今ひとつ”PINK
FLOYDを聴いている”という感覚に欠けます.
「WISH YOU WERE
HERE/炎」
1. SHINE ON YOU CRAZY
DIAMOND/狂ったダイアモンド (PART I )
2. WELCOME TO THE MACHINE
3. HAVE A CIGAR
4. WISH YOU WERE HERE/あなたがここにいてほしい
5.
SHINE ON YOU CRAZY DIAMOND (PART II )
作品の完成度など客観的な評価では圧倒的に「狂気」に軍配が上がりますが,個人的にはいちばんよく聴いたアルバムです.シド・バレットに捧げられ...云々を言うつもりはありません.たしかに「狂ったダイアモンド」や「あなたがここにいてほしい」などを聴くとき,シド・バレットに思いを馳せないわけにはいきませんが,その逸話抜きにしても胸に迫る切なさに溢れて,そのシンプルな音と相まって素直に音楽に没入できます.
結局,わたしが冗長・饒舌と感じる部分はFLOYDの壮大な音宇宙を形成するのに欠かせないパーツなのでしょう.しかし,わたしが求める音楽はもっと直截的な感情の発露なんですね.その点でこのアルバムはFLOYDのアルバムで一番自分の感性に近いのかな.しかし,いくら”感情の発露”とはいっても「THE
FINAL
CUT」はつらい^^; ロジャー・ウォーターズの感情はヘヴィー過ぎ.
出来ればこのアルバム,完全な状態のLPを手に入れられることをお奨めします.ポスター,ステッカー,ポストカードetc...楽しい付録が満載で妙に得した気分になれます.
「MEDDLE/おせっかい」
1. ONE OF THESE DAYS/吹けよ風,呼べよ嵐
2. A PILLOW OF
WINDS
3. FEARLESS
4. SAN TROPEZ
5. SEAMUS
6.ECHOES
「ONE
OF THESE
DAYS/吹けよ風,呼べよ嵐」,「ECHOES」という名曲が収録されていることで有名でしょう.たしかにこの2曲は素晴らしいデキ! ヘヴィーかつ攻撃的な「ONE
OF THESE DAYS」は一度聴いたら忘れられないインパクトをもっているし,20分を越える大曲「ECHOES」も「ATOM HEART
MOTHER」よりはるかに起伏に乏しいはずなのに意外とすんなり聴けます.
さらに,地味ながら牧歌的な叙情性に溢れる「A PILLOW OF
WINDS」や「FEARLESS」,「SAN
TROPEZ」にも格別の味わいがあります.好きなアルバムという点ではこれが一番.中期(?)FLOYD的色彩がいちばん濃く現れた傑作アルバムだと思います.
しかし,「ONE
OF THESE
DAYS」の邦訳はぶっ飛んでますね.確かに曲のもつイメージにピッタリとはまってますから,見事な邦題には違いないですけど.でも普通は「吹けよ風」ぐらいでやめると思うんですが^^; のちにアブドラ・ザ・ブッチャー(プロレスラー)のテーマ・ソングとして使われますが,まるでそのことを見越したかのような厳ついタイトルです.「原子心母」という邦題もどうかと思いましたが(これも雰囲気出ていていいですけどね),この時期の日本の配給元の暴走ぶりが垣間見えておもしろいですね.
前出の「原子心母」の他にも,「THE
WALL」やシド・バレット在籍時の2枚など名作は他にもありますが,あまり聴き込んではいないので強烈な印象はもっていません.まあ,この項はPINK
FLOYD入門やPINK FLOYD論ではなく,個人的な感想を書き留めたものです.”これからFLOYDを聴き込むぞ!”,という方にではなく,”「THE
WALL」や「原子心母」を聴いたけど今ひとつ...”,という方にこそふさわしいかもしれませんね.再挑戦のガイド役にでもなれば幸い.