PFM-4


管理人自身イタリア語がわからないので,邦題のあるものはすべて邦題を併記しています.
1.P.F.M. その(4)
(2)「Chocolate Kings」〜「Jet Lag」

1.「CHOCOLATE KINGS」

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1. FROM UNDER
2. HERLEQUIN
3. CHOCOLATE KINGS
4. OUT OF THE ROUNDABOUT
5. PAPER CHARMS







 新しく専任ボーカリストが加入しました.単純にそれだけが原因とは思いませんが,アルバムから受ける印象は前作までとは一変してしまいました.繊細な印象のあるボーカルから一転して,力強い”ロック色”の非常に濃いボーカルになりました.
 その分,演奏面でも繊細さ・華麗さはずいぶん削られてしまい,”力押し”の印象は否めません.ただ,全体のレベルが低下しているかというと必ずしも違います.しかし,M・パガーニが在籍しているからといって(彼は「Jet lag」発表前に脱退),この作品をこれまでの作品と一括りにするのは非常に抵抗があります.したがって,独断でこの「CHOCOLATE KINGS」と「JET LAG」を一区切りとして分類します.(多くの評論家は「CHOCOLATE KINGS」までをひとつの区切りとしているみたいですが...)

 彼らが繊細さを捨てた理由として,このアルバム・コンセプトが明確にアメリカ社会(物質文明至上主義)の批判にあることと無関係ではないでしょう.アメリカを中心とした英語圏の聴衆を主なターゲットにし,わざわざ英語のnative speaker に近いボーカリスト(アメリカ在住経験者)を起用したにもかかわらず,迎合するのではなく批判を展開するという心意気は見事です.

 では,わたしはこの作品が大好きかというと”否”です.まず,ボーカルはロック色を強調し過ぎ,その悪い面である”単調,一本調子”な点が前面に出ています.さらに演奏も力強さに主眼を置いているため,繊細さが圧倒的に不足です.音の密度感は十分あるのですが,一音一音あるいは楽器ひとつひとつを聴かせるような音ではありません.そのせいか楽曲やアルバム全体から受ける印象も一本調子のように思え,その展開の複雑さや華麗なアンサンブルに魅力を感じていたものにとっては不満が残ります.

 ただ,この「CHOCOLATE KINGS」を名作と評価する声も多く,P.F.M.の傑作のひとつに推す人もたくさんいます.その評価もけっして間違っていると思いませんし,わたし自身も嫌いな作品ではありません.あくまで「大好きではない,以前のPFMとはがらっと違う」ということです.


2.「JET LAG」

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1. PENINSULA
2. JET LAG
3. STORIA IN <<LA>>
4. BREAKIN IN
5. CERCO LA LINGUA
6. MERIDIANI
7. LEFT-HANDED THEORY
8. TRAVELER


 前身バンド(I Quelli)に合流しPFMを結成して以来,ずっと中心メンバーだったM・パガーニが脱退したのちに作られたアルバム.評論家陣にはM・パガーニ在籍時こそがPFMであり,「CHOCOLATE KINGS」までがプログレのアルバムとして評価に値すると考えている方も多いようです.しかし,わたしにはこの「JET LAG」が「CHOCOLATE KINGS」よりも明らかに劣っているとはどうしても思えません.たしかに「友よ」,「甦る世界」などに比べると音を幾重にも折り重ねるような厚みに欠けますが,「CHOCOLATE KINGS」よりは演奏面での繊細さや楽曲の展開などは優れていると思います.

 個人的には前作よりこの「JET LAG」の方が好きです.力押しのボーカルは相変わらずであまり好きではありませんが,とくにタイトル曲「2. JET LAG」は楽曲の展開,演奏面等どれをとっても素晴らしいデキだと思います.全体的に見ても前作より聴き所が多いと感じますが,音の分厚さという面では(イタリア語版)初期3作品には一歩劣るという印象があります.

 わたしはこの時期の2枚のアルバムと次作「PASSPARTU」を聴くとき,この3つを最初の3枚(「幻想物語」〜「甦る世界」)と比較すると”少しずつ欠けているんだな”という印象を持ちます.「CHOCOLATE KINGS」は繊細さを欠き,「JET LAG」は音の重厚さ・重積感を欠き,「PASSPARTU」はプログレではない(笑),ということです.
 そんな訳で,わたしは「CHOCOLATE KINGS」と「JET LAG」の間に客観的な優劣を付けることができません.さらに”音楽的な楽しさ”という点で見れば,プログレ的要素は欠片もありませんが「PASSPARTU」は「CHOCOLATE KINGS」と「JET LAG」に劣っていないと感じます.いわゆる三竦み(笑).反面3枚とも初期3作にはちょっと足りません.



 以上がoriginal album だけを聴いたときの印象です.人によっては,わたしがM・パガーニを,「CHOCOLATE KINGS」を不当に低く評価しているような印象を持たれるかもしれません.が,そんなことはありません.「CHOCOLATE KINGS」期のPFMの良さは,そのライブ盤を聴くことで納得しているつもりです.

 この時期のライブ盤はofficial では「absolutly live vol. 3」がありますが,最も重要なものは日本公演のbootleg ではないでしょうか.残念ながらわたしはこの日本公演を体験していません.せいぜいbootleg でその片鱗を感じるのが関の山で,それがこの時期のPFMにのめり込めない理由かもしれません.一方「CHOCOLATE KINGS」期のPFMを高く評価する人たちは,この時期のPFMをリアルタイムで体感し,その魅力を肌で感じているのかもしれません.

 なぜそんなことを言うのか?
 その理由はofficial web site のhistory のコーナーに書かれている日本公演に関する記述を読んだからです.彼らは自分たちの歩みの中でもこの日本公演が”もっとも重要な経験のひとつ”と位置づけています.それはイタリアから遠く離れた日本で(意外なほど)高い評価を受け,公演が(商業的に)成功したからかもしれませんが,彼らほどの優れたartist が”重要な経験”と公言する以上,その内容に満足感と自信を持っているから,と考えても良いと思っています.

 わたしはこの時期のライブ,とくに日本公演のbootleg はそんなことを考えながら聴いています.次回はそんなライブ盤のレビューですが,このあたりは実際に日本公演をご覧になった方のご意見をぜひ伺いたいものです.

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