Italian Progressive Rock 8
さて肝心の内容.2ndは文句なく傑作ですが,1stも非常によいデキだと思います.ただ,音楽的な方向性は同一線上にありますが,受ける印象は少々異なります.評価の高い2ndに限らずQUELLA VECCHIA LOCANDAの音楽の鍵を握るのはヴァイオリンですが,1stと2ndではクレジットされているヴァイオリン奏者の名前が違います.同一人物だという説とまったくの別人だという説が分かれていますが,わたしには両者の違いを聴き分ける耳もなく,資料もなく真相は不明です.
「IL TEMPO DELLA GIOIA/歓喜の時」
1. VILLA DORIA
PAMPHILI /ドーリア・パンフィーリの村
2. A FORMA DI... /〜の形
3. IL TEMPO
DELLA GIOIA /歓喜の時
4. UN GIORNO, UN AMICO /今日の一日,そして友
5. E
ACCADUTO UNA NOTTE /夜の出来事
彼らの2ndアルバム.幻の名盤という言葉がこれほど似合うアルバムもそうはありません.多くのコレクターがこのレアなLPを求めて狂奔し,実際聴くことの出来た人々の口から出る賞賛の言葉に嫌がうえにも期待は膨らみました.
.....そして実際に聴いてどうだったか?
たしかに傑作です.病的なまでに狂おしく響きわたるヴァイオリンの音色とそれに引けを取らない熱いアンサンブル.耳に残るのはヴァイオリンですがその他の楽器もヴォーカルも異様な熱を帯びています.イタリア・シンフォニック・ロックの最高峰ともてはやされるのもあながち間違いではありません.
が,個人的な好みで言えば,P.F.M.,LOCANDA
DELLE FATEあるいはARTI +
MESTIERIなどのほうがはるかに好みです.正直このアルバムに6桁出すかといわれれば...遠慮します.クラシカルなアレンジが基礎にあるのは間違いないのですが,その演奏はよく言えば”アヴァンギャルド”,悪く言えば”破滅的”.このへんをどう評価するかでしょう.
しかし,現在は2千円前後の出費でこの名盤が手に入る時代.迷わず買って,聴くべきだと断言します.「買うべきか,買わざるべきか,どっちやねん!」,という突っ込みが聞こえてきそうですが,もちろん「買い!」です.名盤・傑作に違いありません.絶対聴くべき音楽だと思います.ただ,わたしはこのアルバムで聴ける”狂おしいほどの熱気”とは一歩(心理的,情緒的に)距離を感じるというだけです.
「QUELLA VECCHIA LOCANDA」
1. PROLOGO /プロローグ
2. UN
VILLAGGIO, UN'ILLUSIONE /集落,幻想
3. REALTA' /現実
4. IMMAGINI SFOCATE
/曖昧な幻影
5. IL CIECO /盲人
6. DIALOGO /対話
7. VERSO LA LOCANDA
/宿のちかく
8. SOGNO, RISVEGLIO E...
/夢,目覚め,そして・・・
最初に1stを聴いた感想.”おや〜〜??どちらかと言えばこちら(1st)の方が好み.”
そして,今回の再発盤添付のライナーを読むと,「廃盤争奪戦の激しさを実感している人達は2ndを,再発がかかってから聴いた人達は1stを好む傾向がある」といった趣旨の文章があるじゃないですか.
いや,まさに慧眼.わたしは見事その傾向に当てはまります.2ndのもつ狂おしいまでの熱気をすべて受けとめるには,廃盤を捜し求めたアノ情熱が必要なのかもしれません.
内容はクラシカルなヘヴィー・ロックでしょうか.本質はかなりヘヴィーな音なのですが,クラシックを基礎としたアレンジが見事で,実に聴き応えのある音に仕上がってます.とくにヴァイオリンが印象的.P.F.M.を荒削りにして,ジャズっぽい味付けを薄くした感じ,とでも言えばいいかな.
じゃあ,1stと2ndどちらが上かと聞かれれば,間違いなく傑作と言えるのは2ndでしょう.たしかに1stは好みですが,このアルバムと似た雰囲気をもつ作品は他にもあります.その中で飛び抜けたデキかというと,やはり疑問符がつきます.例えばP.F.M.と同傾向の音なのですが,全体の完成度はやっぱりP.F.M.が上.
その点2ndが内包する”狂おしいまでの熱気”は,ちょっと類似の音楽を見つけるのが困難です.作品の完成度,オリジナリティなどを考え合わせると,2nd「歓喜の時」はやっぱりイタリアン・プログレ史上でも特別な存在です.