Italian Progressive Rock 5
管理人自身イタリア語がわからないので,邦題のあるものはすべて邦題を併記しています.
5.Arti+Mestieri
当時,世界で一番手数の多いドラマーとの賞賛を受けたFurio
Chiricoを要する超テクニシャンぞろいのグループ.’70〜’80年代に5枚のアルバムをリリースし,昨年お決まりの再結成によるニュー・アルバムを出していますが,もともとはジャズ畑のミュージシャンが中心のようで,いわゆるプログレに分類されるアルバムは初期の2枚でしょうか.
ただ,デビュー・アルバム「TILT」はイタリア・プログレ屈指の名作と評価が高く,(日本では)プログレ・バンドとして紹介されることがほとんどです.
「TILT」
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1. GRAVITA 9, 81/重力
2. STRIPS/ストリップス
3.
CORROSIONE/侵食
4. POSITIVO/NEGATIVO
5. IN CAMMINO/路上にて
6.
SCACCO MATTO/チェス狂
7. FARENHEIT/華氏
8. ARTICOLAZIONI/関節
9.
TILT |
ジャズ・ロックの傑作です.Furio Chiricoの高速ドラミングが強調されがちですが,楽曲も他のメンバーの演奏も素晴らしく名盤の名に恥じない内容です.
Brufford やPalmer に勝るとも劣らない超絶ドラミングの誘惑に打ち勝つのはなかなか骨の折れる作業ですが,まずは楽曲全体を聴くのがスジというものでしょう.付け加えるなら,Furio
Chiricoの魅力は決して「テクニック」が全てではありません.技術だけならもっと凄い人もいます.でも,彼らにFurio Chiricoの代役は出来ません.やっぱり”ChiricoはChirico”です.
肝心の音楽性についてですが,他のイタリア系のグループとは一線を画す”都会的でスタイリッシュ”な面が強く感じられるます.そこにイタリア独特の地中海風味が+αされて,独特の味を出しています.
イタリアのプログレ・バンドの多くは本家イギリスのバンドの音に比べ,どこか土臭さやどろどろした情念を,あるいは装飾過多とも云える華やかな感情の露出が感じられ,”都会的な洗練”という表現とは相容れないものですが,このバンドの音はものの見事に洗練されています.その点でもかなりジャズの色合いが濃い音だと言えるでしょう.
「GIRO DI VALZER PER
DOMANI/明日へのワルツ」
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1. VELZER PER DOMANI/明日へのワルツ
2. MIRAFIORIA/花芯
3. SAPER SENTIRE/知覚そして認識
4. NOVE LUNE PRIMA/9つの月の前で
5. DA NORD A SUD/北から南へ
6. NOVE LUNE DOPD/9つの月の後で
7. MESCAL/メスカル酒
8. MESCALERO/メスカル酒の杯
9. DIMENSIONE TERRA/大地の大きさ
10. ARIA PESANTE/重苦しい空気
11. CONSAPEVOLEZZA PARTE 1/意識 パート1
12. SAGRA/祭礼
13. CONSAPEVOLEZZA PARTE 2/意識 パート2
14. RINUNCIA/放棄
15. MARILYN/マリリン
16. TERMINAL/終末 |
彼らの2nd.残念ながら前作よりはスケール・ダウン.小品中心で楽曲そのものの魅力は若干見劣り.Chiricoのドラミングはあいかわらず全開です.しかし高速ドラミングやテクの正確さは売りのひとつにはなるでしょうが,テクが音楽の魅力の全てではないので,楽曲自体の完成度が前作にやや劣る分,評価は一歩後退する事になります.
ただ,駄作かというとけっしてそんなことはないので,フリオのドラムを存分に楽しむことが出来ます.小品ながら楽曲の完成度もまずまず&他のメンバーの演奏も確かなので,よりいっそうドラムが引き立つとも言えます.「TILT」が超名盤のため辛い評価になりましたが,この作品もお奨めには違いなし.
近年,当時のライブ盤が発売され,ライブでも「TILT」を見事に再現した素晴らしい演奏が聴けるそうです.生憎わたしはまだ聴いていませんが,手に入れたら音質面を含めレポートしたいと思います.
3rd以後の音はフュージョンと云った方がよく(2nd発表後,もう一人の中心人物Gigi Venegoni
が抜けた影響が大きいと思われる),プログレのアルバムとは云えませんが,演奏や楽曲は一定の水準を保っているので,ジャズ/フュージョンのファンには十分アピールできるでしょう.
再結成後の新作(「MURALES」)も基本的にはジャズ/フュージョン系の音です.「GRAVITA
9,
81」の新録音も披露していますが,全体的にプログレ色は濃くありません.ただ,(プログレ一辺倒ではないものの)随所に1st〜2ndの演奏を彷彿とさせる個所があり,このバンドの本質は健在だなと思わせてくれます.ただし,Furio
Chirico
の高速ドラミングは鳴りを潜めています.テクニック的には落ちていると思わないので,全体の配分を考えてのことでしょう.歳を取って丸くなったのかもしれません.高速ドラミングがお目当てなら肩透かしでしょうが,その分肩の力が抜けて良い雰囲気です.本格的プログレに拘らなければお奨めできます.
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